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駆の章
危ない奴
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《空山隆之介》
スペインの三連星は強烈で絶えず劣勢に立たされている日本代表。
駆、世界は凄いよ。
イエニスタがドリブルで中央へ切り込む。
赤い彗星の如く日本のディフェンダーの間を抜けて行った。
センターバックの昌司が足を伸ばして止めようとする。
イエニスタが左から来た赤いキャノン砲と言われるアカサへパスを出そうと顔を振った。
昌司はヤバイと思ったのか、パスのコースへ足を出してしまった。
イエニスタはニコリと笑い、昌司が動いた逆へ抜けていった。
そこへ日本の守護神である川島健斗が飛びだす。
シュートコースを塞ぐ為だ。
イニエスタは股下を抜くフリをしてボールをフワリと浮かした。
ボールは川島の頭上を抜けてゴールにコロコロと転がり、優しくネットを揺らした。
二点目を献上してしまった。
ピッチに立つ選手達の表情が喪失感で溢れている。
勇気づけたい。まだ、負けた訳じゃないと勇気づけたい。
「ひゃっひゃっひゃっ、面白くなってきたやんけ」
俺は隣で発言した奴を見る。
ガンバ大阪の城戸文太という男だ。
「得点されたのに何が面白いんですか?」
「自分の番が回ってくるやろが。大海、ワシ、お前がピッチに立てばスペインに簡単には負けんで。いや、勝てると違うんか」
「凄い自信ですね」
「ほら、もう、左サイドバックの永友はんはイッパイになっとるで。昌司がもう少し走るのが速ければな」
「城戸さん、少し言い過ぎと違いますか。みんな、必死に頑張っています」
「ひゃっひゃっ、アマチャンやな。お前はどう思ってるんや?柴咲はお前にパスせんで。そんなんで勝てるか?ワシの方がよっぽど司令塔に向いておるわ」
「俺にはパス要りません。自分でなんとかします」
「そうはいかんな。ワシは優勝するや。しっかりと働いてもらうで」
そこに西島秀人がやって来た。
「城戸、空山、お前達、うるさい。聞こえてるぞ」
「構いませんがな。本当の事さかい。ワシとコイツが出場すれば勝ってみせますよ。まずは前半に一点は返しておきましょか」
「大した自信だな。アップしろ。お前達がただのハタッリ野郎か、見極めてやる」
「どうぞ、お好きに」
俺は別に大口を叩いていないけど、いきなりピッチに立つチャンスを貰えた。
駆、お前の夢を叶えるぞ。
《桐谷里帆》
VIP席から解説を聞きながらピッチを見ていた。
隣には執事の濱本麟太郎がいる。年は三十ぐらいで里帆より少し年上の好青年。
「交代のようですね」
「あっ、隆之介だ」
二人の選手が監督に呼ばれた。
その内の一人が隆之介だ。
里帆は思わず胸の前で手を組んでいた。
駆くん、とうとう隆之介がピッチに立つよ。
《宇垣悠里》
ピッチ横の関係者エリアからスペイン戦を観戦していた。
その時、二人の選手が西島監督に呼ばれている。
一人は空山隆之介だ。
何か期待してテンションが上がる。
日本が劣勢になる事はわかっていたが、ここまで攻められるとは思わなかった。
正直、諦めていた部分がある。
でも、彼なら一矢報いてくれると期待してしまう。
頑張れ、空山隆之介!
《西島秀人》
二人の選手を呼んだ。
城戸と空山だ。
ピッチ内、ベンチの選手達は相手がスペインなら仕方ないと諦めムードがある。
その中で二人だけは馬鹿デカイ声で俺達ならやれると主張している。
この二人にかけてみようと思う。
「お前達、デカイ口を叩いたんだ。好きにやって来い。俺を、いや、世界を驚かせて来い」
城戸は意地悪い笑顔で言う。
「当たり前やろ。ワシはここで活躍してビッグクラブと契約するんや。そして、大金持ちや」
「スペインって、守りは大した事無いですよね。皆、スペインと意識し過ぎです。守ってしまえばどうって事ない」
「言うね、隆之介ちゃん。そこまでわかっているならしっかりと守ってや」
「さあ、行け!」
二人をコートに送り出した。
前半残り十五分。
スペインの三連星は強烈で絶えず劣勢に立たされている日本代表。
駆、世界は凄いよ。
イエニスタがドリブルで中央へ切り込む。
赤い彗星の如く日本のディフェンダーの間を抜けて行った。
センターバックの昌司が足を伸ばして止めようとする。
イエニスタが左から来た赤いキャノン砲と言われるアカサへパスを出そうと顔を振った。
昌司はヤバイと思ったのか、パスのコースへ足を出してしまった。
イエニスタはニコリと笑い、昌司が動いた逆へ抜けていった。
そこへ日本の守護神である川島健斗が飛びだす。
シュートコースを塞ぐ為だ。
イニエスタは股下を抜くフリをしてボールをフワリと浮かした。
ボールは川島の頭上を抜けてゴールにコロコロと転がり、優しくネットを揺らした。
二点目を献上してしまった。
ピッチに立つ選手達の表情が喪失感で溢れている。
勇気づけたい。まだ、負けた訳じゃないと勇気づけたい。
「ひゃっひゃっひゃっ、面白くなってきたやんけ」
俺は隣で発言した奴を見る。
ガンバ大阪の城戸文太という男だ。
「得点されたのに何が面白いんですか?」
「自分の番が回ってくるやろが。大海、ワシ、お前がピッチに立てばスペインに簡単には負けんで。いや、勝てると違うんか」
「凄い自信ですね」
「ほら、もう、左サイドバックの永友はんはイッパイになっとるで。昌司がもう少し走るのが速ければな」
「城戸さん、少し言い過ぎと違いますか。みんな、必死に頑張っています」
「ひゃっひゃっ、アマチャンやな。お前はどう思ってるんや?柴咲はお前にパスせんで。そんなんで勝てるか?ワシの方がよっぽど司令塔に向いておるわ」
「俺にはパス要りません。自分でなんとかします」
「そうはいかんな。ワシは優勝するや。しっかりと働いてもらうで」
そこに西島秀人がやって来た。
「城戸、空山、お前達、うるさい。聞こえてるぞ」
「構いませんがな。本当の事さかい。ワシとコイツが出場すれば勝ってみせますよ。まずは前半に一点は返しておきましょか」
「大した自信だな。アップしろ。お前達がただのハタッリ野郎か、見極めてやる」
「どうぞ、お好きに」
俺は別に大口を叩いていないけど、いきなりピッチに立つチャンスを貰えた。
駆、お前の夢を叶えるぞ。
《桐谷里帆》
VIP席から解説を聞きながらピッチを見ていた。
隣には執事の濱本麟太郎がいる。年は三十ぐらいで里帆より少し年上の好青年。
「交代のようですね」
「あっ、隆之介だ」
二人の選手が監督に呼ばれた。
その内の一人が隆之介だ。
里帆は思わず胸の前で手を組んでいた。
駆くん、とうとう隆之介がピッチに立つよ。
《宇垣悠里》
ピッチ横の関係者エリアからスペイン戦を観戦していた。
その時、二人の選手が西島監督に呼ばれている。
一人は空山隆之介だ。
何か期待してテンションが上がる。
日本が劣勢になる事はわかっていたが、ここまで攻められるとは思わなかった。
正直、諦めていた部分がある。
でも、彼なら一矢報いてくれると期待してしまう。
頑張れ、空山隆之介!
《西島秀人》
二人の選手を呼んだ。
城戸と空山だ。
ピッチ内、ベンチの選手達は相手がスペインなら仕方ないと諦めムードがある。
その中で二人だけは馬鹿デカイ声で俺達ならやれると主張している。
この二人にかけてみようと思う。
「お前達、デカイ口を叩いたんだ。好きにやって来い。俺を、いや、世界を驚かせて来い」
城戸は意地悪い笑顔で言う。
「当たり前やろ。ワシはここで活躍してビッグクラブと契約するんや。そして、大金持ちや」
「スペインって、守りは大した事無いですよね。皆、スペインと意識し過ぎです。守ってしまえばどうって事ない」
「言うね、隆之介ちゃん。そこまでわかっているならしっかりと守ってや」
「さあ、行け!」
二人をコートに送り出した。
前半残り十五分。
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