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駆の章
合宿
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《空山隆之介》
日本代表に合流して三日が経過していた。
二日後にはワールドカップ開催地のスペインに移動する。
練習する為にピッチに出ていた。
誰も話しかけて来ない。
レギュラーチームと控えチームでミニゲームを実施している。
そこに俺が呼ばれる事は無かった。
そんな様子を見て里帆は西島秀人に文句を言っているようだ。
そして、プンプンしてこっちに歩いてくる。
「あの監督は最悪だ」
「何を怒っている」
俺はリフティングしながら話を聞いている。
「チームメイトが隆之介を認めない限り練習に参加させないって」
「なるほどな」
里帆がスマートフォンを見る。
「父から電話があった。なんだろ?」
「かけて来いよ」
「そうする」
里帆はグランドから出て行った。
俺はロングシュートの練習を始めた。
味方からのパスは期待出来ないからだ。
《大海信吾》
ミニゲームでの調整を終えてドリンクを飲んでいた。
グランドの隅で空山隆之介がネットに向かって蹴り込んでいた。
距離としては七十メートルぐらいある。
隣にキャプテンの柴咲武志が来た。
男前で女子に人気がある。
噂だと女子アナウンサーと付き合っているらしい。
「柴咲さん、アイツのキック力見て下さいよ。凄いなぁ」
「確かにな」
「こんな状態でワールドカップに入って良いでしょか?」
「良くは無い」
「じゃあ、仲良くやりましょか」
「頭では理解出来ている。だが、感情が上手く処理出来ていない」
「金で代表を買ったという疑惑でしょうか」
「そうだ」
「本人に聞いてみましょうか」
「ああ」
「じゃあ、明日の練習後に話でもしましょうか?」
「やっぱり、辞めておくよ。実力があれば関係ない」
「俺、少し話してきますわ」
大海信吾は他の皆の様に無視したかったが、どうしても気になってしかたない。
我慢できずに隆之介の方へ走っていた。
《西島秀人》
大海信吾が空山の方へ走って行くのが見える。
空山隆之介の実力を見極めが必要だ。
明日の練習で空山隆之介を使ってみようと決意した。
空山について情報がほしい。
連盟から電話がかかってきた。
「もしもし」
《桐谷里帆》
父に電話した。
(里帆か?)
「そうです」
(隆之介くんが日本代表として試合したのか?)
「えっ、どうして知ってるの?」
(この間のガーナ戦での活躍が日本で広がっているよ)
「情報は流れないはず」
(ネットだ。あと、ユーチューブで動画が投稿されている)
「どんな反応?隆之介、バッシングされてる?」
(バッシングなんて無いぞ。どんな選手だとか、救世主だとかもうスター扱いだ)
「えっ、そうなの」
(隆之介くんとサポート契約を結びたい。すぐにアポをとってくれ)
「無理だよ。今はサッカーに集中させたい」
(お前がそう思っていても放っておいてはくれない)
「また、電話する」
(いいか、隆之介くんとは桐谷グループが専属契約を結ぶ)
「またね」
里帆は強引に電話を切った。
駆、隆之介を守って。
日本代表に合流して三日が経過していた。
二日後にはワールドカップ開催地のスペインに移動する。
練習する為にピッチに出ていた。
誰も話しかけて来ない。
レギュラーチームと控えチームでミニゲームを実施している。
そこに俺が呼ばれる事は無かった。
そんな様子を見て里帆は西島秀人に文句を言っているようだ。
そして、プンプンしてこっちに歩いてくる。
「あの監督は最悪だ」
「何を怒っている」
俺はリフティングしながら話を聞いている。
「チームメイトが隆之介を認めない限り練習に参加させないって」
「なるほどな」
里帆がスマートフォンを見る。
「父から電話があった。なんだろ?」
「かけて来いよ」
「そうする」
里帆はグランドから出て行った。
俺はロングシュートの練習を始めた。
味方からのパスは期待出来ないからだ。
《大海信吾》
ミニゲームでの調整を終えてドリンクを飲んでいた。
グランドの隅で空山隆之介がネットに向かって蹴り込んでいた。
距離としては七十メートルぐらいある。
隣にキャプテンの柴咲武志が来た。
男前で女子に人気がある。
噂だと女子アナウンサーと付き合っているらしい。
「柴咲さん、アイツのキック力見て下さいよ。凄いなぁ」
「確かにな」
「こんな状態でワールドカップに入って良いでしょか?」
「良くは無い」
「じゃあ、仲良くやりましょか」
「頭では理解出来ている。だが、感情が上手く処理出来ていない」
「金で代表を買ったという疑惑でしょうか」
「そうだ」
「本人に聞いてみましょうか」
「ああ」
「じゃあ、明日の練習後に話でもしましょうか?」
「やっぱり、辞めておくよ。実力があれば関係ない」
「俺、少し話してきますわ」
大海信吾は他の皆の様に無視したかったが、どうしても気になってしかたない。
我慢できずに隆之介の方へ走っていた。
《西島秀人》
大海信吾が空山の方へ走って行くのが見える。
空山隆之介の実力を見極めが必要だ。
明日の練習で空山隆之介を使ってみようと決意した。
空山について情報がほしい。
連盟から電話がかかってきた。
「もしもし」
《桐谷里帆》
父に電話した。
(里帆か?)
「そうです」
(隆之介くんが日本代表として試合したのか?)
「えっ、どうして知ってるの?」
(この間のガーナ戦での活躍が日本で広がっているよ)
「情報は流れないはず」
(ネットだ。あと、ユーチューブで動画が投稿されている)
「どんな反応?隆之介、バッシングされてる?」
(バッシングなんて無いぞ。どんな選手だとか、救世主だとかもうスター扱いだ)
「えっ、そうなの」
(隆之介くんとサポート契約を結びたい。すぐにアポをとってくれ)
「無理だよ。今はサッカーに集中させたい」
(お前がそう思っていても放っておいてはくれない)
「また、電話する」
(いいか、隆之介くんとは桐谷グループが専属契約を結ぶ)
「またね」
里帆は強引に電話を切った。
駆、隆之介を守って。
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