上 下
4 / 50
駆の章

初試合

しおりを挟む
《空山隆之介》
俺は左サイドバックに入った。
残り十五分。
結果を出さないと終わりだ。
俺のマークはワカソだ。
走るのが速いし、ボールコントロールも素晴らしい。
前を向かした状態でボールを取らせてはいけない。
俺はワカソに密着するのではなく、少し離れてマークした。
ワカソへパスが来る。
俺はダッシュしてボールをカットする。
そして、素早く前線のフォワードの大海信吾へパスを供給した。
大海は前を向いた状態でトラップして一気に前に駆ける。
「カウンターだ。攻めろ!」
中盤も前に詰めて行く。
大海はドリブルで一人をかわして横にボールを流す。
ミッドフィルダーの柴咲がフリーで受け取り、シュート。
キーパーが弾き、敵のディフェンダーがそのまま、ワカソへボールを供給した。
ワカソは一気にトップギアに入れて日本ゴールに攻め寄せてくる。
「日本人はなんてノロマなんだ。楽勝だ」
俺は奴が何を言っているかわかった。
駆けた。
俺も伊達に走り込んじゃいない。
ワカソに追い付く。
「お、お前、俺様について来れるのか」
「いや、追い抜いてボールを取る」
ワカソの足からボールが離れた瞬間に体を入れてボールを奪い、横の味方のディフェンダーにボールを流した。
それを大きく前に蹴りだす。
スタジオから歓声が沸く。
ワカソが俺の方に来る。
「お前、なかなかやるな」
「サンキュー」

日本が再びボールを持つ。
俺は前に上がるが、パスが来ない。
明らかにフリーでチャンスになる場面でもだ。
キャプテンの柴咲に詰め寄った。
「なんでパスをくれないですか」
「なんで大事なボールをお前に預けないといけないんだ。そこまで努力をしてきたのか?信頼関係を築いてきたか?金に物を言わせてその背番号を買ったんだろ」
「わかりました」
ベンチを見ると一人の女性が柴咲に向かって怒っているのが見えた。
あれ? 里帆じゃないか。

とにかく、自分で切り開くしかない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女の危機と何とか彼女を守りたかった僕の話

河内ひつじ
ライト文芸
鈴木恭介と福沢加奈は共に高校2年の17歳、本来、出会う筈の無い2人が11月終わりの連休中、深夜のコインランドリーで出会ってしまった事で2人は前途が困難な状況に2人だけで立ち向かう事になる。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

神の右脚を持つ男

ax
青春
主人公隆はサッカーが大好きだ。 ある日車と衝突して右脚を怪我したのだかその怪我で神の右脚を持つ事になる。

世界の東の端っこのフットボール・チルドレン

遊佐東吾
ライト文芸
鬼島中学サッカー部に所属する榛名暁平は、中学レベルをはるかに超えた天賦の才能を持つセンターバックだ。 家族を交通事故で失った彼と、鉄の結束を誇る仲間たちはただひたすら勝利を求める。たとえ相手がサッカーエリートの集まるクラブユースであろうとも。 サッカーを通してつながっている小さなコミュニティを守るため、センチメンタルでタフな少年少女たちはそれぞれのやり方で必死に戦っていく。

稲穂ゆれる空の向こうに

塵あくた
ライト文芸
転校してきたばかりの少年蒼音(あおと)は、孤独をもて余し過ごしていた。 ある日、偶然にも自分に取り憑く守護霊を召喚してしまう。 その幽霊とも思しき、不思議な童女 茜音(あかね)と出会い、孤独な蒼音は、新しい生活をスタートする。 大人には視えない謎めいた童女と、ひょんなことから一緒に過ごすことになったが、彼女はどこから来た誰なのか? やがて…仲良くなったクラス仲間と共に、蒼音と茜音は想い出に残るひと夏を過ごす。 そして夏の終わり・・・この世に存在する意味を見つけるために行動する。 2人を結ぶ強い絆と、胸が締め付けられる切ない秘密・・・ 子供達にとって、かけがいのない、短くて長い夏。彼らは・・・茜音の過去の真実を求め、一歩を踏み出そうとしていた。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

便箋小町

藤 光一
ライト文芸
この世には、俄かには信じ難いものも存在している。 妖怪、悪魔、都市伝説・・・。 それらを総じて、人々は“オカルト”と呼んでいるが、 そう呼ばない者達も居る。 時に、便箋小町という店を知っているだろうか。 今で云うところの運び屋であるのだが、ただの配達業者ではない。 高校卒業後、十九歳になった垂イサムは、 この便箋小町に入社して3ヶ月になる新入社員。 ただの人間である彼は、飛川コマチ率いるこの店で 俄かには信じ難い不思議な物語の道を歩む事となる。

処理中です...