白衣の騎士

26 副医院長

《伊達善明》
帝都医大の理事会に呼ばれていた。
藤和大寛医院長の隣に閣僚の五嶋伸介が座り、教授たちに向き合う。
「最近の帝都医大の評判は落ち、西都医大の評判が上がるという逆転現象が起きている。だが、帝都医大は我が国最高の医療機関でなければならない。建て直しが必要だ。そこで、西都医大医院長である。伊達さんに帝都医大の副医院長をお願いしたいと思う。反対の方がいれば意見が聞きたい」
藤和大寛がニヤリと笑う。
「閣僚の五嶋さんの推薦なんだ。断れるはずもないでしょう。それも名医と言われた伊達さんを推薦したんだから、期待しかないでしょう」
「賛成していただけたと思っていいですな？」
「その様にとって頂いてかわいません。ただ、成果が出ない時には、それなりの対応を要求しますがね」
五嶋が伊達を見る。
「伊達さん、何かありますか？」
「恐いな、藤和大寛という男は。良いだろう。ただ、私のお願いも聞いてもらってよいかな」
「何なりと」
「私の医療チームを作りたいんだ。この帝都医大を変えるようなチームだ」
「構いませんが、帝都医大には貴方のチームに入れるだけの余裕はない」
「そうか。心臓外科の三流を一名と後は西都から連れてくる」
「わかりました。ご自由に」
全ては伊達善明の思う様に事が進んだ。

《西島翔太》
心臓外科に入院している一人の少年を錦博明という外科医について担当していた。
少年の名前は小田優一という。
心筋が肥大化拡張して血液を送り出す力が弱い。そして、先天性で心壁欠損もある。心臓移植しかないと診断を受けている。
アラームが激しく鳴り響く。
「心停止だ。速く除細動器を持ってこい」
俺はすぐに準備して手渡す。
何度かのアタックで心拍は再開。
「もう、次は駄目かもしれない。それどころか移植すら難しい」
額の汗を拭う錦博明。
少年は特撮ヒーローに憧れている普通の少年だ。
俺はこの子を助けたい。でも、今のままでは何も出来ない。
急げよ、伊達善明さんよ。