四人の勇者

福澤賢二郎

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旅立つ勇者

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《ブラウン.シルヒィード》
第四国の王であるアーリス.バーンは城の最上階から戦いを眺めていた。
隣には将軍最年長のシルヒィード卿がいる。
王が戦場から撤退を始めた軍を見て言った。
「我が国の勇者はとてつもない強さになって帰ってきた」
「王位を譲るおつもりですか?」
「シルヒィードよ、時期がきたのじゃ」
「よくお考え下さい。アヤツは魔物を操っていました。そんな奴が勇者でしょうか」
「どいう事だ?」
「正体は魔人ではないでしょうか。普通、魔物を操るなんてあり得ません」
「よく聞いてみよう」
「お待ちください。城に入れて良いのでしょうか?」
「何が言いたい」
「城に入れたが最後。魔物ではあれば大きな被害をもたらします。もし、仮に勇者であったのであれば、過去にあの者を幽閉して拷問した事を水に流すでしょうか。いや、無理でしょう。一族皆殺しです」
「罪を償うか」
「いえ、殺してしまいましょう。そうすれば第四国も王も助かります」
「国民の為か?」
「そうです。あの者は四国を放り出して逃げ出した。もはや勇者では無い」
「わかった。そなたがそこまで言うのであれば、その通りにしよう」
「有り難う御座います」
「まずは戻ってくる将軍と兵を労おう」
王は振り向き、この部屋を出て行った。

残されたのはシルヒィード卿のみ。
部屋の隅にある影から声が聞こえる。
「良くやった。シルヒィード卿よ。我が主も喜ぶであろう」
「有り難う御座います。主を信じております」
「伝えておこう」

シルヒィードは影に向かって深く長く礼をした。

《天野翼》
アリスともに馬に乗り、城門まで来た。
城門は閉ざされたまま、全軍が待ちぼうけを食らっていた。
「どうしたんだろう?」
「もう、暫くすれば開きましょう。それより、ホクトをお返ししなくてはと思っているんですが」
「ホクトとアリスは死線を何度も一緒に切り抜けてきたはず。もう、アリスの相棒だよ」
「有り難う御座います」
本当に嬉しそうに微笑む。
隣でファンがニコニコしている。
小さな声でファンに訊ねた。
「何か良い事あった?」
(私はツバサと一緒に死線を越えてきた。私はツバサのパートナーだね)
「う~ん、そうだな」
ファンが笑顔で僕の前に座る。
密着して僕の心臓がドキドキしている。
(私かアリスを選ぶ時が近づいている)
「えっ?」
(城壁の上に誰か来た)
見上げるとアーリス.バーンと銀髪の男が現れた。

誰だ?
何か変な力を感じる。



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