四人の勇者

福澤賢二郎

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第一領の勇者

21.別れ

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《天野翼》
僕は今にも倒れそうなイグニン王のそばに行き、抱き抱える。
「酷い有り様だ」
周りは斬り倒された兵士で埋め尽くされている。
「そうですね」
イグニン王の直属の兵士が来て僕と入れ替わってイグニン王を支える。
「これを返します」
聖剣をイグニン王に差し出した。
「それは既にアマノ殿のものだ。持っていくが良い」
「えっ、ありがとうございます」
「一年後、そなたが真の王になっている事を願う」
僕は会釈して斬り倒されたている兵士の中を歩いて王の間を出た。

僕は中庭で立ち止まった。
ファンが俺の脇を歩く。
「なあ、ファン」
(なに?)
「また、期待されたのかな」
(そうみたいだね)
「僕は強くならないといけない」
(このままじゃ、殺されるね。間違いない)
「強くなりたい」
(じゃあ、修行に行く?)
「行く」
(厳しいよ)
「頼む」
(アリスやサイラスは連れて行けないよ)
「わかった」
(じゃあ、行こう)

城の外に出てアリス達と合流して、城の中で起きた事を説明した。
アリスは心配そうに僕を見る。
「ツバサ様は一年後に戦うのですか?」
「そのつもりだよ」
「殺されてしまいます。やめましょう。このまま、私と旅をしましょう」
アリスが泣いている。
初めてみる。
僕はアリスの頭を優しく撫でる。
「やらなくちゃ」
「別にツバサ様じゃなくても」
「僕じゃなきゃ駄目だよ」
「あんなに酷い扱いをされたのに」
「そうだよ」
「わかりました。私も戦います」
「ありがとう。もう一つ話がある」
「何でしょうか?」
「アリスとサイラスはホクトを連れて第四領に戻ってくれ。そこで、軍の増強をお願いしたい」
「ツバサ様は?」
「僕は強くなるため、修行してくる」
「私も行きます」
「駄目だ。アリスに甘えてしまう」
「そ、そんな」
「必ず戻る」
「何度、お願いしても駄目なんですね」
「そうだ」
アリスは振り向いて背を向ける。
「私も強くなります。一年後、おまちしております」
声が震えている。
「ああ、待っていろ」
「はい。行きますよ。サイラス」

アリスとサイラス、そしてホクトは歩きだした。
ごめん。

僕は北の山を目指して走りだした。
まずは誰にも負けない肉体を造りあげるぞ。
(ファイト!)
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