白い獣

試合開始

《僕》
良く知らない女性シンガーの音楽でリングに上がった。
まばらな拍手の中に先日助けた女性の姿が見えた。
目が合うと会釈され、右手をあげて応えてしまった。
リングサイドで凛が話かけてきた。
「だれ？」
「知らない」
「じゃあ、何で手を上げてんの！」

突然、稲妻の音が響き、海上を包んだ。
続いてラテン系の音楽が流れだす。
リズム乗りながら生田慎一が登場。
凛が話しかけてくる。
「私、嫌い。あんなチャラチャラ男」
「僕はどう？」
「バカと違う。これから試合なんよ」
「そうだな」
テレビが入っているだけに少し派手な演出だ。

リング中央に集められる。
生田がギラギラしている。
「もうすぐ、お前を殴り倒せる。我慢できねぇ」
「あんた、悪魔に取りつかれているな」
「な、なに！」
「僕が引き剥がしてやるから」
「な、な、な」
生田の背後に黒い影が見えた。
(はははははは、俺様が見えるのかい。それは良い。これからお前は恐怖のどん底に落ちるのさ)
(特別なのはお前だけじゃない)
僕の背後にアシュリンが現れた。
(な、なに！キサマは何者だ？)
(お前にとっては死神かな)
「でも、戦うのは僕達だ。生田慎一さん」
「そうだ。殺してやるぜ！」
それぞれのリングサイドに戻った。
振り替える。
生田慎一がニヤリと笑いながらこっちを見ている。
まるで獲物をみるかの様に。

ゴングが鳴る。