真夜中の白魔術師

福澤賢二郎

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KARTE 4:紀平咲希

調査

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《白石真依》
朝起きて、好きな人の為に朝食を作る。
そして、一緒に食べる。
こんな幸せがあるなんて想像出来なかった。
小さい時からいつも一人だったから。
「どうした?」
「なんでも無い。少し幸せ過ぎて」
「何を言ってるんだよ」
「紀平咲希ちゃんだっけ、退院出来て良かった」
「本当だね」
「諦めなければ治る」
「真依さん、何か心配ごとがあるの?」
「無いよ」
笑って誤魔化す。
今の生活を壊したく無い。
「あっ、ヤバイ時間が無い」
拓哉は掻き込むように残りのパンを詰め込み、玄関に向かう。
「行ってきます」
「いってらっしゃい」
玄関で手を振り、送り出す。
まるで、新婚さんの奥さんみたい。
ピアノを引く自分以外で好きな自分が出来るなんて思ってもいなかった。
真依は赤城拓哉を愛していた。
彼に抱かれたい。
死ぬ時はあの人の腕の中で死にたい。

《赤城拓哉》
藤堂さんよ、残酷だぜ。
抱きたくて抱きたくて仕方ない。
俺は白石真依をどんどん好きになっていく。
でも、藤堂から止められていた。
もし、白石真依に手を出せば、俺は鈴木組から殺される。

内科の職員室に入ってデータベースで白石真依の名前を探す。
どんなに探しても名前は無い。
杉田に頼んで外科のデータベースを探してもらったが、そこにも無い。
いったい、何の病気なんだ?

俺はどうしても白石真依を救いたくて、焦っていた。
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