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ジュウ・ 反撃の時間

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「……何、それで終わりなの?」
 目の前に現れた闇の壁。三重になり、光を通さない厚い壁に、倉持は目を見開いていた。
 俺は少し笑って
「タイミング、見計らってたろ…」
 そういつた。
 そいつは少し肩を上げて、こちらに振り向き、 
「まあ、ね。あんた達がどう戦うか気になったし………で、もう終わり?」
 そう聞いてくる。そんなそいつに、俺は笑った。
「はっ、諦めの時間は終わりだ……力を貸してくれよ、黄守、天使さんよォ!」
 一ノ瀬は目を見開いたまま固まっている。
 そいつは、黄守は、そう来なくっちゃと言わんばかりに、俺に好戦的な目を向けてきた。
「へぇ…もしかして、落ちた学年首席様ってあなた…?」
「…貴方が、Aクラス代表、倉持望さんね…」
「遅かったですね。そして、残念でしたね…鍛錬を積んでいなかった貴方と違い、私達はずっと鍛錬を積んできた!」
「光属性…同士討ちは可能だけど…まァ、一分あれば殲滅できるか…」
 その時、俺は見た。黄守の瞳が、黒から紫に染ったのを。
「黄守…話、聞いてやれよ…なんか言ってるぞ…」
「反応する時間が無駄だから………力、貸してよ。あんまり疲れるの嫌いだからさ………《リンク》」
 その時、艶やかに染った俺らの目。傷は癒え、活気が湧いてくる。
「天使様……少しの力を出すことを、お許しください…」
 彼女の膝が大きく曲がり、前かがみの体勢になった。
 そう思った時には、彼女はもうそこにないなかった。
「倉持さんは私が貰い受けるから、薮さんに二人回して、それ以外各自撃破で」
 頭に流れる声にビビりながらも、俺はニヤリと口角を上げた。
 チートだよ、あいつの存在は。
「速瀬は橋本、国木田は秋山、俺と一ノ瀬は薮を相手にしろ!」
「ちょ、なんで傷が………そもそもあの人誰?」
「話は後だ! さっさと決着つけるぞ!」
 俺と一ノ瀬は、薮の元へ火力増加を使って向かった。





「改めまして宜しく、倉持望さん」
「宜しくね、黄守尊さん」
 会場空中。 
 観客の目は釘付けだ。
 方や、現学年最強の肩書きを持つAクラス代表の光属性。
 方や、突然現れた謎のEクラス側の味方の闇属性。
 光と闇、チートとも呼ばれるその魔法どうしの対決が、生で見れるのだ。
『え~、速報です! Eクラスの欠けていた最後の選手が揃いました。Eクラスチーム、選手が揃いました。事前に決めたルールに則り、彼女の参加を許可します。
 Eクラス、黄守尊さんの参加を許可します!』
 橙子の声が響く。
「入学式にすら来なかった謎に包まれた生徒…」
「元々、入学したくて入ったわけじゃないから。監視するため、汚い大人がこの学園を利用しようとしただけ」
 本来魔法は空中にはうけない。常に地面に魔力をぶつけている倉持。
 魔力を枯渇させようという算段の黄守。
「汚い戦法」
「楽な方法がいいの。別に、勝てればなんでもいいから」
 幼い頃に学んだこと。何があっても強く、時には汚く生きなければならない。自分の、確実なる勝利の為ならば。
「…天元せよ」
「…降臨せよ」
 少女達は巨大な魔法陣を作り出す。数多の偉人を見てきた教員さえも、目を見開く。
「邪悪を打ち砕く 煌々と輝く美しき光」
「偽善を叩きのめす 延々たる常闇」
 互いの瞳が染まり、現れたのは巨大な魔力の塊
「邪を消し去る後輪の天使 女神 その使い子達よ」
「偽を滅殺する魔界の戦士 鬼神 地獄の使い魔達よ」
 互いに描いた魔方陣には、ぴきぴきと卑劣の入る扉が洗われ、それは、美しい光を放っていて、間の毒素を含んでいた。
「大天使・ラファエルの加護の元!」
 倉持が先に詠唱を唱えおえ、彼女はほくそ笑む。
 光と闇の力の差は微々たるもの。先に魔法を繰り出した方が無傷で終わる。
 だが、黄守の無表情は、変わらなかった。
「来て、アザゼル様」
 そして、魔の常闇が、空間に漂い始める。
 観客はざわめき、一部は非難を考える程に、魔力は膨大にして危険。死を表すような、危険な香り。
「っ───! 光の絶険ホーリー・ソード
「死神の大鎌…」
 倉持が手に取ったのは光り輝く、天使の剣。
 黄守が手に取ったのは、人の命を刈り取る、死神の鎌。
「狩れ」
「貫け!」
 光と闇が、ぶつかった。
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