上 下
44 / 47
シルクロード編

21 旅の終わり

しおりを挟む
 「では、最後の勝負のアテナちゃんとナースチャの対決です。
 題目は…『ガチ勝負』です♪」

 なにーー?!!!ここに来てガチ勝負ですか?!!

 アテナさんは嬉しそうににやりと笑い、ナースチャも本当に嬉しそうに笑っており、やる気満々です!!

 試合開始前に、なんと、アテナさんが仮面を外しました!!
 美人です!!ものすごく『男前系の美人』です!!
 アルテアさんよりさらに明るい銀に近い金色のウェーブのかかったセミロングの髪がゆらせながら歩く様はモデルのような感じですが、特徴は圧倒的な目力めぢからです!!ナースチャや『無敵のシードラゴン』瀬利亜さんをしのぐのではないというくらい目が強い光を放っており、さらに高い知性を感じさせます。

 「異世界への二回の旅はナースチャを大きく成長させてくれたようですね。どのくらい強くなったのか楽しみですよ。」
 「間違いなく、今までの戦いの中で最強の相手ですし、…正直勝てる自信はありませんが…だからこそ、やりがいがあります!!」
 二人は闘志満々で互いに向かい合うと、ナースチャが一気に動きます!!
 突っこんでいったナースチャは……アテナさんに触れるか触れないかのうちに後方に大きく吹っ飛ばされます!!

 「ナースチャ殿ですら勝負にならんとは…あの女性は一体何者なのだ?!」
 いつの間にか僕たちの近くに来ていたマッスル三蔵さんが愕然とつぶやく。
「ナースチャの守護神で戦神のアテナさんが相手ですからね…。いかにナースチャと言えどこの勝負は厳しいです。」
 カイザスさんが珍しくシリアスな顔をしている。
 「なに?!それでは我々がここで相手をしているのは…?」
 「おそらくお釈迦様に依頼されて我々を試験するためにいる神々や英雄たちですね。」
 「なんと…そうであったのか…。」
 えーと、アテナ神、ニャントロ神やアルテアさんはまだわかるのですが、どうしてうちの妹の美佐も入っているのでしょうか?

 背中から大きく倒れ込んだナースチャはしかし、すぐに起き上がると身構えます。
 勝ち目が薄いとわかっていても目が闘志でらんらんと輝いています。
それを見てアテナさんはにっこりと笑います。

「さすがナースチャ。あなたの勇気と精神力と思いやる力は本当に素晴らしいです。でも、今のままでは勝ち目がないですね。
 そこで、少し『祝福』を施しましょう。巧人君、受け取りなさい!」
 ええ?!!僕ですか?

 アテナさんが右手をひらひらさせると僕の体が金色の光に包まれた。
 なんだか全身にすごく力があふれている気がするのですが?!!

 「巧人君!自分を鑑定してみなさい!」

 アテナさんに言われて自分を鑑定してみると…。

水守 巧人 17歳 人間 男 具現士
レベル:111
スキル:日本語(LV6)英語(LV3)日本史(LV7) 料理(LV6) 家事(LV5)
    剣技(LV4)乗馬(LV3)
魔法: 情報(LV40) 武器具現化(LV55) 防具具現化(LV55) 回復(LV33)
称号 異世界召喚勇者 三蔵法師一行
善良度:☆☆☆☆☆☆☆ (通常は最低☆~最高は☆☆☆☆☆)
特記事項  現在『恋愛中』 対象:アナスタシア 愛の深さ:LV18

 レベルと能力がものすごく上がってるんですが??!!!
 特に魔法の能力が激上がりです!!


 「あら、そんなにビックリするほどのことじゃないわ。あなたの潜在能力は非常に高いのだから。
 ただ、『みんなの平穏な日常を守りたい』という思いが強すぎて無意識に『自分の能力の発現』にブロックをかけていただけなの。
 今回はあなたの旅での経験に見合っただけブロックを解除してみたわ。
 もう『ナースチャと結ばれる』肚を固めてしまったのだから『平穏な日常』は絶対に来ないから。
 あきらめて『波瀾万丈だけど、みんなと一緒に幸せな人生』を選択しちゃいなさい!」

 確かに、アテナさんのおっしゃる通りだよね。
 僕の周りの人達は『善良だけど人間離れした人達』ばかりだもんね。

 「巧人!!不死の騎士の武装をイメージして!!」
 ナースチャが僕の方を信頼する視線で見ながら叫ぶ。

 僕が以前見た『不死の騎士』のイメージをナースチャに投影すると、ナースチャを目を開けていられないくらいの輝く閃光が包み込んだ。

 光が次第に薄れていき、顔面が少し見える西洋風の黄金色に輝ける甲冑と長大な剣を構えるナースチャが姿を現した。
 背中には金属製の金色の翼を纏っており、地上から数十センチのところに浮かび上がっていた。以前顕現した不死の騎士をちゃんと再現している!!

 「へえ。姉妹で作る不死の騎士ほどではないけれど、ちゃんと不死に騎士になっているね。今度から三人でやれば、さらに強くなってくれそうだね♪
 さてと、不死の騎士を相手にするのであれば、私も少し本気を出さないと失礼だね!」
 アテナさんはが心の底から嬉しそうに笑うと全身にまとった気が膨れ上がった。
 体が一瞬金色の閃光に包まれた後、金色に輝くギリシャ風の鎧、顔の見える兜をかぶったアテナさんは剣を構えて嬉しそうにナースチャを見つめている。
 その目は敵を見る目ではなく、妹を見るような優しいまなざしだ。

 ナースチャも同じく強い視線でアテナさんを見ているが、やはりお姉さんを見るような目で見ている。師弟戦のようなものなのだね。
 ナースチャはニッと笑うと宙に浮かんだまま、アテナさんに猛スピードで斬りかかっていった!!
 アテナさんはナースチャの剣筋を躱しつつ、持っている剣で攻撃をうまく受け流している。
 それに対し、ナースチャは続けざまの剣戟を放ち続ける。
 断続的にナースチャが猛攻撃を続けているので、一見ナースチャが有利に見えるのだが、アテナさんの表情にはまだ余裕が見え、オーラも安定しているようだ。

 「巧人君も能力が上がって、状況がはっきり見えだしたのね。」
 いつの間にかアルテアさんが僕の隣で試合を観戦していた。

 「ナースチャも善戦しているけれど、相手が悪すぎるわよね…。フルスロットルのアテナちゃんはあの『レジウス』とも一対一で戦えるかもしれないくらい強いからね。」
 「え?それじゃあ、アテナさんが地上に出てくれれば『世界を征服』に来たそのレジウスの相手もできたのでは?」
 「それがね。通常はアテナちゃんクラスの神や神霊は人間に転生しないと地上に降臨するのは厳禁なの。
 ここは神霊が日常的に動く特殊な世界だから、こうやって出てきているけどね。」

 しばし、激戦が続いていたが、アテナさんの持っていた剣が凄まじい光を放って、アテナさんが反撃に転じた!

 アテナさんが斬りつけると、ナースチャに強烈な光の塊が飛び出していった。
 ナースチャはそれを剣で受け止めるが、勢いを相殺しきれず、そのまま後方へ吹っ飛ばされてしまう!
 「ナースチャ!!」
 吹き飛ばされたナースチャは鎧が大きく砕け、すぐには立ち上がれそうにない。
 「くっ!剣から強烈なエネルギー弾を出したのだな?!」
 マッスル三蔵さんが渋い顔をしている。

 僕が慌ててナースチャに駆け寄ろうとすると、ナースチャは僕を左手で制して何とか立ち上がった。
 かなりダメージを受けているようだけど、目は強烈な光を放っている。あれだけやられても全然勝負をあきらめていない!

 「すごいなあナースチャ。やり合ってみて実力差はわかっていながら、全然心が折れていないことがすごいね。」
 「ええ、単に強い相手とやり合いたいんじゃないんです。巧人が思いを込めて作ってくれた武器と防具を身に付けて簡単に負けるわけにはいきませんから。」
 ナースチャがちらっと僕に笑いかけてくれた後、再びアテナさんに向き合う。

 「だから!最後まで倒れない!!」
 ナースチャが気合いを込めると『精霊剣』が強大な光を放ち始めた。
 アテナさんもそれを嬉しそうに眺めながら剣がさらに強烈な光を放ちだした。

 走り寄った二人は再び剣を合わせ……ナースチャが吹っ飛んでいった。

 …スローモーションのようにナースチャが地面にたたきつけられる…。
 時間が止まったように感じる中、僕は必死でナースチャに駆け寄っていく。

 「…ごめん、負けちゃった…。せっかく巧人がせいいっぱい最高の装備を出してくれたのに…。」
 「そんなことはいいから!!無事なだけでいいから!!」
 僕はナースチャに懸命に『回復』の魔法を掛ける。

 「ナースチャ、やってくれたね♪」
 アテナさんがなぜか苦笑いしている。
 !!!!アテナさんの剣がパキーン!!と音を立てて砕け散った!!

 「愛用の剣を砕かれるなんて、ほんと、やられたよ♪ここまでやられるとはさすがに想定外だね。アルテア、『また』剣を作ってくれるかい?」
 「了解しました♪今度はもう少し丈夫な方がいいよね♪」
 アテナさんとアルテアさんのやり取りを聞いて、僕もナースチャも固まってしまった。
 アルテアさんて何者なの?!!


 「しかし、本当にいい戦いだった!こんな感動させられる戦いは初めてだ!!」
 「まったくです!ニャントロ神!我々も見習わねば!!」
カイザスさんもニャントロさんも『さっきのしりとり』のことを完全に忘れてますよね??!!


 「これで全ての戦いは終わったかな?結果発表と行こうじゃないか!」
 低い、落ち着いた男性の声にみんなが振り返ると、中肉中背の壮年の修行僧のような人が笑いながら歩いてきた。
 この人は一体?!

 「あら、ようやく『ゴータマ』ちゃんのお出ましなのね?」
 アルテアさん、ゴータマちゃんて……『お釈迦様』じゃん???!!!

 「皆さん、本当に長旅お疲れ様。特に異世界召喚組の皆様は本当に大変でしたね。巻き込んでしまったことを深くお詫びします。
 そんな大変な旅をよくぞ『成満』されたことを祝福させていただきたい。
 それでは…。」

 お釈迦様は一旦口を閉じ、みんなをゆっくりと見回す。
 …果たしてどんな結末が僕たちを待ち受けているのでしょうか?!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全部未遂に終わって、王太子殿下がけちょんけちょんに叱られていますわ。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられそうだった女性が、目の前でけちょんけちょんに叱られる婚約者を見つめているだけのお話です。 国王陛下は主人公の婚約者である実の息子をけちょんけちょんに叱ります。主人公の婚約者は相応の対応をされます。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】結婚してから三年…私は使用人扱いされました。

仰木 あん
恋愛
子爵令嬢のジュリエッタ。 彼女には兄弟がおらず、伯爵家の次男、アルフレッドと結婚して幸せに暮らしていた。 しかし、結婚から二年して、ジュリエッタの父、オリビエが亡くなると、アルフレッドは段々と本性を表して、浮気を繰り返すようになる…… そんなところから始まるお話。 フィクションです。

森に捨てられた俺、転生特典【重力】で世界最強~森を出て自由に世界を旅しよう! 貴族とか王族とか絡んでくるけど暴力、脅しで解決です!~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 事故で死んで異世界に転生した。 十年後に親によって俺、テオは奴隷商に売られた。  三年後、奴隷商で売れ残った俺は廃棄処分と称されて魔物がひしめく『魔の森』に捨てられてしまう。  強力な魔物が日夜縄張り争いをする中、俺も生き抜くために神様から貰った転生特典の【重力】を使って魔物を倒してレベルを上げる日々。  そして五年後、ラスボスらしき美女、エイシアスを仲間にして、レベルがカンスト俺たちは森を出ることに。  色々と不幸に遇った主人公が、自由気ままに世界を旅して貴族とか王族とか絡んでくるが暴力と脅しで解決してしまう! 「自由ってのは、力で手に入れるものだろ? だから俺は遠慮しない」  運命に裏切られた少年が、暴力と脅迫で世界をねじ伏せる! 不遇から始まる、最強無双の異世界冒険譚! ◇9/25 HOTランキング(男性向け)1位 ◇9/26 ファンタジー4位 ◇月間ファンタジー30位

【完結】ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。

克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

処理中です...