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大江戸編
21 帰還
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気が付くと、僕は下校中の道路にひっくり返っていた。
慌ててスマホで日付と時間を確認すると、校門を出てから15分しか経っていなかった。
あれは全て夢だったのか?!
僕は慌てて家まで走って帰った。
「おかえりー♪あれ、お兄ちゃん、どうしたの?
すごく落ち込んだ顔をしているけど、なにかあったの?」
帰宅すると、先に帰っていた美佐が出迎えてくれた。
僕の表情を見て、心配そうな顔をしている。
…僕は今、どんな表情をしているのだろう…。
「いや、大丈夫。何もないよ。」
なんとか笑顔を作る。
「…そうなの?お兄ちゃん、なんでも一人で抱え込んじゃうから…。
なにかあったら言ってね。これでも、少しは役に立つんだよ。」
一生懸命美佐が僕の顔を覗き込んでくれる。
そう、美佐は三つ年下で現在中学二年生だ。
素直で明るく、少々ドジで…そしてとても優しい。
おっとりとした真面目な父と、しっかり者で元気な母とともに僕の大切な大切な家族だ。
だから、伴天連と戦いながらも、かならず元の世界に帰ろうと思っていた。
…でも、今の僕の心は大きく穴が開いている。
それでも……久しぶりに美佐の笑顔を見れたことはやはりうれしかった。
大切な家族との優しい夕食の時間は、かなり僕の心を癒してくれた。
四人で笑いながら食べる夕食はこんなにも貴重な時間だったのだとあらためて感じさせてくれた。
美佐が学校以外でもできた友達達のことを嬉しそうに語っている。
『サークル』で年上の女の子たちと仲良くなったらしい。
何人かは僕と同じ風流院高校に通っているらしい。
「あら、巧人。同じ高校なら『彼女』候補として紹介してもらったら?」
母がニコニコしながら僕に話を振ってくる。
「何人かは彼氏持ちさんだけど、お兄ちゃんや私同様お一人さんもいるみたいだよ。
こんど聞いておこうか?」
「…そうだね。ありがとう。」
気持ちだけ受け取りながら僕は返事をする。
美佐がこんなに嬉しそうに言うのであれば、きっと素敵な娘達に違いない。
…でも、全然乗り気にならない。
『あの人達』と出会ったことは本当に夢だったのだろうか?
夕食後しばらく勉強をしていたが、今日は全然気分が乗らなかった。
大切な人たちと別れの言葉を交わす暇もなく戻されたような気分がして、ものすごくイラついた。
あのきれいな女性に思い切り文句を言ってやりたい気分になった。
…でも、あの女性と会っていなかったら…僕たちは全滅していたはずだ。
もちろん、あの出来事が夢の中でなかったらの話だが…。
お風呂に入ろうとして、右手に『例の腕輪』がはまったままなのに気付いた!!
今までのことは夢じゃなかったんだ!!
全身から血の気が引いた。
風呂から上がると、必死でネットでいろいろ探った。
まず、ナースチャの仲間がブログをやっているという話を思い出したので、それを探すとあっさり『あるモンスターバスターの日記』というブログを見つけた。
ナースチャにつながるものがないかと必死で読み込んだ。
カイザスさんの話にあった通り、『海の大怪獣ゴメラが暴れたり、逃げ出す写真を記事にしてアップ』してありました…。
ブログでは地球防衛軍が撃退したことになってるけれど、実際は『書いた当人が殴り倒して、ゴメラが泣いて逃げて帰った』と…。
全部読み終えた時、残念ながらナースチャとカイザスさんの話は出てこなかったけど、二人に少しでもつながったような気がして、なんだかうれしかった。
そして…ロシアのモンスターバスターが『怪獣を百匹倒す映像』は動画サイトにアップされていた。
残念ながら全然識別はできなかったものの『ロシアの英雄・世界最強のモンスターバスターの一角・パザロヴァ姉妹の活躍!』とか解説に書いてあったのを見た時はすごくうれしかった。
ナースチャやカイザスさんはこの世界にいてくれるんだ!
…でも、どうやって会うというのだ?
それに…パラレルワールドの世界の二人に会っただけなのでは?
それに気づくととても苦しくなっていった。
そうだ!鑑定を使えば、わかるんじゃないか?!僕と二人が同じ世界の住人かどうかが!そして、まず自分自身を鑑定しようとし……なにも起こらなかった。
いつもだったら自分の能力がはっきり頭に浮かんでくるのに…何も浮かばない…。
右手にはあの日もらった腕輪はあるというのに…。あの世界でしか鑑定は使えないのだろうか…。
~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~
翌日、登校したが、いつもの学校の日常だった。
皇も僕の顔を見ても特に何の反応も示さなかった。
明らかに向こうでの記憶がない…。
これではあの皇がパラレルワールドの住人なのか、『まだ行っていない』のかもはっきりとは分からない。
三日間いつも通りの日常が過ぎた。
日曜日になり、昼前から僕は気分転換に街をぶらぶらしていた。
ネットで一生懸命モンスターバスターについて調べたけれど…全然ナースチャ達に近づいている気がしなかった。
大通りに差し掛かった時、不意に見覚えのある女性の顔が視界に入った!
毎日見慣れたあの優しい黒髪の笑顔!ナースチャに間違いない!
どうしてだか知らないけど、ナースチャがこの町にいる!!
僕は走った!
その女性を追いかけて走った。
そして、女性が曲がり角を曲がった時、僕はさらにその後を追いかけて…曲がりきれずに転んだ。
「大丈夫ですか?」
聞きなれた女性の声が心配そうに僕の方にかかる。
「いえ、大丈夫です。」
僕が立ち上がろうとすると、女性が僕に手を差し伸べた。
「お兄さん。お怪我はないようですね。気を付けてくださいね。」
女性…ナースチャはにっこり笑って僕の手を引っ張ってくれた。
ああ、間違いない!ナースチャだ!でも…僕のことを全く知らない!!
立ち去っていくナースチャを僕は呆然としながら見送った。
「あれ、美佐帰るの遅くない?」
夕食の時間になっても戻らないので、少し心配になって母に言う。
「さっき、美佐からもうすぐ帰るって連絡があったわ。大丈夫よ♪」
料理しながら母が笑う。
母の言葉の通り、美佐が帰ってきた。
鼻歌を歌いながらすごくうれしそうだ。
…友達達と大事な時間が過ごせたのだな…。
寒々としそうになっていた僕の心がなんだか温かくなった。
「どうしたの?美佐。なんだかうれしそうだけど…。」
「ふふふ、それがね♪」
『臨時ニュースです。今日13時半ごろ、洋菓子店『マジック』に強盗が入るという事件が起こりました。』
「な、なんだってーー?!!」
テレビのニュースで近所のお店、それも美佐がよく行くお店のとんでもないニュースが入って、僕は仰天して立ち上がった。
「お兄ちゃん、大丈夫だよ。五月雨さんも月野さんも無事だから。
犯人はまだ見つかっていないけど、瀬利…業者さんがすぐ手配してくれたから、ガラスとかもすぐ代わりが入って、明日には営業再開できるんだって。よかったね。」
「美佐、やけにくわしいな?!」
「うん、ちょうどその時…より少し後に現場に行ったから、五月雨さん達から詳しい状況を聞いているの。」
「そうか、不幸中の幸いというところだね。…ところで、嬉しいニュースはなにがあったのかい?」
「それがね…。」
美佐は言いかけて少し息を吸う。
「五月雨さん、その事件で月野さんの大切さがわかって、『プロポーズ』してね、なんと、あっさり結婚が決まったんだって♪」
「…そうか、大変なことがあったからこそ、日常の大切さに気付かれたんだね。」
「そういうこと♪ふっふっふ、私もあんな素敵な恋愛をするんだ♪」
美佐は友達の恋愛だというのに本当に嬉しそうだ。
そうだね。確かに「異世界の体験」があったればこそ、僕にとって家族の大切さを再確認したんだ。まずは目の前の家族との時間を大切にしよう!
確かにあのナースチャとはもう会えないのかもしれない。でも、ナースチャ達にはとても大切な物をもらったのだ。いつまでもうじうじしていても仕方がない。
日常をもっとしっかり生きないと!
~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~
翌朝、すごく目覚めがよかった。
心身ともにとてもすがすがしい。
よし、今日からいろんなことに頑張るぞ!
そして、日本史の教師になる夢をかなえるぞ!
「おはよう、お兄ちゃん♪」
リビングに行くと先に来ていた美佐がにっこりとほほ笑んでいる。
「おはよう、美佐♪」
僕もにっこりと笑ってあいさつをする。
美佐を見ていると……なぜか鑑定が発動する。
水守美佐 14歳 人間 女
魔法少女
レベル:85
スキル:攻撃魔法(LV20) 回復魔法(LV25) 料理(LV3) 家事(LV2) 他
装備: 変身用スマホ
称号 魔法少女第1号 愛の魔法少女 女王の解放者
善良度:☆☆☆☆☆☆☆☆
はいーーー??!!なんの冗談ですか!!!
そんなでたらめな現実があるわけないでしょ?!
「お兄ちゃん、どうしたの?」
美佐が不思議そうな顔で僕を見ている。
「…なんでもない、なんでもないから!」
慌ててごまかして、一息つく。
そして、父と母を鑑定するが…二人とも会社員と、パート社員 兼 主婦だった。
ふう、一安心。
そして、もう一度美佐を鑑定…何度鑑定しても魔法少女だ…。
いきなりなんでこんなバグがあるんだろう…。
いざ登校しようとすると、玄関でチャイムが鳴っている。
「美佐ちゃん、迎えに来たよ♪」
「わーい、瀬利亜さんだ♪」
美佐が鞄を持って玄関に駆けていく。
上級生が来たのかなと思ってみると…うちの学校の制服を着た、しかも銀髪の美女なんですが…。
「さあ、途中まで一緒に行こう!」
「おう!」
姉妹がじゃれるような雰囲気ですごく仲がよさそうだ。
美佐のご機嫌の原因はこの人なのだなと…なんだかうれしくなる。
「あ、お兄ちゃん、瀬利亜さんは彼氏持ちだからダメだよ。」
「あら、お兄さんおはようございます。同じ高校なのですね♪」
銀髪の美女はにっこり笑って僕に挨拶をしてくれる。
同時に結果的に鑑定してしまう。
石川瀬利亜 17歳 人間 女
モンスターバスター&スーパーヒロイン
レベル:777
スキル:古武術(LV333) 拳銃(二丁)(LV222) 料理(LV12) 家事(LV10) 他
装備: 変身用スマホ
称号 無敵のシードラゴン ゴメラキラー モンスターバスター一〇星 レジウス撃退
鉄拳の魔法少女 女王の解放者
善良度:☆☆☆☆☆☆☆☆
特記事項 ※シードラゴンモードになると、素早さ、気の扱い、精神力が大幅に上がり、総合戦闘能力が大きく上がる。
さっきより鑑定が大きく『悪化』してるんですが!?
妹が魔法少女でその友達がモンスターバスターとか、どんなでたらめな日常なの?!
美佐と瀬利亜さんは手をつないで仲良く家を出ていった。
…いやあ、何の変哲もない日常は素晴らしい…。
『鑑定さん』、ちゃんとしてくださいよ!!
少々疲れて登校すると、始業開始ギリギリになっていた。
慌てて席に着くと…皇が僕を見て、微妙な表情をしている。
なにかあったのだろうか?
担任の山縣先生がニコニコしながら入ってきた。30半ばのベテラン現国の教師で、教え方がうまく、生徒達にも好かれている。
「今日は急な話だが、転入生だ。留学生だからみんな、仲良くしてあげるように」
金曜日にはそんな話は全然なかったので、みんなどんな生徒が来るのか興味津々でざわついている。
そして、入ってきた女生徒を見て…えええええええ!!!
僕は自分の目を疑った。
ナースチャがブレザーを着ているんですが?!
ナースチャはニコニコしながら教室を見回すと、僕を見つけてそれはそれは嬉しそうに笑ってくれた。
名前:アナスタチア(ナースチャ) パザロヴァ 一九歳 人間 女 精霊騎士
一六五センチ 五五キロ 八四 五九 八三
レベル:1275
スキル:剣技(LV408) ロシア語(LV4) 日本語(LV4) 英語(LV2)
気を込める(LV245)料理(LV2) 家事(LV2)オーラ視(LV62)
魔法:武器具現化補助(LV205) 防具具現化補助(LV200) 回復(LV21)
称号 異世界勇者 不死の騎士(双子揃って)モンスターバスター一〇星
元対魔獣隊・隊員 大魔王ベヒモス討伐
善良度:☆☆☆☆☆☆☆ (通常は最低☆~最高は☆☆☆☆☆)
特記事項 現在『恋愛中』 対象:巧人 愛の深さ:LV15
魔法少女が妹で、その友達がモンスターバスター…かどうかはわかりませんが、『恋人』はモンスターバスターのようです。
(以下エピローグへ)
慌ててスマホで日付と時間を確認すると、校門を出てから15分しか経っていなかった。
あれは全て夢だったのか?!
僕は慌てて家まで走って帰った。
「おかえりー♪あれ、お兄ちゃん、どうしたの?
すごく落ち込んだ顔をしているけど、なにかあったの?」
帰宅すると、先に帰っていた美佐が出迎えてくれた。
僕の表情を見て、心配そうな顔をしている。
…僕は今、どんな表情をしているのだろう…。
「いや、大丈夫。何もないよ。」
なんとか笑顔を作る。
「…そうなの?お兄ちゃん、なんでも一人で抱え込んじゃうから…。
なにかあったら言ってね。これでも、少しは役に立つんだよ。」
一生懸命美佐が僕の顔を覗き込んでくれる。
そう、美佐は三つ年下で現在中学二年生だ。
素直で明るく、少々ドジで…そしてとても優しい。
おっとりとした真面目な父と、しっかり者で元気な母とともに僕の大切な大切な家族だ。
だから、伴天連と戦いながらも、かならず元の世界に帰ろうと思っていた。
…でも、今の僕の心は大きく穴が開いている。
それでも……久しぶりに美佐の笑顔を見れたことはやはりうれしかった。
大切な家族との優しい夕食の時間は、かなり僕の心を癒してくれた。
四人で笑いながら食べる夕食はこんなにも貴重な時間だったのだとあらためて感じさせてくれた。
美佐が学校以外でもできた友達達のことを嬉しそうに語っている。
『サークル』で年上の女の子たちと仲良くなったらしい。
何人かは僕と同じ風流院高校に通っているらしい。
「あら、巧人。同じ高校なら『彼女』候補として紹介してもらったら?」
母がニコニコしながら僕に話を振ってくる。
「何人かは彼氏持ちさんだけど、お兄ちゃんや私同様お一人さんもいるみたいだよ。
こんど聞いておこうか?」
「…そうだね。ありがとう。」
気持ちだけ受け取りながら僕は返事をする。
美佐がこんなに嬉しそうに言うのであれば、きっと素敵な娘達に違いない。
…でも、全然乗り気にならない。
『あの人達』と出会ったことは本当に夢だったのだろうか?
夕食後しばらく勉強をしていたが、今日は全然気分が乗らなかった。
大切な人たちと別れの言葉を交わす暇もなく戻されたような気分がして、ものすごくイラついた。
あのきれいな女性に思い切り文句を言ってやりたい気分になった。
…でも、あの女性と会っていなかったら…僕たちは全滅していたはずだ。
もちろん、あの出来事が夢の中でなかったらの話だが…。
お風呂に入ろうとして、右手に『例の腕輪』がはまったままなのに気付いた!!
今までのことは夢じゃなかったんだ!!
全身から血の気が引いた。
風呂から上がると、必死でネットでいろいろ探った。
まず、ナースチャの仲間がブログをやっているという話を思い出したので、それを探すとあっさり『あるモンスターバスターの日記』というブログを見つけた。
ナースチャにつながるものがないかと必死で読み込んだ。
カイザスさんの話にあった通り、『海の大怪獣ゴメラが暴れたり、逃げ出す写真を記事にしてアップ』してありました…。
ブログでは地球防衛軍が撃退したことになってるけれど、実際は『書いた当人が殴り倒して、ゴメラが泣いて逃げて帰った』と…。
全部読み終えた時、残念ながらナースチャとカイザスさんの話は出てこなかったけど、二人に少しでもつながったような気がして、なんだかうれしかった。
そして…ロシアのモンスターバスターが『怪獣を百匹倒す映像』は動画サイトにアップされていた。
残念ながら全然識別はできなかったものの『ロシアの英雄・世界最強のモンスターバスターの一角・パザロヴァ姉妹の活躍!』とか解説に書いてあったのを見た時はすごくうれしかった。
ナースチャやカイザスさんはこの世界にいてくれるんだ!
…でも、どうやって会うというのだ?
それに…パラレルワールドの世界の二人に会っただけなのでは?
それに気づくととても苦しくなっていった。
そうだ!鑑定を使えば、わかるんじゃないか?!僕と二人が同じ世界の住人かどうかが!そして、まず自分自身を鑑定しようとし……なにも起こらなかった。
いつもだったら自分の能力がはっきり頭に浮かんでくるのに…何も浮かばない…。
右手にはあの日もらった腕輪はあるというのに…。あの世界でしか鑑定は使えないのだろうか…。
~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~
翌日、登校したが、いつもの学校の日常だった。
皇も僕の顔を見ても特に何の反応も示さなかった。
明らかに向こうでの記憶がない…。
これではあの皇がパラレルワールドの住人なのか、『まだ行っていない』のかもはっきりとは分からない。
三日間いつも通りの日常が過ぎた。
日曜日になり、昼前から僕は気分転換に街をぶらぶらしていた。
ネットで一生懸命モンスターバスターについて調べたけれど…全然ナースチャ達に近づいている気がしなかった。
大通りに差し掛かった時、不意に見覚えのある女性の顔が視界に入った!
毎日見慣れたあの優しい黒髪の笑顔!ナースチャに間違いない!
どうしてだか知らないけど、ナースチャがこの町にいる!!
僕は走った!
その女性を追いかけて走った。
そして、女性が曲がり角を曲がった時、僕はさらにその後を追いかけて…曲がりきれずに転んだ。
「大丈夫ですか?」
聞きなれた女性の声が心配そうに僕の方にかかる。
「いえ、大丈夫です。」
僕が立ち上がろうとすると、女性が僕に手を差し伸べた。
「お兄さん。お怪我はないようですね。気を付けてくださいね。」
女性…ナースチャはにっこり笑って僕の手を引っ張ってくれた。
ああ、間違いない!ナースチャだ!でも…僕のことを全く知らない!!
立ち去っていくナースチャを僕は呆然としながら見送った。
「あれ、美佐帰るの遅くない?」
夕食の時間になっても戻らないので、少し心配になって母に言う。
「さっき、美佐からもうすぐ帰るって連絡があったわ。大丈夫よ♪」
料理しながら母が笑う。
母の言葉の通り、美佐が帰ってきた。
鼻歌を歌いながらすごくうれしそうだ。
…友達達と大事な時間が過ごせたのだな…。
寒々としそうになっていた僕の心がなんだか温かくなった。
「どうしたの?美佐。なんだかうれしそうだけど…。」
「ふふふ、それがね♪」
『臨時ニュースです。今日13時半ごろ、洋菓子店『マジック』に強盗が入るという事件が起こりました。』
「な、なんだってーー?!!」
テレビのニュースで近所のお店、それも美佐がよく行くお店のとんでもないニュースが入って、僕は仰天して立ち上がった。
「お兄ちゃん、大丈夫だよ。五月雨さんも月野さんも無事だから。
犯人はまだ見つかっていないけど、瀬利…業者さんがすぐ手配してくれたから、ガラスとかもすぐ代わりが入って、明日には営業再開できるんだって。よかったね。」
「美佐、やけにくわしいな?!」
「うん、ちょうどその時…より少し後に現場に行ったから、五月雨さん達から詳しい状況を聞いているの。」
「そうか、不幸中の幸いというところだね。…ところで、嬉しいニュースはなにがあったのかい?」
「それがね…。」
美佐は言いかけて少し息を吸う。
「五月雨さん、その事件で月野さんの大切さがわかって、『プロポーズ』してね、なんと、あっさり結婚が決まったんだって♪」
「…そうか、大変なことがあったからこそ、日常の大切さに気付かれたんだね。」
「そういうこと♪ふっふっふ、私もあんな素敵な恋愛をするんだ♪」
美佐は友達の恋愛だというのに本当に嬉しそうだ。
そうだね。確かに「異世界の体験」があったればこそ、僕にとって家族の大切さを再確認したんだ。まずは目の前の家族との時間を大切にしよう!
確かにあのナースチャとはもう会えないのかもしれない。でも、ナースチャ達にはとても大切な物をもらったのだ。いつまでもうじうじしていても仕方がない。
日常をもっとしっかり生きないと!
~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~
翌朝、すごく目覚めがよかった。
心身ともにとてもすがすがしい。
よし、今日からいろんなことに頑張るぞ!
そして、日本史の教師になる夢をかなえるぞ!
「おはよう、お兄ちゃん♪」
リビングに行くと先に来ていた美佐がにっこりとほほ笑んでいる。
「おはよう、美佐♪」
僕もにっこりと笑ってあいさつをする。
美佐を見ていると……なぜか鑑定が発動する。
水守美佐 14歳 人間 女
魔法少女
レベル:85
スキル:攻撃魔法(LV20) 回復魔法(LV25) 料理(LV3) 家事(LV2) 他
装備: 変身用スマホ
称号 魔法少女第1号 愛の魔法少女 女王の解放者
善良度:☆☆☆☆☆☆☆☆
はいーーー??!!なんの冗談ですか!!!
そんなでたらめな現実があるわけないでしょ?!
「お兄ちゃん、どうしたの?」
美佐が不思議そうな顔で僕を見ている。
「…なんでもない、なんでもないから!」
慌ててごまかして、一息つく。
そして、父と母を鑑定するが…二人とも会社員と、パート社員 兼 主婦だった。
ふう、一安心。
そして、もう一度美佐を鑑定…何度鑑定しても魔法少女だ…。
いきなりなんでこんなバグがあるんだろう…。
いざ登校しようとすると、玄関でチャイムが鳴っている。
「美佐ちゃん、迎えに来たよ♪」
「わーい、瀬利亜さんだ♪」
美佐が鞄を持って玄関に駆けていく。
上級生が来たのかなと思ってみると…うちの学校の制服を着た、しかも銀髪の美女なんですが…。
「さあ、途中まで一緒に行こう!」
「おう!」
姉妹がじゃれるような雰囲気ですごく仲がよさそうだ。
美佐のご機嫌の原因はこの人なのだなと…なんだかうれしくなる。
「あ、お兄ちゃん、瀬利亜さんは彼氏持ちだからダメだよ。」
「あら、お兄さんおはようございます。同じ高校なのですね♪」
銀髪の美女はにっこり笑って僕に挨拶をしてくれる。
同時に結果的に鑑定してしまう。
石川瀬利亜 17歳 人間 女
モンスターバスター&スーパーヒロイン
レベル:777
スキル:古武術(LV333) 拳銃(二丁)(LV222) 料理(LV12) 家事(LV10) 他
装備: 変身用スマホ
称号 無敵のシードラゴン ゴメラキラー モンスターバスター一〇星 レジウス撃退
鉄拳の魔法少女 女王の解放者
善良度:☆☆☆☆☆☆☆☆
特記事項 ※シードラゴンモードになると、素早さ、気の扱い、精神力が大幅に上がり、総合戦闘能力が大きく上がる。
さっきより鑑定が大きく『悪化』してるんですが!?
妹が魔法少女でその友達がモンスターバスターとか、どんなでたらめな日常なの?!
美佐と瀬利亜さんは手をつないで仲良く家を出ていった。
…いやあ、何の変哲もない日常は素晴らしい…。
『鑑定さん』、ちゃんとしてくださいよ!!
少々疲れて登校すると、始業開始ギリギリになっていた。
慌てて席に着くと…皇が僕を見て、微妙な表情をしている。
なにかあったのだろうか?
担任の山縣先生がニコニコしながら入ってきた。30半ばのベテラン現国の教師で、教え方がうまく、生徒達にも好かれている。
「今日は急な話だが、転入生だ。留学生だからみんな、仲良くしてあげるように」
金曜日にはそんな話は全然なかったので、みんなどんな生徒が来るのか興味津々でざわついている。
そして、入ってきた女生徒を見て…えええええええ!!!
僕は自分の目を疑った。
ナースチャがブレザーを着ているんですが?!
ナースチャはニコニコしながら教室を見回すと、僕を見つけてそれはそれは嬉しそうに笑ってくれた。
名前:アナスタチア(ナースチャ) パザロヴァ 一九歳 人間 女 精霊騎士
一六五センチ 五五キロ 八四 五九 八三
レベル:1275
スキル:剣技(LV408) ロシア語(LV4) 日本語(LV4) 英語(LV2)
気を込める(LV245)料理(LV2) 家事(LV2)オーラ視(LV62)
魔法:武器具現化補助(LV205) 防具具現化補助(LV200) 回復(LV21)
称号 異世界勇者 不死の騎士(双子揃って)モンスターバスター一〇星
元対魔獣隊・隊員 大魔王ベヒモス討伐
善良度:☆☆☆☆☆☆☆ (通常は最低☆~最高は☆☆☆☆☆)
特記事項 現在『恋愛中』 対象:巧人 愛の深さ:LV15
魔法少女が妹で、その友達がモンスターバスター…かどうかはわかりませんが、『恋人』はモンスターバスターのようです。
(以下エピローグへ)
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