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大江戸編

6 いざ鎌倉

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 作戦会議の結果を将軍に報告するために五人で登城することになった。
 将軍の娘の桜姫と専属陰陽師&巫女の三奈木さんの案内なので、城内を実にスムーズに進んでいく。

 「父上、いろいろすごいことがわかりました!」
 こっそり、将軍のおられる控えの間に入っていくと……。
 将軍が『カイザスさんの持ち込んだ』ブレイクダンスを音源に合わせて『いえいいえい!!』とノリノリに踊っておられるのですが……。

 我々の微妙な視線に気づかれると将軍は気恥ずかしそうに咳払いすると、澄ました顔で口を開かれた。

 「……皆の者、よく参った。それでどういう内容なのだ?」
 さすが、将軍様。鉄の意志で真面目な顔で対応されている。


 「…ふむふむ、よかったら余のことも鑑定してみてくれぬか?」
 話を聞いた将軍がニコニコしておられる。気さくで感じのいい人だなあ。

名前:徳川家々 三五歳 人間 男
レベル:80
第9代将軍
スキル:剣技(LV5) 政治(LV25)経済(LV15) 数学(LV10) 歴史(LV10)
科学(LV5)  会話術(LV5) 舞踊(ダンス)(LV25)
装備: 脇差+5(『日光』) 
称号 第9代将軍  


 ちなみに省いているけど、桜姫にも政治や経済などは(LV3)とかであったけど…将軍の技能すごく高いし!!
 で、技能とレベルを伝えていくと、桜姫、三奈木さんともにものすごく感心されて、将軍もすごく照れておられた。

 「うむ、文武両道に秀でられた素晴らしい方だよね。
 これでもう十歳若ければ…。」
 カイザスさん、そのセリフが僕だけに聞こえていてよかったですね…。

 で…最後の舞踊(ダンス)(LV25)の話になった時、桜姫と三奈木さんの顔色が変わり、将軍が気まずそうな顔になられた。
 「父上、まさか、政務をさぼられて『夜の遊戯&舞踏会場』に通われているわけではありませんよね?」
 「…ハッハッハ…ソンナコト、アルワケナイデスヨ…」

 「そうですよね。では、昨日見た『お忍びのお侍さん』は別人だったようですね♪」
 …カイザスさん、そこは『察して』あげようよ。

 …当然のごとく、将軍はお二人からこってり絞られることになりました。


 しばし、説教が続く中、くノ一のお玉が急にふすまを開けて現れた。
 「皆様大変です!!鎌倉にて多くの人が石像になるという事件が発生しました!!」

 「なに、それはまことか!対魔獣隊!すぐに原因を突き止めるのだ!」
 助かったとばかりに将軍が僕たちに宣言した。


 
 「では、早速俺ら三人で出発しましょう!」
 アナスタシアさんが胸を張って言う。
 「待って、私も行きます!」
 桜姫が立ち上がる。

 「しかし、行けば伴天連の怪人が…」
 将軍が心配そうに口をはさむ。

 「……確かに危険ではありますが、姫が伴天連の生贄の対象になっている現状では、我々と行動を共にした方が安全やもしれません。
 それに、もし、姫の貞操の危険のことでしたら…。
 アナスタシアは女性ですし、巧人はヘタレですし、私は姫より巧人の方に興味があります。姫の身に危害が及ぶ心配はございません!!」

 「……別の意味で心配になりそうだが……よろしく頼む。」


~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 城門の近くまで来た時、向こう側から4人組が通るのが目に入った。
 それを見た瞬間、桜姫の顔色が変わった。
 そして、こちらを見ると同時にむこうの20代半ばと思しき侍が口を開いた。

 「これはこれは、桜姫様ではないですか。
 もしかして、その三人組が異世界からの勇者ということですか?
 ちょうど我々『二ツ橋派』も異世界から勇者を召喚したのですよ。
 よろしかったら、どちらの勇者たちが優秀か勝負してみませんか?」

 後でわかったのだが、侍は次期将軍候補の二ツ橋定綱公で、現在某藩の藩主なのだそうだ。家々公の跡継ぎが病弱の一〇歳の長男一人のため、政治的な立場が弱いのだそうだ。桜姫はそれを補うために武術や様々な技能を身に着けて、サポートしようとされているのだという。

 「勝負だと!?そんなことをせずに協力して事に当たればよいではないか!」
 「いえいえ、直接戦おうというのではありません。敵を早く倒した方が勝ちというのではいかがでしょうか?」

 定綱公が合図すると、後ろに控えていた三人組が前に出てきた。
 そいつらを見て、僕は叫びそうになった。

 「おっと、これは驚いた。まさか、水守君も勇者になっているとはね。」
さもびっくりしたように言ったのは僕のクラスの委員長をやっている『すめらぎ 誠一』だった。そして、その後ろには剣道部部長『長門 和男』、図書委員長『池内 沙奈絵』の二人が立っていた。三人とも平凡な僕と違い、容姿端麗、学業、スポーツとも優等生だ。 

皇 誠一 17歳 人間 男
魔法剣士
レベル:60
スキル:文系教科(LV5)理系教科((LV5)剣技(LV10) 西洋魔術(LV15)
魔法: 火炎系 氷雪系 雷系 他 
装備 勇者の剣(+10)
称号 異世界召喚勇者 
善良度:☆☆ (通常は最低☆~最高は☆☆☆☆☆)

僕がレベル5で、皇が60?! しかも魔法も剣も強いとか?!
善良度が☆☆…うん、性格はかなり悪いと思う…。


長門 和男 17歳 人間 男
魔剣士
レベル:66
スキル:文系教科(LV4)理系教科((LV4)剣技(LV22)体技(LV10)
魔法:  
装備 破邪の剣(+8)
称号 異世界召喚勇者 
善良度:☆☆☆ (通常は最低☆~最高は☆☆☆☆☆)

長門は悪い奴ではないが、ものすごプライドが高く扱いにくい奴だ。インターハイの常連でもある。


池内 沙奈絵 17歳 人間 女
白魔術師
レベル:70
スキル:文系教科(LV6)理系教科((LV5)白魔術(LV25)
魔法: 回復 武装強化 守備系 植物系 等 
装備 護りの杖(防御魔法付き)
称号 異世界召喚勇者 
善良度:☆☆☆☆ (通常は最低☆~最高は☆☆☆☆☆)

 池内女史は成績は2年でトップのお嬢様で、デレないスーパーレディの異名を取る。ただし、面倒見もいいため、女子からの人気は高い。


 「ちょうど、我々の情報網にも『鎌倉に異変あり』という話が入ってきてましてね。
 では、『二ツ橋勇者隊』たのんだぞ!」
 「「「はい!!」」」 
 池内が呪文を唱えると、翼長5メートルを超える白い巨大な鷲が現れて、三人はその上に乗った。

 「はっはっは、水守君、ではとっとと我々が解決してくれよう。君はゆっくりと大江戸で待っていてくれたまえ!」
 皇が嫌味なセリフを残すと、彼らは飛び立っていき、同時に二ツ橋公も立ち去っていった。

 「あらまあ、彼ら行っちゃったよ…。」
 ほけーっとした顔でカイザスさんは空の彼方を見ている。
 「あーーあ。彼らより先に俺らが怪人を見つけないとやばいよな。
 今からでも追いかけて行って、彼らが怪人に遭遇しないことを祈ろう」
 イマイチ緊迫感のない声でアナスタシアさんがつぶやく。

 「どうして、そんな後ろ向きのことを言われるんです!」
 桜姫が怒って叫ぶ。

 「姫様。カイザスが本調子なら高速移動ができますが、今の俺らは走っていくしかないですからね。できれば、彼らの『死体』を見ずに済ませたいですので、頑張って急ぎましょうか。」
 アナスタシアさんの怖いセリフに僕と桜姫が絶句する。彼らの死体…て…。

 「…ん?だって、彼ら程度の実力じゃあ、ミノタウロス男とやりあっていたら、下手すると最初の一撃で全滅でしょ?今度の相手も怪人四天王だったら、最初の戦いの状況も踏まえると、彼らだったら『全滅しなければめっけもの』くらいでしょう。」
 「そうだね、単純な顔のつくりだけなら、『みんな美形』なんだが、性格も踏まえると、巧人の方がずっと好みだからね♪彼らも助かることを祈ろう。」
 カイザスさん、同じセリフがアナスタシアさんからだったらずっと嬉しかったです。

 「まあ、リーダーぽい奴は顔のつくりはともかく、性格は悪そうだったよな。俺も巧人の優しい顔の方がずっと好きだな。」
 アナスタシアさん、ありがとう。でも、暗に僕が美形でないと言っているよね…。


~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 夕方には僕ら一行は何とか鎌倉にたどり着いた。
 終わりの方は僕がカイザスさんに、桜姫がアナスタシアさんに背負われてのマラソンになっていた。あなたたち二人はどれだけ体力が底なしなんですか?!


 「おお、巧人、あんなところに『大仏』がある!!大仏って、奈良だけじゃなかったんだね!!」
 アナスタシアさんが嬉しそうに大仏を見ている。
 「はっはっは、実はあの中にからくり細工が仕掛けてあって、有事には立ち上がって、悪者どもをやっつけるのさ♪」
 カイザスさん、適当なことを言わないように!!

 「さ、さすがはカイザス殿!!幕府の最高機密を知っているとは?!」
 本当だったの?!一体この世界はどうなっているの?!


 そんなことを言っていると、不意に後ろの森からたくさんの人影が現れた。あれは、RPGによく出てくるモンスター、ゴブリンの大群だ!!

名前: ゴブリン男その1 ~ その10000
伴天連怪人 
レベル:10
スキル: 剣術 集団戦法  
称号 ざこ怪人
特徴: ざこも数が集まれば暴力になる


 はーーーー?!!一万人もいるわけ?!

 「巧人!!金属バットを出してくれ!!」
 へ?金属バット?
 言われるままに金属バットを具現化させると、アナスタシアさんはそれを巨大化させてガンガン振り回し始めた。

 「おらおらおらおらーー!!千本ノックだ!!」
 一振りごとにゴブリン怪人たちが十人以上吹っ飛ばされて星になっていく。
 最初は攻勢だった、ゴブリン怪人たちは真っ青になって散り散りに逃げていく。
 アナスタシアさんがそれを猛スピードで追いかけて容赦なく吹き飛ばしていく。
 シュールだ。実にシュールな光景だ。ゴブリン怪人集団とアナスタシアさんの姿があっという間に見えなくなった。



 僕と桜姫、カイザスさんがしばし、脱力していると、再び森の中から人影が現れた。
 今度はたった一人だが、黒装束で、やけにごつい。

 「もしもし、私きれい?」
 いやいや、黒装束できれいもへったくれもないと思うが…。
 というか、声の低さといい、体のごつさといい、男だよね?

 「そう…では、『これでも』きれい?」
 男が黒装束を脱ぐと、僕らは悲鳴にならない悲鳴を上げた。

 その長い髪の毛は全て蛇でできており、白い絹のようなトーガを体に最低限に巻き付けたその『ごつい男』は確かに見るだけで恐怖で人を石に変えるかもしれない。

 「私は伴天連ばてれん四天王の一人、メデューサ男!!あなたたち全員、私の魅力のとりこにしてみせるわ!!」
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