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十二歳編
初めての料理②
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アリスが直面した重大な問題、それは——。
自分の大きさが、作業台からギリギリ頭が見えるかどうかということだった。
待っていてと言っておきながら、すごすご食堂へ戻るのは恥ずかしいと思ったアリスは何かないかとあたりを見回す。
そんなアリスの視線から、目にも止まらぬ速さで姿を隠した者たちがいた。
そう、孫バカ、親バカ、シスコンと言う三拍子揃った家族たちだ。
彼らはただ可愛いアリスを見たい。心配だという様々な思いで、魔獣すら騙す——気配を絶つスキルを使い窓からこっそり観察していた。
『そうだ、木箱を持って行ってやればいいのではないか? よし、早速行ってくるぞ』
名案だ手を叩いたジェイクは、側にあった木箱へ手を伸ばす。
『そうですね~。じゃぁ、父親である僕が行くよ』
ジェイクに同意しながらその腕を魔法で止めたゼスは、木箱を抱えると入口へ向かおうとする。
そんなゼスの肩を掴み、止めたのはアンジェシカだった。
『かわいそうに。その箱は私が持っていくわね? ゼス、いいわよね? それにしても誰ですか、あんな高く作って! アリスが困っているじゃない!』
笑っていない瞳をゼスに向け、空いている方の手を頬にあてたアンジェシカは、すっとゼスの持つ木箱に手を伸ばす。
『もう、仕方ない子ね。私が行くわ!』
肩を竦めフェルティナが、二人の小競り合いを無視して一歩踏み出す。
だが、その身体は目の前に飛び出したクレイによって止められた。
『兄ちゃんの俺が、行く!』
困っているアリスに木箱を置くと言うたったそれだけのために、ごちゃごちゃと言い続ける家族を無視してフィンが動く。
目にもとまらぬ速さで木箱を奪ったフィンは、何食わぬ顔でアリスの側に空の木箱を置いた。
「フィンにぃ、ありがと!」
「魔道具もあるし、私も手伝うから、一緒に作ろう」
「うん! すごく助かる」
無邪気に笑うアリスの頭をわしゃわしゃ撫でたフィンは、勝ち誇った笑みを窓の方へ向ける。
出遅れた家族たちは、無音で悔しがるとその内絶対に、やり返すと心に決めた。
真剣な表情に戻ったアリスは、調理へ取り掛かる。
短い手足を使い、木箱へ登ろうとするアリスをフィンが抱き上げ乗せる。
黒パンを取ったアリスは、両刃のナイフを器用に使い七センチぐらいの厚さに切った。
ついでにサラダ用のチーズは五ミリ角に、ベーコンは厚さ一センチぐらいで切っておく。
スープ用野菜は、それぞれ一口大に。
「フィンにぃ、小さい鍋かボールが二個欲しい」
「了解」
フィンが鍋を用意してくれている間に、アリスは朝食用に出されていた肉塊を、出来る限り薄く削ぐ。
アリスが小さな手で一生懸命肉を削いでいるとフィンが、鍋を作業台へおく。
「これは、スープ用かな?」
「うん! お鍋にこれ入れて、煮込んで欲しい」
一つ頷いたフィンは、スープ用に切った野菜を新しい鍋に入れる。
その後、シンクでひたひたになるまで水を入れ、鍋をコンロに置くと火をつけた。
「次は、卵を一個だけ割って欲しい?」
「これに、入れたらいいかな?」
小さな鍋を指でさせば、アリスは「うん」と頷いた。
カゴから一つコカトリスの卵を取り出したフィンは、腰につけた短剣を抜く。
そして、そのままコカトリスの卵の上部をスパンと切り落とした。
「おぉ~! フィンにぃ、すごい!」
毎日魔物を狩っているフィンにとっては何でもない事だが、可愛い妹に褒められば悪い気はしない。
それどころか、大きな紫の瞳をキラキラさせ見上げてくる妹が可愛くて、ついつい顔がにやけてしまった。
「ありがとう。次は何をしたらいい?」
「うんとね。じゃぁ、もう一個のお鍋に卵を割って。その後、お野菜とハーブを洗って欲しいの」
「わかった」
スクランブルエッグ用の卵と野菜をフィンに任せ、アリスは濃いオレンジ色の卵が入った鍋に、ミルクと砂糖を入れる。
混ぜるのは兄の方がいいだろうと、フィンが戻るのを待つ。
戻ったところで混ぜ欲しいことを告げたアリスは、綺麗に混ざった卵液にスライスした黒パンを浸す。
「次は、小さなコップにレモネを絞って、種は取り除いて欲しいの。あとね、フライパンとオリーブオイルを出して欲しいの」
「フライパンは大きさは、どれぐらい?」
「うんとね、これぐらい」
と言って、アリスは短い腕を目いっぱい伸ばして丸形にする。
「ぷっ、もう、アリスは本当に可愛いなぁ」
幼いアリスの容姿も相まって可愛すぎる仕草にフィンは、つい噴出した。
「ん? 何か言った?」
「ううん、何でもないよ。レモネ終わったから、フライパン用意しておくね」
「うん!」
肉を削ぐのが終わり、スープ用の肉を切るのに一生懸命だったアリスはフィンの小さなつぶやきを聞き逃す。
何か言ったという事はわかったが、内容は聞こえていないため首を傾げてフィンを見る。
しばし見つめ合い、答える気がないと分かったアリスはまぁ、いいかと流した。
肉を切り終えたところで、事前に洗ってもらったレッタを手でパリパリとちぎり、ルウクとクレンスを一口大にザクザクと切る。
そして、トーマを薄めにスライスしたらサラダはほぼ出来上がる。
フィンに皿を出してと頼み。
アリスは、近くにあったボールにレッタ、ルウク、クレンス、削いだ肉、チーズ、トーマを入れ軽く混ぜ合わせる。
次に、レモネの入ったコップに、塩と黒コショウ、オリーブオイルの順で入れドレッシングを作った。
「それはどうするの?」
「これはねー、野菜にかけるんだよ! フィンにぃが入れてみる? ぐるーとかけまわすようにして掛けたら混ぜてね!」
興味津々と言った様子で作業を見入っているフィンに、アリスはドレッシングの入ったコップを渡す。
フィンは言われた通りにドレッシングをかけ、それが終わると軽く混ぜ合わせた。
サラダの完成を確認アリスは、箱から降りるとコンロへ移動する。
「次は火を使うの!」
「じゃぁ、箱はそっちだね」
フィンがすかさずコンロの側に、空き箱を置く。
箱に乗ったアリスは、先にスープを仕上げる。
鍋を覗き込み、肉を入れる。しばらく煮込み、肉から出る灰汁を丁寧にスプーンで掬う。
それが終われば、ミルクを注ぎ込んでひと煮立ちさせる。
最後に味を見て、塩、コショウを加えれば野菜の甘みが美味しいミルクスープの出来上がりだ。
スープが完成したのを見計らいフィンはアリスに声をかけた。
「火つけたらいいかな?」
「うん! あ、フォーク欲しいの」
「わかった。洗ってくるから待ってて、危ないから私が戻るまで待つんだよ?」
「はーい!」
言わなくてもわかってくれるフィンに感謝しながら、アリスは彼が荒い物を終えて戻るのを待つ。
フィンが戻ったタイミングで、フライパンにオリーブオイルを入れる。
火をつけてもらい火力を見れば、かなり強い。
調整ができないのを残念に思いながらアリスは、オリーブオイルをフライパンに馴染ませる。
さぁ、ベーコンを焼こうと思ったアリスは、ふと普段、皆が食べる量を思い出す。
フライパンとベーコン、家族の顔を思い浮かべながら最低でも三回は焼かないと足りないだろうな、と予想する。
手をフライパンの上にかざし、軽く熱を感じたところでスライスしたベーコンを並べる。
ジュウジュウと焼ける音を聞きながら、待つ事しばし。
食欲をそそる匂いがキッチンに漂いはじめた。
頃合いを見て焼いているベーコンを一つフォークで持ち上げ、焼き目を見る。
良い感じに焼けていたベーコンを、そのままくるんと器用にひっくり返す。
そうして、両面がしっかり焼けたら塩と胡椒を振りかけた。
「フィンにぃ、これ、一個に纏めて魔法の鞄に入れて欲しい」
「了解」
短い返事を返したフィンは、大きな鍋に焼きあがったベーコンを入れると鞄へ収納した。
続いて、ベーコンの油を使ってスクランブルエッグを作る。
味付けは、ほんの少しの塩と砂糖だ。
事前にフィンに混ぜて貰った卵をフライパンへ、流し入れて貰う。
程よく周りが焼けてきたら、フォークを使い形を崩す。
そうして、程よい半熟のスクランブルエッグが出来上がったら、これもまたフィンに頼み魔法の鞄へ入れて貰った。
この工程を三回繰り返す。
腕が既にパンパンだったアリスは、あともう少しと、自分で自分を励ました。
「次は、これかな?」
「うん! 良い感じに浸かってるね!」
再び熱したフライパンにオリーブオイルを入れ、伸ばしたら卵液をたっぷりと吸い込んだ黒パンを並べる。
一人あたり六枚の予定で作った黒パンは、五枚並べるとフライパンがいっぱいになり流石に、全部は入りきらなかった。
砂糖の焦げる匂いは甘く、アリスのお腹がなってしまいそうだ。
そうして、しばらく焼くときつね色の焦げ目がついた。
「凄く美味しそうだね。私もお腹すいてきたよ!」
「うん。私も~。あと、もう少しだからね!」
フライパンに目が釘付け状態のフィンが、片手でお腹を摩る。
そんな兄の姿を見とがめたアリスは、やっぱりご飯はこうでなきゃと思う。
もう片面が焼けたのを確認すると皿にのせた。
用意したパン全てを焼き、皿に盛る。
その上に、こんがり焼いたベーコン、半熟とろとろのスクランブルエッグ、サラダを乗せれば……。
アリス特製、甘じょっぱいフレンチトーストの出来上がりだ。
「完成~!」
「凄く綺麗だね! 食べるのがもったいなく感じるよ!」
満足いく出来にアリスはニマニマとが止まらない。
アリスのお腹が、早く食べたいとくぅぅと可愛らしい音を立てた。
自分の大きさが、作業台からギリギリ頭が見えるかどうかということだった。
待っていてと言っておきながら、すごすご食堂へ戻るのは恥ずかしいと思ったアリスは何かないかとあたりを見回す。
そんなアリスの視線から、目にも止まらぬ速さで姿を隠した者たちがいた。
そう、孫バカ、親バカ、シスコンと言う三拍子揃った家族たちだ。
彼らはただ可愛いアリスを見たい。心配だという様々な思いで、魔獣すら騙す——気配を絶つスキルを使い窓からこっそり観察していた。
『そうだ、木箱を持って行ってやればいいのではないか? よし、早速行ってくるぞ』
名案だ手を叩いたジェイクは、側にあった木箱へ手を伸ばす。
『そうですね~。じゃぁ、父親である僕が行くよ』
ジェイクに同意しながらその腕を魔法で止めたゼスは、木箱を抱えると入口へ向かおうとする。
そんなゼスの肩を掴み、止めたのはアンジェシカだった。
『かわいそうに。その箱は私が持っていくわね? ゼス、いいわよね? それにしても誰ですか、あんな高く作って! アリスが困っているじゃない!』
笑っていない瞳をゼスに向け、空いている方の手を頬にあてたアンジェシカは、すっとゼスの持つ木箱に手を伸ばす。
『もう、仕方ない子ね。私が行くわ!』
肩を竦めフェルティナが、二人の小競り合いを無視して一歩踏み出す。
だが、その身体は目の前に飛び出したクレイによって止められた。
『兄ちゃんの俺が、行く!』
困っているアリスに木箱を置くと言うたったそれだけのために、ごちゃごちゃと言い続ける家族を無視してフィンが動く。
目にもとまらぬ速さで木箱を奪ったフィンは、何食わぬ顔でアリスの側に空の木箱を置いた。
「フィンにぃ、ありがと!」
「魔道具もあるし、私も手伝うから、一緒に作ろう」
「うん! すごく助かる」
無邪気に笑うアリスの頭をわしゃわしゃ撫でたフィンは、勝ち誇った笑みを窓の方へ向ける。
出遅れた家族たちは、無音で悔しがるとその内絶対に、やり返すと心に決めた。
真剣な表情に戻ったアリスは、調理へ取り掛かる。
短い手足を使い、木箱へ登ろうとするアリスをフィンが抱き上げ乗せる。
黒パンを取ったアリスは、両刃のナイフを器用に使い七センチぐらいの厚さに切った。
ついでにサラダ用のチーズは五ミリ角に、ベーコンは厚さ一センチぐらいで切っておく。
スープ用野菜は、それぞれ一口大に。
「フィンにぃ、小さい鍋かボールが二個欲しい」
「了解」
フィンが鍋を用意してくれている間に、アリスは朝食用に出されていた肉塊を、出来る限り薄く削ぐ。
アリスが小さな手で一生懸命肉を削いでいるとフィンが、鍋を作業台へおく。
「これは、スープ用かな?」
「うん! お鍋にこれ入れて、煮込んで欲しい」
一つ頷いたフィンは、スープ用に切った野菜を新しい鍋に入れる。
その後、シンクでひたひたになるまで水を入れ、鍋をコンロに置くと火をつけた。
「次は、卵を一個だけ割って欲しい?」
「これに、入れたらいいかな?」
小さな鍋を指でさせば、アリスは「うん」と頷いた。
カゴから一つコカトリスの卵を取り出したフィンは、腰につけた短剣を抜く。
そして、そのままコカトリスの卵の上部をスパンと切り落とした。
「おぉ~! フィンにぃ、すごい!」
毎日魔物を狩っているフィンにとっては何でもない事だが、可愛い妹に褒められば悪い気はしない。
それどころか、大きな紫の瞳をキラキラさせ見上げてくる妹が可愛くて、ついつい顔がにやけてしまった。
「ありがとう。次は何をしたらいい?」
「うんとね。じゃぁ、もう一個のお鍋に卵を割って。その後、お野菜とハーブを洗って欲しいの」
「わかった」
スクランブルエッグ用の卵と野菜をフィンに任せ、アリスは濃いオレンジ色の卵が入った鍋に、ミルクと砂糖を入れる。
混ぜるのは兄の方がいいだろうと、フィンが戻るのを待つ。
戻ったところで混ぜ欲しいことを告げたアリスは、綺麗に混ざった卵液にスライスした黒パンを浸す。
「次は、小さなコップにレモネを絞って、種は取り除いて欲しいの。あとね、フライパンとオリーブオイルを出して欲しいの」
「フライパンは大きさは、どれぐらい?」
「うんとね、これぐらい」
と言って、アリスは短い腕を目いっぱい伸ばして丸形にする。
「ぷっ、もう、アリスは本当に可愛いなぁ」
幼いアリスの容姿も相まって可愛すぎる仕草にフィンは、つい噴出した。
「ん? 何か言った?」
「ううん、何でもないよ。レモネ終わったから、フライパン用意しておくね」
「うん!」
肉を削ぐのが終わり、スープ用の肉を切るのに一生懸命だったアリスはフィンの小さなつぶやきを聞き逃す。
何か言ったという事はわかったが、内容は聞こえていないため首を傾げてフィンを見る。
しばし見つめ合い、答える気がないと分かったアリスはまぁ、いいかと流した。
肉を切り終えたところで、事前に洗ってもらったレッタを手でパリパリとちぎり、ルウクとクレンスを一口大にザクザクと切る。
そして、トーマを薄めにスライスしたらサラダはほぼ出来上がる。
フィンに皿を出してと頼み。
アリスは、近くにあったボールにレッタ、ルウク、クレンス、削いだ肉、チーズ、トーマを入れ軽く混ぜ合わせる。
次に、レモネの入ったコップに、塩と黒コショウ、オリーブオイルの順で入れドレッシングを作った。
「それはどうするの?」
「これはねー、野菜にかけるんだよ! フィンにぃが入れてみる? ぐるーとかけまわすようにして掛けたら混ぜてね!」
興味津々と言った様子で作業を見入っているフィンに、アリスはドレッシングの入ったコップを渡す。
フィンは言われた通りにドレッシングをかけ、それが終わると軽く混ぜ合わせた。
サラダの完成を確認アリスは、箱から降りるとコンロへ移動する。
「次は火を使うの!」
「じゃぁ、箱はそっちだね」
フィンがすかさずコンロの側に、空き箱を置く。
箱に乗ったアリスは、先にスープを仕上げる。
鍋を覗き込み、肉を入れる。しばらく煮込み、肉から出る灰汁を丁寧にスプーンで掬う。
それが終われば、ミルクを注ぎ込んでひと煮立ちさせる。
最後に味を見て、塩、コショウを加えれば野菜の甘みが美味しいミルクスープの出来上がりだ。
スープが完成したのを見計らいフィンはアリスに声をかけた。
「火つけたらいいかな?」
「うん! あ、フォーク欲しいの」
「わかった。洗ってくるから待ってて、危ないから私が戻るまで待つんだよ?」
「はーい!」
言わなくてもわかってくれるフィンに感謝しながら、アリスは彼が荒い物を終えて戻るのを待つ。
フィンが戻ったタイミングで、フライパンにオリーブオイルを入れる。
火をつけてもらい火力を見れば、かなり強い。
調整ができないのを残念に思いながらアリスは、オリーブオイルをフライパンに馴染ませる。
さぁ、ベーコンを焼こうと思ったアリスは、ふと普段、皆が食べる量を思い出す。
フライパンとベーコン、家族の顔を思い浮かべながら最低でも三回は焼かないと足りないだろうな、と予想する。
手をフライパンの上にかざし、軽く熱を感じたところでスライスしたベーコンを並べる。
ジュウジュウと焼ける音を聞きながら、待つ事しばし。
食欲をそそる匂いがキッチンに漂いはじめた。
頃合いを見て焼いているベーコンを一つフォークで持ち上げ、焼き目を見る。
良い感じに焼けていたベーコンを、そのままくるんと器用にひっくり返す。
そうして、両面がしっかり焼けたら塩と胡椒を振りかけた。
「フィンにぃ、これ、一個に纏めて魔法の鞄に入れて欲しい」
「了解」
短い返事を返したフィンは、大きな鍋に焼きあがったベーコンを入れると鞄へ収納した。
続いて、ベーコンの油を使ってスクランブルエッグを作る。
味付けは、ほんの少しの塩と砂糖だ。
事前にフィンに混ぜて貰った卵をフライパンへ、流し入れて貰う。
程よく周りが焼けてきたら、フォークを使い形を崩す。
そうして、程よい半熟のスクランブルエッグが出来上がったら、これもまたフィンに頼み魔法の鞄へ入れて貰った。
この工程を三回繰り返す。
腕が既にパンパンだったアリスは、あともう少しと、自分で自分を励ました。
「次は、これかな?」
「うん! 良い感じに浸かってるね!」
再び熱したフライパンにオリーブオイルを入れ、伸ばしたら卵液をたっぷりと吸い込んだ黒パンを並べる。
一人あたり六枚の予定で作った黒パンは、五枚並べるとフライパンがいっぱいになり流石に、全部は入りきらなかった。
砂糖の焦げる匂いは甘く、アリスのお腹がなってしまいそうだ。
そうして、しばらく焼くときつね色の焦げ目がついた。
「凄く美味しそうだね。私もお腹すいてきたよ!」
「うん。私も~。あと、もう少しだからね!」
フライパンに目が釘付け状態のフィンが、片手でお腹を摩る。
そんな兄の姿を見とがめたアリスは、やっぱりご飯はこうでなきゃと思う。
もう片面が焼けたのを確認すると皿にのせた。
用意したパン全てを焼き、皿に盛る。
その上に、こんがり焼いたベーコン、半熟とろとろのスクランブルエッグ、サラダを乗せれば……。
アリス特製、甘じょっぱいフレンチトーストの出来上がりだ。
「完成~!」
「凄く綺麗だね! 食べるのがもったいなく感じるよ!」
満足いく出来にアリスはニマニマとが止まらない。
アリスのお腹が、早く食べたいとくぅぅと可愛らしい音を立てた。
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