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FILE2.真夜中のゾンビ

その1-2

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「怖がりのくせになぁ」
「うるさいですよ!」
「はいはい……」

 とりあえず都市伝説の調査は諦めてくれたようなので、零士はこれ以上双葉を刺激しないように話を切り上げた。オーナー権限など持ち出されてはそれこそ堪らない。
 く~。
 何か気を逸らす手はないかと考えたところで、程よく2人のお腹の虫がハモる。フランス系日本人プラスアメリカ人の血筋でもお腹の鳴り方は同じなようだ。

「飯、何か買ってくるか」
「そう、ですね。グレープゼリーも食べたくなりました」
「デザートに買うか」

 などと話しつつ出かける準備を始める。零士は季節感などきにしない黒のスーツを羽織る。双葉は、ショートタンクトップにローライズではさすがに出かけられないと判断してか、デニム生地のショートジャケットを羽織り準備完了だ。カレー談義で盛り上がろうかと思ったところで、再び邪魔は入る。

「きゃはははっ、ウケる~」
「もう一発! あ~、くそっ、外した!」
「きゃぅんっ! きゅぅ~……」

 質の悪そうな男女二人組が子犬に小石を投げつけている、爽やかな秋の夕暮れには似合わない光景。側に転がる段ボール箱を見るに、捨て犬をイジメている不良どもという構図らしい。
 関わらなくても良いのだろうが、あいにくとここは『阿藤探偵事務所』の前である。

「あ?」

 零士が、再び小石を拾い上げた男の腕を掴み止めた。

「やめろ。動物虐待は見過ごせない」
「なんだテメーは? 正義の味方かよ?」

 腕を掴んだまま睨みつける零士と、その手を払い除けようとする男の間で一触即発の空気が流れる。
 これでもまだアラサーなのだが、と内心で呆れつつ状況が終わるのを待つ。

「うぜぇんだよ、おっさん!」

 思った通りに男は腕を下ろしてくれず、さらには振り返りざまに零士へと暴力を振るってきた。
 悪くない攻撃だが、所詮は素人の拳だ。当たっても痛いだけで大したことはないものの、向こうもわずかばかりの良心が痛むだろうから受け流す。

「あ?」

 勢い余ってよろけたのがダメだった。

「ちょっ、ダッサっ」

 ガールフレンドと思しき女性の方から煽られてしまったのだ。

「この、野郎!」
「おいおい」

 下心とは言えど、一見で格上だと理解した相手に立ち上がってくる根性は認めてやりたいところだ。しかし、無差別に振るわれる拳を受けるほど零士も鈍くはない。
 今度は回避を試みる――。

「ぐえっ!?」

 ――よりも早く男はカエルが潰れたような声を上げて吹っ飛んでいった。
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