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FILE1.痴漢幽霊騒動
その0
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五十鈴 聖雄の自宅は田舎町よりは人口の多い、けれど地方都市未満の地域に建っていた。
車もそこそこの頻度で使え、最寄りの駅も歩いて10分。物静かで大きな不便のない立地を気に入っていた。
しかしここしばらくはこんな場所に建てたご先祖様を恨む日が続く。
『それでは今夜の特集です。【まるで推理小説!?】私立探偵が解決した名和時代の神隠し事件に突いてです』
ラジオから流れるパーソナリティの明るい声だけが夜半に響く。
子供のように布団にくるまり身構えていた聖雄にも、ようやく数日の寝不足からの睡魔が襲いかかりうっつらうっつらと船を漕ぎ始める。だが、悩みのタネはそうはさせまいと動き出す。
『はい、探偵の助手さんからでした。リクエストはボン・ジョピガガ……【イッツ・マイ・ライ】ズズズッ……』
途端にラジオが異音を発した。
「ひっ!」
聖雄は飛び起きた。真夏日の夜だというのに、全身は永久凍土に閉じ込められたかのように凍える。温まろうとしたわけでもなく、さらに強く布団を握りしめ布の地下壕に引きこもる。
『アイピーガッガッガッ……』
「やめろ! やめてくれ!」
完全にラジオが異常に呑まれたところで聖雄は懇願する。誰に?
『ジジジジッ……ネ』
その対象は答えた。そして姿なく怨嗟を吐き出した。
『シネ……。コロス……どうして……。コロス、コロス、シネコロス。シネシネシネシネシネシネコロスシネシネコロスコロスコロスシネ――!!』
「うわぁぁぁぁぁぁ! いやだぁぁぁぁっ!」
悲鳴で後ろにのけぞっていき壁にぶつかる聖雄。さらには狂えるラジオの繰り返す恨み節を否定した。
それは報復者の琴線に触れた。瞬間、聖雄の首筋に冷たい手が巻き付く。
「シネ」
すなわち布団という最終防衛ラインの内。
「俺は悪くなあぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
そこから聖雄の意識はなかった。
車もそこそこの頻度で使え、最寄りの駅も歩いて10分。物静かで大きな不便のない立地を気に入っていた。
しかしここしばらくはこんな場所に建てたご先祖様を恨む日が続く。
『それでは今夜の特集です。【まるで推理小説!?】私立探偵が解決した名和時代の神隠し事件に突いてです』
ラジオから流れるパーソナリティの明るい声だけが夜半に響く。
子供のように布団にくるまり身構えていた聖雄にも、ようやく数日の寝不足からの睡魔が襲いかかりうっつらうっつらと船を漕ぎ始める。だが、悩みのタネはそうはさせまいと動き出す。
『はい、探偵の助手さんからでした。リクエストはボン・ジョピガガ……【イッツ・マイ・ライ】ズズズッ……』
途端にラジオが異音を発した。
「ひっ!」
聖雄は飛び起きた。真夏日の夜だというのに、全身は永久凍土に閉じ込められたかのように凍える。温まろうとしたわけでもなく、さらに強く布団を握りしめ布の地下壕に引きこもる。
『アイピーガッガッガッ……』
「やめろ! やめてくれ!」
完全にラジオが異常に呑まれたところで聖雄は懇願する。誰に?
『ジジジジッ……ネ』
その対象は答えた。そして姿なく怨嗟を吐き出した。
『シネ……。コロス……どうして……。コロス、コロス、シネコロス。シネシネシネシネシネシネコロスシネシネコロスコロスコロスシネ――!!』
「うわぁぁぁぁぁぁ! いやだぁぁぁぁっ!」
悲鳴で後ろにのけぞっていき壁にぶつかる聖雄。さらには狂えるラジオの繰り返す恨み節を否定した。
それは報復者の琴線に触れた。瞬間、聖雄の首筋に冷たい手が巻き付く。
「シネ」
すなわち布団という最終防衛ラインの内。
「俺は悪くなあぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
そこから聖雄の意識はなかった。
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