皇帝の右手、女神の左手

肩ぐるま

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17 ダンジョンへ

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一方、俺の方には、このダンジョン調査を受けたい理由がいくつもあった。
まず、調査の達成目標がないこと。つまりノルマがない。ということは、達成出来ないときの違約金のリスクもないことだ。おまけに、期限もない。このダンジョンは難易度が高く、現在38階層まで攻略されているが、一体何回層まであるのか分かっていない。だから極端なことをいえば何年かかっていいのだ。
おまけにダンジョンに潜れば、モンスターがドロップアイテムを落とす。地上でモンスターを倒しても手に入るのは、肉や毛皮、素材ぐらいだが、ダンジョンなら何か価値のあるものがドロップされることがあるらしい。さらに宝箱というお宝ゲットのチャンスまである。そして、これは秘密だが、俺はダンジョンのドロップ確率最大上昇という魔法陣を持っている。これは魔法陣を扱えるようになって間がない頃、ララに聞きながらつくった魔法陣で、いつかダンジョンに潜る日を夢見て創っておいたものだ。しかも、そのとき、ドロップ内容変更という魔法陣もついでにつくっておいた。ドロップアイテムがしょぼい場合、この魔法陣を作動させておけば、ランダムで違うアイテムをドロップする。つまり、毎回何をドロップするか楽しみができるチートな魔法陣だ。ドロップアイテムはものによっては高値で売れる。高値がつかなくても売れば金が稼げる。つまりダンジョン攻略は、かなり儲かるのだ。
しかも普通の冒険者ならダンジョンの攻略に大量の荷物を持って行かなければいけない。
まずダンジョンに潜るなら最低でも階層✕4~6倍の日程を見ておかなければならない。38階まで攻略したチームは150~250日もかかったはずだし、その分の水と食料を持っていかなければならないことになる。ダンジョンの魔物は倒したら消えるので、地上の魔物のように食料にする訳にはいかないのだ。その上、テントや毛布などの野営の道具もかさばる。夜も交代で見張りを立てないと魔物に襲われるので、少人数でのダンジョン攻略も考えられない。となると大人数と大量の荷物がダンジョン攻略に必須となる。
しかし俺たちなら違う。命の水があるから水を持っていく必要はない。食料も魔の森を彷徨っている間に倒した魔物の肉が異次元収納にたっぷり収まっている。異次元シールドの魔法陣があるから夜もゆっくり眠れる。ただ、今回はテントや着替えなとは買って持って行くつもりだ。そして最後に、狭い場所では虚空拳とショーソードを使った次元斬撃はとても有利だ。武器屋でロングソードも買っておいたから、それが使える。万一それが折れても、女神像の左手からいつでも出せる。
ただし、こういったことは受付嬢は知らないので必死で反対したわけだ。
俺たちは、依頼受託を無理やり認めさせてギルトを出た。
街でテントのほか、毛布や着替えなどを多めに買い込み、塩などの調味料などを買ってダンジョンに向った。
ダンジョンまでは歩いて2週間ほどかかる。馬車はあるが、早くないし窮屈な上にお尻が痛くなりそうだったので敬遠した。
それに新婚カップル気分の俺たちは、夜は二人だけで過ごしたかったからだ。
日中は街道を歩いて進み、日が暮れたら街道から外れて森の中を進み、森の中でテントを出して休んだ。
そして2週間後、やっとダンジョンの周辺に出来ている宿場のようなところに着いた。
宿で泊まってもいいが、料金がもったいないないし、他の冒険者とのトラブルを避けたかったので、俺たちは宿場からかなり離れたところで森の中に入ってテントを出した。テントには異次元境界の魔法陣を貼り付けてあり、次元操作の魔法を操れない限り、見つけることも触ることも出来ない。異次元境界の効果は、外の気温変化、雨、風を始め、あらゆる物理攻撃も魔法も絶ち、テントの内部に影響を与えない。その異次元境界は、テントの床も含めて、テントをまるごと包んでいる。しかも内部は空間拡張の魔法陣で20畳位の広さにしてある。テント内部の気温は一定に保たれ、灯りは魔法陣で自由につけたり消したりできる。
そして寝るときは、地上50センチほどの高さの目には見えないが体がリラックスできる柔らかさに保たれている空気でできたベッドを魔法陣でつくってある。俺たち二人が寝ても十分過ぎるほどの大きさがあり、ここに街で買った毛布を敷いて眠る。
俺たちが森の中に入っていったのを遠くから見ていた5~6人の冒険者が、夜遅く、よからぬ目的を持って二人の冒険者の野宿場所を探しに森の中に入っていったが結局何もみつけることはできず、魔物に襲われただけだった。
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