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15 Cランク
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俺は左手で剣を構えると、数歩踏み込んで剣を振り降ろした。
左腕の斬撃のレベルは10なので強烈だが、体さばきはレベル4、足運びはレベル3なので、試験官は、余裕で俺の剣をかわした。
ほ~、剣は速いが踏み込みが甘いな。我流の剣だな。アンバランスだ。
試験官は感想を述べながら、俺の攻撃を待っている。
俺はもう一度剣を構えると、再度踏み込んで剣を振り降ろした。今度は、踏み込みを深くし、斬撃の力も少し強めている。
ゴツッ、鈍い音がした。
試験官は俺の剣を払おうとしたが、それができずに、そのまま自分の剣を押し込まれて、俺の剣は試験官の頭に当たって止まった。
しまった。力を入れ過ぎた。
試験官は頭から血を吹き出しながら棒のように後に倒れた。
キャ~という受付嬢の絶叫が試験場に響き渡った。
俺はすぐに試験官に駆け寄り、走りながらヒールの魔法陣を作動させた。
試験官の体が一瞬だけかすかに光った。しかし、試験官は起きない。俺はもう試験官の横まで来ていたのでそのままハイヒールの魔法陣を作動させた。
試験官の体がさつきよりも強く光り、試験官は目を開いた。
その頃には、受付嬢もリーネも、それから試験場に居合わせた数人の冒険者も試験官の横まで駆けつけてきていた。
目が開いたぞ。
生きてるぞ。
良かった~。
マスター!
最後の声は受付嬢だった。
マスター?俺が受付嬢の方を見ると、
ギルドマスターですよ。あなたが倒したのは!
その場に居た者全員が絶句した。
ギルドマスターだったのか?
居合わせた冒険者の一人が間の抜けた声を上げる。
マスターは元Aクラス上位の冒険者ですよ。それを一撃で!と受付嬢
その時、
う~んと、試験官が唸りながら体を起こした。
何だ?いったい?お前たちは何故ここに集まってる?
マスターが彼に打たれて倒れたんですよ!と、受付嬢が説明する。
そうか、受け止めたはずだったが、受け切れなかったのか?
そういいながら頭に手をやって打たれたところを触り、
怪我はしていないようだな。
何言ってるんですか、マスター!頭から血が吹き出して大変だったんですから。この人がハイヒールをかけなかったら死んでたかもしれないんですよ。
受付嬢はプリプリ怒ってる。これ程怒っているのは、それだけマスターを心配しているからだろう。
マスターはようやく立ち上がって、
それにしてもバカげた力だな。避けれないわけじゃなかったから受けてやろうと思ったが、それが失敗だった。とにかく俺の部屋まで来てくれて。
こう言って試験官あらためギルドマスターは先に立ってマスター室に向い、俺とリーネ、受付嬢が続いた。
ギルドマスターは部屋に入ると、
自己紹介がまだだったな。俺はこの街のギルドマスターをやっているダドリンだ。元はAランク上位の冒険者だった。
俺はランドクリフだ。魔法剣士だ。こっちは相棒だ。とリーネに視線を向ける。
リリーネです。クリフとパーティーを組んでます。
若い女性の冒険者はパーティーに入ってないといろいろ厄介ごとが起きるので、パーティーに入っていることは真っ先に告げる必要がある。
パーティーは二人か?
こくこくと二人で頷く。
ところでランドクリフ、これまで何をやっていた?
一番聞かれたくないところを聞いてきやがる。
これは試験の続きか?
ギルドマスターは首を横に振り
いや、個人的な興味で聞いただけだ。
俺がこれまで何をやっていたかは冒険者になるのに関係はないんだろう?
ああ、犯罪者や盗賊なんかでなければな。
そんなことはしていない。
まぁお前ほどの腕だ、どこの国へ行ってもその国のトップクラスの剣士に数えられるだろうからそんな心配はないな。今までどこかの国に仕えていなかったのか聞きたかっただけだ。
もし、どこかの国に仕えていたとしても冒険者になるのに問題はないんだろう?
あぁ、もちろんだ。冒険者にはいろいろな経歴の持ち主がいるからな。
それで、ここへ俺を呼んだ理由は何だ?
あぁ、一つは試験の結果を伝えるためだ。
それで結果は?
もちろん合格だ。ただし、ペナルティがある。
ペナルティ?
お前、剣を止めることが出来たのに止めなかっただろう?
えっ?
まったく意外な言葉だった。
いや、それはあんたが止めると思ったから。
お前ほどの実力があれば、止めて当然だ。俺は元Aクラス上位の冒険者だぞ。引退してしばらく経つているとはいえ、まだ衰えてはいない。その俺がお前の剣を受けた感触は、十分にSクラスの剣戟だ。Aクラスであの剣を受け止められる奴はいないはずだ。それなのに、足さばきはいいところがCクラス、アンバランス極まりない。相手を油断させるためにわざとやっているのかと思ったがそうでもなさそうだ。そこでペナルティはだな、俺を足さばきで油断させた代償に、足さばきの練習をしろというものだ。
足さばきの練習?それは強制か?
半分強制だ。俺が足さばきを仕込んでやるからな。今日この後の時間を空けておけ。それで俺の授ける足さばきが身についたら特別にCランクで登録させてやる。どうだ、普通ならDランクで登録出来てもCランクになるには1年かかる。それが1日に短縮出来るんだ。いい話だろう。
何でそんな好待遇をしてくれる?
俺の沽券に関わるんだ。Dランク相手にのされたとあっちゃギルドマスターの権威は地に落ちる。しかしCランクには強豪が隠れていることがある。実力はあっても高ランクに伴う義務が嫌だという奴はわざとCランクに留まっている。だからあんたのランクを無理やりにでもCに上げておけば、あんたも隠れた強豪かもしれないということになって俺の対面が保たれるというわけだ。どうだ、協力してくれるか?
えらく素直に本音を話すんだな。と俺はこの男に好感をもった。
分かった。この後の時間だな。リーネはどうする?
見物するわ。
こうして俺はその日、夜まで足さばきの特訓を受けた。それで上達したかというと、俺の足は生身だからな。足にまめが出来て筋肉痛になっただけだといえば結果がわかるだろう。
まったく剣の扱いは超一流のくせに、足さばきはまったく上達しないとはな。これ以上何日やっても無駄だろう。今日1日無駄にしたようなもんだが仕方がないCランクで合格にしておこう。
こうして俺は、異例中の異例として、いきなりCランク冒険者として登録された。
左腕の斬撃のレベルは10なので強烈だが、体さばきはレベル4、足運びはレベル3なので、試験官は、余裕で俺の剣をかわした。
ほ~、剣は速いが踏み込みが甘いな。我流の剣だな。アンバランスだ。
試験官は感想を述べながら、俺の攻撃を待っている。
俺はもう一度剣を構えると、再度踏み込んで剣を振り降ろした。今度は、踏み込みを深くし、斬撃の力も少し強めている。
ゴツッ、鈍い音がした。
試験官は俺の剣を払おうとしたが、それができずに、そのまま自分の剣を押し込まれて、俺の剣は試験官の頭に当たって止まった。
しまった。力を入れ過ぎた。
試験官は頭から血を吹き出しながら棒のように後に倒れた。
キャ~という受付嬢の絶叫が試験場に響き渡った。
俺はすぐに試験官に駆け寄り、走りながらヒールの魔法陣を作動させた。
試験官の体が一瞬だけかすかに光った。しかし、試験官は起きない。俺はもう試験官の横まで来ていたのでそのままハイヒールの魔法陣を作動させた。
試験官の体がさつきよりも強く光り、試験官は目を開いた。
その頃には、受付嬢もリーネも、それから試験場に居合わせた数人の冒険者も試験官の横まで駆けつけてきていた。
目が開いたぞ。
生きてるぞ。
良かった~。
マスター!
最後の声は受付嬢だった。
マスター?俺が受付嬢の方を見ると、
ギルドマスターですよ。あなたが倒したのは!
その場に居た者全員が絶句した。
ギルドマスターだったのか?
居合わせた冒険者の一人が間の抜けた声を上げる。
マスターは元Aクラス上位の冒険者ですよ。それを一撃で!と受付嬢
その時、
う~んと、試験官が唸りながら体を起こした。
何だ?いったい?お前たちは何故ここに集まってる?
マスターが彼に打たれて倒れたんですよ!と、受付嬢が説明する。
そうか、受け止めたはずだったが、受け切れなかったのか?
そういいながら頭に手をやって打たれたところを触り、
怪我はしていないようだな。
何言ってるんですか、マスター!頭から血が吹き出して大変だったんですから。この人がハイヒールをかけなかったら死んでたかもしれないんですよ。
受付嬢はプリプリ怒ってる。これ程怒っているのは、それだけマスターを心配しているからだろう。
マスターはようやく立ち上がって、
それにしてもバカげた力だな。避けれないわけじゃなかったから受けてやろうと思ったが、それが失敗だった。とにかく俺の部屋まで来てくれて。
こう言って試験官あらためギルドマスターは先に立ってマスター室に向い、俺とリーネ、受付嬢が続いた。
ギルドマスターは部屋に入ると、
自己紹介がまだだったな。俺はこの街のギルドマスターをやっているダドリンだ。元はAランク上位の冒険者だった。
俺はランドクリフだ。魔法剣士だ。こっちは相棒だ。とリーネに視線を向ける。
リリーネです。クリフとパーティーを組んでます。
若い女性の冒険者はパーティーに入ってないといろいろ厄介ごとが起きるので、パーティーに入っていることは真っ先に告げる必要がある。
パーティーは二人か?
こくこくと二人で頷く。
ところでランドクリフ、これまで何をやっていた?
一番聞かれたくないところを聞いてきやがる。
これは試験の続きか?
ギルドマスターは首を横に振り
いや、個人的な興味で聞いただけだ。
俺がこれまで何をやっていたかは冒険者になるのに関係はないんだろう?
ああ、犯罪者や盗賊なんかでなければな。
そんなことはしていない。
まぁお前ほどの腕だ、どこの国へ行ってもその国のトップクラスの剣士に数えられるだろうからそんな心配はないな。今までどこかの国に仕えていなかったのか聞きたかっただけだ。
もし、どこかの国に仕えていたとしても冒険者になるのに問題はないんだろう?
あぁ、もちろんだ。冒険者にはいろいろな経歴の持ち主がいるからな。
それで、ここへ俺を呼んだ理由は何だ?
あぁ、一つは試験の結果を伝えるためだ。
それで結果は?
もちろん合格だ。ただし、ペナルティがある。
ペナルティ?
お前、剣を止めることが出来たのに止めなかっただろう?
えっ?
まったく意外な言葉だった。
いや、それはあんたが止めると思ったから。
お前ほどの実力があれば、止めて当然だ。俺は元Aクラス上位の冒険者だぞ。引退してしばらく経つているとはいえ、まだ衰えてはいない。その俺がお前の剣を受けた感触は、十分にSクラスの剣戟だ。Aクラスであの剣を受け止められる奴はいないはずだ。それなのに、足さばきはいいところがCクラス、アンバランス極まりない。相手を油断させるためにわざとやっているのかと思ったがそうでもなさそうだ。そこでペナルティはだな、俺を足さばきで油断させた代償に、足さばきの練習をしろというものだ。
足さばきの練習?それは強制か?
半分強制だ。俺が足さばきを仕込んでやるからな。今日この後の時間を空けておけ。それで俺の授ける足さばきが身についたら特別にCランクで登録させてやる。どうだ、普通ならDランクで登録出来てもCランクになるには1年かかる。それが1日に短縮出来るんだ。いい話だろう。
何でそんな好待遇をしてくれる?
俺の沽券に関わるんだ。Dランク相手にのされたとあっちゃギルドマスターの権威は地に落ちる。しかしCランクには強豪が隠れていることがある。実力はあっても高ランクに伴う義務が嫌だという奴はわざとCランクに留まっている。だからあんたのランクを無理やりにでもCに上げておけば、あんたも隠れた強豪かもしれないということになって俺の対面が保たれるというわけだ。どうだ、協力してくれるか?
えらく素直に本音を話すんだな。と俺はこの男に好感をもった。
分かった。この後の時間だな。リーネはどうする?
見物するわ。
こうして俺はその日、夜まで足さばきの特訓を受けた。それで上達したかというと、俺の足は生身だからな。足にまめが出来て筋肉痛になっただけだといえば結果がわかるだろう。
まったく剣の扱いは超一流のくせに、足さばきはまったく上達しないとはな。これ以上何日やっても無駄だろう。今日1日無駄にしたようなもんだが仕方がないCランクで合格にしておこう。
こうして俺は、異例中の異例として、いきなりCランク冒険者として登録された。
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