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俺はリリーネを抱っこしたまま30分ぐらい歩き続けた。その間、威圧の魔法陣を作動させていたので魔物どもは寄ってこなかった。
女を抱えながら歩き続け、やがて大きな樹を見つけたので、女をいったん地面に降ろし、大木の前の草を焼き払う。大木の前にできた即席の空き地に女を降ろすと、その横に俺も座った。
体の具合はどうだ?
うん、だいぶ良くなった。
まだ暫くは無理しない方がいい。
そうね。体が重くて、まだ歩けそうにないわ。
これからどうするんだ?
俺の疑問に女は頭を振った。
まだ考えられないわ。
そうか?仲間はあれで全部か?
いいえ、私たちは3つのパーティーで出発したの。5人、6人、6人、全部で17人いたわ。
それが全部あの熊にやられたのか?
うう~ん。あの熊は後から現れたの。最初はロードウルフの群れに襲われたの。何人か殺られたけどそれでもロードウルフはまだ何とかなる相手だったわ。でも4人が倒れて、そのかわり私達もやり返した。ロードウルフをほぼ殲滅させたわ。それでちょっと気が緩んだところにあの熊どもが現れたの。
熊ども?熊は、1匹じゃなかったのか?
4匹いたのよ。熊は群れないから、きっと親子だったのかもしれない。
3匹はそれほどでもなかったの。だけどあいつが、あの1匹が強すぎたの。いきなり突っ込んできてあっという間に6人が死んだわ。私達が反撃しようとした途端後ろから3匹が襲ってきたの。負けそうなときはパーティーの判断で勝手に逃げてもいいという決めごとをしていたので私達のリーダーは直ぐに撤退を決めたの。だから私達のパーティーは離脱して逃げ出したんだけれど、それが裏目に出たみたい。あいつは直ぐに私達を追いかけはじめた。結局、私達は必死に逃げたことで囮になってしまったのよ。他のパーティーはその間に別の方に逃げたんだと思うけど、私達は結局アイツに追いつかれてみんな殺られてしまったのよ。
とリリーネはうなだれる。
そうか、仲間は残念だったな。しかし、何のためにこんな森の奥までやって来たんだ?
理由はリーダーたちしか知らなかった。
理由も知らずに死ぬかも知れない危険な場所まで付いてきたのか?
こんな危険な森だと思わなかったわ。
それでいつまで森にいるつもりだったんだ?
それも知らされてなかったわ。
だけど食料がどれくらい残っているかで分かるだろう?
倒した魔物を食べていたから食料はそれほど問題じゃなかったし、水も現地調達だったし。
そうか、それなら分からないか。
ところで、あなたはアイツを一人で殺したのよね?
ああ。
どうやって?
それは秘密だ。
そうね、冒険者は自分の手の内を明かさないものよね。聞いて悪かったわ。
気にするな。
ところであなたの方こそ、これからどうするの?
う~ん、とりあえず街を目指している。
どの街を?
とにかく街ならどこでもいいんだ。
私も付いて行っていい?
俺はリリーネの方を向いてしげしげと顔を見た。
だ、だって私一人ではこの森を生きては出られないし・・・。
俺と一緒なら守ってもらえる。そういうことか?
女は屈辱に顔を赤らめながら、悔しそうにコクリと頷いた。
う~ん、守ってやってもいい。だけど交換条件がある。
ちょ、ちょっと待って。守る代わりに抱かせろというのはなしよ。弱みにつけこまないで。と女は焦る。
そんなことは考えていない。俺の条件というのは、案内を頼みたいということだ。
何の案内?
俺はこの世界のことをよく知らない。だから街での案内役が欲しいんだ。
あなたは何処から来たの?
分からないんだ。気がついたらこの森にいた。それで長い間森の中を彷徨っていた。
この森に長くいたの?魔物に襲われなかった?あっ、アイツを倒したんだから、怖いものなしか?
まあそんなところだ。
俺は話をごまかす。
なら、こうするのはどう?私とパーティーを組むのよ。同じパーティーなら助け合うのは当たり前でしょ。私は一人ではこの森から生きて出られないし、あなたは街で案内役が欲しい。私なら案内役として十分に役に立つ自信があるわ。それに、あなたさえよければ、街に戻ってもパーティーを続けて一緒に稼ぐという手もあるわ。
なるほど、お互いにメリットがあるというわけだな。俺は真贋看破の魔法陣を作動させてリリーネの本音を調べた。俺を担ぐつもりはなさそうだった。
それならパーティーを組んで見るか。
よかった。今から私達は相棒ね。私のことはリーネと呼んで。あなたのことはクリフって呼ぶけどそれでいい?
リーネか、わかった。
クリフ、よろしくね。
こっちこそよろしく、リーネ。
こうして俺たちは、生きのびていくために二人だけのパーティーを組んだのだった。
女を抱えながら歩き続け、やがて大きな樹を見つけたので、女をいったん地面に降ろし、大木の前の草を焼き払う。大木の前にできた即席の空き地に女を降ろすと、その横に俺も座った。
体の具合はどうだ?
うん、だいぶ良くなった。
まだ暫くは無理しない方がいい。
そうね。体が重くて、まだ歩けそうにないわ。
これからどうするんだ?
俺の疑問に女は頭を振った。
まだ考えられないわ。
そうか?仲間はあれで全部か?
いいえ、私たちは3つのパーティーで出発したの。5人、6人、6人、全部で17人いたわ。
それが全部あの熊にやられたのか?
うう~ん。あの熊は後から現れたの。最初はロードウルフの群れに襲われたの。何人か殺られたけどそれでもロードウルフはまだ何とかなる相手だったわ。でも4人が倒れて、そのかわり私達もやり返した。ロードウルフをほぼ殲滅させたわ。それでちょっと気が緩んだところにあの熊どもが現れたの。
熊ども?熊は、1匹じゃなかったのか?
4匹いたのよ。熊は群れないから、きっと親子だったのかもしれない。
3匹はそれほどでもなかったの。だけどあいつが、あの1匹が強すぎたの。いきなり突っ込んできてあっという間に6人が死んだわ。私達が反撃しようとした途端後ろから3匹が襲ってきたの。負けそうなときはパーティーの判断で勝手に逃げてもいいという決めごとをしていたので私達のリーダーは直ぐに撤退を決めたの。だから私達のパーティーは離脱して逃げ出したんだけれど、それが裏目に出たみたい。あいつは直ぐに私達を追いかけはじめた。結局、私達は必死に逃げたことで囮になってしまったのよ。他のパーティーはその間に別の方に逃げたんだと思うけど、私達は結局アイツに追いつかれてみんな殺られてしまったのよ。
とリリーネはうなだれる。
そうか、仲間は残念だったな。しかし、何のためにこんな森の奥までやって来たんだ?
理由はリーダーたちしか知らなかった。
理由も知らずに死ぬかも知れない危険な場所まで付いてきたのか?
こんな危険な森だと思わなかったわ。
それでいつまで森にいるつもりだったんだ?
それも知らされてなかったわ。
だけど食料がどれくらい残っているかで分かるだろう?
倒した魔物を食べていたから食料はそれほど問題じゃなかったし、水も現地調達だったし。
そうか、それなら分からないか。
ところで、あなたはアイツを一人で殺したのよね?
ああ。
どうやって?
それは秘密だ。
そうね、冒険者は自分の手の内を明かさないものよね。聞いて悪かったわ。
気にするな。
ところであなたの方こそ、これからどうするの?
う~ん、とりあえず街を目指している。
どの街を?
とにかく街ならどこでもいいんだ。
私も付いて行っていい?
俺はリリーネの方を向いてしげしげと顔を見た。
だ、だって私一人ではこの森を生きては出られないし・・・。
俺と一緒なら守ってもらえる。そういうことか?
女は屈辱に顔を赤らめながら、悔しそうにコクリと頷いた。
う~ん、守ってやってもいい。だけど交換条件がある。
ちょ、ちょっと待って。守る代わりに抱かせろというのはなしよ。弱みにつけこまないで。と女は焦る。
そんなことは考えていない。俺の条件というのは、案内を頼みたいということだ。
何の案内?
俺はこの世界のことをよく知らない。だから街での案内役が欲しいんだ。
あなたは何処から来たの?
分からないんだ。気がついたらこの森にいた。それで長い間森の中を彷徨っていた。
この森に長くいたの?魔物に襲われなかった?あっ、アイツを倒したんだから、怖いものなしか?
まあそんなところだ。
俺は話をごまかす。
なら、こうするのはどう?私とパーティーを組むのよ。同じパーティーなら助け合うのは当たり前でしょ。私は一人ではこの森から生きて出られないし、あなたは街で案内役が欲しい。私なら案内役として十分に役に立つ自信があるわ。それに、あなたさえよければ、街に戻ってもパーティーを続けて一緒に稼ぐという手もあるわ。
なるほど、お互いにメリットがあるというわけだな。俺は真贋看破の魔法陣を作動させてリリーネの本音を調べた。俺を担ぐつもりはなさそうだった。
それならパーティーを組んで見るか。
よかった。今から私達は相棒ね。私のことはリーネと呼んで。あなたのことはクリフって呼ぶけどそれでいい?
リーネか、わかった。
クリフ、よろしくね。
こっちこそよろしく、リーネ。
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