皇帝の右手、女神の左手

肩ぐるま

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4 虚空突き

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さらに森の中を歩き回っていると、夕方が近づいて来た。夜は魔物の時間のようだ。森の中の魔物たちの気配が濃くなる。
そろそろ野営の場所を決めよう。
俺はそう考えると一本の大木の根本を選んで下草を命の炎の魔法で焼き、小さな空地と焚き火をつくった。大木を背にして腰を下ろすと、目の前の焚き火に木の枝を放り込む。腰にぶら下げていたゴブリンから奪った皮袋から一度焼いておいた猪の肉を取り出し、木の枝に突き差して、改めて火で暖める。
肉の焦げるいい匂いがしてきたので、早速かぶりついた。食べ終わると、命の水で脂で汚れた手を洗い、喉を潤した後、左手に槍を抱えた格好で樹にもたれた。
時折、木の枝を焚き火に追加し、周囲を警戒しながら眠る。
全身を鎧に覆われているので、眠っている間に襲われても大丈夫だろう。
こうして俺は、昼は魔物と出くわしては狩り、夜は樹にもたれて眠りながら、何日間も森の中をさ迷った。その間、左腕の槍術はレベルが上がったし、右腕の巨岩拳もレベルアップした。
そして、突き技がレベル10になったとき、その瞬間が訪れた。
虚空突がグレー表示でなくなったのだ。
俺は早速虚空突きを試した。20メートルほど離れた梢に向かって槍を突出す。槍はいつもと違って伸びることはなかったが、20メートルほど先の梢を切り落した。
やったぜ。俺は嬉しさに小躍りして、ガッツポーズを決めた。これこそ待ちに待った次元系スキルだ。これで俺は遠距離攻撃の手段を手に入れたのだった。
突き技がLv10になると虚空突きが使える。それなら斬撃も巨岩拳もLv10になると、それぞれの虚空スキルが使えるのか?すると今まで斬撃のレベルアップをしてこなかったのは痛い。虚空斬撃の方が、虚空突きよりも使い勝手が良さそうだからだ。
虚空突きは、どうしても1対1の攻撃になってしまうが、虚空斬撃なら一度に多数の敵を切ることができる。俺はそう考えて、これからは剣のレベルアップも図ることにした。
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