貴方の杖、直します。ただし、有料です。

第7章 レインの不可思議な行動

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ユミルはベッドの上で悶々と悩んでいたが、エイドリアンがそう時間を置かずにユミルの部屋に戻って来た。
フクの通訳曰く、「レインの部屋に来るように。」ということだ。

ユミルは瞬時に顔を青ざめさせた。

（…解雇？）

ユミルは嫌な予感がして、いつもよりずっと遅い速度で歩いた。しかし、いつもよりもレインの部屋までの道のりが短く感じられる。

「…ユミルです。」

ユミルが意を決して扉をノックして声をかけると、すぐにレインから入室を促す声がかかった。

「急に呼び出してすまない。」
「いいえ、構いません。…それで、何の御用でしょうか？」

レインは珍しく、執務机ではなく、応接セットのソファに腰をかけていた。
レインが目線で着席を促すので、ユミルは恐る恐るレインの前に腰をかけた。

「ウィリアムから色々と話を聞いたようだな。」
「はい。」
「ハパドアからの報告は私も聞いている。ウィリアムの予想どおり、局内で君を雇う話が出ているのも本当だ。」

魔法局から協力依頼がある、というのはウィリアムの想像の話としてユミルは聞いていたが、どうやら、本当に事が動いているらしい。ユミルは目を丸くした。

「そう、ですか…。」

ユミルはレインの次に続く言葉が怖くて思わず俯いてしまう。

（確かに、昔は魔法局に入りたかったし…、とてつもないほどありがたいお話だけど、簡単に送り出されちゃうと、それもそれでとっても悲しい。我儘ね。）

「君はどうしたい？」
「…私は、その、」

ユミルは今の気持ちをレインにどう伝えるべきか迷ってしまい、口ごもる。
ユミルは魔法局に行くと即答しないことを咎められるのでは、とさえ思っていた。

その様子を見たレインは、ユミルの返事を待たずに言葉を続けた。

「君は学園卒業時に、魔法局の入職試験を受けていたようだな。
ユミルが魔法局に入りたいのなら、応援しよう。」

（やっぱり。）

ユミルはレインの応援してくれる気持ちが嬉しくもあったが、落胆の方が大きかった。
やはり、レインにとってユミルはいてもいなくても困らないのだ、と悲観的な気持ちになってしまう。
ユミルがぎゅっと唇を噛みしめて聞いていると、レインはなお話を続けた。

「しかし、」

レインがそこで言葉を区切るので、ユミルは不思議に思って、俯いていた顔を上げた。
すると、レインが真っ直ぐ熱心にユミルを見つめていたので、ユミルはその真剣な表情に目がそらせなくなる。
ユミルは緊張していたことも忘れて、レインに見入ってしまう。西日を受けて、レインの瞳には星が宿っているのではないかと思うほど、煌めいている。

レインはユミルがしっかりと自分を視界に入れたことを確認すると、少しだけ前のめりになって、ゆっくりと口を開いた。

「私は君を手放したくない。」