6 / 69
第1章 就職と解雇
6
しおりを挟む
エリックに杖の修復を依頼されてから2日後、ユミルは屍のようになっていた。
(すんごい疲れた…。)
確かに、損傷具合は先日のギルドの魔法騎士と同じ程度だったが、杖に馴染んでいる魔力量が桁違いで、綺麗につなぎ合わせるのに途方もない精神力を要するのだ。
作業はスコープを覗きながら行うが、瞬きすら作業の邪魔になるので、ユミルの瞳はすっかり乾ききっていた。それに、自分の呼吸のリズムでさえも指先に伝わってしまうようで、ユミルは度々息を止めながら作業をしていた。
ユミルは目を押さえて作業場のソファに横たわる。
「ユミル、大丈夫か?今からでもドウェル様に期日を延ばしてもらうようにお願いするかい?」
様子を見に来たジョンソンがユミルを気遣うように言うと、ユミルは力なく首を横に振った。
「私の我儘でこの件を引き受けたのです。頑張ります。」
ジョンソンはユミルの決意が高いことを察すると、それ以上は何も言わずに静かにその場を後にした。
それからも、ジョンソンは度々ユミルの様子を見に度々作業場にやってきたが、ユミルの作業の邪魔になると思ったのか、それ以外は作業場へあまり顔を出しておらず、自身が修復を担当する分は、ユミルが丁度休憩をしているときに作業をしているようだった。
(集中力が必要だから、配慮してもらえて、ありがたいわ。)
ユミルは痛む目を押さえながら、再び作業台へ向かう。
(一度引き受けた仕事だし、お店に瑕疵はつけられない。遅れないように頑張らないと。)
ユミルは深呼吸をして呼吸を整えた。
_____
そして、期日の昼過ぎ、ユミルはついに作業を完了させた。
(私史上最高の出来だわ…!)
ユミルがジョンソンに修復した杖を渡すと、ジョンソンは大層ユミルを褒めてくれたが、ユミルは疲れすぎていて、その言葉の半分も聞き取れなかった。
「店長、申し訳ないのですが、今日はもう休ませてもらっても良いですか?」
「ああ、そうしなさい。受け渡しは僕がやっておくよ。明日も休みなさい。」
ユミルは、本当はエリックが杖を試しに使うのを見たかったが、今も眩暈がしている。
立っているのがやっとだ。
ユミルは店の2階にある部屋に戻ると、そのまま死んだように眠りについた。
(すんごい疲れた…。)
確かに、損傷具合は先日のギルドの魔法騎士と同じ程度だったが、杖に馴染んでいる魔力量が桁違いで、綺麗につなぎ合わせるのに途方もない精神力を要するのだ。
作業はスコープを覗きながら行うが、瞬きすら作業の邪魔になるので、ユミルの瞳はすっかり乾ききっていた。それに、自分の呼吸のリズムでさえも指先に伝わってしまうようで、ユミルは度々息を止めながら作業をしていた。
ユミルは目を押さえて作業場のソファに横たわる。
「ユミル、大丈夫か?今からでもドウェル様に期日を延ばしてもらうようにお願いするかい?」
様子を見に来たジョンソンがユミルを気遣うように言うと、ユミルは力なく首を横に振った。
「私の我儘でこの件を引き受けたのです。頑張ります。」
ジョンソンはユミルの決意が高いことを察すると、それ以上は何も言わずに静かにその場を後にした。
それからも、ジョンソンは度々ユミルの様子を見に度々作業場にやってきたが、ユミルの作業の邪魔になると思ったのか、それ以外は作業場へあまり顔を出しておらず、自身が修復を担当する分は、ユミルが丁度休憩をしているときに作業をしているようだった。
(集中力が必要だから、配慮してもらえて、ありがたいわ。)
ユミルは痛む目を押さえながら、再び作業台へ向かう。
(一度引き受けた仕事だし、お店に瑕疵はつけられない。遅れないように頑張らないと。)
ユミルは深呼吸をして呼吸を整えた。
_____
そして、期日の昼過ぎ、ユミルはついに作業を完了させた。
(私史上最高の出来だわ…!)
ユミルがジョンソンに修復した杖を渡すと、ジョンソンは大層ユミルを褒めてくれたが、ユミルは疲れすぎていて、その言葉の半分も聞き取れなかった。
「店長、申し訳ないのですが、今日はもう休ませてもらっても良いですか?」
「ああ、そうしなさい。受け渡しは僕がやっておくよ。明日も休みなさい。」
ユミルは、本当はエリックが杖を試しに使うのを見たかったが、今も眩暈がしている。
立っているのがやっとだ。
ユミルは店の2階にある部屋に戻ると、そのまま死んだように眠りについた。
4
お気に入りに追加
1,637
あなたにおすすめの小説
誰の子か分からない子を妊娠したのは私だと義妹に押し付けられた~入替義姉妹~
富士とまと
恋愛
子爵家には二人の娘がいる。
一人は天使のような妹。
もう一人は悪女の姉。
本当は、二人とも義妹だ。
義妹が、私に変装して夜会に出ては男を捕まえる。
私は社交の場に出ることはない。父に疎まれ使用人として扱われているから。
ある時、義妹の妊娠が発覚する。
義妹が領地で出産している間、今度は私が義妹のフリをして舞踏会へ行くことに……。そこで出会ったのは
……。
ハッピーエンド!
【本編完結】私たち2人で幸せになりますので、どうかお気になさらずお幸せに。
綺咲 潔
恋愛
10歳で政略結婚させられたレオニーは、2歳年上の夫であるカシアスを愛していた。
しかし、結婚して7年後のある日、カシアスがレオニーの元に自身の子どもを妊娠しているという令嬢を連れてきたことによって、彼への愛情と恋心は木っ端みじんに砕け散る。
皮肉にも、それは結婚時に決められた初夜の前日。
レオニーはすぐに離婚を決心し、父から離婚承認を得るため実家に戻った。
だが、父親は離婚に反対して離婚承認のサインをしてくれない。すると、日が経つにつれ最初は味方だった母や兄まで反対派に。
いよいよ困ったと追い詰められるレオニー。そんな時、彼女の元にある1通の手紙が届く。
その手紙の主は、なんとカシアスの不倫相手の婚約者。氷の公爵の通り名を持つ、シャルリー・クローディアだった。
果たして、彼がレオニーに手紙を送った目的とは……?
公爵令嬢は、婚約者のことを諦める
小倉みち
恋愛
公爵令嬢アメリは、婚約者である公爵子息マートンを、とても愛していた。
小さいころに一目ぼれをし、それ以降、彼だけを追いかけ続けていた。
しかしマートンは、そうじゃなかった。
相手側から、無理やり用意された縁談。
好きだ好きだと、何度もアメリに追い回される。
彼女のことを、鬱陶しいとさえ思っていた。
自分が愛されていないことは知っていたが、それでもアメリは彼を求めていた。
彼と結婚したい。
彼と恋仲になりたい。
それだけをずっと考えていた。
しかしそんなある日、彼女は前世を思い出す。
それは、マートンと親しい関係にある男爵令嬢の胸倉を掴んだ瞬間に起こった出来事だった。
すべてを思い出した彼女は、ここが乙女ゲームの世界であり、自分がそのゲームの悪役令嬢。
そして今、胸倉を掴んでいる男爵令嬢こそが、乙女ゲームのヒロインであることを悟る。
攻略対象であるマートンのルートに彼女が入ってしまっている今、自分に勝ち目はない。
それどころか、下手をすれば国外追放され、自分の家に迷惑がかかってしまう。
ストーリーの結末を思い出してしまった彼女は、悲劇を起こさないように。
マートンのことを、きっぱりと諦めることにした。
貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
【完結】愛されないあたしは全てを諦めようと思います
黒幸
恋愛
ネドヴェト侯爵家に生まれた四姉妹の末っ子アマーリエ(エミー)は元気でおしゃまな女の子。
美人で聡明な長女。
利発で活発な次女。
病弱で温和な三女。
兄妹同然に育った第二王子。
時に元気が良すぎて、怒られるアマーリエは誰からも愛されている。
誰もがそう思っていました。
サブタイトルが台詞ぽい時はアマーリエの一人称視点。
客観的なサブタイトル名の時は三人称視点やその他の視点になります。
転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。
トロ猫
ファンタジー
2024.7月下旬5巻刊行予定
2024.6月下旬コミックス1巻刊行
2024.1月下旬4巻刊行
2023.12.19 コミカライズ連載スタート
2023.9月下旬三巻刊行
2023.3月30日二巻刊行
2022.11月30日一巻刊行
寺崎美里亜は転生するが、5ヶ月で教会の前に捨てられる。
しかも誰も通らないところに。
あー詰んだ
と思っていたら後に宿屋を営む夫婦に拾われ大好きなお菓子や食べ物のために奮闘する話。
コメント欄を解放しました。
誤字脱字のコメントも受け付けておりますが、必要箇所の修正後コメントは非表示とさせていただきます。また、ストーリーや今後の展開に迫る質問等は返信を控えさせていただきます。
書籍の誤字脱字につきましては近況ボードの『書籍の誤字脱字はここに』にてお願いいたします。
出版社との規約に触れる質問等も基本お答えできない内容が多いですので、ノーコメントまたは非表示にさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる