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帝国編

依存と中毒は紙一重かもです

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 帝都で一番高くそびえ立つのは皇城ですが、その次に大きな建物になるのは私達が今いる古龍神殿なのです。
 正式名称は古龍ヴェルガリア神殿と地味に長い事から帝都民は神殿と略しており、現在の皇帝が略さず呼ぶようにする法を制定するかで民と揉めた実に平和な国なのです。
「龍人を装うても、その神々しさたるや実に・・・・・・」
「・・・話が進まないのだけれど、リア様・・・どうにかならないでしょうか?」
「妾への賛美はお腹一杯なのじゃ、言葉ではなく行動で応えよ・・・」
 信仰対象と直接相対すると、人は変貌するのかもです・・・事実としては間違ってもいないのが困りものなのですが。
 リア含め龍族が敵対していたら私が生まれる未来も途絶えていたかもですし、個人的に何を信仰していようと問題ではないですけど。
「皇帝陛下、冒険者の皆様も戦帰りにてございます・・・日を改めるというのも考慮してはいかがでしょう?」
「この件も片付き建国祭を考えると、城に戻れば時間を確保できるであろうか・・・・・・すまないが、ここで話を進めてもよいか?」
「建国祭は開催する方向なのですね、昨日今日で大変じゃないです?」
「元々来年という話と聞いていますから、大丈夫ではなくて?」
「皇帝よ、先に言っておくが妾を大々的に公表するのは無しじゃ」
 声を発することなく厳格な皇帝の表情が瞬時に絶望感漂う・・・顔が嘘をつけないようなのです。
 冷厳な皇帝がただの仮面なのか、リア関連の事に対してのみかは定かではないのです。
「私は帝国第一騎士団、団長のアムレトと申します・・・話を遮る無礼お許し下さい」
 皇帝のマントを掴んでいた2人の騎士の1人が発言し、話題をそれとなく変えてくれたようなのです。
「皆様が神殿に来られる前に、ヴェルガリア様からアーシルの状況を拝見させていただきました、見事としか言いようもございません」
「あの海上での戦闘、若さ故の命知らずと私には思えましたけどね・・・通常の海域とは違うと分かった上での行動でしたか?」
「存じていましたわ、魔海の魔力拡散も危険要因の1つですけれど・・・海上にも影響していたらお手上げでしたわね」
 特に物怖じすることなくミリーが答える、疑問を投げ掛けたのは副団長のようですが、解答が分かった上で聞いたよう・・・縦長な兜が騎士団の中でも変わっているのです。
「そなたは・・・なるほど、クロウディル王が自慢していただけはあるな、その年で国級並の術式を組み上げるとは・・・実に素晴らしい」
「ミリーの事を王様が自慢・・・・・・?それってどういう事・・・」
「・・・レナには言ってなかったみたい、ミリーはクロウディル王の御息女・・・ミリア・クロウディル第三王女だよ」
 ユラもミリーを本名で言い慣れてないようなのです、私もずっとミリーと呼んでいるので咄嗟にミリア王女と出てこなかったりするのです。


 大型ゴーレムの時と同様、今回も公表されないのは特に問題もないのですが、メーインティヴが想定外な問題となったようなのです。
(アタシが問題とは失礼なのだわ!)
(そもそもお主が獣人国から姿を眩ませたのが原因じゃがな)
(次元断裂でどさくさに紛れて姿を消した奴に言われたくないのだわ!)
(我とレナが最初に核を砕いたというのに、文字通り一番槍だったはずなのである)
 声が聞こえるようになってから非常に脳内が騒がしいのです、ミリーとユラも同じ状態ではあるのですが。
「皆々不服であろうから是非とも公表すべきとは思うのだが、アイリ・ウィクトールだったな・・・どのようにしてメーインティヴを手にしたのだ?」
「森で拾ったんだよ!」
「ふむ・・・・・・ん?今なんと?」
「森で拾ったんだよ!」
 恐らく魔海での映像だけだとメーインティヴがどういうものかまでは認知していないようなのです、というより姉様が技名みたいに叫ばなかったら私達にも理解できなかったと思うのです。
「そうじゃろうな、妾も目を疑ってしまったからのう・・・・・・アイリが寝てる隙に触ろうとしたら噛みつきおってからに」
(アートマ体なんて得体の知れないものに、警戒するのは当然なのだわ!)
(ふむ、お主は現状、最もコーザル体に近い存在とも言えるが・・・何故アートマを知っておるのじゃ?)
(私も警戒された理由がアストラルだった気がするのです・・・)
(400年前の次元断裂でコーザル領域に干渉されたせいなのだわ!アタシが自我を獲得したと同時に、様々な情報が強制的に流れ込んできたのだわ!)
 リアの記憶から一定量の情報を領域を介して受け取ったよう・・・高次領域という概念もその時に認識したようなのです。
「セリオルの獣王も代が変わっても尚、人族とは馴れ合わぬ故、余計な火種を巻きかねんのでな」
「帝都でも獣人族の方はお見かけしませんわね、王都は霊峰山が苦手という理由でしたけれど」
「そこ十数年で共和国に移住していったのだ、元々多くは住んでいなかったが。ヴェルガリア様の御加護ある、この土地からわざわざ離れるとは・・・不憫だ・・・」
「特に妾は加護など与えておらぬのじゃが・・・して、お主等は何か報酬は望まぬのか?」
「特に不足もしておりませんけれど、そうですわね・・・・・・私(わたくし)にもディオールの杖を所望しますわ」
「・・・私も刀身部分をディオール素材で発注したいかも、先の戦いでボロボロ・・・」
「それなら私はミスリルの槍で・・・・・・」
「肉!」(肉なのだわ!)
(我の主導のもと、独立国家を・・・)(ダメです)
「物欲の方向性が自由なのです・・・・・・私はジオの修繕作業をするのに鉄板と銅板・・・もしくは鉱石」
「フィオナが一番意味不明じゃな、その程度は手持ちで事足りるじゃろうて」
「王都に居たときより鉄と銅素材の値段がですね・・・・・・徐々に上がるこの既知感、物流でも減ってたりするです?」
「各々の意見、しかと受け取った、鉄板と銅板等は些か謎ではあるが・・・鉄鉱山が共和国の管理化にあるのが影響してるのかもしれぬ」
 需要と供給に目を付けた、というところなのです?一般人がわざわざ鉄鉱石等を直接購入はしないでしょうし、市場で減って困るのは私の私情ではあるのですが。
「銅鉱山に関してはセリオルが所有しておりますね、主にクルス商会が買い取ってるらしく・・・帝都にあるのは共和国から流れた物が主ですね」
「ヒュージ、ありったけの鉄と銅をご友人に差し上げよ」
「極端すぎるのです・・・私は企業ではないので、そこまでしていただかなくてもいいのですー」
 物欲で報酬系を満足させるのも悪くはないですが、何事も過剰はよくないのです・・・薬物やアルコール、砂糖と同様一時的快楽は簡単に依存するのです。
 鉄板銅板を大量に貰ったところで、報酬系はそこまで刺激されはしないですが。
「・・・毎日露店で買ってるから、串焼き一年分とかでもいいんじゃない?」
 どうやら私は串焼き依存者だったです・・・?毎日食べても大きくならないのですが(縦にも横にも)タンパク質だけでも、やはりダメなようです。
「マースチェルが言ってた毎日買いに来る子供はフィオナさんでしたか、古い戦友なので私から伝えておきましょうか?」
「あの方やはり龍人貴族だったです・・・何故、露店を開いてるのです?」
「人族の冒険者に混ざって狩りしていた際、貰った串焼きにハマったとそれっきり・・・私が帝都に来る前からですね」
 一代で数世紀露店やっていたです?人のできることではないのです、龍人ですけど。
 リアやヒュージさんもそうですが、食に関心が無かった分依存も強いのかもです・・・・・・龍族信仰で共生が成立したのって・・・深く突っ込むのも野暮なのです。
「食の支配は国を掌握できるかもですね・・・配り支えるは依存誘発の初手なのです」
「いきなり何を言ってますの・・・話も終わりましたし、そろそろ帰りますわよ」
 身も蓋もない現実を見た気もするのはさて置き、私達は神殿を後にするのでした。
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