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番外編一 ヒロインの奮闘
10 復活のヒロイン
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ソランジュにちょっぴり同情しつつも、あたしはあたしのやるべきことを続けていた。
だって、別ゲームの悪役令嬢だもの。あたしには、どうしようもないでしょ?
卒業パーティを前に、シャルルからエメラルドのついた首飾り、ディディエから紫色のレースをあしらった髪飾りをプレゼントされた時も、驚きはなかったわ。
二つとも、攻略キャラの瞳と同じ色を使っている。やった、好感度復活!
頑張った甲斐があった。
リュシアンからは赤いラインの入った靴を贈られた上に、入場時のエスコートも申し込まれたのだ。
よしよしよし。逆ハーレムルート達成への希望が、見えてきたわよ。
その一方で、クレマン先生から手袋を贈られた時は、かなり落ち込んだ。シンプルな、何の変哲もない手袋。
「実験室に、新しい鍵付き棚を見つけてくれたお礼だよ」
にこにこしながら差し出してくるクレマン先生に、嬉しそうな顔を作るのは、正直なところ辛かった。
この時点で、普通の手袋しかくれないということは、つまり好感度がイマイチということなのだ。
やっぱり、隠しキャラは攻略が難しいわね。アイテムもらえるだけマシか。そうだ。ともかくも、攻略キャラ全員からアイテムをゲットしたことになる。
これで、選挙さえクリアしていればなあ。
卒業パーティの日。今回は、生徒会新役員が主体となって準備や裏方を行う。
会長のアルチュールやガスパル、ジョゼフィーヌは卒業生だから、招待客の側になる。そしてシャルルやディディエは主催者側。
あたしは旧生徒会役員だけど、卒業生でもなく、新役員でもない。ゲームのシナリオと違って、モブと同じ立ち位置になる。ドレスも去年の使い回しだし。
変な気分だった。
それでも、シャルルから貰った首飾り、ディディエからの髪飾り、リュシアンからの靴を身につけていると、周囲から目を止められる程度には、目立つ存在になったみたいだ。
何人からかは、直接褒められたものだ。それには、あたしという素材の良さも一役買っていると思うわ。
そうそう、クレマン先生からのプレゼントも嵌めている。一見、既製品と変わらないけど、実は生地も縫製も上等だった。
ゲーム的にはイマイチでも、もっと喜んでおけば良かったな。
「待たせたな。仕事が詰まっていて、遅くなった」
リュシアンがやってきた。卒業生らしく、華やかな衣装を纏っている。あたしが彼に贈られた靴を履いているのを確認して、にっこり笑った。いい感じ。
「こんな時まで、風紀委員長は大変なんですね」
「そうだな。だが、これで最後だ」
髪の色に合わせて赤を基調とした礼服は、攻略キャラらしく会場でも目立つ。
その隣に地味なドレスで立つのは、ちょっと勇気がいる。でも、在校生は地味なドレスを着る決まりなのだ。
見回してみれば、バスチアンと婚約しているあの銀髪取り巻き令嬢や、『ヤンデレ! ノブリージュ学園』ヒロインのマリエルもいた。
側に立つのは、ガスパル副会長。そうか、ドMと結ばれるのな。
そのほかにも、ぼちぼち在校生と卒業生の組み合わせを確認し、自分を安心させた。シナリオとズレていると、不安になるんだよね。卒業パーティといえば、断罪だし。
あれ? そう言えば、『ヤンデレ!』の断罪は、このパーティだよね。ゲーム期間は、一年間だもの。
モブ的立場になったあたしには、断罪のシナリオは入って来ないってことか?
ソランジュの気持ちが、ちょっとわかる気がするわ。
「さあ、行くぞ」
既に会場入りしている在校生の視線を浴びながら、リュシアンにエスコートされる。
ゲーム画面で見るのと、実際に手を取られて歩くのは、全然違う体験だ。すっごく楽しい。
「ノブリージュ学園を今回卒業する生徒から、二組の婚約が成立したことを、この場でご披露いたします。一組目は、アルチュール=ゴンドラン生徒会長とジョゼフィーヌ=シャミヤール会計担当、二組目はガスパル=メーストル生徒会副会長とマリエル=シャティヨン嬢です。この度は、誠におめでとうございます」
ダンスが始まる前に、婚約発表があった。『ヤンデレ!』クリアしているあたしに、驚きはない。
でも会場からは、結構な驚きの声が上がっていた。
耳元で、あんまり大声を出されたので、思わず顔を向けると、何か見覚えのある女がド派手なドレスを着て、マリエルを睨みつけていた。
誰だっけ?
しばし考えてから思い出す。エヴァ=クルタヴェル、とか言ったモブだわ。
あたしに対抗して書記になろうとした。
そういえば、選挙で負けた後、何かと突っかかってきた覚えがあったなあ。こっちは逆ハーに忙しくて、あんまり気にしていなかったけど。
マリエルを睨んでいるのは、あたしと間違えている訳じゃないよね。
背後を取られるのは不安だったから、そろそろと移動して距離を取った。
仕事か何かで、席を外していたリュシアンが戻ってきた。手を取られ、会場中ほどへ移動する。
音楽が始まった。リュシアンは、ダンスが上手い。リードに乗って、流れるようにステップを踏むのが気持ちいい。
「今日は、エスコートさせてくれてありがとう」
「こちらこそ。リュシアン先輩がご卒業されると、寂しくなりますわ」
学園からは去るけれど、騎士団に入るから、街イベントで絡むのよね。
「留年する訳にいかないからな」
楽しそうに言うリュシアン。留年した生徒の話は聞いたことがない。補習で無理にでも押し出すか、退学願うか。
でも、メロデウェルの社交界で、ノブリージュ学園を卒業していない貴族の話も聞いたことがない。
「それで、仕事や付き合いで一緒にいることができないのだが、大丈夫か?」
大丈夫。多分、シャルルやディディエが来てくれるから。とは言わず。
「ご心配なく。今、踊ってくださった思い出を大事にします」
控えめに微笑んだあたしを、リュシアンが真面目な表情で見つめる。お、ここは熱いハートが飛び交うスチルだったか?
「ありがとう。だが、他の人とも踊って、どうか最後まで会場に残ってくれ」
「はい?」
「パーティが閉会するまで、会場に残ってほしい」
おお、これは、告白イベント来たー!
リュシアンルートの攻略が早いと、卒業する時に告白してくれるんだよね。でも、確か告白イベントは卒業式だった気もするけど。
「はい、喜んで」
うっかり、告白を受けた時のセリフを返してしまったわ。いいように解釈してくれたのか、リュシアンは怪しまなかった。
そして曲が終わると、最後までいるように念押しして、去っていった。
その後リュシアンは、卒業生の誰彼と踊っていた。婚約者のフロランスは、卒業して領地へ戻っているものね。
在校生のダンスの間、あたしが壁の花になる心配は全然なかった。
むしろ出ずっぱりというか。
シャルルもディディエも誘いに来たし、『ヤンデレ!』の攻略キャラであるアルチュールやガスパルとも一回ずつ踊ることができた。
一緒に生徒会役員を務めたお礼ってことらしい。会計のジョゼフィーヌも踊りの合間に話しに来てくれた。その上、クレマン先生まで来た。これは意外で嬉しかった。
『ヤンデレ!』メイン攻略キャラのイーゴリ=オレーグとも話ができた。黒髪銀目の貴公子だ。
「一年間の留学を終えて、帰国します。在学中、生徒会役員の皆様にはお世話になりました」
「ご丁寧に、ありがとうございます」
「ところで、つかぬことをお伺いします。一学年下のマリエル=シャティヨン伯爵令嬢とは、遠続きでいらっしゃいますか?」
「いいえ。そういえば、似ていると言われますね」
ああ、ここにも運営の雑な設定に惑わされた人がいるよ。
そして閉会の時。アルチュール生徒会長が挨拶をする。
「今暫し、猶予をいただき、お付き合いいただきたい」
静まり返った会場に、会長の声が響く。え、何が始まるんだ?
まさかリュシアンの告白イベントをここにぶち込まないよね。
エヴァとソランジュの名前が上がっても、あたしは事の成り行きが見えなかった。
「エヴァ=クルタヴェル、ソランジュ=ラルミナ。二人は、先頃実施された生徒会役員選挙において、不正行為を働いた」
『ヤンデレ!』断罪イベントか!
踊っているうちに、すっかり忘れていたわ。
でもソランジュはともかく、エヴァも?
どう記憶を漁っても、『ラブきゅん!』はもちろん、『ヤンデレ!』ともシナリオが一致しない。
じゃ、どうなるんだ?
「証拠もなしに、冤罪を被せるおつもりですか」
「証拠なら、こちらにある」
風紀委員長のリュシアンが、アルチュールに分厚い書類を手渡す。あたしを見て、微かに笑ってみせた気がした。
要するに、ソランジュは、エヴァから資金援助を得て、生徒達の票を買収したらしい。学園で定められたお茶会以外で、ということみたいだけど。
クエストで稼いだ金!
リュシアンが言っていたのは、このことか。あたしは、いつかの忠告を思い出した。
ありがとうリュシアン!
ケチらず、シャルルとディディエにそれなりに返しておいてよかったわ。
ヒロインが金の不正で断罪、ってイメージ崩壊でしょ。
「これらの罪状により、我々生徒会役員会は、ソランジュ=ラルミナの副会長当選を取り消し、次点のアメリ=デュモンド嬢を、繰り上げ当選と認定する」
副会長に、なれた。シナリオ修正力?
あたしがクエスト頑張ったから?
落選してからのまさかの復活当選で、副会長になるとは思っていなかった。
卒業式までの短い期間で、急ぎ引継ぎする羽目に。とは言っても、それまで書記だったし、次年度役員への引継ぎの場にはいたから、何となく流れは頭に入っている。
一緒に働くのは、シャルルとディディエだし、あ、銀髪娘もね。なんとかなるよね、という感じで済んだのは良かった。
気忙しくて、嬉しさが後回しになったけど、落ち着いて信頼できるって、みんなの印象も却って上がったように思う。
金とか義理で買われたとはいえ、一応選挙であたしに投票していない人が多かった訳だからね。
あと、最終成績が二位に下がってしまった。一位はシャルル。この学園の成績評定システムが公開されていないから、理由はイマイチわからん。
これも、クエストの影響かも。
学年主任と面談したけど、モブに聞いてもなあ。
あたしにわかるのは、シャルルの好感度が現時点で望めるマックスじゃないってこと。
ゲームだと、ここであたしが一位を取れば、シャルルがライバル心から、あたしに興味を持ち続けるんだよね。
宝石付き首飾りをもらえて、油断したな。最終学年になってから、盛り返さないと。
だって、別ゲームの悪役令嬢だもの。あたしには、どうしようもないでしょ?
卒業パーティを前に、シャルルからエメラルドのついた首飾り、ディディエから紫色のレースをあしらった髪飾りをプレゼントされた時も、驚きはなかったわ。
二つとも、攻略キャラの瞳と同じ色を使っている。やった、好感度復活!
頑張った甲斐があった。
リュシアンからは赤いラインの入った靴を贈られた上に、入場時のエスコートも申し込まれたのだ。
よしよしよし。逆ハーレムルート達成への希望が、見えてきたわよ。
その一方で、クレマン先生から手袋を贈られた時は、かなり落ち込んだ。シンプルな、何の変哲もない手袋。
「実験室に、新しい鍵付き棚を見つけてくれたお礼だよ」
にこにこしながら差し出してくるクレマン先生に、嬉しそうな顔を作るのは、正直なところ辛かった。
この時点で、普通の手袋しかくれないということは、つまり好感度がイマイチということなのだ。
やっぱり、隠しキャラは攻略が難しいわね。アイテムもらえるだけマシか。そうだ。ともかくも、攻略キャラ全員からアイテムをゲットしたことになる。
これで、選挙さえクリアしていればなあ。
卒業パーティの日。今回は、生徒会新役員が主体となって準備や裏方を行う。
会長のアルチュールやガスパル、ジョゼフィーヌは卒業生だから、招待客の側になる。そしてシャルルやディディエは主催者側。
あたしは旧生徒会役員だけど、卒業生でもなく、新役員でもない。ゲームのシナリオと違って、モブと同じ立ち位置になる。ドレスも去年の使い回しだし。
変な気分だった。
それでも、シャルルから貰った首飾り、ディディエからの髪飾り、リュシアンからの靴を身につけていると、周囲から目を止められる程度には、目立つ存在になったみたいだ。
何人からかは、直接褒められたものだ。それには、あたしという素材の良さも一役買っていると思うわ。
そうそう、クレマン先生からのプレゼントも嵌めている。一見、既製品と変わらないけど、実は生地も縫製も上等だった。
ゲーム的にはイマイチでも、もっと喜んでおけば良かったな。
「待たせたな。仕事が詰まっていて、遅くなった」
リュシアンがやってきた。卒業生らしく、華やかな衣装を纏っている。あたしが彼に贈られた靴を履いているのを確認して、にっこり笑った。いい感じ。
「こんな時まで、風紀委員長は大変なんですね」
「そうだな。だが、これで最後だ」
髪の色に合わせて赤を基調とした礼服は、攻略キャラらしく会場でも目立つ。
その隣に地味なドレスで立つのは、ちょっと勇気がいる。でも、在校生は地味なドレスを着る決まりなのだ。
見回してみれば、バスチアンと婚約しているあの銀髪取り巻き令嬢や、『ヤンデレ! ノブリージュ学園』ヒロインのマリエルもいた。
側に立つのは、ガスパル副会長。そうか、ドMと結ばれるのな。
そのほかにも、ぼちぼち在校生と卒業生の組み合わせを確認し、自分を安心させた。シナリオとズレていると、不安になるんだよね。卒業パーティといえば、断罪だし。
あれ? そう言えば、『ヤンデレ!』の断罪は、このパーティだよね。ゲーム期間は、一年間だもの。
モブ的立場になったあたしには、断罪のシナリオは入って来ないってことか?
ソランジュの気持ちが、ちょっとわかる気がするわ。
「さあ、行くぞ」
既に会場入りしている在校生の視線を浴びながら、リュシアンにエスコートされる。
ゲーム画面で見るのと、実際に手を取られて歩くのは、全然違う体験だ。すっごく楽しい。
「ノブリージュ学園を今回卒業する生徒から、二組の婚約が成立したことを、この場でご披露いたします。一組目は、アルチュール=ゴンドラン生徒会長とジョゼフィーヌ=シャミヤール会計担当、二組目はガスパル=メーストル生徒会副会長とマリエル=シャティヨン嬢です。この度は、誠におめでとうございます」
ダンスが始まる前に、婚約発表があった。『ヤンデレ!』クリアしているあたしに、驚きはない。
でも会場からは、結構な驚きの声が上がっていた。
耳元で、あんまり大声を出されたので、思わず顔を向けると、何か見覚えのある女がド派手なドレスを着て、マリエルを睨みつけていた。
誰だっけ?
しばし考えてから思い出す。エヴァ=クルタヴェル、とか言ったモブだわ。
あたしに対抗して書記になろうとした。
そういえば、選挙で負けた後、何かと突っかかってきた覚えがあったなあ。こっちは逆ハーに忙しくて、あんまり気にしていなかったけど。
マリエルを睨んでいるのは、あたしと間違えている訳じゃないよね。
背後を取られるのは不安だったから、そろそろと移動して距離を取った。
仕事か何かで、席を外していたリュシアンが戻ってきた。手を取られ、会場中ほどへ移動する。
音楽が始まった。リュシアンは、ダンスが上手い。リードに乗って、流れるようにステップを踏むのが気持ちいい。
「今日は、エスコートさせてくれてありがとう」
「こちらこそ。リュシアン先輩がご卒業されると、寂しくなりますわ」
学園からは去るけれど、騎士団に入るから、街イベントで絡むのよね。
「留年する訳にいかないからな」
楽しそうに言うリュシアン。留年した生徒の話は聞いたことがない。補習で無理にでも押し出すか、退学願うか。
でも、メロデウェルの社交界で、ノブリージュ学園を卒業していない貴族の話も聞いたことがない。
「それで、仕事や付き合いで一緒にいることができないのだが、大丈夫か?」
大丈夫。多分、シャルルやディディエが来てくれるから。とは言わず。
「ご心配なく。今、踊ってくださった思い出を大事にします」
控えめに微笑んだあたしを、リュシアンが真面目な表情で見つめる。お、ここは熱いハートが飛び交うスチルだったか?
「ありがとう。だが、他の人とも踊って、どうか最後まで会場に残ってくれ」
「はい?」
「パーティが閉会するまで、会場に残ってほしい」
おお、これは、告白イベント来たー!
リュシアンルートの攻略が早いと、卒業する時に告白してくれるんだよね。でも、確か告白イベントは卒業式だった気もするけど。
「はい、喜んで」
うっかり、告白を受けた時のセリフを返してしまったわ。いいように解釈してくれたのか、リュシアンは怪しまなかった。
そして曲が終わると、最後までいるように念押しして、去っていった。
その後リュシアンは、卒業生の誰彼と踊っていた。婚約者のフロランスは、卒業して領地へ戻っているものね。
在校生のダンスの間、あたしが壁の花になる心配は全然なかった。
むしろ出ずっぱりというか。
シャルルもディディエも誘いに来たし、『ヤンデレ!』の攻略キャラであるアルチュールやガスパルとも一回ずつ踊ることができた。
一緒に生徒会役員を務めたお礼ってことらしい。会計のジョゼフィーヌも踊りの合間に話しに来てくれた。その上、クレマン先生まで来た。これは意外で嬉しかった。
『ヤンデレ!』メイン攻略キャラのイーゴリ=オレーグとも話ができた。黒髪銀目の貴公子だ。
「一年間の留学を終えて、帰国します。在学中、生徒会役員の皆様にはお世話になりました」
「ご丁寧に、ありがとうございます」
「ところで、つかぬことをお伺いします。一学年下のマリエル=シャティヨン伯爵令嬢とは、遠続きでいらっしゃいますか?」
「いいえ。そういえば、似ていると言われますね」
ああ、ここにも運営の雑な設定に惑わされた人がいるよ。
そして閉会の時。アルチュール生徒会長が挨拶をする。
「今暫し、猶予をいただき、お付き合いいただきたい」
静まり返った会場に、会長の声が響く。え、何が始まるんだ?
まさかリュシアンの告白イベントをここにぶち込まないよね。
エヴァとソランジュの名前が上がっても、あたしは事の成り行きが見えなかった。
「エヴァ=クルタヴェル、ソランジュ=ラルミナ。二人は、先頃実施された生徒会役員選挙において、不正行為を働いた」
『ヤンデレ!』断罪イベントか!
踊っているうちに、すっかり忘れていたわ。
でもソランジュはともかく、エヴァも?
どう記憶を漁っても、『ラブきゅん!』はもちろん、『ヤンデレ!』ともシナリオが一致しない。
じゃ、どうなるんだ?
「証拠もなしに、冤罪を被せるおつもりですか」
「証拠なら、こちらにある」
風紀委員長のリュシアンが、アルチュールに分厚い書類を手渡す。あたしを見て、微かに笑ってみせた気がした。
要するに、ソランジュは、エヴァから資金援助を得て、生徒達の票を買収したらしい。学園で定められたお茶会以外で、ということみたいだけど。
クエストで稼いだ金!
リュシアンが言っていたのは、このことか。あたしは、いつかの忠告を思い出した。
ありがとうリュシアン!
ケチらず、シャルルとディディエにそれなりに返しておいてよかったわ。
ヒロインが金の不正で断罪、ってイメージ崩壊でしょ。
「これらの罪状により、我々生徒会役員会は、ソランジュ=ラルミナの副会長当選を取り消し、次点のアメリ=デュモンド嬢を、繰り上げ当選と認定する」
副会長に、なれた。シナリオ修正力?
あたしがクエスト頑張ったから?
落選してからのまさかの復活当選で、副会長になるとは思っていなかった。
卒業式までの短い期間で、急ぎ引継ぎする羽目に。とは言っても、それまで書記だったし、次年度役員への引継ぎの場にはいたから、何となく流れは頭に入っている。
一緒に働くのは、シャルルとディディエだし、あ、銀髪娘もね。なんとかなるよね、という感じで済んだのは良かった。
気忙しくて、嬉しさが後回しになったけど、落ち着いて信頼できるって、みんなの印象も却って上がったように思う。
金とか義理で買われたとはいえ、一応選挙であたしに投票していない人が多かった訳だからね。
あと、最終成績が二位に下がってしまった。一位はシャルル。この学園の成績評定システムが公開されていないから、理由はイマイチわからん。
これも、クエストの影響かも。
学年主任と面談したけど、モブに聞いてもなあ。
あたしにわかるのは、シャルルの好感度が現時点で望めるマックスじゃないってこと。
ゲームだと、ここであたしが一位を取れば、シャルルがライバル心から、あたしに興味を持ち続けるんだよね。
宝石付き首飾りをもらえて、油断したな。最終学年になってから、盛り返さないと。
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