上 下
23 / 74
第二章 留学生

5 アリバイ工作ですね

しおりを挟む
 親睦武道会の日がやってきた。全学年を、紅白二組に分けて競うのだ。

 二年目でも、ここでは主にリュシアン絡みのイベントになる。

 一年目では、シャルル王子とのイベントが多かったのが、二年目になると、リュシアンの出現頻度が高くなる。婚約者のフロランスが卒業でいなくなったから、狙い目ということなのね。

 組分けは、ゲームで見たまんま、アメリちゃんと攻略対象の生徒三人が同じ白組で、サンドリーヌとわたしは紅組だった。
 この間見かけた銀髪の女子生徒とも同じ組になったことで、サンドリーヌから紹介された。

 ドリアーヌ=シャトノワ公爵令嬢。王子と同じクラスにいて、側近のバスチアンと婚約していた。
 彼女は、サンドリーヌを慕っているようだ。つまりは、悪役令嬢の取り巻きだ。

 わたしのゲームでの記憶は正しかった‥‥ということは、同じ紅組にいるわたしも、悪役令嬢の取り巻きということになるのかしら?
 アメリちゃんの敵には、なりたくないなあ。

 「ところで、あそこにいる子は誰?」

 こちらは堂々悪役令嬢のサンドリーヌが、偉そうに指し示す。そこには、美少年に囲まれるストロベリーゴールドの頭があった。

 クラスメートのマリエル=シャティヨンだ。
 少し離れたところに、イーゴリ=オレーグがいる。
 二人は、授業で同じグループになることが多い。二人で組になる授業では親しげに言葉を交わすのだけれど、自由時間になると、引き離されてしまう。

 明るく気さくなマリエルの周りには人垣ができて、イーゴリはその輪に入れない。
 代わりに、他の女子生徒が彼を囲んでしまうのだ。

 玉の輿とかコネ作り狙いで擦り寄っているのが見え見えで、傍目はためにも気持ちの良いものではない。
 そんな彼女たちにも、イーゴリは公平に話しかけ、令嬢の夢見がちな心を、更に燃え立たせるのであった。
 案外罪な男だわ。

 彼には今日も、ソランジュ=ラルミナが側に張り付いている。
 その更に後ろに、ナタリー=クルタヴェルが所在しょざいなさげに立っていた。副代表委員として、ソランジュに引っ張られてきた感じだ。

 「周りにおられるのは、生徒会本部の方々ですね。会長のアルチュール=ゴンドラン様、副会長のガスパル=メーストル様、会計のジョゼフィーヌ=シャミヤール様。真ん中にいるのは‥‥ではありませんね」

 ドリアーヌが遠目に確認しながら、言わずもがなの念押しをする。名前を挙げなかった唯一の人は、アメリちゃんだ。
 悪役令嬢のご友人として、やっぱり彼女は、ヒロインがお気に召さないらしい。

 「真ん中にいるのは、わたしと同じクラスのマリエル=シャティヨン伯爵令嬢です。企画委員をしています」

 わたしはドリアーヌとサンドリーヌに向けて説明した。髪色が似ているだけで敵を増やすのは、マリエルに気の毒だもの。

 「なるほど。シャティヨン家では、先ごろ、優秀な平民を養子に迎えた、と言っておりました。あの子のことですわね」

 ドリアーヌが思い出したように言った。口調がやわらいでいる。良かった。ピンク頭は全部敵に見える設定じゃないのね。
 ホッとしてサンドリーヌを見たわたしは、ひっと声を上げそうになった。

 「あのような髪色が、二人と存在するとは思わなかったわ。何も起こらないといいけれど」

 平坦な口調で話すサンドリーヌの冷たい水色の瞳が、わたしを見下ろしていた。
 お前、何か隠しているだろう、という無言の圧力。
 乙女ゲーム関連の話だよね?

 今回のイベントで起こるはずの出来事は伝えたわよね。わたしは自分に大急ぎで確認する。
 言い忘れたことがあるとすれば、マリエルが続編とか、別ゲームのヒロインがもしれないってこと。

 ていうか、わたしだってわかんないのに、説明できないよ。
 モテモテピンクを見て、乙女ゲーム関係者を連想するサンドリーヌは、馬鹿には見えない。勉強も、もっと頑張れば王子と同じクラスになれるのに。

 あの光景は、スチルっぽい。ヒロインを囲む攻略対象の図ですかね。
 ジョゼフィーヌは女子生徒だから悪役令嬢? それにしては和気藹々わきあいあいだ。
 言い訳したくとも、今はドリアーヌが側にいる。前世だの乙女ゲーだの、とてもじゃないが、口にできない。

 「初めての参加ですもの。何が起きるか、わたしには、全然予想もつきませんわ」

 遠回しに、わかりませーん、と言ってみた。サンドリーヌは、ふん、と鼻を鳴らすように息を出しただけだった。
 何とか、責められずに済んだみたい。ああ、怖かった。

 ちなみに親睦武道会では、同じチームになったシャルル王子とアメリが一緒に仲間を応援することで、好感度を上げることができる。
 また、個別にディディエくんを応援すると、彼の好感度が上がる。

 メインイベントは、剣術試合だ。個人トーナメント戦で、騎士団長の息子リュシアンが優勝候補。アメリちゃんもここに参加して、ヒロインらしく次々勝ち上がって行く。

 ここで使う剣は安全な模擬剣もぎけんなのだけれど、アメリちゃんが戦う相手の剣だけ本物とすり替えられていて、しかもよろいひもが切れやすく細工してあったのだ。

 そして怪我を負ったヒロインをリュシアンがお姫様抱っこで運び、かたきを討つかのように敢然かんぜんと戦いの場へおもむくのだった‥‥というストーリー。

 ゲームでは、剣のすり替えと紐の細工を、サンドリーヌがやったことになっていた。親睦会の前日、各委員が準備を手伝うのだ。

 「あら。確かに私、今年は代表副委員になったわ」

 イベントフラグの説明をすると、サンドリーヌは言ったものだった。
 何でも、新入生の時に委員会活動をしなかったせいで成績評価がダダ下がりし、王子から代表委員をするよう命じられたのだとか。

 ゲームのシナリオと違うわよ、それ。

 サンドリーヌは一年生の時から、王子と一緒にいたいという理由で、委員会活動をしていた。
 それで去年の親睦武道会では、ハチをアメリの馬にけしかけて暴走させたの。
 え、やっていない?

 でも、アメリの乗った馬は、確かに暴走したって、言っていたよね?
 サンドリーヌが本当にやっていないのなら、シナリオ修正力かしら?

 悪役令嬢が主人公と違うクラスという時点で、シナリオから外れているのよね。
 クラスが違ったら、意地悪もできない。だって、全然会わないもの。
 わたしも別のクラスの生徒の名前と顔、いまだに覚えられないくらい。

 今回、わたしから情報をもらったサンドリーヌは、前日の準備の間、必ず誰かと一緒に動くようにしたらしい。
 それも、なるべく色々な人を選んで。

 つまり、アメリちゃんと戦う相手の剣をすり替えたり、鎧に仕掛けをするすきはなかったって、一緒にいた人たちに証言してもらうアリバイ工作をしたって訳。
 そして当日は、わたしやドリアーヌと一緒に皆から見える場所に居座っている。

 サンドリーヌがやらなければ、理論上、剣のすり替えや鎧の細工は起こらない。リュシアンとのイベントも起こらない。
 アメリちゃんがリュシアンルートを選んでくれれば、サンドリーヌもわたしも邪魔しなくて済む。ゲームでは何故かサンドリーヌが死ぬ結末だけど、意地悪しなければ、何とかなるかもしれない。
 そのためには、この武道会イベントで、リュシアンとの好感度を上げてもらわないといけないのだ。

 去年も、サンドリーヌがやっていないのに、イベントは起きた。今年もイベントは発生するかもしれない。

 今度は蜂じゃなくて、明らかに人の手になる妨害だ。
 疑われるのは、サンドリーヌのような気がする。

 そうなると、バスチアンの婚約者とディディエくんの婚約者は、証人として認められないんじゃないかな。
 ヒロインがリュシアンルートを順調に進めても、サンドリーヌが糾弾きゅうだんされたら意味がない。アリバイ工作に協力したと見られて、わたしまで一蓮托生いちれんたくしょうに断罪されるだろう。

 悩ましい問題だわ。


 親睦会の競技は、順調に進んでいた。
 今は、馬に乗ったまま弓で的を射る、流鏑馬やぶさめの西洋版が行われている。ディディエくんがこれに出場しているのは、ゲームと一緒。
 体力を使うのに、平気で馬を乗りこなしている。病弱設定だった彼はどこへ行ったのかしらん。

 ディディエくんは、落馬もせず、的にも何とか矢を当てて、競技を終えた。
 姉のサンドリーヌも熱心に観戦していた。ゲームじゃいじめていたんだけれどな。実際には、姉弟の仲はとても良い。

 わたしがディディエ推しだったら、嫉妬してしまったかも。そしてアメリちゃんの声援は、離れたこっちの方までよく聞こえてきた。好感度アップだね。

 「あんなに大声を出して、はしたないですわ」

 ドリアーヌからの好感度は、大幅ダウンだ。
 悪役令嬢の手先として仕掛けをする可能性もあったけど、サンドリーヌが命令しなければ、彼女はそこまでやらないんじゃないかと思う。
 今日は一緒にいることで、サンドリーヌと彼女自身のアリバイを作っている。
 もちろん、彼女は乙女ゲームのことなど知らない。

 競技の合間に、ジョゼフィーヌ=シャミヤールがやってきた。ブルネットの豊かな髪を後ろで一つに結び、乗馬服に身を包んだ姿が格好良くて、王子様みたいだ。

 「サンドリーヌ様、ドリアーヌ様、調子はいかがですか?」

 「よろしくてよ。シャミヤール様、こちらロタリンギア王国から留学中の、ロザモンド=ラインフェルデン公爵令嬢。弟のディディエと婚約しておりますの」

 とサンドリーヌが紹介の労を取る。ジョゼフィーヌは、紹介が終わると、早速わたしへ語りかけてきた。

 「ラインフェルデン様の元に、エルミーヌという侍女がおられるでしょう?」

 エルミーヌ? エルミイネ‥‥ヘエルミーネ?

 「シャミヤール様。どうか、ロザモンドとお呼びくださいまし。もしかして、ヘルミーネのことでしょうか?」

 ジョゼフィーヌは青い瞳をまたたかせた。すぐに笑顔を取り戻す。

 「わかったわ、ロザモンド様。ロタリンギア風に呼ばれているのね。ええ、そう。ヘルミーネのこと。彼女は私の遠縁で、兄と同じ時期に学園で学んだの。今度お茶会にお招きした時、ご一緒に参加してくださると嬉しいわ」

 思わぬところで、つながりができてしまった。
 
 「お誘いありがとうございます。ヘルミーネにも申し伝えます」
 「約束よ。あら、剣術が始まるわ。では、ごきげんよう」

 ジョゼフィーヌは行ってしまった。
 どこへ行くかと見ていると、ストロベリーゴールドのところへまっしぐらである。そこには、生徒会本部の面々が揃っていた。

 やっぱり、マリエルも何かのヒロインだよね。

 その彼女と親しくするジョゼフィーヌがわたしに近付くということは、わたしは、の方の悪役令嬢なのかしら?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

ゲームの序盤に殺されるモブに転生してしまった

白雲八鈴
恋愛
「お前の様な奴が俺に近づくな!身の程を知れ!」 な····なんて、推しが尊いのでしょう。ぐふっ。わが人生に悔いなし! ここは乙女ゲームの世界。学園の七不思議を興味をもった主人公が7人の男子生徒と共に学園の七不思議を調べていたところに学園内で次々と事件が起こっていくのです。 ある女生徒が何者かに襲われることで、本格的に話が始まるゲーム【ラビリンスは人の夢を喰らう】の世界なのです。 その事件の開始の合図かのように襲われる一番目の犠牲者というのが、なんとこの私なのです。 内容的にはホラーゲームなのですが、それよりも私の推しがいる世界で推しを陰ながら愛でることを堪能したいと思います! *ホラーゲームとありますが、全くホラー要素はありません。 *モブ主人のよくあるお話です。さらりと読んでいただけたらと思っております。 *作者の目は節穴のため、誤字脱字は存在します。 *小説家になろう様にも投稿しております。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結】ヤンデレ設定の義弟を手塩にかけたら、シスコン大魔法士に育ちました!?

三月よる
恋愛
14歳の誕生日、ピフラは自分が乙女ゲーム「LOVE/HEART(ラブハート)」通称「ラブハ」の悪役である事に気がついた。シナリオ通りなら、ピフラは義弟ガルムの心を病ませ、ヤンデレ化した彼に殺されてしまう運命。生き残りのため、ピフラはガルムのヤンデレ化を防止すべく、彼を手塩にかけて育てる事を決意する。その後、メイドに命を狙われる事件がありながらも、良好な関係を築いてきた2人。 そして10年後。シスコンに育ったガルムに、ピフラは婚活を邪魔されていた。姉離れのためにガルムを結婚させようと、ピフラは相手のヒロインを探すことに。そんなある日、ピフラは謎の美丈夫ウォラクに出会った。彼はガルムと同じ赤い瞳をしていた。そこで「赤目」と「悪魔と黒魔法士」の秘密の相関関係を聞かされる。その秘密が過去のメイド事件と重なり、ピフラはガルムに疑心を抱き始めた。一方、ピフラを監視していたガルムは自分以外の赤目と接触したピフラを監禁して──?

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

処理中です...