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7 ライバルに奪われる * BL描写あり

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 「ああっ、ダメっ。内視鏡嫌いなんだってば」

 「慣れてください。こっちを気持ちよくしてあげます」

 内視鏡。病院か、ここは? 西洋中世ファンタジーな世界で、えげつない夢を見ていた気がする。少し肌寒い。

 目を開けると、俺がいるのは、西洋中世ファンタジーな世界だった。一瞬、前世に戻ったかと思った。俺はソファにもたれたまま、眠っていたらしい。

 そして、繰り広げられている光景に、釘付けとなった。

 エイリークが乱れている。
 乳首をいじられながら陰茎をしごかれ、多分アナルに淫棒を突っ込まれている。こちらに顔を向けているが、目はうつろで、半開きの唇から、涎が垂れている。

 背後から覗くファツィオと、目が合った。勝ち誇った笑みを浮かべ、エイリークの顔を横へ向けて口付けした。舌が絡む。

 ドピュッ、と白い精液が飛び出した。ファツィオはエイリークに口付けしたまま、体を後ろへ向かせ、陰部同士を擦り合わせつつ、背中から腰を撫でさする。

 「むむむ」

 「エイリーク様、いい子です。もう勃ってきましたよ」

 大きな音を立てながら、首筋を吸いまくるファツィオ。またぞろキスマークを量産する気だ。視線を俺に据え、見せつけるように、顔を胸まで下げる。

 「あうっ」

 ぴちゃぴちゃ濡れた音が、上と下から聞こえてきた。乳首を舐められたエイリークが快感に我慢汁を出しているのだ。乱れた黒髪が汗で背中に張り付いているのも、エロい。

 俺は、動けなかった。

 薬の影響で体が重いせいもあるが、エイリークが女みたいにのけぞってよがるのを、悔しくも羨ましく感じていた。
 あんな風に、俺が、彼を快感に乱れさせたい。一方で、俺もあんな風に抱かれたい、と思ってしまったのだ。

 決して、エイリークとのセックスが、物足りない訳では、ない。さっきファツィオに抱かれた記憶と、薬の影響だ。

 「はうっ。いっちゃう。出ちゃう。もうだめっ」

 「いいですよ。出してください」

 じゅぼじゅぼと濁った音が激しくなり、またもエイリークは精子を放出した。

 ベッドの上ベタベタっぽい。俺なら、一回一回、綺麗にするところだ。ファツィオは気にせず、いや避けているのかもしれないが、エイリークをベッドへ仰向けに寝かせた。エイリークは、されるがままだ。

 「エイリーク様。そのとろけた顔も、素敵です」

 うっとりと眺めるファツィオの顔も、色気がダダ漏れである。
 またも、唇を合わせて涎を注ぎ込む。エイリークの体が、ビクビクと跳ねる。
 ファツィオは、キスを止めると、唇を肌にぴたりとつけたまま、下へ下へと這わせていった。通り過ぎた乳首は指でいじっている。へそまで来て、既に屹立きつりつしていた陰茎を、躊躇ためらいもなくくわえ込んだ。

 「あ、あっあっ。だ、汚い」

 「汚くなんか、ありませんよ。エイリーク様のものなら、何だって」

 一旦離した唇を、今度は先っぽだけムニムニと挟むようにいじめ、隙間から出した舌で、チロチロ刺激する。

 「それだめっ。おかしくなっちゃう」

 「いいですよ。僕の前で、おかしくなって」

 ファツィオの声が濡れている。自らの陰茎をしごきながら、エイリークのそれも握り、口と手でイかせようとしていた。段々余裕がなくなってきたのか、息が荒くなり、ひたすらエイリークを見つめている。

 俺は、手足が動かせることに気付いた。薬の効き目が薄れてきたのだ。
 それだけの時間が、過ぎてしまった、ということでもある。忸怩じくじたる思いが込み上げる。
 二人の様子を窺いつつ、じりじりと体をずらす。

 「い、いくっ。出ちゃう、出ちゃうよお」

 「ぼ、僕も。一緒に、エイリーク様っ」

 二人が達する瞬間を見計らい、俺は立ち上がってベッドへ突進した。白い精液が宙を舞う。
 驚いたことに、エイリークもまた、強烈な横蹴りを、ファツィオに食らわせていた。

 「ぐほっ」

 元男として言わせて貰う。出した瞬間に襲われた時のダメージは、めちゃくちゃでかい。出した分すっきりしたとか、そこは問題ではなく、数百メートルダッシュ後ゴールしてほっとした瞬間、ぎ倒された感じ。
 下手撃てば死ぬる。

 逆に、そんな状態で必殺の蹴りを入れたエイリークだって死にかねないのだが、よく見れば彼の方は出していなかった。変わらず怒張している。
 射精を我慢するのも、それはそれでしんどい筈。

 ファツィオといえば、白目を剥いてベッドの上に倒れている。エイリークが呼吸と脈を確かめ、こちらを向いた。

 「気を失っているだけです」

 「そうか。全員一応無事、ということになるかな」

 俺の時みたいに、エイリークの手足を縛っておかなかったのが、奴の敗因だ。
 自分でも言っていたではないか。彼は強いって。

 薬を飲ませるところから始めないといけなかったから、余裕がなかったのか、エイリークを目の前にして興奮で我を忘れたか。
 お陰で、こっちは助かった。

 「魔法は、使えないんだったかな」

 精液まみれのエイリークを、そのままにしておきたくない。しかもファツィオの精液と混じっているのが、無性むしょうに腹立たしい。

 「ダメもとで、やってみるか」

 試しに清浄魔法をかけてみると、見事に効いた。

 「攻撃魔法だけ、無効化されるのかもしれません。全て使えないとなると、生活に不便でしょう」

 「そうだな」

 投げ捨ててあったガウンの紐で、ファツィオの手を後ろ手に縛る。効くかわからないが、一応睡眠魔法もかけてみた。
 これも、かかった気がする。誰か城に不眠症でもいるのだろうか。

 「ところで、それ、出してやろうか?」

 一通り片付けた後、俺の言葉に視線を辿ったエイリークが、局部を両手で隠す。
 今更な、ウブな反応。しかも、デカ過ぎて隠しきれない。
 綺麗にしたばかりなのに、もう先っぽから我慢汁がにじんでいる。

 「え? いえいえいえ。放っておけば、治るでしょう」

 「何を言っているんだ。出したほうが早い。そうだ。それも治さないといけない」

 俺は、ファツィオのキスマークに触れた。エイリークがびくんと反応し、マークは消えた。要は内出血だから、治癒魔法で消える。

 「ユリア様の傷を先に治したいです」

 俺にも、ファツィオのキスマークがあるのだ。

 「そんなに酷いか?」

 「普通の服を着たら、見るに耐えないかと」

 「じゃあ、自分じゃ見えない箇所もあるから、エイリークが唇で教えてくれないか。俺が一緒に、手を当てて治していく」

 「何で唇なんです?」

 そこで冷静に突っ込まないで欲しい。

 「記憶を上書きしたいから」

 エイリークの頬にそっと触れると、その手を掴まれた。

 「お手伝いいたします」

 騎士が淑女の手にするように、唇を当てられた。背中がゾクゾクした。


 お互い『上書き』し終えるまでに、結構時間がかかってしまった。ベッドには、腕を縛られたファツィオが昏倒こんとうしているし、そんなことをしている場合ではないのだが。

 俺たちはソファへ移動して互いのキスマークを消しているうちに、例によって催してきて、咥えたり挿れられたりして、しまいに夜が明けてきた。

 ファツィオはあのまま寝てしまったらしく、一度も起きなかった、と思う。多分。起きたら俺たちの邪魔をするだろうから。

 「さて、彼をどうしましょうか」

 「殺したくはないんだよね。追われる身になるのも嫌だし」

 「同感です。私にとっては、元部下でもあります」

 二人でファツィオの側へ寄ると、気配を感じたのか、呻き出した。一晩中縛られたままで、体もキツかろう。

 「エイリーク様‥‥うう、肩が痛い」

 後ろ手に縛られ、乱れた髪の金髪美形が寝起きの眼差しを送る様も、色気がある。
 尤もエイリークは無反応だった。俺と違って徹夜したのに、平常運転だ。

 「悪いが、こちらの都合で縛らせてもらった。今、外そう」

 「いいの? 大丈夫?」

 思わず問いかける。碧眼が俺を見て、何か察したようだった。

 「ああ。僕は、負けたんですね」

 媚薬を使う時点で、アウトだと思う。
 エイリークはそんなファツィオのいましめを手早く解くと、体を支えてベッドに上体を起こせるように手伝った。

 「ファツィオ。私には、男同士のあれは、向いていない」

 「でも、気持ち良かったでしょう?」

 「‥‥挿入がダメだ。無理」

 詰められて、直接的な言葉を使ったせいか、エイリークの頬にさっと血がのぼる。

 「じゃ、挿入はしませんから」

 営業の断り方の、ダメなパターンにハマりつつある。俺はエイリークに腕を絡めた。

 「エイリークは私と付き合っているんだから、他の人とは、男でも女でもやらないの」

 「そんなあ。僕、エイリーク様のお側にいたくて転生したのに」

 ファツィオが項垂うなだれた。エイリークは、目をみはって彼、続いて俺を見た。これは、呆れている顔だ。

 「私とお前は、もう上司と部下ではない。お前は貴族で私は平民。一緒に生きるのは、難しいだろう」

 「でも、僕は、一応子爵位を持っていても三男坊で、上に姉様二人もいるから、政略結婚にも関わらなくていいし、好きに生きていいって言われています。騎士団に入ったのも、もし貴方が高位貴族の家に転生していた場合に備えて、出世の道を作るためです。今なら平民と結婚しても、大した問題にはなりません」

 「私は男なんだが」

 「男同士でも結婚できますよ。養子を取れば、家名の存続もできます。まあ、双方の合意についての審査や手続きが男女の結婚よりも厳しいですが」

 「ふええ、すごいな」

 「進んでいる」

 俺もエイリークも驚き、感心した。俺はエイリークとのことしか考えていなかったから、男同士の結婚について関心がなかった。

 「その点でも、騎士団所属は有利です。男性同士で愛を深め合っている先例が、いくつもあります」

 「そうなのか」

 エイリークはもう、感心してファツィオの話に聞き入っている。やはり、徹夜で頭の回転が鈍っているのかも。

 「家の者も、僕が恋愛に全く関心を持たないことにヤキモキしていたので、昨日初めてエイリーク様とユリアを連れ込んだのを、喜んでいました」

 「ああ」

 なるほど。俺は、昨日の召使たちの様子を思い出して、合点がいった。

 「連れ込んだというより、貴族の力でかどわかした、と言った方が正確だな」

 エイリークが言った。
 そうだ。ファツィオは腐っても貴族。貴族の権力を使えば、平民の俺たちを無理やり従わせることなど簡単なのだ。
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