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燃やすか、斬り刻むか、それが問題だ

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豪華な雰囲気でありながらも落ち着きを感じさせる応接室にはシックな色合いと上品で深みのあるデザインのヴィクトリアン調の家具や濃紺の生地に金糸銀糸が織り込まれた応接セットが配置されて部屋に僕の不似合な罵詈雑言が響いた。
といっても、怒鳴ると何事かと執事が飛んで来るのでひそひそ声だが。

「ボケっ、カス、能無しのインポ!」

僕は怒りに震え、拳を握りしめた。
罵る言葉も頭に血が昇っているせいかいまひとつだ。
目の前の猫脚の応接テーブルの上には、兄さん宛に届いたの見合いの釣書が30センチの少山を二つ形成している。
対面に座っているクラウスは顔を引き攣らせている。プライドが傷ついたという表情だが、知るか。
この男はクラウス ハートウィールといい、信じ難いが王弟という立場にある。
騎士並の体格の良さを持ち、精悍な顔立ち、所作も洗練されていることから当然、モテる。
狙いをつけた相手は99%落としてきたらしい。
だから、よもや失敗するとは思わなかったのに・・・
王弟殿下のくせに何だかんだと用をつけては、兄さんのところに遊びに来るのでおかしいなと思い、ある日、

「王弟殿下は金の月をお望みで」

兄さんが巷では麗しの金の月と呼ばれていたからそれに引っかけたら

「隣で生涯、愛でたいくらいにはね」

と言い切りやがった。
腐っても王弟だ。
我が家の財産に手を付けるようなことはないだろう、上手くすれば、財産が減るどころか結納金がタンマリと入ってくる。
是非とも応援せねば!といろいろと協力してやった結果がこれかと思うと情けなくて涙どころか笑いすら出てこない。

「あんたさえ、しっかりズボっと一発犯ってさえいれば、こんなことにはならなかったんだ!どうしてくれるんだよ‼」

こんなことになったのも全てはこいつがコトをなさなかったからじゃないか。
あまりの悔しさと情けなさに一番上にあった釣書を掴み、クラウスに投げつけた。
クラウスはヒョイとさり気なく避ける。

「避けるな、この腐れ外道」

「腐れ外道って・・・綺麗な顔していう台詞じゃないな」

「ふん」

避けられたことがまた腹立たしく、僕はクラウスを睨みつけた。

「どうして、お人好しの兄さんひとり簡単に落とせないんだよ」

「本気で惚れるとね・・・泣かれると思うと手を出しにくいんんだ」

「ええい、言うなこのヘタれが。テクのひとつも磨いてからいいな、この能無し!」

クラウスは投げつけられた釣書を元の山に戻した。

「で、これどうする気だ?このままここで燃やすか?」

「燃やして、芸術品といわれるテーブルに焦げ跡でもついたら価値が下がるじゃないか」

「なら庭で燃やすか」

「芝生が焦げる。張り替える経費は出したくない」

「斬り刻むとか」

「ゴミが出るし、絨毯の間に挟まった細かい紙くずは中々取れないんだよ。廃品回収に出したところで貴族の釣書じゃ後々面倒事になると引き取ってくれるとこもないだろうし」

「じゃあ、どうする気だ?」

「これらは不良品は着払いで送り返す」

僕は釣書の山にビシッと指を指した。

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