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淡雪、後宮回避に対策を練る・・・

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 1.持病のしゃくのため伺候できないのでと断る。
 2.当日、腹痛になりやむを得ず、お断り。
 3.不慮の事故により伺候することができなかった。
 4.文が届かなかったので、知らなかった。
 5.潔くバッくれる。
 6.私は誰?ここは何処?突発性記憶障害になる。
 7.不本意だが、仕方なく伺候する。

 返事を出す前に対策を!と僕は思いつくままに書き出し、都筑達を呼び集めた。

「どう思う?」

「どうといわれましても・・・大公閣下は何と?」

「あっ、直江ね。青髭鬼元帥の策は過激だったぞ。”人的被害のない帝都の何処だかに爆薬しかけるか“とぽつりと漏らしてたよ。直江、基本、敵は殲滅の人物だからね」

「ば、馬鹿か?」

 思わず、身分も忘れて口をついたな都筑。
 うん、わかるよ、その気持ち。
 僕も言っちゃったもん。

「光顕が止めたよ」

「ああ、流石は補佐役・・・」

「混乱を制圧し、帝都を占拠できるだけの兵力がないからって」

「淡雪様~、それは~兵力が揃ってたら~躊躇なく爆破してたということですか~」

「武人、恐るべしだよ」

「・・・」

「直江に比べたら僕のこの案は、平和的だと思わない?」

 都筑が何とも言えない表情かおをする。
 九重は眉を顰め、顳かみを押さえている。
 晴は空を仰いでいた。

「申しあげても?」

 と九重がいう。
 僕は頷く。

「淡雪様、いつから持病の癪が?」

「文が届いた瞬間から発病した」

「さようですか・・・恐れながら、1と2でごさいますが、お医師を差向けられたらどうなさるおつもりですか?すぐに仮病とバレますよ」

「そこは来栖家お抱えの洪庵こうあん医師に・・・」

「無理ですよ~淡雪様稀に見る健康優良児で~食べ過ぎ以外で~診てもらったことないじゃないですか~」

「それに、そんなことは頑固一徹~曲がった事が大っ嫌いな洪庵医師《せんせい》がしませんよ」

 だめか・・・都筑のいうとおり、頑固爺さんだもんな。
 それに、こんなこと頼んだら、正座のうえ、小一時間は説教されるおのが姿が目に浮かんだ。
 黙って1と2に取消し線を引いた。
 しかめっ面をした都筑が

「4と5ですが、これも無理ですね。使者から直接渡された文ですよ。渡さなかったとなれば、受取った者を処罰しなければなりませんし、家人の質を疑われ、いい恥です。しかも、皇妃様からとなると軽くて遠島、下手をすれば死罪ですよ。また、バッくれるなど論外です」

 そこまでは考えなかった。渡さなかっただけで罪人って怖っ。
 たかが文、されど文・・・
 冤罪を作るわけにはいかない。
 これもダメかと取消し線を引いた。

「6ですが~淡雪様~いつも怒った近江さん相手に~されますから説得力ないです~」

「いつもやってるから、真実味があるとは思わない?」

「思いません~」

「やり過ぎると通用しないということをご存知ですよね」

「貴方の頭の中の構造を見てみたいものですよ」

 3人から半ば呆れ混じりに言われた。
 しぶしぶ6にも取消し線を引いた。
 残ったのは3と7か。
 7はないとして、3はいけそうじゃないか?

「3の不慮の事故ですが、これもありえませんね」

「何でだよ」

「よろしいですか、淡雪様。皇居に伺候、参内することが決まっている場合、何事も滞りなく、速やかにが大前提です。吉方を選び、穢れを避け、万が一穢れに遭った場合は参内を控えるなどは最早、昔のこと。国の中枢にいる方々以外は大事故、大災害、敵からの侵攻、肉親の生死が係わっている時を除き参内、伺候するのが努めです。帝都に爆薬を仕掛け、参内しないなんてことは以ての外ですからね」

 都筑が眼鏡を押し上げていった。

「まぁ、災害に戦争、どれも起きそうにありませんわね」

「あっ、でも~旦那様が~お餅を喉に詰まらせたならありかも~」

「父上ならなくもない。お芋でもイケるかも・・・」

 頷く晴。
 よし、ここは父上が喉に何かを詰まらせたということにしてだな・・・

「新年の年寄りでもあるまいし。それにですね、やんごとなき処からお見舞がきたらどうするんですか」

「・・・」

「結果、残ったのは7ですわね」

「それが一番避けたいんじゃないか」

「淡雪様、人間、諦めが肝心ですわよ」

「下手な考え休むに似たり」

「案外~楽しいかもです、淡雪様~」

 楽しくなんかあるもんか、あんな取澄ました人種がうようよいるところ。気疲れしかないやい。
 このままでは行くしかないのか?どうする淡雪。
 嫌だ~、行きたくないよ~。
 なんだってこう次から次に厄介事が起きるんだよ。
 男の厄年?大殺界?天中殺?何かに取り憑かれたのか?
 ふぇ~ん、神様、仏様、御先祖様、寄進にお布施、供養するからどうにかしてください~。
 僕は苦しいときだけの神頼みをしてみたが、なんの応えもなく・・・地面に埋まり込みそうだ。
 そんな僕を他所に、九重が都筑にいう。

「そうなると、御品が必要ですわね」

「御品か・・・下手な物は持っていけないうえに、それぞれの御方用に用意をしなければならないからな」

「今からだと、時間がありませんわ」

「宛ならあります~」

「晴、本当か!?」

「お任せください~、ね、淡雪様~」

 晴が僕に振ってきた。
 えっ?なに?どういうこと?



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