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主役は花嫁、婿はモブって
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明後日の婚儀に向け、張りきったのは侍女である晴と意外なことに西蓮寺家の侍女達だった。
誰かが
「婚礼の~」
と言葉を発すれば、
「主役は花嫁、婿はモブ!」
と誰がが応え、それを聞いた侍女達が一斉に盛り上がりに盛り上がる。
その一種異常な様子に僕と都筑がドン引いたの言うまでもない。
晴はまだしも、なぜそこまで西蓮寺家の侍女達が盛り上がっているのか不思議だったのだが、漏れ聞こえてきた理由に納得した。
これまでにきた直江のお嫁さん候補達は皆、幾人もの使用人を連れ乗り込んで来きたそうだ。彼女等は我が物顔で好き勝手をしていたらしいく、西蓮寺家の使用人に一切の権限を与えず、下働き同然に扱っていたらしい。
当然、婚礼に関しても蚊帳の外で自分達の主人の婚礼にも関わらず、指一本爪先一つ出させてはもらえなかったとか言ってたな、晴が。
で、その反動もあり、彼女等は晴と一緒になって盛り上がっているらしい。
率先して、嬉々として差配し、てきぱきと動いていた。
西蓮寺家の侍女達は
“あんな奴らに使わせてなるものか”
と一致団結して秘匿していた名品の数々をここぞとばかりに宝物庫から出し、磨き上げている。
1番被害を被っているのは婚礼で主役となる僕な訳で・・・
朝からやれ、衣装はあれだ、飾り物はこっちだ、焚きしめる香はとかまびすしいことこの上ない。
うんざりして、どうにかしようにも唯一、頼りの都筑は早々に白旗を上げ、傍観者に徹しているのでにっちもさっちもいかない。
ホント、婚礼に関わる女性達の体力、気力、迫力たるや狂戦士も真っ青だよ。
それに付き合わされる我が身の不幸に涙が出てくると同時に、所詮は添え物の婿、何の被害もなくボーっとしているだろう直江に殺意を覚えても許されるというものだ。
“くっそー、婚儀後、初の共同作業、婚礼初夜、祝♡マグロ解体ショーは絶~対に手伝ってやらないからな!”
西蓮寺 直江と僕、来栖 淡雪の婚礼の儀が西蓮寺家の南庭にて綺羅びやかに執り行われた。白亜の石柱が建ち並び、技工を尽した高い格子天井からは大きなシャンデリアが下げられ、四方の壁には花鳥風月の絵画が飾られている。敷き詰められている緞通の敷物は藤の花びらが舞い散る様子を淡い紫から始まるグラデーションで織り込んでいた。回廊からは回遊式の池の様相が望め、中央の噴水からは水が高く立ち上っている。
鏡のように磨き上げられた漆の一枚板のテーブルには淡いピンクとサーモンオレンジ、白で纏めた装花で飾られており、管弦の曲と共に宴に彩りを添えていた。
昼過ぎから始まった宴は空が茜色の残影に変っても続き、庭では篝火が焚かれ始めた。
その頃になっても飽きもせず数多の招待客がわいわいとやってくるのを僕は主賓席から半眼状態で眺めていた。
早朝から起こされ、金糸銀糸で刺繍された薄絹の袍を繻子織りの中衣の上から羽織り、碧玉が付いた幾つもの髪飾りで髪を結上げれ、かれこれ半日以上経っているのだから疲れ果てている。
宴のバカ騒ぎを前に機嫌が良い筈はない。
挨拶にくる招待客に判で押したようにニコリと微笑みかけ、会釈をし続けているが、容赦のない衣装の締付けで胸は苦しいは、頭飾りは重いはで会釈すらままならない。
ホント、会釈するたびに“ぐふっ”と変な声を出さないようにするのが精一杯で、言葉を発するどころの騒ぎじゃない。
それを恥じらっていると勘違いする招待客は
「これはまた奥ゆかしい」
「ここまで初々しいとはめずらしい」
「恥じらう姿が羞花閉月ではないか」
「西蓮寺家も安泰じゃて」
と口々に言い放つ。
お酒の回った赤ら顔で何をいうか。
「冷たい水で顔と肝臓洗ってから来い!」と怒鳴りたいが怒鳴れないジレンマに身悶えた。
“いつまで続くんだよ・・・”
同じく朝から拘束されている隣の直江を盗み見た。
黒絹に銀糸の刺繍が豪華さを醸し出し、広い袖口から覗く中衣の白衣、金細工のベルトに見を包んだ直江は大公としての威厳を出していた。
若い侍女や御婦人や御令嬢方も直江の姿に目を奪われ、陶然としている。
確かにかっこいいけどもズルいとも思うし、なぜか面白くない・・・
「なにか?」
「別に」
みなさん~この姿に騙されては駄目ですよ~正体は青髭鬼元帥ですからね~気がついたらばっさり袈裟斬りですよ~フンッ。
月が中天にかかっても宴は終わりそうにもなく、うんざりとしていたら
「淡雪様、そろそろ」
と晴が声をかけてきた。
やっと開放されるのかと思うとほっとした。
「淡雪様、退出されます」
おおっ、という歓声が上がる。
何だ?
なぜ僕が退出するだけでざわざわするんだ?
回廊を歩き、湯殿へ向かう。
早く湯船に浸かり、疲れと凝りをなんとかしたい。
湯殿を前に晴が身体の前で小さく拳を握り、
「淡雪様~ファイトです~頑張ってくださいね~」
「(まぐろの解体は)初めてだけど、何とかなるかな?」
「経験値高そうな直江様に~任せておけば大丈夫ですよ~」
「そうだけど、任せっ放しっていうわけにもいかないんじゃないかな?」
「確かに~」
「大きいと大変だと思うんだよ」
「きゃ~っ、淡雪様~未婚の私に~何を仰ってるんですか~確かに~直江様のお身体から想像すると~そうですけど~」
晴が嬌声をあげて身悶える。
はぁ?未婚とか既婚とかまぐろ解体ショーに関係ないでしょうが。
晴、疲れがどっと頭にでたか?
けど、やはり直江は大物を解体しようとしているのか・・・
招待客多かったからなぁ・・・みんなに振る舞うとなればそうだよね。
「ま、まぁ、初めては大変と聞きますけど~慣れればそうでもないとか~」
「やっぱり慣れかぁ・・・慣れれば僕にもできるよな、きっと」
「えっ、淡雪様が~@ω※#&ξ」
僕は言葉にならない声を発する晴が心配になったのは言うまでもない。
誰かが
「婚礼の~」
と言葉を発すれば、
「主役は花嫁、婿はモブ!」
と誰がが応え、それを聞いた侍女達が一斉に盛り上がりに盛り上がる。
その一種異常な様子に僕と都筑がドン引いたの言うまでもない。
晴はまだしも、なぜそこまで西蓮寺家の侍女達が盛り上がっているのか不思議だったのだが、漏れ聞こえてきた理由に納得した。
これまでにきた直江のお嫁さん候補達は皆、幾人もの使用人を連れ乗り込んで来きたそうだ。彼女等は我が物顔で好き勝手をしていたらしいく、西蓮寺家の使用人に一切の権限を与えず、下働き同然に扱っていたらしい。
当然、婚礼に関しても蚊帳の外で自分達の主人の婚礼にも関わらず、指一本爪先一つ出させてはもらえなかったとか言ってたな、晴が。
で、その反動もあり、彼女等は晴と一緒になって盛り上がっているらしい。
率先して、嬉々として差配し、てきぱきと動いていた。
西蓮寺家の侍女達は
“あんな奴らに使わせてなるものか”
と一致団結して秘匿していた名品の数々をここぞとばかりに宝物庫から出し、磨き上げている。
1番被害を被っているのは婚礼で主役となる僕な訳で・・・
朝からやれ、衣装はあれだ、飾り物はこっちだ、焚きしめる香はとかまびすしいことこの上ない。
うんざりして、どうにかしようにも唯一、頼りの都筑は早々に白旗を上げ、傍観者に徹しているのでにっちもさっちもいかない。
ホント、婚礼に関わる女性達の体力、気力、迫力たるや狂戦士も真っ青だよ。
それに付き合わされる我が身の不幸に涙が出てくると同時に、所詮は添え物の婿、何の被害もなくボーっとしているだろう直江に殺意を覚えても許されるというものだ。
“くっそー、婚儀後、初の共同作業、婚礼初夜、祝♡マグロ解体ショーは絶~対に手伝ってやらないからな!”
西蓮寺 直江と僕、来栖 淡雪の婚礼の儀が西蓮寺家の南庭にて綺羅びやかに執り行われた。白亜の石柱が建ち並び、技工を尽した高い格子天井からは大きなシャンデリアが下げられ、四方の壁には花鳥風月の絵画が飾られている。敷き詰められている緞通の敷物は藤の花びらが舞い散る様子を淡い紫から始まるグラデーションで織り込んでいた。回廊からは回遊式の池の様相が望め、中央の噴水からは水が高く立ち上っている。
鏡のように磨き上げられた漆の一枚板のテーブルには淡いピンクとサーモンオレンジ、白で纏めた装花で飾られており、管弦の曲と共に宴に彩りを添えていた。
昼過ぎから始まった宴は空が茜色の残影に変っても続き、庭では篝火が焚かれ始めた。
その頃になっても飽きもせず数多の招待客がわいわいとやってくるのを僕は主賓席から半眼状態で眺めていた。
早朝から起こされ、金糸銀糸で刺繍された薄絹の袍を繻子織りの中衣の上から羽織り、碧玉が付いた幾つもの髪飾りで髪を結上げれ、かれこれ半日以上経っているのだから疲れ果てている。
宴のバカ騒ぎを前に機嫌が良い筈はない。
挨拶にくる招待客に判で押したようにニコリと微笑みかけ、会釈をし続けているが、容赦のない衣装の締付けで胸は苦しいは、頭飾りは重いはで会釈すらままならない。
ホント、会釈するたびに“ぐふっ”と変な声を出さないようにするのが精一杯で、言葉を発するどころの騒ぎじゃない。
それを恥じらっていると勘違いする招待客は
「これはまた奥ゆかしい」
「ここまで初々しいとはめずらしい」
「恥じらう姿が羞花閉月ではないか」
「西蓮寺家も安泰じゃて」
と口々に言い放つ。
お酒の回った赤ら顔で何をいうか。
「冷たい水で顔と肝臓洗ってから来い!」と怒鳴りたいが怒鳴れないジレンマに身悶えた。
“いつまで続くんだよ・・・”
同じく朝から拘束されている隣の直江を盗み見た。
黒絹に銀糸の刺繍が豪華さを醸し出し、広い袖口から覗く中衣の白衣、金細工のベルトに見を包んだ直江は大公としての威厳を出していた。
若い侍女や御婦人や御令嬢方も直江の姿に目を奪われ、陶然としている。
確かにかっこいいけどもズルいとも思うし、なぜか面白くない・・・
「なにか?」
「別に」
みなさん~この姿に騙されては駄目ですよ~正体は青髭鬼元帥ですからね~気がついたらばっさり袈裟斬りですよ~フンッ。
月が中天にかかっても宴は終わりそうにもなく、うんざりとしていたら
「淡雪様、そろそろ」
と晴が声をかけてきた。
やっと開放されるのかと思うとほっとした。
「淡雪様、退出されます」
おおっ、という歓声が上がる。
何だ?
なぜ僕が退出するだけでざわざわするんだ?
回廊を歩き、湯殿へ向かう。
早く湯船に浸かり、疲れと凝りをなんとかしたい。
湯殿を前に晴が身体の前で小さく拳を握り、
「淡雪様~ファイトです~頑張ってくださいね~」
「(まぐろの解体は)初めてだけど、何とかなるかな?」
「経験値高そうな直江様に~任せておけば大丈夫ですよ~」
「そうだけど、任せっ放しっていうわけにもいかないんじゃないかな?」
「確かに~」
「大きいと大変だと思うんだよ」
「きゃ~っ、淡雪様~未婚の私に~何を仰ってるんですか~確かに~直江様のお身体から想像すると~そうですけど~」
晴が嬌声をあげて身悶える。
はぁ?未婚とか既婚とかまぐろ解体ショーに関係ないでしょうが。
晴、疲れがどっと頭にでたか?
けど、やはり直江は大物を解体しようとしているのか・・・
招待客多かったからなぁ・・・みんなに振る舞うとなればそうだよね。
「ま、まぁ、初めては大変と聞きますけど~慣れればそうでもないとか~」
「やっぱり慣れかぁ・・・慣れれば僕にもできるよな、きっと」
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