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淡雪、ドヤ顔からの〜
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ふたりと別れた後、僕は塀から飛び降りた。
が、高さがあったために堪えきれず寄ろけて転んでしまった。
足裏と膝が地味に痛い。
痛みをやり過ごし、庭と屋敷の様子を伺った。
庭園は、御苑の緑を借景とし、広大な池を中心に廊橋で品格のある和風の佇まいを創出する入母屋(いりもや)屋根の数寄屋造り建物のを繋いでおり、外観と庭が溶け合うように造られていた。
廊橋の天井は、中央部が高く、両端が低くなっていて船底天井でその四隅には、花の透かし彫りが施されているのも見事なもので、サドっ気のあるだろう青髭公とも鬼元帥とも噂されている人物の住まいとは思えないほどの趣味の良さだ。
知り合いの屋敷なら長期に滞在させてもらうこと間違いないな。
しかし、広い上にこう暗いとあっては、どっちの方向に行けば門があるんだろうかと悩む。
誰かいないかと首を巡らせるも人っ子一人見あたらないし。
そりゃ、夜中だけどさ、一人や二人見回りの兵くらいいてもいいんじゃないの?
無用心だなぁ、まったく。
盗賊や不審者が侵入したらどうする気なんだろうかと他人事ながら心配になる。
ふと、なんとなくその部屋が目についた。
何が動いた気がした。
仕方ない、あの部屋に入ってみるか。
誰かがいたらラッキーだし。
庭から廊下伝いに屋敷へとあがった。
「おじゃましま~す」
部屋には灯りがなく、外からの月明かりを頼りに灯りを探す。
広い卓の横に燭台があった。
今どき燭台って、ランプを使用してないのかな。
まぁ、贅沢は言うまい。
僕は燭台に灯りを灯した。
部屋の内装が浮かび上がった。
燭台横の卓は漆と螺鈿を使い、竹細工で繊細に作られ、椅子は釘一切使わない指物造りで背もたれ部分等には鮮やかな赤の絹織物が用いられいていた。
壁面に並んだ紫檀の書架といいこの部屋の持ち主の端的でありながら深い味わいをもつ枯淡美は趣味が良いなと感心していたら、部屋の隅に不釣り合いな甲冑を見つけた。
近づいてよく見る。
黒鋼で造られた甲冑は細部まで手の込んだ造りで肩あてや胸板、佩楯の縁には金細工が施されており畏怖を抱かせた。
あれ、この面頬どこかで見たような・・・
面頬に気を取られていた僕の背後に立った男に気が付かなかった。
踵を返した刹那、誰もいないはずの背後にいる男に僕は飛び上がった。
「ひっ⁉」
長めの紫紺の髪を高い位置で結わえた美丈夫は、スタンドカラーのインナーの上に襟のない膝より長い丈、長い袖は袖口が広くゆったりとしている黒衣を羽織っていた。
切れ長の目は誰何するような視線を僕に向けていた。
「だ、誰?」
「・・・・・・お前こそ誰だ」
「あ、ここお前の部屋なんだ」
「質問に答えろ」
なんかエラそー。
この態度からして西蓮寺 直江かという考えが頭を掠めたが、二十代後半から三十代前半の見た目年齢からしてそれはないな。
若くして出世した家令ってとこか。
まぁ、こいつの素性なんてどうでもいい。
「よく聞け、僕は大公の4番目花嫁だ」
「お前が・・・?」
めちゃくちゃ訝しげに僕を見る。
顔の良いやつは眉根を寄せても崩れないんだなって、そんなことはどうでもいいんだよ。
そんなことより、僕が花嫁だといっているのに疑問系ってなんだよ。
失礼な。
「その花嫁が、なぜここにいる」
よくぞ聞いてくれた。
「賊に襲われて、侍従達と馬車から逃げ出したんだけど、誰も捜しに来ないわ、街道に放置されここまで歩いて来て、漸く大公家に着いたのに正門は開かないわと、最悪だよ。お陰で塀を乗越えて中に入らざる得なかったよ」
「良家の子息が塀を・・・」
男は信じられないいった体で呟いた。
「信じようが信じまいが、僕はれっきとした来栖家令息の来栖 淡雪だ」
ほれ、と晴が投げて寄こした佩玉を見せた。
「僕の素性はわかったよな。で、お前は?」
「私は・・・」
僕は返答を遮った。
みなまでは言わせない。
見下したような態度をとった男に思うところがあった僕は、男に僕がいかに人を見る目があかということを誇示しておく。
「いいよ、僕が当てるよ・・・お前は西蓮寺 直江」
男の視線が鋭くなる。
「・・・の家令だろう」
とドヤ顔で決める。
「はっ?」
「家令なら部屋をもっても不思議じゃない。遜らない態度といい、部屋の趣味だといい上級の使用人に間違いない」
「おい」
「いいよ、お前も知らなかったんだから。ぞんざいな言葉使いや態度をしたことは気にしてないよ。僕も勝手に部屋に侵入したんだし」
いざとなったときに味方につけるため冷徹な主とは反対で鷹揚な人物であることを示しておく。
「ところで、お前に聞きたいことがあるんだ。正門はどっち?」
「なぜ、そんな事を」
「侍従と侍女を待たせてるんだ・・・まさか、家令が知らないとか言わないよね」
男はため息をつくと、指で廊下を指した。
えっ、言葉で示せよ。
わかりづらいな。
真っ直ぐ行って右?
あっ、そう。
「じゃ、付いてきて」
ムッとした態度の男を従えて僕は正門に向かった。
が、高さがあったために堪えきれず寄ろけて転んでしまった。
足裏と膝が地味に痛い。
痛みをやり過ごし、庭と屋敷の様子を伺った。
庭園は、御苑の緑を借景とし、広大な池を中心に廊橋で品格のある和風の佇まいを創出する入母屋(いりもや)屋根の数寄屋造り建物のを繋いでおり、外観と庭が溶け合うように造られていた。
廊橋の天井は、中央部が高く、両端が低くなっていて船底天井でその四隅には、花の透かし彫りが施されているのも見事なもので、サドっ気のあるだろう青髭公とも鬼元帥とも噂されている人物の住まいとは思えないほどの趣味の良さだ。
知り合いの屋敷なら長期に滞在させてもらうこと間違いないな。
しかし、広い上にこう暗いとあっては、どっちの方向に行けば門があるんだろうかと悩む。
誰かいないかと首を巡らせるも人っ子一人見あたらないし。
そりゃ、夜中だけどさ、一人や二人見回りの兵くらいいてもいいんじゃないの?
無用心だなぁ、まったく。
盗賊や不審者が侵入したらどうする気なんだろうかと他人事ながら心配になる。
ふと、なんとなくその部屋が目についた。
何が動いた気がした。
仕方ない、あの部屋に入ってみるか。
誰かがいたらラッキーだし。
庭から廊下伝いに屋敷へとあがった。
「おじゃましま~す」
部屋には灯りがなく、外からの月明かりを頼りに灯りを探す。
広い卓の横に燭台があった。
今どき燭台って、ランプを使用してないのかな。
まぁ、贅沢は言うまい。
僕は燭台に灯りを灯した。
部屋の内装が浮かび上がった。
燭台横の卓は漆と螺鈿を使い、竹細工で繊細に作られ、椅子は釘一切使わない指物造りで背もたれ部分等には鮮やかな赤の絹織物が用いられいていた。
壁面に並んだ紫檀の書架といいこの部屋の持ち主の端的でありながら深い味わいをもつ枯淡美は趣味が良いなと感心していたら、部屋の隅に不釣り合いな甲冑を見つけた。
近づいてよく見る。
黒鋼で造られた甲冑は細部まで手の込んだ造りで肩あてや胸板、佩楯の縁には金細工が施されており畏怖を抱かせた。
あれ、この面頬どこかで見たような・・・
面頬に気を取られていた僕の背後に立った男に気が付かなかった。
踵を返した刹那、誰もいないはずの背後にいる男に僕は飛び上がった。
「ひっ⁉」
長めの紫紺の髪を高い位置で結わえた美丈夫は、スタンドカラーのインナーの上に襟のない膝より長い丈、長い袖は袖口が広くゆったりとしている黒衣を羽織っていた。
切れ長の目は誰何するような視線を僕に向けていた。
「だ、誰?」
「・・・・・・お前こそ誰だ」
「あ、ここお前の部屋なんだ」
「質問に答えろ」
なんかエラそー。
この態度からして西蓮寺 直江かという考えが頭を掠めたが、二十代後半から三十代前半の見た目年齢からしてそれはないな。
若くして出世した家令ってとこか。
まぁ、こいつの素性なんてどうでもいい。
「よく聞け、僕は大公の4番目花嫁だ」
「お前が・・・?」
めちゃくちゃ訝しげに僕を見る。
顔の良いやつは眉根を寄せても崩れないんだなって、そんなことはどうでもいいんだよ。
そんなことより、僕が花嫁だといっているのに疑問系ってなんだよ。
失礼な。
「その花嫁が、なぜここにいる」
よくぞ聞いてくれた。
「賊に襲われて、侍従達と馬車から逃げ出したんだけど、誰も捜しに来ないわ、街道に放置されここまで歩いて来て、漸く大公家に着いたのに正門は開かないわと、最悪だよ。お陰で塀を乗越えて中に入らざる得なかったよ」
「良家の子息が塀を・・・」
男は信じられないいった体で呟いた。
「信じようが信じまいが、僕はれっきとした来栖家令息の来栖 淡雪だ」
ほれ、と晴が投げて寄こした佩玉を見せた。
「僕の素性はわかったよな。で、お前は?」
「私は・・・」
僕は返答を遮った。
みなまでは言わせない。
見下したような態度をとった男に思うところがあった僕は、男に僕がいかに人を見る目があかということを誇示しておく。
「いいよ、僕が当てるよ・・・お前は西蓮寺 直江」
男の視線が鋭くなる。
「・・・の家令だろう」
とドヤ顔で決める。
「はっ?」
「家令なら部屋をもっても不思議じゃない。遜らない態度といい、部屋の趣味だといい上級の使用人に間違いない」
「おい」
「いいよ、お前も知らなかったんだから。ぞんざいな言葉使いや態度をしたことは気にしてないよ。僕も勝手に部屋に侵入したんだし」
いざとなったときに味方につけるため冷徹な主とは反対で鷹揚な人物であることを示しておく。
「ところで、お前に聞きたいことがあるんだ。正門はどっち?」
「なぜ、そんな事を」
「侍従と侍女を待たせてるんだ・・・まさか、家令が知らないとか言わないよね」
男はため息をつくと、指で廊下を指した。
えっ、言葉で示せよ。
わかりづらいな。
真っ直ぐ行って右?
あっ、そう。
「じゃ、付いてきて」
ムッとした態度の男を従えて僕は正門に向かった。
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