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48謎の男
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「起きろー!」
翌朝、荷馬車の中で寝ているジュンとケイの前でクリスが大声で叫んだ。
その大声に二人は飛び起き、ジュンは積んであるダンボールに頭をぶつけその勢いでダンボールがケイのお腹に直撃した。
あまりの痛さに二人が頭とお腹を抱え悶絶しているとクリスが一つ大きな咳払いをした。
「やっと起きたか。よしお前たちよく聞け。お前たちの寝相が悪すぎるから今日から宿に泊まる事にした。あと兄ちゃんをあんまり困らせんなよ?お前らのせいで昨日は御者席で座って寝たんだから」
「わかってるよ!っていうか宿にとまれんの!?やったー」
「ケイ!僕らのせいでジュリお兄ちゃんを困らせたんだよ、ちゃんと謝らなくちゃ」
ジュンがケイの背中を叩くと、ジュンは肩をすくめながら「兄ちゃんごめん……」と呟いた。その姿にくすりとジュリが笑う。
「大丈夫だよ。でもちゃんとクリスさんにお礼しないと」
「「クリスさん、ありがとうございます!!」」
「いいってことよ!よし、それじゃあ二日目行くか!」
クリスの掛け声で四人の一日が始まった。
ー---
荷馬車の荷台は乗り心地が良くない。
おまけにすぐジュンとケイが口喧嘩するからジュリはちっとも休めず頭痛と吐き気までするようになった。
それを見かねたクリスがジュリを御者席に座るよう提案したのだった。
「ごめんなさい、クリスさん・・・・・・。頭痛いし気持ち悪くて……うぅっ」
「おいおい、大丈夫か?……あー、俺のおばさん、オメガだったんだけどさ凄く悪阻酷かったんだよ。だからジュリくんも辛いのかもな。……あと一時間くらいで次の町まで行けるからそれまで頑張れ」
「ありがと……」
蹲り小声で呟く。クリスはその小さなジュリの背中を何度も摩った。
「着いたぞ、ここがルスティヒ村だ。まだ夕方だが今日はここで宿をとる。俺は今から宿を探してくるから。ジュリくんたちは市場の向かいの休憩所で休んでてくれ」
そう言って指さしたのはベンチや椅子がいくつか置いてある無料休憩所だった。
運よく今の時間は誰も使っておらずベンチで横になることも出来そうだった。
「ありがと、それじゃあ後で……」
「宿が取れたらすぐ戻るから。双子たち!お兄ちゃん体調悪いんだからよろしくな!」
「「了解!」」
そうしてジュリたちはクリスと別れたのだった。
市場はこじんまりとしているが見たことのない食べ物や雑貨がありジュンとケイは目をキラキラと輝かせ感嘆の声を上げた!
「わぁ!美味しそうな匂い!なぁジュン行ってみようぜ!」
「ねぇ、ジュリお兄ちゃん……お願い、ちょっとだけでいいから見てきてもいいかなぁ?絶対五分で戻るから!」
いつもはケイを叱ったり宥めたりする担当のジュンが珍しくケイの誘いにのっている。
ジュリは青白い顔をしながら「はぁ……」とため息をついた。
ー-この数日間、慣れない旅でストレスもあっただろうしなぁ。僕が見える範囲なら大丈夫だよね。
「わかった。じゃあ僕はそこのベンチで休んでるから。見える範囲にいてね」
ジュリがそういうと二人は「わかった」と声を揃え市場のほうへ駆けだした。
ー---
ー-はぁ、本当に気持ち悪い。なんだかむかむかするし、怠い。これが悪阻なのか……。
ジュリはベンチに横たわりながら市場を探索する二人を眺めていた。
試食をもらい、きゃあきゃあはしゃぐ姿にジュリもほっとしていた。
その時だ、突然ジュリの体の上に大きな影がかかった。
ー-ん?なにこれ?
横たわったまま顔だけ上げる。
「こんにちは、オメガちゃん」
大きな影になっていたのはニヤリと気味の悪い笑みでジュリを見下げる男だった。
翌朝、荷馬車の中で寝ているジュンとケイの前でクリスが大声で叫んだ。
その大声に二人は飛び起き、ジュンは積んであるダンボールに頭をぶつけその勢いでダンボールがケイのお腹に直撃した。
あまりの痛さに二人が頭とお腹を抱え悶絶しているとクリスが一つ大きな咳払いをした。
「やっと起きたか。よしお前たちよく聞け。お前たちの寝相が悪すぎるから今日から宿に泊まる事にした。あと兄ちゃんをあんまり困らせんなよ?お前らのせいで昨日は御者席で座って寝たんだから」
「わかってるよ!っていうか宿にとまれんの!?やったー」
「ケイ!僕らのせいでジュリお兄ちゃんを困らせたんだよ、ちゃんと謝らなくちゃ」
ジュンがケイの背中を叩くと、ジュンは肩をすくめながら「兄ちゃんごめん……」と呟いた。その姿にくすりとジュリが笑う。
「大丈夫だよ。でもちゃんとクリスさんにお礼しないと」
「「クリスさん、ありがとうございます!!」」
「いいってことよ!よし、それじゃあ二日目行くか!」
クリスの掛け声で四人の一日が始まった。
ー---
荷馬車の荷台は乗り心地が良くない。
おまけにすぐジュンとケイが口喧嘩するからジュリはちっとも休めず頭痛と吐き気までするようになった。
それを見かねたクリスがジュリを御者席に座るよう提案したのだった。
「ごめんなさい、クリスさん・・・・・・。頭痛いし気持ち悪くて……うぅっ」
「おいおい、大丈夫か?……あー、俺のおばさん、オメガだったんだけどさ凄く悪阻酷かったんだよ。だからジュリくんも辛いのかもな。……あと一時間くらいで次の町まで行けるからそれまで頑張れ」
「ありがと……」
蹲り小声で呟く。クリスはその小さなジュリの背中を何度も摩った。
「着いたぞ、ここがルスティヒ村だ。まだ夕方だが今日はここで宿をとる。俺は今から宿を探してくるから。ジュリくんたちは市場の向かいの休憩所で休んでてくれ」
そう言って指さしたのはベンチや椅子がいくつか置いてある無料休憩所だった。
運よく今の時間は誰も使っておらずベンチで横になることも出来そうだった。
「ありがと、それじゃあ後で……」
「宿が取れたらすぐ戻るから。双子たち!お兄ちゃん体調悪いんだからよろしくな!」
「「了解!」」
そうしてジュリたちはクリスと別れたのだった。
市場はこじんまりとしているが見たことのない食べ物や雑貨がありジュンとケイは目をキラキラと輝かせ感嘆の声を上げた!
「わぁ!美味しそうな匂い!なぁジュン行ってみようぜ!」
「ねぇ、ジュリお兄ちゃん……お願い、ちょっとだけでいいから見てきてもいいかなぁ?絶対五分で戻るから!」
いつもはケイを叱ったり宥めたりする担当のジュンが珍しくケイの誘いにのっている。
ジュリは青白い顔をしながら「はぁ……」とため息をついた。
ー-この数日間、慣れない旅でストレスもあっただろうしなぁ。僕が見える範囲なら大丈夫だよね。
「わかった。じゃあ僕はそこのベンチで休んでるから。見える範囲にいてね」
ジュリがそういうと二人は「わかった」と声を揃え市場のほうへ駆けだした。
ー---
ー-はぁ、本当に気持ち悪い。なんだかむかむかするし、怠い。これが悪阻なのか……。
ジュリはベンチに横たわりながら市場を探索する二人を眺めていた。
試食をもらい、きゃあきゃあはしゃぐ姿にジュリもほっとしていた。
その時だ、突然ジュリの体の上に大きな影がかかった。
ー-ん?なにこれ?
横たわったまま顔だけ上げる。
「こんにちは、オメガちゃん」
大きな影になっていたのはニヤリと気味の悪い笑みでジュリを見下げる男だった。
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