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「おーい、大丈夫か?日が暮れたからそろそろ休もうと思うんだけど……。なんか顔色悪いけど大丈夫?」
「あっクリスさん……。ちょっと体が痛くて。少し荷台から降りてもいいですか?」
弟たちを起こさないように小声で囁くと荷台の柵に腕に力を入れ立ち上がろうとした。
じんじんと痺れる足を引きずりながら降りようとした時だった。
「あっ……!」
力が抜け頭から真っ逆さまに落ちそうになる。
すんでのところでクリスがジュリの体を捕まえ横抱きにするように抱きかかえた。
「おいおい大丈夫か……?」
「は、はい……」
ジュリの顔は血の気が引き体も小刻みに震えている。
掌をお腹に当て何度も無事を確かめるように摩ると目から大粒の涙がぽたりとこぼれ落ちた。
「なんだ、腹が痛いのか?」
その様子を不思議そうに見たクリスがジュリに問うと、ジュリは「ありがとう」とクリスの腕から離れるとそのまま手を引っ張り馬車から離れた。馬車から数メートル離れた大木の下、ジュリは辺りを見渡すと背伸びをしてクリスの耳元で囁く。
「弟たちには言わないでくださいね。……僕、多分妊娠してるんです」
「……はぁ!?」
「聞こえちゃう!声が大きい!」
慌ててクリスの口を両手で塞ぐ。
思い切り力を込めて塞いでいると苦しくなったクリスがジュリの手を何度も叩き、そこでやっと塞いでいる手を放した。
「えっと、ジュリくんに番……はいないよな?結婚してんの?もしかして家出!?」
「違う違う!そうじゃなくて……信じられないかもしれないけど……話聞いてくれる?」
そこでジュリは今までの事を全部話した。自分が男娼だった事、勇者であるショウに見初められやっと結ばれたが反対されている事。そしてショウが元の世界に戻ってしまっても愛した人の子どもだけは守りたい事……。
すべて話し終わった後、クリスの顔を見上げるとびっくりするほど目をまん丸にし口はあんぐりと開いていた。
「いやー……それ信じられないけど本当の事なんだね。ジュンくんとケイくんには秘密にしてるつもり?」
「……二人に言ったら心配して遠くになんて行かせてもらえないよ。とりあえず、弟たちのためにもお腹の子のためにも住むところと働くところ決めてからじゃないと言えない」
唇をぎゅっと噛み、眉間に皺を寄せる。そんな姿を見たクリスは腕を組み「うーん……」と唸ったあと、両手を力強く叩いた。
「よーし!乗りかかった船だ。ちょうどマルシャン村の知り合いに働き手を探している人を知っているから紹介してやるよ。なんと寮付き、まかない付きだ!」
「本当!?た、助かります!」
「その代わり大事にしているお腹の子になんかあったら大変だ。これからはもっと小まめに休憩を取るし明日からはちゃんと宿を取る」
「で、でも節約って」
「おーおー、そんなの気にすんなって!いつかジュリくんにお願い聞いてもらうからそれでいいさ」
そう言いながらジュリの髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でまわす。
クリスはあたふたするジュリを見て「ハハハ」と笑うと馬車に戻っていった。
「あっクリスさん……。ちょっと体が痛くて。少し荷台から降りてもいいですか?」
弟たちを起こさないように小声で囁くと荷台の柵に腕に力を入れ立ち上がろうとした。
じんじんと痺れる足を引きずりながら降りようとした時だった。
「あっ……!」
力が抜け頭から真っ逆さまに落ちそうになる。
すんでのところでクリスがジュリの体を捕まえ横抱きにするように抱きかかえた。
「おいおい大丈夫か……?」
「は、はい……」
ジュリの顔は血の気が引き体も小刻みに震えている。
掌をお腹に当て何度も無事を確かめるように摩ると目から大粒の涙がぽたりとこぼれ落ちた。
「なんだ、腹が痛いのか?」
その様子を不思議そうに見たクリスがジュリに問うと、ジュリは「ありがとう」とクリスの腕から離れるとそのまま手を引っ張り馬車から離れた。馬車から数メートル離れた大木の下、ジュリは辺りを見渡すと背伸びをしてクリスの耳元で囁く。
「弟たちには言わないでくださいね。……僕、多分妊娠してるんです」
「……はぁ!?」
「聞こえちゃう!声が大きい!」
慌ててクリスの口を両手で塞ぐ。
思い切り力を込めて塞いでいると苦しくなったクリスがジュリの手を何度も叩き、そこでやっと塞いでいる手を放した。
「えっと、ジュリくんに番……はいないよな?結婚してんの?もしかして家出!?」
「違う違う!そうじゃなくて……信じられないかもしれないけど……話聞いてくれる?」
そこでジュリは今までの事を全部話した。自分が男娼だった事、勇者であるショウに見初められやっと結ばれたが反対されている事。そしてショウが元の世界に戻ってしまっても愛した人の子どもだけは守りたい事……。
すべて話し終わった後、クリスの顔を見上げるとびっくりするほど目をまん丸にし口はあんぐりと開いていた。
「いやー……それ信じられないけど本当の事なんだね。ジュンくんとケイくんには秘密にしてるつもり?」
「……二人に言ったら心配して遠くになんて行かせてもらえないよ。とりあえず、弟たちのためにもお腹の子のためにも住むところと働くところ決めてからじゃないと言えない」
唇をぎゅっと噛み、眉間に皺を寄せる。そんな姿を見たクリスは腕を組み「うーん……」と唸ったあと、両手を力強く叩いた。
「よーし!乗りかかった船だ。ちょうどマルシャン村の知り合いに働き手を探している人を知っているから紹介してやるよ。なんと寮付き、まかない付きだ!」
「本当!?た、助かります!」
「その代わり大事にしているお腹の子になんかあったら大変だ。これからはもっと小まめに休憩を取るし明日からはちゃんと宿を取る」
「で、でも節約って」
「おーおー、そんなの気にすんなって!いつかジュリくんにお願い聞いてもらうからそれでいいさ」
そう言いながらジュリの髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でまわす。
クリスはあたふたするジュリを見て「ハハハ」と笑うと馬車に戻っていった。
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