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31ヒート

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違和感は朝からあった。
少し熱っぽい体と何とも言えないだるさ。
それでも欠かさず抑制剤を飲んでいる事、今まで周期がずれたことがない事から無理を押してレベッカの手伝いに向ったのだった。
念の為に昼に追加した抑制剤のおかげか、それとも仕事で気を紛らわせていたおかげか、夕方寮を出るまでは症状が悪化することもなくアルファの性が多い騎士団員を前にしても普通に仕事が出来ていた。

ー-ちょっと、風邪気味なのかな。ショウに会いたいけど移しちゃいけないし、今日はこれ食べたら早く寝よ。

そう思い早く休みたくて必死に帰ろうと足を動かすも、頭がぼんやりと働かなくなり、よたよたとしか歩けなくなってきた。

「熱い……なんで、これ・・・・・・ヒート?」

周りに聞こえるんじゃないかというほど胸がバクバクと鳴り、汗が止まらない。自分でも自覚するほど濃いフェロモンが出ている。

ー-もし誰か、アルファに見つかってしまったら……。

騎士団員の寮から王宮のジュリの部屋まで歩いて十分ほど。
王宮の敷地内にはあるが、たどり着くまでには森のような所も進まなくてはいけない。
その森の中、整備された遊歩道ではなく木々の中をなるべく身を小さくして隠れながら歩いた。

「はぁはぁ・・・・・・とりあえず誰にも見つからないように部屋に帰らなくちゃ」

時折枝が腕や足に引っ掛かり、かすり傷が出来た。その中を歩いていると突然後方からガサガサと何かが動く気配がした。

ー-動物・・・・・・違う?

ガサガサ動く音はだんだんとジュリに近づき、そしてその音と一緒に人の声がすることに気付いた
ジュリは慌てて太い木の後ろに息を殺しながら隠れた。

「ここで匂いがとまってますね……。それにしてもすごい濃くて甘い。これが噂の男娼か……」

「ったく本当にここなんでしょうね?毎回食事に薬を混ぜるの大変だったんだからね。あんたもアルファでしょ、今夜中にあの男娼を、もう二度とショウ様の所に戻れないようにぐちゃぐちゃにしてちょうだい」

恐ろしい話の内容にジュリの顔から血の気が引く。
叫び出しそうになるのを両手で口を覆いなんとか気づかれないよう、誰が話しているのか木の陰からそっと覗き見た。

一人は大柄な男で黒いフードを被り腰に長剣を刺している。
もう一人は女で後ろ向きに立っているせいで顔は見えないが、長い髪を一つに束ね黒いロングワンピースを着ている。
その女が怒りながら落ちていた木の枝を投げた瞬間ちらりと横顔が見えた。その姿にジュリは驚き息を呑んだ。

ーーあの女、僕に「男娼ごとき」って言ってきたメイドだ……。

口を押さえている手が震える。
フェロモンの匂いは誤魔化せないが、なんとか二人に見つからないようジュリはぐらつく足を奮い立たせそっと距離をとった。
その時だった、"パキン"と靴の下から何かが割れる音がした。
そっと下を見ると、そこには枯れかかっている細い木の枝が真っ二つに折れていた。
















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