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9最高級のオメガ
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「何言ってんの?……そんな性欲持て余してんの?勇者なら選り取り見取りでしょ、貴族の娘とか…。……とりあえず、僕はお断りします」
ジュリは、はぁ、とため息をつくと落とした金平糖の袋を手に取った。
正直に言うとジュリはこの仕事が辛いのだ。甘く濃厚な香りと恵まれた容姿のおかげで不動の人気ナンバー1を保っているがその香りのせいでしつこく求められるセックスはジュリにとって苦痛でしかない。
娼館のオーナーはそれを知っているから、ジュリの客は1日1人と決めているのだ。
ーーオメガと寝たくて専属指名してくる人間なんてどんな酷いことをしてくるかわかんない。
ジュリは窓際にもたれると、もう帰ってほしいと二人に声を掛けようとした。と、その時だった。
「貴族の娘も、貴族御用達の娼婦も駄目だったんだ……」
レミウスがポツリと小声で呟く。隣にいるマーリンも口を一文字に結び俯いたままだ。
「……どういうこと?」
「勇者様は、その……好きになった人としかそういうことをしたくないらしい」
「……好きになれる人が見つかるまでほっとけばいいんじゃないの?」
どうせパーティーとか出会いの場はあるんでしょ?とのんきに話を続けるジュリに対して、レミウスは困った表情で頭を抱えている。
「いや、まぁそれはそうなんだが……。時間がない上に、勇者様はその、勃起不全、なんだ……」
「え、なんて……?」
だんだん小さくなっていった声に聞き間違いかと思いジュリは聞き返す。
耳に手を当て話の続きを促すとレミウスはしぶしぶという様に話し出した。
「勇者様のアレは勃たないんだ……。勇者様と結婚してもよいという貴族の娘や、娼婦を何人か送り込んだがどれも全敗。ピクリともしなかった上に、貴族の娘に対しては『自分を大切にした方がいい』と説教までしたらしい」
「それって、単純に女より男が好きなんじゃないの?」
「……そう思って、貴族のオメガの息子と会わしたこともある。ヒートが近いせいで薬を飲んでいても僅かにフェロモンが香っていたのに勇者様は何の反応もしなかった」
レミウスはがっくりと肩を落とすと、隣にいたマーリンにそっと目配せをした。
それに気づいたマーリンは緊張した面持ちで頷くとジュリに向かって背筋を伸ばした。
「そこでジュリさんの力をお借りしたいんです。どうかジュリさんの持つオメガの力を使って……」
「オメガのフェロモンで誘惑しろってことならお断り。僕はこの店で十分」
ジュリはマーリンを睨みつけると冷たく言い放った。この二人ともう話すことはないと、ジュリが部屋を出よう歩き出すと、それに気付いたレミウスは慌てて引き留めた。
「もちろん!ただとは言わない。……君にはまだ小さい双子の弟がいる上に借金があるんだろう」
ドアノブを握った所でジュリの動きがぴたりと止まる。そのまま顔だけレミウスの方を向けると一瞬目を丸くした後ぎろりと睨みつけた。
「何が言いたいの……?」
「……君が”最高級のオメガ”だと呼ばれている事を聞いた。期限は半年!君のフェロモンで勇者様の勃起不全が治り、無事相応しい方との世継ぎが出来たら、借金を全てこちらが肩代わりし、弟たちの生活費と学費を援助する。もちろん君の生活費も含めてだ」
「……その話、絶対守ってくれるんだろうね」
ジュリは少し間をおいた後、ドアノブから手を離した。
ジュリは、はぁ、とため息をつくと落とした金平糖の袋を手に取った。
正直に言うとジュリはこの仕事が辛いのだ。甘く濃厚な香りと恵まれた容姿のおかげで不動の人気ナンバー1を保っているがその香りのせいでしつこく求められるセックスはジュリにとって苦痛でしかない。
娼館のオーナーはそれを知っているから、ジュリの客は1日1人と決めているのだ。
ーーオメガと寝たくて専属指名してくる人間なんてどんな酷いことをしてくるかわかんない。
ジュリは窓際にもたれると、もう帰ってほしいと二人に声を掛けようとした。と、その時だった。
「貴族の娘も、貴族御用達の娼婦も駄目だったんだ……」
レミウスがポツリと小声で呟く。隣にいるマーリンも口を一文字に結び俯いたままだ。
「……どういうこと?」
「勇者様は、その……好きになった人としかそういうことをしたくないらしい」
「……好きになれる人が見つかるまでほっとけばいいんじゃないの?」
どうせパーティーとか出会いの場はあるんでしょ?とのんきに話を続けるジュリに対して、レミウスは困った表情で頭を抱えている。
「いや、まぁそれはそうなんだが……。時間がない上に、勇者様はその、勃起不全、なんだ……」
「え、なんて……?」
だんだん小さくなっていった声に聞き間違いかと思いジュリは聞き返す。
耳に手を当て話の続きを促すとレミウスはしぶしぶという様に話し出した。
「勇者様のアレは勃たないんだ……。勇者様と結婚してもよいという貴族の娘や、娼婦を何人か送り込んだがどれも全敗。ピクリともしなかった上に、貴族の娘に対しては『自分を大切にした方がいい』と説教までしたらしい」
「それって、単純に女より男が好きなんじゃないの?」
「……そう思って、貴族のオメガの息子と会わしたこともある。ヒートが近いせいで薬を飲んでいても僅かにフェロモンが香っていたのに勇者様は何の反応もしなかった」
レミウスはがっくりと肩を落とすと、隣にいたマーリンにそっと目配せをした。
それに気づいたマーリンは緊張した面持ちで頷くとジュリに向かって背筋を伸ばした。
「そこでジュリさんの力をお借りしたいんです。どうかジュリさんの持つオメガの力を使って……」
「オメガのフェロモンで誘惑しろってことならお断り。僕はこの店で十分」
ジュリはマーリンを睨みつけると冷たく言い放った。この二人ともう話すことはないと、ジュリが部屋を出よう歩き出すと、それに気付いたレミウスは慌てて引き留めた。
「もちろん!ただとは言わない。……君にはまだ小さい双子の弟がいる上に借金があるんだろう」
ドアノブを握った所でジュリの動きがぴたりと止まる。そのまま顔だけレミウスの方を向けると一瞬目を丸くした後ぎろりと睨みつけた。
「何が言いたいの……?」
「……君が”最高級のオメガ”だと呼ばれている事を聞いた。期限は半年!君のフェロモンで勇者様の勃起不全が治り、無事相応しい方との世継ぎが出来たら、借金を全てこちらが肩代わりし、弟たちの生活費と学費を援助する。もちろん君の生活費も含めてだ」
「……その話、絶対守ってくれるんだろうね」
ジュリは少し間をおいた後、ドアノブから手を離した。
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