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8 わんぱくでもいい
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5/17:あ~、小銭がないかもぉ。のあと、辻褄が合わない箇所を少し加筆しました。
*********
「わんぱくでもいい、逞しく、雄々しく育ってほしい」
前世の某ハム会社のCMばりに、脳筋感が漂うボーボルド家の子育て方針であるが、一族が筋肉ムキムキの大男で構成されているかというと、実はそうでもない。
ナヨナヨではないが、どちらかと言うと細身。高身長ではあるが、精悍な武人タイプではなく、男女共切れ者風の美人顔、武官ではなく、文官に見える人間が多かった。
だからこその、ないものねだりな、「わんぱくでもいい、逞しく、雄々しく育ってほしい」願望である。一族総出で、筋肉ムキムキに憧れちゃってるのである。
見た目の印象通りの明晰な頭脳でバリバリ仕事をこなしてしまう人間が多いのだし、それに加えて腕も立つのだから、理想的ではないか!と他家からすれば羨ましい人材ばかりであったが、本人達は不満であり、ムキムキへの憧れが止まらないのである。
強面?何それ、格好いい!
基本、そんな感じのボーボルド家の面々であった。
アーリエリアンナの様に、某地球の記憶が薄らある転生者でもないのに、筋肉ムキムキな荒くれ者にちょっぴり憧れ、ないものねだりを拗らせた一族の者たちは、前世の「ゲーム」で学習したアーリエリアンナの布教活動により、魔獣や魔物と戦ってみたいだとか、魔王を倒したいだとか、大剣を背負ってみたいだとか、ここ数年よりおかしな方向の憧れを募らせている。
把握できていない地域への出張調査や捜査のための訓練だとかの言い訳をしながら、できるだけ辺鄙な場所に向かいたがったり、ゴツイ武器を片手に身体を鍛えてみたり。
辺鄙な場所に行き着いたとして。その地で魔獣に遭遇することはないとわかっていても、出発前や、特注の武器を手にした際の彼らの表情は、職場に詰めている時とは違い、毎回明らかにワクワクしていた。
国内での流行とは違う、特注衣装や、使い道のない特注武器。盗賊被害にあったような貴族家では、見向きもされなそうなそんなものを、後生大事にした挙句、将来的には、大剣やらゴーグルやらを家宝にしてしまいそうなボーボルド家の者たちである。
そんな家で、その独特な感性布教の教祖のような存在になっているアーリエリアンナは、一般的な貴族の令嬢としては、おかしな育ち方をしてしまったかもしれない。
弟のレーリスには口でも身体でも負けないわよ!兄のジーンとシシルにも、たまに勝てるし!そこらの男なんて、瞬殺できるもの。そう言って胸を張る、ツヨツヨ貴族令嬢の爆誕である。
肉体と精神は強面でも、華奢で美しい、物語に出てくるお姫様にしか見えない令嬢は、今現在、鼻歌から脳内爆音での歌唱にバックミュージックを発展させながら、持って出る武器を選んでいるところだ。
鬼畜リードルから、逃げろ!
俺たちは、冒険者だ!
負けるな、捕まるな!
荒野を渡り
街を越え
魔物を追い
剣を振え!
負けるな、捕まるな!
鬼畜リードルから、逃げきれ!
走って、走って
さあ冒険だ!
前世で大好きだった映画で歌われていた曲にノリで歌詞をつけて歌う。
どれだけテンションが上がっても、決して声に出さないのは、某鬼畜元婚約者が怖いから。
ほら、噂をすればと言うでしょ?
まだ小さな頃、気軽に口に出してしまったあと、当時家に遊びに来た幼馴染のリードルに遭遇し、“出たぁ!”と泣き叫んだ経験がある。
クチニダスノハキケン。ダメゼッタイ。
アーリエリアンナは、そう学習した。
適当が過ぎる、謎の替え歌を脳内で歌い上げながら、武器を背嚢に詰め終えれば、次は金だ。
あ~、小銭がないかもぉ。
平民として、旅に出たいのだから、持ち金が金貨ではマズい。
まだ何も決めていないのに、平民として旅に出る準備をしているのは、とにかく先にどこかすぐには連れ戻されない場所に移動したいからだ。家の馬車と貴族令嬢姿で優雅に出発したのでは、行き先がすぐに知られてしまい、短時間のお出かけをしただけになってしまう。
それは嫌だ。なるべく長く自由な時間を楽しみたい。なので、とりあえずな感じでもなんでも、平民に擬態して出かけられるよう、準備をすすめるアーリエリアンナである。
親や兄、家令に両替を頼むのは不味い。奴らは鬼畜リードルの配下だ。売られる危険あり!よし、弟だ!弟にしよう!自分の支配下にある自信?がある弟に頼んで、こっそり両替してもらおうと、テンションアゲアゲで着ちゃった、保管バージョンで、露出多めな冒険者風服を脱ぎ、屋敷内で目立たない普段着のデイドレスに着替え直した。
突然訪問してくることも多かった元婚約者にはバラしたくないので、これまでこっそり夜中に眺めるのみで今まで袖を通したことなどなかったが、思いがけない婚約破棄成功を受けて、少しばかり気が緩んでしまったようだ。短い試着であったが、似合ってることを確認でき、満足したアーリエリアンナである。流石に外では着れないので、元の保管場所に隠しておく。
隠し終えた後には、少しだけ反省。
油断大敵、気をつけよう!
デイドレス姿で、両替以外に済ませるべきことを考える。
敵の奇襲が心配ではあるが、今日はまだ大丈夫な筈。
ついでに、調理場に旅に持って行く、おやつのリクエストも出しておこう。
馬丁に、目立たない馬とボロく見える馬具を用意するよう頼んでおかなくちゃ。
職場での仕事スケジュールを頭に浮かべ、安心したアーリエリアンナは、一応は令嬢然とした振る舞いで、屋敷のあちこちでの用事を済ませた。
********
後書き
脳内再生の参考までに。サングラスをかけた兄弟の映画のカントリークラブで歌ってた曲です。
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「わんぱくでもいい、逞しく、雄々しく育ってほしい」
前世の某ハム会社のCMばりに、脳筋感が漂うボーボルド家の子育て方針であるが、一族が筋肉ムキムキの大男で構成されているかというと、実はそうでもない。
ナヨナヨではないが、どちらかと言うと細身。高身長ではあるが、精悍な武人タイプではなく、男女共切れ者風の美人顔、武官ではなく、文官に見える人間が多かった。
だからこその、ないものねだりな、「わんぱくでもいい、逞しく、雄々しく育ってほしい」願望である。一族総出で、筋肉ムキムキに憧れちゃってるのである。
見た目の印象通りの明晰な頭脳でバリバリ仕事をこなしてしまう人間が多いのだし、それに加えて腕も立つのだから、理想的ではないか!と他家からすれば羨ましい人材ばかりであったが、本人達は不満であり、ムキムキへの憧れが止まらないのである。
強面?何それ、格好いい!
基本、そんな感じのボーボルド家の面々であった。
アーリエリアンナの様に、某地球の記憶が薄らある転生者でもないのに、筋肉ムキムキな荒くれ者にちょっぴり憧れ、ないものねだりを拗らせた一族の者たちは、前世の「ゲーム」で学習したアーリエリアンナの布教活動により、魔獣や魔物と戦ってみたいだとか、魔王を倒したいだとか、大剣を背負ってみたいだとか、ここ数年よりおかしな方向の憧れを募らせている。
把握できていない地域への出張調査や捜査のための訓練だとかの言い訳をしながら、できるだけ辺鄙な場所に向かいたがったり、ゴツイ武器を片手に身体を鍛えてみたり。
辺鄙な場所に行き着いたとして。その地で魔獣に遭遇することはないとわかっていても、出発前や、特注の武器を手にした際の彼らの表情は、職場に詰めている時とは違い、毎回明らかにワクワクしていた。
国内での流行とは違う、特注衣装や、使い道のない特注武器。盗賊被害にあったような貴族家では、見向きもされなそうなそんなものを、後生大事にした挙句、将来的には、大剣やらゴーグルやらを家宝にしてしまいそうなボーボルド家の者たちである。
そんな家で、その独特な感性布教の教祖のような存在になっているアーリエリアンナは、一般的な貴族の令嬢としては、おかしな育ち方をしてしまったかもしれない。
弟のレーリスには口でも身体でも負けないわよ!兄のジーンとシシルにも、たまに勝てるし!そこらの男なんて、瞬殺できるもの。そう言って胸を張る、ツヨツヨ貴族令嬢の爆誕である。
肉体と精神は強面でも、華奢で美しい、物語に出てくるお姫様にしか見えない令嬢は、今現在、鼻歌から脳内爆音での歌唱にバックミュージックを発展させながら、持って出る武器を選んでいるところだ。
鬼畜リードルから、逃げろ!
俺たちは、冒険者だ!
負けるな、捕まるな!
荒野を渡り
街を越え
魔物を追い
剣を振え!
負けるな、捕まるな!
鬼畜リードルから、逃げきれ!
走って、走って
さあ冒険だ!
前世で大好きだった映画で歌われていた曲にノリで歌詞をつけて歌う。
どれだけテンションが上がっても、決して声に出さないのは、某鬼畜元婚約者が怖いから。
ほら、噂をすればと言うでしょ?
まだ小さな頃、気軽に口に出してしまったあと、当時家に遊びに来た幼馴染のリードルに遭遇し、“出たぁ!”と泣き叫んだ経験がある。
クチニダスノハキケン。ダメゼッタイ。
アーリエリアンナは、そう学習した。
適当が過ぎる、謎の替え歌を脳内で歌い上げながら、武器を背嚢に詰め終えれば、次は金だ。
あ~、小銭がないかもぉ。
平民として、旅に出たいのだから、持ち金が金貨ではマズい。
まだ何も決めていないのに、平民として旅に出る準備をしているのは、とにかく先にどこかすぐには連れ戻されない場所に移動したいからだ。家の馬車と貴族令嬢姿で優雅に出発したのでは、行き先がすぐに知られてしまい、短時間のお出かけをしただけになってしまう。
それは嫌だ。なるべく長く自由な時間を楽しみたい。なので、とりあえずな感じでもなんでも、平民に擬態して出かけられるよう、準備をすすめるアーリエリアンナである。
親や兄、家令に両替を頼むのは不味い。奴らは鬼畜リードルの配下だ。売られる危険あり!よし、弟だ!弟にしよう!自分の支配下にある自信?がある弟に頼んで、こっそり両替してもらおうと、テンションアゲアゲで着ちゃった、保管バージョンで、露出多めな冒険者風服を脱ぎ、屋敷内で目立たない普段着のデイドレスに着替え直した。
突然訪問してくることも多かった元婚約者にはバラしたくないので、これまでこっそり夜中に眺めるのみで今まで袖を通したことなどなかったが、思いがけない婚約破棄成功を受けて、少しばかり気が緩んでしまったようだ。短い試着であったが、似合ってることを確認でき、満足したアーリエリアンナである。流石に外では着れないので、元の保管場所に隠しておく。
隠し終えた後には、少しだけ反省。
油断大敵、気をつけよう!
デイドレス姿で、両替以外に済ませるべきことを考える。
敵の奇襲が心配ではあるが、今日はまだ大丈夫な筈。
ついでに、調理場に旅に持って行く、おやつのリクエストも出しておこう。
馬丁に、目立たない馬とボロく見える馬具を用意するよう頼んでおかなくちゃ。
職場での仕事スケジュールを頭に浮かべ、安心したアーリエリアンナは、一応は令嬢然とした振る舞いで、屋敷のあちこちでの用事を済ませた。
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後書き
脳内再生の参考までに。サングラスをかけた兄弟の映画のカントリークラブで歌ってた曲です。
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