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第一章 変わり始める日常

第7話 賑わう街で

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 朝からバタバタしてしまったが、結局いつもよりかなり早く家を出た。
 行きがけにパンを買わねば。
 少し早いせいか道を歩く人は少ないが、畑の方では既に農作業をしている人たちもいる。
 まだ陽が高く上る前の柔らかな日差しと、清々しい大気を感じながら道を歩いていく。
 実にのどかで、いつも通りの平和な風景だ。

「数年後には、この風景も変わってしまうんだろうか……」

 現在のミリテリアは平和であり、戦争なんて数百年は起きていない。
 犯罪などは無くならないものの、昔話で聞くような住民が虐殺されたり、家や畑を焼き払われたりなどということは一切ない。

 しかし、魔物が攻めこんできた場合はそうなってしまう可能性が高いだろう。
  攻め込んでくるのは数年後と言っていたけど、その前に不定期にワームホールが繋がるとも言っていた。
 時間はあるようで無いのかもしれない。
 しっかりと訓練をしていかなきゃ。
 改めて気合を入れ直していると、街に近づいてきた。

 オレが働く薬草店<タンブルウィード>があるのは、ティルディスの町の南東部辺りにある。

 大まかに言うと、東町と言われるこの地区は、日用品や食料品など、住人たちが利用するお店が多い。
 南町には飲食店が多く、フクロウ亭もその中の1つだ。
 西町は観光客が泊まるようなホテルやお高めのお店などが並んでいる。
 身の毛もよだつ想像をしていたであろうユリちゃんは、西町のカフェで働いているらしい。
 北町は行政地区と、偉い人やお金持ちが住んでいる地区になっている。

 一般の住民はそれらの地区の外周を取り囲むように住んでおり、畑などは住宅街の外側に広がるというような感じだ。
 ちなみに、街の中心部には大きな公園が南北に伸びている。
 馬車の発着所があるため街の玄関でもあるが、市民の憩いの場でもありお祭りや催し物なども開かれる。

 まだ殆どのお店が開店前だが、なぜかいつも以上に賑わっている。

「何か人が多いな……。今日は何かあったっけ?」

 人混みを避けながらパン屋さんに寄る。
 壮絶な最期を迎えた彼の代わりを探さなければならない。

「おはようヴィト。今日は早いのね」
「おはようございますエルザさん。今日はちょっと早めに出てきました。それにしても人出が多いですけど何かあったんですかね?」

 エルザさんはエルフ族で、ヒト族の旦那さんと2人でパン屋を営んでいる。
 優しい笑顔が素敵で、スラっとしたスタイルなのに出るところは出ている。
 働き者だし理想の奥さんといったところだろうか。
 王立学院生の頃にも何度か来ていたが、薬草店<タンブルウィード>のご近所さんなので頻繁にお世話になっている。

「みんな神様のお告げのことを話してるわ。ヴィトもお告げがあった?」
「お告げって神様のですか? 夢みたいな」
「そうそう。みんなも同じ内容を見ているし、夢じゃなかったって話しているわ」
「数年以内に魔物がやってくるって言ってましたね」
「えぇ。でも神様が魔物を打ち払う力を授けた人がいるから、みんなもその人たちに協力してほしいってお話していたわね」

やはりお告げは夢じゃなくみんなにあったようだ。

「エルザさんがお会いしたのはどんな神様でした?」
「神様じゃなくて天使だって言ってたわね。可愛らしい女の子だったわよ。あ、こんなこと言ったら失礼かしらね。神様は忙しいから私が代わりにお話しにきましたって。夫も同じことを言っていたわ」

 オレもスキルのことを話そうとしたが、ある懸念が頭を過ぎり、控えることにした。

「そうなんですね~。でも、本当にどうなってしまうのか……怖いですよね」
「本当にね。でも、頑張ってくれる人がいるんだから、私たちも出来る事をして協力するしかないわ。あなたも無理しちゃダメよ」
「わかりました。ありがとうございます」

 パンを買ってお店を出る。
 タンブルウィードに向かう途中で聞こえてきた会話も、エルザさんと同様の内容だった。


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