22 / 33
第22話 こんな事になるなんて
しおりを挟む
いつもの林の入口へ向かう小道から、少しだけ右に外れた小道の脇には、ワイズベリーの低木が茂っていた。近付くと風に乗って甘酸っぱい匂いが漂ってくる。
「どう? 集まったかしら?」
摘まみ食いにも精を出していたのか。せっせと集めている2人の口は、手と同じようにもぐもぐと世話しなく動いていた。
これでは集めるより、食べるのに忙しかったのではないか。
リュシェラはやっぱり、と内心で苦笑しながら、目線を合わせるように、2人の側で腰を屈めた。
「いっぱい集めたよ! ほら!」
アラルトがすごい? と広げて見せてきたナプキンには、艶々とした大粒の実が乗っている。
「お前だけが集めたんじゃないだろ」
その横で、また面白くなさそうな顔をしたティガァが、ナプキンから赤い実を1つ摘まんだ。
「美味しいから、リュシェラ様も食べて」
ホラッと口元に差し出された赤い実に、リュシェラは目を瞬いた。
ムッとしたような顔に、ぶっきらぼうに差し出す手。磨かれた石の表面のようなゴーレムの肌は、血色で変わることもない。一見すると、不機嫌そうにも取れる姿だった。
だけど、何度も「んっ、んっ!」と催促するように差し出す様子から、照れているのが伝わってくる。
─── 人間のような肌なら、今頃真っ赤な顔なんでしょうね。
フフッと笑ったリュシェラは、素直に口を開いて見せた。
手に持ったティガァのベリーが口の中に入ろうとした時。ナプキンを両手に持ったままのアラルトが、ティガァの身体に体当たりをした。突然の攻撃と勢いによろめいたティガァが、キッとアラルトを睨み付けた。
「なんだよ!!」
「リュシェラ様にベタベタするな! お前なんてオマケだったくせに!」
オマケと言われた言葉にカッとなったのか、今度はティガァがアラルトに掴みかかる。
「弱っちいお前に、オマケ扱いされたくねぇよ!」
そのままの勢いで押し倒したアラルトに、乗り上げながらティガァがグイグイ服を締め上げていた。ただでさえ、見た目以上の重量を持つゴーレムだ。上に乗られているだけでも、苦しい上に、ウィザードのアラルトでは力も適わないのだろう。
その手を引き離そうと暴れるも、ティガァの腕を振り払える様子がない。
「ちょっと! 2人とも止めなさい!!」
大きな声で止めようとするが、興奮した2人は、リュシェラの声が、聞こえていないようだった。そんな2人を引き離そうと、リュシェラがティガァの後ろに慌てて立った時。
「弱くない! お前が勝てるのは力だけだろ!ケンカは俺の方が強いからな!」
叫んだアラルトが渾身の力で蹴ったのか、ティガァの身体が後ろへ飛ばされる。子供とは言え、ゴーレムの身体なのだ。支えようにも、人間のリュシェラでは、あまりに非力でダメだった。
「きゃあぁ!」
ティガァの身体に巻き込まれて、リュシェラの上体が茂みの方へ押しやられる。
バキバキーー!!
枝が折れる音がして、二人はハッと我に返った。でもその時には、既に遅く。唖然とした2人の目の前で、痛みに顔を顰めたリュシェラが、茂みの上に倒れ込んでいた。
***********************************
更新がゆっくりですみません💦
今回は今日、火曜、木曜に続けて更新します🙇♀️💦
その後の回から、ようやくイヴァシグスが再登場の予定なので、間をあまり空けないように頑張ります😭
「どう? 集まったかしら?」
摘まみ食いにも精を出していたのか。せっせと集めている2人の口は、手と同じようにもぐもぐと世話しなく動いていた。
これでは集めるより、食べるのに忙しかったのではないか。
リュシェラはやっぱり、と内心で苦笑しながら、目線を合わせるように、2人の側で腰を屈めた。
「いっぱい集めたよ! ほら!」
アラルトがすごい? と広げて見せてきたナプキンには、艶々とした大粒の実が乗っている。
「お前だけが集めたんじゃないだろ」
その横で、また面白くなさそうな顔をしたティガァが、ナプキンから赤い実を1つ摘まんだ。
「美味しいから、リュシェラ様も食べて」
ホラッと口元に差し出された赤い実に、リュシェラは目を瞬いた。
ムッとしたような顔に、ぶっきらぼうに差し出す手。磨かれた石の表面のようなゴーレムの肌は、血色で変わることもない。一見すると、不機嫌そうにも取れる姿だった。
だけど、何度も「んっ、んっ!」と催促するように差し出す様子から、照れているのが伝わってくる。
─── 人間のような肌なら、今頃真っ赤な顔なんでしょうね。
フフッと笑ったリュシェラは、素直に口を開いて見せた。
手に持ったティガァのベリーが口の中に入ろうとした時。ナプキンを両手に持ったままのアラルトが、ティガァの身体に体当たりをした。突然の攻撃と勢いによろめいたティガァが、キッとアラルトを睨み付けた。
「なんだよ!!」
「リュシェラ様にベタベタするな! お前なんてオマケだったくせに!」
オマケと言われた言葉にカッとなったのか、今度はティガァがアラルトに掴みかかる。
「弱っちいお前に、オマケ扱いされたくねぇよ!」
そのままの勢いで押し倒したアラルトに、乗り上げながらティガァがグイグイ服を締め上げていた。ただでさえ、見た目以上の重量を持つゴーレムだ。上に乗られているだけでも、苦しい上に、ウィザードのアラルトでは力も適わないのだろう。
その手を引き離そうと暴れるも、ティガァの腕を振り払える様子がない。
「ちょっと! 2人とも止めなさい!!」
大きな声で止めようとするが、興奮した2人は、リュシェラの声が、聞こえていないようだった。そんな2人を引き離そうと、リュシェラがティガァの後ろに慌てて立った時。
「弱くない! お前が勝てるのは力だけだろ!ケンカは俺の方が強いからな!」
叫んだアラルトが渾身の力で蹴ったのか、ティガァの身体が後ろへ飛ばされる。子供とは言え、ゴーレムの身体なのだ。支えようにも、人間のリュシェラでは、あまりに非力でダメだった。
「きゃあぁ!」
ティガァの身体に巻き込まれて、リュシェラの上体が茂みの方へ押しやられる。
バキバキーー!!
枝が折れる音がして、二人はハッと我に返った。でもその時には、既に遅く。唖然とした2人の目の前で、痛みに顔を顰めたリュシェラが、茂みの上に倒れ込んでいた。
***********************************
更新がゆっくりですみません💦
今回は今日、火曜、木曜に続けて更新します🙇♀️💦
その後の回から、ようやくイヴァシグスが再登場の予定なので、間をあまり空けないように頑張ります😭
5
お気に入りに追加
2,734
あなたにおすすめの小説
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
私には何もありませんよ? 影の薄い末っ子王女は王の遺言書に名前が無い。何もかも失った私は―――
西東友一
恋愛
「遺言書を読み上げます」
宰相リチャードがラファエル王の遺言書を手に持つと、12人の兄姉がピリついた。
遺言書の内容を聞くと、
ある兄姉は周りに優越を見せつけるように大声で喜んだり、鼻で笑ったり・・・
ある兄姉ははしたなく爪を噛んだり、ハンカチを噛んだり・・・・・・
―――でも、みなさん・・・・・・いいじゃないですか。お父様から贈り物があって。
私には何もありませんよ?
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。
夢風 月
恋愛
カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。
顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。
我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。
そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。
「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」
そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。
「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」
「……好きだからだ」
「……はい?」
いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。
※タグをよくご確認ください※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる