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第38 さよなら、恋の期間 2
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あの日から数日が過ぎている。お父様からの連絡は今のところはまだ無かった。
すぐにでも交代させられると思っていた私には拍子抜けだった。
お父様としても私とエレンを交代させるタイミングを計っているのかもしれない。
「そうよね、まだ婚約できるなんて、決まっていないんだから」
リオネル様の気持ちをほぼ確信していても、まだ婚約へたどり着けてはいないのだ。
お父様としては無理にエレンへ交代してリスクを高めてしまうよりは、順調にいっている今のままで婚約まで持ち込んでしまいたいのかもしれない。
婚約が決まるまでの期間がどれぐらいあるのかは分からない。
いくら私がリオネル様のためにもすぐにエレンと交代しようと思っていても、エレンの居場所さえも分からないのだ。リオネル様へ申し訳なく思いながらも、私はこの状況に少しだけホッとした。
「このまま1年が過ぎれば良いのに……」
そばに居たいという気持ちと、そばに居てはいけないという気持ちで心が揺れている。でもこの状況ならそばに居るしかなかったんだ、と自分へ言い訳ができるのだ。
「でもそう願ってしまうのは、卑怯だよね……」
分かっているから、苦笑が漏れてしまう。
「とりあえず考えていても仕方ないんだから、今日の分をさっさと書いてしまおうかな」
それは1日を終えた私があの日から日課としていることだった。引き出しから今日も便箋を取り出して机の上にペンと並べていく。
少しでも入れ違ったときに齟齬がないように、1日の出来事を手紙で送る。これはお父様に言われてのことではない。じゃあエレンのためかと言われたら、それも違っていた。
この日々を無かったことにされたくないだけだった。
ほんの数ヶ月だけのお話しでも私にとっては大切な日々なのだから。エレンにもちゃんと覚えておいて欲しいのだ。
それにエレンがボロを出してしまって、入れ替わっていたことが知られてしまうことも怖い。そうなれば私の知らない所でお父様もエレンもきっと私を悪役にするだろう。
私に始めて優しくしてくれた人達に軽蔑されてしまうのは辛いのだ。たとえもう2度と会うことがない人達だとしても。いまでもあの日を懐かしく思ってくれることがあると信じて生きていたいのだ。
手紙に日々の出来事の他に、リオネル様やマエリス様について気が付いたような癖も書く。
リオネル様は傷を庇ってしまうため、右手を使う時にはできるだけ負担を減らしてあげて欲しいこと。
マエリス様はのぼせ気味の時に頭痛が起きているようだから、その時は紅茶よりは菊花をブレンドした清茶を差し上げて欲しいこと。
カナトス卿に関してはお酒にあまり強くなく、少しのお酒でも翌日に頭痛がされてる様子だった。その時は少し濃いめのコーヒーをお勧めしてみて欲しいこと。
そんなことをツラツラと手紙の中に書いていく。
少しでもエレンが彼らを大切にしてくれたらいい。
本当は私がそうして差し上げたかった。涙がポタリとせっかく書いた便箋の上に落ちてしまう。
「これではまた書き直しね……」
落ちてしまった涙を拭う。
毎晩のようにこんな風では、頂いた便箋をすぐに使いきってしまいそうだった。
すぐにでも交代させられると思っていた私には拍子抜けだった。
お父様としても私とエレンを交代させるタイミングを計っているのかもしれない。
「そうよね、まだ婚約できるなんて、決まっていないんだから」
リオネル様の気持ちをほぼ確信していても、まだ婚約へたどり着けてはいないのだ。
お父様としては無理にエレンへ交代してリスクを高めてしまうよりは、順調にいっている今のままで婚約まで持ち込んでしまいたいのかもしれない。
婚約が決まるまでの期間がどれぐらいあるのかは分からない。
いくら私がリオネル様のためにもすぐにエレンと交代しようと思っていても、エレンの居場所さえも分からないのだ。リオネル様へ申し訳なく思いながらも、私はこの状況に少しだけホッとした。
「このまま1年が過ぎれば良いのに……」
そばに居たいという気持ちと、そばに居てはいけないという気持ちで心が揺れている。でもこの状況ならそばに居るしかなかったんだ、と自分へ言い訳ができるのだ。
「でもそう願ってしまうのは、卑怯だよね……」
分かっているから、苦笑が漏れてしまう。
「とりあえず考えていても仕方ないんだから、今日の分をさっさと書いてしまおうかな」
それは1日を終えた私があの日から日課としていることだった。引き出しから今日も便箋を取り出して机の上にペンと並べていく。
少しでも入れ違ったときに齟齬がないように、1日の出来事を手紙で送る。これはお父様に言われてのことではない。じゃあエレンのためかと言われたら、それも違っていた。
この日々を無かったことにされたくないだけだった。
ほんの数ヶ月だけのお話しでも私にとっては大切な日々なのだから。エレンにもちゃんと覚えておいて欲しいのだ。
それにエレンがボロを出してしまって、入れ替わっていたことが知られてしまうことも怖い。そうなれば私の知らない所でお父様もエレンもきっと私を悪役にするだろう。
私に始めて優しくしてくれた人達に軽蔑されてしまうのは辛いのだ。たとえもう2度と会うことがない人達だとしても。いまでもあの日を懐かしく思ってくれることがあると信じて生きていたいのだ。
手紙に日々の出来事の他に、リオネル様やマエリス様について気が付いたような癖も書く。
リオネル様は傷を庇ってしまうため、右手を使う時にはできるだけ負担を減らしてあげて欲しいこと。
マエリス様はのぼせ気味の時に頭痛が起きているようだから、その時は紅茶よりは菊花をブレンドした清茶を差し上げて欲しいこと。
カナトス卿に関してはお酒にあまり強くなく、少しのお酒でも翌日に頭痛がされてる様子だった。その時は少し濃いめのコーヒーをお勧めしてみて欲しいこと。
そんなことをツラツラと手紙の中に書いていく。
少しでもエレンが彼らを大切にしてくれたらいい。
本当は私がそうして差し上げたかった。涙がポタリとせっかく書いた便箋の上に落ちてしまう。
「これではまた書き直しね……」
落ちてしまった涙を拭う。
毎晩のようにこんな風では、頂いた便箋をすぐに使いきってしまいそうだった。
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