2 / 17
2
しおりを挟む
医者というのはやはり儲かるらしい。
高そうな家具や気取ったインテリアを眺めながら舌を打つ。別にうちが貧乏というわけじゃない。母さんのおかげで何不自由ない生活はできている。でもなんとなく腹が立った。
俺は今、父親を名乗る男のマンションにいる。本物の父親かはわからない。
怪しいと思いながら、のこのことついて来た。こいつが誘拐犯とか連続殺人犯だとしても、逃げるのは簡単だと思ったからだ。織田は俺より背が低く、弱そうだ。いざとなったらぶん殴ってしまえばいい。
「お腹空いてる?」
織田が訊く。
「空いてるけど、いらねー」
「そう? 何か作ってあげようか。料理、得意なんだよ」
「いらねー」
ぶっきらぼうに応える。
「つーかあんた本当に俺の父親なのか?」
織田は微笑を絶やさずにうなずいた。父親と言われても全然ピンとこない。長めの黒髪を綺麗にセットした、品のいい顔立ち。俺とは似ていない。
「明日にでもお母さんに訊いてみるといいよ」
言われなくてもそうするつもりだ。織田は俺をソファに座らせると「何か飲む?」と訊いた。
「いらねーよ。それより訊いていいか?」
「うん、何?」
「なんで離婚したんだ?」
織田は小さく息を吐き、俺の隣に腰を下ろした。
「一騎は私のことを全然覚えてないみたいだね」
「覚えてない。だからまだ完全に信じちゃいない」
「私が偽の父親だと?」
織田は声を出して笑った。
「なんのためにそんな嘘をつくのかな。なんの得にもならないよ」
「そうかよ。じゃあ質問に答えろ」
「そっけないなあ。父親なんて興味ない?」
「その通り」
「じゃあどうしてついてきたの?」
少し考えて、答えた。
「なんで離婚したのか訊きたい。それだけ」
「ふうん」
何がふうんだ。人を見下したような態度にイライラし始めていた。
「母さんが嫌いになったから?」
「昔はママって言ってたのにね」
「はあ? 知らねーよ」
「そして私のことはパパって呼んでたよ」
「どうでもいい」
フフと織田は笑った。
「いいよ、教えてあげる」
織田はゆっくりと唇を舐めた。その仕草はぞっとするものがあった。俺は織田から目を背けた。どうしてだか、急に恐怖を感じた。握りしめた拳に汗が滲んでいる。
唐突に、耳に吐息を感じた。すぐ横に織田の顔がある。
「私がね、君を犯したからだよ」
耳の横で囁いた。意味がわからない。眉をひそめて織田を見た。
「たった五歳の、しかも自分の息子を犯したから。嫌がる君に無理矢理押し込んだよ。皮膚が切れて血が出ても私はやめなかった」
俺は笑いながら立ち上がった。
「あんた頭おかしいよ、そんなデタラメ」
「真実だよ。その現場を祥子に見られてしまって、それで離婚。彼女は私を何度も何度も殴りつけた」
「帰る」
俺は織田をすり抜けて玄関に向かった。靴を履いてドアを開けようとしたが、チェーン状の鍵がかかっていた。舌を打ち、手を伸ばす。
「帰さないよ」
背後で織田の声がした。
直後、首に痛み。
「つっ……、なんだよ!?」
振り払うと、コツン、と足元で何かが跳ねた。目を疑った。注射器だ。
「は? なんだ、これ……」
「一騎」
織田が笑いを含んだ声で俺の名を呼ぶ。脳がぐらりと揺れた。
――パパやめて!
幼い叫び声が聞こえた。両耳を押さえ、振り返る。織田の顔がすぐ目の前に迫っていた。胸を押した。つもりだった。力が入らない。織田の胸にすがりつく。
「いい子だね」
抱きしめられた。耳に息がかかる。気持ち悪い。突き飛ばそうともがくのに、なんの手応えも感じない。力がまったく入らない。
「やめ、やめろ……っ」
玄関のドアに押しつけられ、股間を揉んでくる。
「あっ……!」
勝手に声が出て、体が無様に揺れ動く。
――やだよ、痛い、痛いよぉ!
脳内で絶叫する子どもの悲鳴。
ガクガクと膝が震えた。
恐怖。痛み。
思い出した。
あのときの、幼い頃の感情が、閉じ込めていた記憶が、蘇る。
「ち、くしょぉ……」
膝をつく。視界が回っている。おかしい。吐き気がした。
「はっ、はあっ……」
「薬が効いたかな?」
織田の声が降ってくる。声はエコーがかかっている。見上げた。視線が定まらない。
「さあ、ベッドにいこう」
体が浮いた。どろどろに溶けたゼリー状の中を、体が浮遊している。
何が起きている?
柔らかい羽毛の中に突き落とされる。体が沈んでいく。
「一騎」
俺の名前。
「可愛い私の息子」
唇に何かが触れた。ぬめりを帯びた生暖かいものが侵入した。
いやだ、やめろ。
声が出ない。
視界は歪んでいた。でもわかる。織田が、俺の体を組み敷いている。見下ろしてくる目は妖しく揺れていた。
「さすがボクシング部。いい体だね」
織田は喋りながら俺の胸板を指でくすぐった。
「探偵を雇って調べたんだよ、君のことを全部知りたくて」
二本の指が突起を強くつまむ。
「あ……っ」
痺れるような快感に戸惑いながら、固く目を閉じて、必死で耐えた。
「離婚したあと祥子は君を連れて私から逃げた。逃げたつもりでいた、と言ったほうがいいね。私はずっと見ていたよ。君のことならなんでも知ってる」
乳首を弄っていた指が離れた。俺は恐る恐る目を開けた。
「君は可愛い。私の大事な、たった一人の分身」
つ、と指が腹の上を滑った。爪の感触が下へ下へとゆっくり移動する。逃げなければ、と思うのに、まともに体が動かない。指が、下腹部に潜りこみ、俺のモノをつかむ。
「うっ……やめ……」
声を振り絞る。織田は低く笑った。
「すごく硬くなってるよ」
責めるように言うと、手を上下させ乱暴に扱いた。
「ひっ……、や……」
喉の奥で引きつれた悲鳴が上がる。
やめろ!
頭の中で虚しく喚いた。織田の手の中で硬くなっていく自分自身が信じられない。
「もうぐちゃぐちゃだね、一騎。パパにこうされるのがそんなに嬉しいの?」
唇を噛んで涙を堪えた。羞恥で死にそうだ。
織田は自分の手のひらをまじまじと見つめていた。俺から出た体液で、ベタベタに濡れていた。
「こんなに勃たせて」
ギュッと根元を掴まれ、俺は悲鳴を上げた。
「そろそろ限界かな」
織田はフフと鼻で笑うとスーツを脱ぎ捨て、ベルトを抜いてズボンを下ろした。そこから突き出た物体に、脳味噌が警鐘を鳴らした。逃げろ。早く逃げろ。
俺は精一杯努力して体を反転させると、這って織田から逃げようとした。
「すごい精神力だな」
腰をつかまれ、引き寄せられた。
「でも逃げられないよ」
愉快そうな織田の声。
「ころ……すっ! てめえは、ぜっ、たい、……殺す!」
「殺す? できっこないよ」
肛門に何かが侵入した。指だ。織田の指が内壁を広げるように動いている。気持ち悪くて腹が波打った。
「やっ、やめ……」
言葉が出ない。織田は俺の反応を面白がるように指を二本に増やし、グルグルと回転させた。
「ひぃっ……!」
痛みで萎えかけていたペニスが跳ね起きた。目が眩むような快感が、下腹部から伝わってくる。混乱した。嫌なのに、どうして、こんな。
「ここが気持ちいい?」
織田の声が背中で響く。指先が、何度もしつこくそこをノックした。無意識に腰が揺れる。
「あっあっあっ……ああぁぁっーーー!」
俺は情けない悲鳴を上げて精を放出した。しばらく肩で息をした。抵抗する気力も失せ、踏み潰された蛙のようにラグの上にへばりついた。
「可愛いなあ、一騎は」
音を立てて俺の背中にキスをする織田。どうでもよかった。勝手にしろ、と言いたいくらいだ。やかましく鳴り響いていた心臓が徐々に落ち着きを取り戻した頃、織田が言った。
「でもまだ終わってないよ」
腰を高く持ち上げられた。尻に硬い何かが触れる。織田の怒張したモノが俺のあそこに入ろうとしている。気づいて、汗が噴き出した。
「すぐ終わるからね」
やめろと言おうとした。でもそんなことは無駄だと悟り、歯を食い縛る。
「もっと力抜いて」
言われた通り、力を抜く。ぐい、と押し入ってくる硬い感触に、身を捩る。
「大丈夫だよ、一騎」
織田の手が腰を掴んで、ぐいぐいと捻じ込んでくる。痛みはなく、圧迫感があるだけ。奥のほうに押し込まれる感覚。織田が俺の頭上で息を吐いた。
「温かいなあ、一騎の中」
織田が言う。ぼんやりと、なんで俺は抵抗しないのかと考えていた。体が動かないからだ。簡単なことだ。そうだ、変な薬を打たれて、そのせいで体が動かない。無駄な抵抗は、しない。
「動くよ?」
織田が確認を取ってくる。笑えてくる。なんでも無理矢理やってきたくせに、今になって了解を得てなんになる。俺は無反応を通した。織田がゆっくりと腰を動かした。中のものが動く。目を閉じて、ラグに爪を立てた。
「一騎」
織田が呼ぶ。ゆっくりと出たり入ったり繰り返し、何度も俺の名前を呼んだ。
「一騎、一騎っ」
「はっ……あっ、はあっ……、んぅ……」
激しく突き刺す行為は永遠に続くのかと思った。音を立てて腰を打ちつける織田の息が上がってきた。俺の尻はあいつを食い千切る勢いで締めつけている。
気持ちよかった。
信じられなかった。
俺はこんなことをされて、感じている。
情けなくて、涙が出た。嗚咽と喘ぎが混じった、複雑な声が、自分の喉からひっきりなしに溢れてくる。織田は、動きを止めなかった。無言で腰を振っている。どんな顔をしているのかはわからなかった。
そのうち聞こえてきたのは、苦しげな呻き。体内に精液をぶちまけられる感覚。直後、脈打つ自分の下半身から精が放出された。
ああもう、どうだっていい。
気を失うほどの快感だった。
高そうな家具や気取ったインテリアを眺めながら舌を打つ。別にうちが貧乏というわけじゃない。母さんのおかげで何不自由ない生活はできている。でもなんとなく腹が立った。
俺は今、父親を名乗る男のマンションにいる。本物の父親かはわからない。
怪しいと思いながら、のこのことついて来た。こいつが誘拐犯とか連続殺人犯だとしても、逃げるのは簡単だと思ったからだ。織田は俺より背が低く、弱そうだ。いざとなったらぶん殴ってしまえばいい。
「お腹空いてる?」
織田が訊く。
「空いてるけど、いらねー」
「そう? 何か作ってあげようか。料理、得意なんだよ」
「いらねー」
ぶっきらぼうに応える。
「つーかあんた本当に俺の父親なのか?」
織田は微笑を絶やさずにうなずいた。父親と言われても全然ピンとこない。長めの黒髪を綺麗にセットした、品のいい顔立ち。俺とは似ていない。
「明日にでもお母さんに訊いてみるといいよ」
言われなくてもそうするつもりだ。織田は俺をソファに座らせると「何か飲む?」と訊いた。
「いらねーよ。それより訊いていいか?」
「うん、何?」
「なんで離婚したんだ?」
織田は小さく息を吐き、俺の隣に腰を下ろした。
「一騎は私のことを全然覚えてないみたいだね」
「覚えてない。だからまだ完全に信じちゃいない」
「私が偽の父親だと?」
織田は声を出して笑った。
「なんのためにそんな嘘をつくのかな。なんの得にもならないよ」
「そうかよ。じゃあ質問に答えろ」
「そっけないなあ。父親なんて興味ない?」
「その通り」
「じゃあどうしてついてきたの?」
少し考えて、答えた。
「なんで離婚したのか訊きたい。それだけ」
「ふうん」
何がふうんだ。人を見下したような態度にイライラし始めていた。
「母さんが嫌いになったから?」
「昔はママって言ってたのにね」
「はあ? 知らねーよ」
「そして私のことはパパって呼んでたよ」
「どうでもいい」
フフと織田は笑った。
「いいよ、教えてあげる」
織田はゆっくりと唇を舐めた。その仕草はぞっとするものがあった。俺は織田から目を背けた。どうしてだか、急に恐怖を感じた。握りしめた拳に汗が滲んでいる。
唐突に、耳に吐息を感じた。すぐ横に織田の顔がある。
「私がね、君を犯したからだよ」
耳の横で囁いた。意味がわからない。眉をひそめて織田を見た。
「たった五歳の、しかも自分の息子を犯したから。嫌がる君に無理矢理押し込んだよ。皮膚が切れて血が出ても私はやめなかった」
俺は笑いながら立ち上がった。
「あんた頭おかしいよ、そんなデタラメ」
「真実だよ。その現場を祥子に見られてしまって、それで離婚。彼女は私を何度も何度も殴りつけた」
「帰る」
俺は織田をすり抜けて玄関に向かった。靴を履いてドアを開けようとしたが、チェーン状の鍵がかかっていた。舌を打ち、手を伸ばす。
「帰さないよ」
背後で織田の声がした。
直後、首に痛み。
「つっ……、なんだよ!?」
振り払うと、コツン、と足元で何かが跳ねた。目を疑った。注射器だ。
「は? なんだ、これ……」
「一騎」
織田が笑いを含んだ声で俺の名を呼ぶ。脳がぐらりと揺れた。
――パパやめて!
幼い叫び声が聞こえた。両耳を押さえ、振り返る。織田の顔がすぐ目の前に迫っていた。胸を押した。つもりだった。力が入らない。織田の胸にすがりつく。
「いい子だね」
抱きしめられた。耳に息がかかる。気持ち悪い。突き飛ばそうともがくのに、なんの手応えも感じない。力がまったく入らない。
「やめ、やめろ……っ」
玄関のドアに押しつけられ、股間を揉んでくる。
「あっ……!」
勝手に声が出て、体が無様に揺れ動く。
――やだよ、痛い、痛いよぉ!
脳内で絶叫する子どもの悲鳴。
ガクガクと膝が震えた。
恐怖。痛み。
思い出した。
あのときの、幼い頃の感情が、閉じ込めていた記憶が、蘇る。
「ち、くしょぉ……」
膝をつく。視界が回っている。おかしい。吐き気がした。
「はっ、はあっ……」
「薬が効いたかな?」
織田の声が降ってくる。声はエコーがかかっている。見上げた。視線が定まらない。
「さあ、ベッドにいこう」
体が浮いた。どろどろに溶けたゼリー状の中を、体が浮遊している。
何が起きている?
柔らかい羽毛の中に突き落とされる。体が沈んでいく。
「一騎」
俺の名前。
「可愛い私の息子」
唇に何かが触れた。ぬめりを帯びた生暖かいものが侵入した。
いやだ、やめろ。
声が出ない。
視界は歪んでいた。でもわかる。織田が、俺の体を組み敷いている。見下ろしてくる目は妖しく揺れていた。
「さすがボクシング部。いい体だね」
織田は喋りながら俺の胸板を指でくすぐった。
「探偵を雇って調べたんだよ、君のことを全部知りたくて」
二本の指が突起を強くつまむ。
「あ……っ」
痺れるような快感に戸惑いながら、固く目を閉じて、必死で耐えた。
「離婚したあと祥子は君を連れて私から逃げた。逃げたつもりでいた、と言ったほうがいいね。私はずっと見ていたよ。君のことならなんでも知ってる」
乳首を弄っていた指が離れた。俺は恐る恐る目を開けた。
「君は可愛い。私の大事な、たった一人の分身」
つ、と指が腹の上を滑った。爪の感触が下へ下へとゆっくり移動する。逃げなければ、と思うのに、まともに体が動かない。指が、下腹部に潜りこみ、俺のモノをつかむ。
「うっ……やめ……」
声を振り絞る。織田は低く笑った。
「すごく硬くなってるよ」
責めるように言うと、手を上下させ乱暴に扱いた。
「ひっ……、や……」
喉の奥で引きつれた悲鳴が上がる。
やめろ!
頭の中で虚しく喚いた。織田の手の中で硬くなっていく自分自身が信じられない。
「もうぐちゃぐちゃだね、一騎。パパにこうされるのがそんなに嬉しいの?」
唇を噛んで涙を堪えた。羞恥で死にそうだ。
織田は自分の手のひらをまじまじと見つめていた。俺から出た体液で、ベタベタに濡れていた。
「こんなに勃たせて」
ギュッと根元を掴まれ、俺は悲鳴を上げた。
「そろそろ限界かな」
織田はフフと鼻で笑うとスーツを脱ぎ捨て、ベルトを抜いてズボンを下ろした。そこから突き出た物体に、脳味噌が警鐘を鳴らした。逃げろ。早く逃げろ。
俺は精一杯努力して体を反転させると、這って織田から逃げようとした。
「すごい精神力だな」
腰をつかまれ、引き寄せられた。
「でも逃げられないよ」
愉快そうな織田の声。
「ころ……すっ! てめえは、ぜっ、たい、……殺す!」
「殺す? できっこないよ」
肛門に何かが侵入した。指だ。織田の指が内壁を広げるように動いている。気持ち悪くて腹が波打った。
「やっ、やめ……」
言葉が出ない。織田は俺の反応を面白がるように指を二本に増やし、グルグルと回転させた。
「ひぃっ……!」
痛みで萎えかけていたペニスが跳ね起きた。目が眩むような快感が、下腹部から伝わってくる。混乱した。嫌なのに、どうして、こんな。
「ここが気持ちいい?」
織田の声が背中で響く。指先が、何度もしつこくそこをノックした。無意識に腰が揺れる。
「あっあっあっ……ああぁぁっーーー!」
俺は情けない悲鳴を上げて精を放出した。しばらく肩で息をした。抵抗する気力も失せ、踏み潰された蛙のようにラグの上にへばりついた。
「可愛いなあ、一騎は」
音を立てて俺の背中にキスをする織田。どうでもよかった。勝手にしろ、と言いたいくらいだ。やかましく鳴り響いていた心臓が徐々に落ち着きを取り戻した頃、織田が言った。
「でもまだ終わってないよ」
腰を高く持ち上げられた。尻に硬い何かが触れる。織田の怒張したモノが俺のあそこに入ろうとしている。気づいて、汗が噴き出した。
「すぐ終わるからね」
やめろと言おうとした。でもそんなことは無駄だと悟り、歯を食い縛る。
「もっと力抜いて」
言われた通り、力を抜く。ぐい、と押し入ってくる硬い感触に、身を捩る。
「大丈夫だよ、一騎」
織田の手が腰を掴んで、ぐいぐいと捻じ込んでくる。痛みはなく、圧迫感があるだけ。奥のほうに押し込まれる感覚。織田が俺の頭上で息を吐いた。
「温かいなあ、一騎の中」
織田が言う。ぼんやりと、なんで俺は抵抗しないのかと考えていた。体が動かないからだ。簡単なことだ。そうだ、変な薬を打たれて、そのせいで体が動かない。無駄な抵抗は、しない。
「動くよ?」
織田が確認を取ってくる。笑えてくる。なんでも無理矢理やってきたくせに、今になって了解を得てなんになる。俺は無反応を通した。織田がゆっくりと腰を動かした。中のものが動く。目を閉じて、ラグに爪を立てた。
「一騎」
織田が呼ぶ。ゆっくりと出たり入ったり繰り返し、何度も俺の名前を呼んだ。
「一騎、一騎っ」
「はっ……あっ、はあっ……、んぅ……」
激しく突き刺す行為は永遠に続くのかと思った。音を立てて腰を打ちつける織田の息が上がってきた。俺の尻はあいつを食い千切る勢いで締めつけている。
気持ちよかった。
信じられなかった。
俺はこんなことをされて、感じている。
情けなくて、涙が出た。嗚咽と喘ぎが混じった、複雑な声が、自分の喉からひっきりなしに溢れてくる。織田は、動きを止めなかった。無言で腰を振っている。どんな顔をしているのかはわからなかった。
そのうち聞こえてきたのは、苦しげな呻き。体内に精液をぶちまけられる感覚。直後、脈打つ自分の下半身から精が放出された。
ああもう、どうだっていい。
気を失うほどの快感だった。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
誕生日当日、親友に裏切られて婚約破棄された勢いでヤケ酒をしましたら
Rohdea
恋愛
───酔っ払って人を踏みつけたら……いつしか恋になりました!?
政略結婚で王子を婚約者に持つ侯爵令嬢のガーネット。
十八歳の誕生日、開かれていたパーティーで親友に裏切られて冤罪を着せられてしまう。
さらにその場で王子から婚約破棄をされた挙句、その親友に王子の婚約者の座も奪われることに。
(───よくも、やってくれたわね?)
親友と婚約者に復讐を誓いながらも、嵌められた苛立ちが止まらず、
パーティーで浴びるようにヤケ酒をし続けたガーネット。
そんな中、熱を冷まそうと出た庭先で、
(邪魔よっ!)
目の前に転がっていた“邪魔な何か”を思いっきり踏みつけた。
しかし、その“邪魔な何か”は、物ではなく────……
★リクエストの多かった、~踏まれて始まる恋~
『結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが』
こちらの話のヒーローの父と母の馴れ初め話です。
俺様ボスと私の恋物語 ~男の花園~
福山ともゑ
BL
フォン・パトリッシュ一族の『御』の息子であるジュニアが、クリニックボスである友明を、ドイツに連れて行こうとする。
そこから話が始まります。
ドンパチあり、悲劇あり、笑いあり。。
そして、パースを発祥の地として、友明は『オーストラリア・ドン』と呼ばれる様になった。
「『ドン』と名称が付いても、日々の生活は変わらない。」
そう、はっきりと友明は言ってます。
それにエドワードは、未だにレディを友明の母親だと信じて疑ってない。
そんなにも、友明はレディに似ているんですね。
そして、友明はレディを……、亡き母を、自分の母親だと信じてまっすぐにマザコンを貫いてる。
真実を知っても、なお。
夫には言えない、俺と息子の危険な情事
あぐたまんづめ
BL
Ωだと思っていた息子が実はαで、Ωの母親(♂)と肉体関係を持つようになる家庭内不倫オメガバース。
α嫌いなβの夫に息子のことを相談できず、息子の性欲のはけ口として抱かれる主人公。夫にバレないように禁断なセックスを行っていたが、そう長くは続かず息子は自分との子供が欲しいと言ってくる。「子供を作って本当の『家族』になろう」と告げる息子に、主人公は何も言い返せず――。
昼ドラ感満載ですがハッピーエンドの予定です。
【三角家の紹介】
三角 琴(みすみ こと)…29歳。Ω。在宅ライターの元ヤンキー。口は悪いが家事はできる。キツめの黒髪美人。
三角 鷲(しゅう)…29歳。β。警察官。琴と夫婦関係。正義感が強くムードメーカー。老若男女にモテる爽やかイケメン
三角 鵠(くぐい)…15歳。Ω→α。中学三年生。真面目で優秀。二人の自慢の息子。学校では王子様と呼ばれるほどの人気者。
二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです
矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。
それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。
本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。
しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。
『シャロンと申します、お姉様』
彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。
家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。
自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。
『……今更見つかるなんて……』
ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。
これ以上、傷つくのは嫌だから……。
けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。
――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。
◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです。
※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっております。……本当に申し訳ございませんm(_ _;)m
【完結】離婚されたけど、新しい旦那さま方に捕まりました~巨人族の夫たちに溺愛されてます
浅葱
BL
男しか存在しない世界「ナンシージエ」の物語。
青年(リューイ)は離縁された。
元々契約結婚のようなもので、子を産んだら離婚すると言われていた。
子は夫に渡し、実家に帰ってきた青年は、夫だった者のことを想う。ひどい人だけど、青年はそれでも好きだった。
そんな青年に隣国である巨人族の国の貴族から縁談が舞い込んだ。彼らの国では夫が複数に妻が一人というのが当たり前だという。
子を産める身体だと証明されたから、結婚を申し込まれたらしかった。
自分の身体などもうどうでもいいと投げやりになっていた青年は条件をつけた。
「子が産まれるとは限りませんが、絶対に離縁しないという条件であれば嫁ぎます」
巨人族からも条件が提示された。
「私たち夫に抱かれることを決して拒まないように」
巨人族は青年より遥かに身体が大きい。もしかしたら死んでしまうかもしれないと青年は思った。
それでもかまわなかった。だって彼は……。
注:巨人族の夫たち以外との性行為が最初の頃あります。最初の頃は不憫です。
巨人族の夫たち4人(+α?は終わりの方)×バツ一の青年(結婚後天使になる)のとろとろ溺愛らぶらぶハッピーエンドです。(最後には子どもも含めてのハッピーエンドになるのでご安心を。溺愛要員がもう一人増えます)
+αとの性行為を含む場面には※がついています。ご了承ください。
天使シリーズです。説明についてはfujossyを参照のこと→https://fujossy.jp/books/17868
中華ファンタジー/天使シリーズ/受け視点/経産夫/巨根/産卵/溺愛/乳首責め/アナル責め/結腸責め/おもらし(小スカ)/潮吹き/総受け/授乳プレイ/舌フェラ/夫に見守られながらのえっち?(愛は溢れてる/妊娠?
イラストはNEOZONEさんにお願いしました。向かって左から、偉明、リューイ、明輝です。
12/25 第11回BL小説大賞奨励賞ありがとうございました!
エンシェントドラゴンは隠れ住みたい
冬之ゆたんぽ
BL
神のごとき古代竜だった記憶を持ち、竜の滅んだ世界で竜として転生したアンフェールは、隠れ住んでいた森で今世の『番』である第一王子と出会った。
幼少期の虐待で深く傷つきながらも、健気に頑張る王子は愛しい。そんな番を害そうとする者は許せない。
――ちいさな竜王アンフェールは彼を守ると決意したのだ。
【不憫な第一王子攻め×力のある美少年(竜)受け】
※受けは7歳ショタスタートですが、後半14歳に成長します。受け攻め年齢十歳差です。
※後半攻めは頼れる男前に成長します。両片思いからの溺愛。
【短編集】恋愛のもつれで物に変えられた男女の運命は!?
ジャン・幸田
恋愛
短編のうち、なんらかの事情で人形などに変化させられてしまう目に遭遇した者たちの運命とは!?
作品の中にはハッピーエンドになる場合とバットエンドになる場合があります。
人を人形にしたりするなど状態変化する作品に嫌悪感を持つ人は閲覧を回避してください。
寂しいきみは優しい悪魔の腕でまどろむ
朏猫(ミカヅキネコ)
BL
蒼は、小さな箱を運ぶ仕事をしていた。仕事のことは誰にも言うなと言われたから、きっとよくない仕事に違いない。そう思ってはいたけど、お金がないからやるしかない。明日は箱を運ぶ仕事があるし、今夜のご飯はないし……蒼は寝ることにした。そうして目が覚めたら、なぜか怖い人たちの事務所にいた。きっとよくない仕事をしていたから連れてこられたんだ。風俗店に行くか臓器売買されるに違いない、そう思う蒼だったが……。不憫な青年が拾われて溺愛されていくお話。※他サイトにも掲載
[強面のイケオジ × ひとりぼっちの青年 / BL / R18]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる