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20話「見習いシスターと不安」
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修道服を着た女性……恐らくシスターから衝撃的な言葉を言われると俺と深月は呆気に取られて何も言い返せなかったが、それでも相方が無理やり声を喉から捻り出すと必死に反論して誤解を解こうとしていた。
だがそれでもシスターに伝わることはなく、彼女は深月の言動を照れ隠しか何かと勘違いしてる様子であった。
つまり深月が慌てて否定の言葉を使うたびに俺達が恋仲というのを認めているようなものではあるのだが、流石にこれ以上話をややこしくする訳にはいかないとして俺は彼女に真実を告げることにする。
「本当に俺達は恋仲とかではなく、普通に冒険者仲間なんだ。そしてこいつは見て目は美少女だが、とある魔女に呪いを掛けられたせいでこんな見た目になっているんだ。元は俺と同じ男だぜ」
シスターの瞳を真っ直ぐに見ながら深月についての真実を伝えていくと、そのまま相方の隣へと歩みを進ませて肩に手を乗せた。その際に深月からは若干嫌な顔をされたが気にすることではない。これも彼女に信憑性を与える為には必要なことなのだ。
……まあ本当はつい勢いで肩に手を乗せてしまっただけなのだがな。
しかしそれらの説明と行為はシスターにとって、
「えっ!? ほ、本当にっ!?」
という具合に効果抜群のようで目を丸くさせて露骨に取り乱していた。
「あははっ……。実はそうなんです」
そして当の本人でもある深月は後頭部に手を当てながら、何処か恥ずかしそうに乾いた笑みを見せていた。
「……ということは、ここに入らした理由は呪いを解く為ですか?」
驚愕の表情を沈めてシスターは真面目な声色と共に、真剣な眼差しを深月に向けながら尋ねていた。
そして漸く事の本題へと入れるとして相方へと視線を僅かに向けると、それには自分から全ての事情を話すようにという意味を込めていたのだが、鈍感な深月は視線の意味に気が付いてないようで困惑していたが、それでも暫くすると視線の意味に気が付いたようで小さく頷いて反応していた。
「はい、そうです! 実は話すと長いんですが食糧難の魔女を助けて――」
それから相方が何故か申し訳なさそうな雰囲気を漂わせつつ事情を話し始めると、不思議なことに一瞬だけシスターの表情が強張るようにして見えたのだが、それは恐らく俺の気のせいとかではないと思われる。何故なら深月も彼女の表情を見ていたらしく首を傾げていたからだ。
「分かりました。ではさっそく呪いを解く為に準備を致しますので中へと、お入り下さい」
しかしそれでもシスターは徐に手を教会の扉前へと向けると、中へと入るように促してきて迂闊に一瞬だけ見せた表情の意味を尋ねることはできなかった。
だがそれでも呪いについての進展があることは確かであり、
「お、なんとかなりそうだな深月!」
気分が少しだけ上がると相方の背中を軽く叩いて声を掛けた。
「あ、あの……僕たち今日ここに来たばかりで持ち金が……」
けれど深月は背中を叩かれても微動だにせず歯切れの悪い感じで口を開くと、どうやら呪いを解く為には多少なりとも金が掛かることを知り得ていたようで、金銭面について不安に駆られている様子であった。確かに某ゲームでも呪いを払う為には三十ゴールドとか払わされていた記憶がある。
「あ、ああ。ご心配は要りませんよ。お金は一切受け取りませんから」
相方の不安を取り除くようにしてシスターが優しい声で、金を取らないという聖人のようなことを言い出すと深月の表情が軽くなるのが分かった。
だけど俺としては金を一切取らないとうのには妙な不安が残る。
例え教会で働いているとしても維持費とかは当然掛かる訳で、こういう呪いを払うとかの活動で人々から金を取らないと教会自体が存続できないのではないだろうか。
慈善活動をしているという訳でもないだろうに。一体このシスターは何を考えているのか、もしかしてこの教会は関わってはいけない部類のものなのかも知れない。
……そう思うと妙な緊張感と焦りが次第に湧いてくるのだが、
「ですが! 私も見習いシスターなのでしっかりと呪いを払えるかどうか……」
顔を下に俯かせると弱々しい顔と声で自分のことを話していた。
「あれ? シスターさんって見習いなんですか?」
そして純粋に疑問に思うことを確認するようにして再度彼女に尋ねる。
だがそれと同時にお金を一切受け取らないという理由が何となく分かると、それは自身が見習いという身分だからこそであろう。
「はい、そうです。先月からここで働かせて頂いてまして……あっ、そう言えば自己紹介がまだでしたね」
はっきりとした口調で自身のことを見習いだとシスターは再度公言すると、これは些か失礼に値するかも知れないが一抹の不安が俺の中で大きく込み上げた。
本当に彼女の力で深月に付与されている呪いを払う事ができるのだろうかと。
普通こういう場合は呪いを払う事に失敗すると、倍になって呪いが返ってくるのではないだろうか。もしくは呪いの力が増幅されて、より強固になるとか。
「重ね重ね申し訳ございません。それでは失礼ながら最初に私から自己紹介を。名前は【ブレンダ=ホレク】と言います。この教会で見習いシスターを務めさせて頂いております」
ここで漸くシスターの名前を知ることとなると、ブレンダは自己紹介を述べたあと頭を深々と下げていた。それから自己紹介を通されるとこちらとしても名乗らない訳にはいかないとして、
「俺の名前は鬼塚雄飛だ。改めてよろしく頼む」
何とも言えない微妙な気持ちを抱えながらも親指をぐっと立てながら挨拶を返して名を告げた。
するとそのあと直ぐに隣からは、
「僕は五十嵐深月です! よろしくお願いします!」
相方の自己紹介が聞こえてくるが気になることに何やら声が若干上ずっていた。
もしかしてだがここへ来て女性と接するということに緊張を感じているのだろうか。
だとしたなら何故今更と言う他ないのだが、俺は深月ではないので当人の気持ちは分からない。
しかし互いに自己紹介を終えるとブレンダの指示のもと教会の中へと改めて入ることとなった。
まあ正直に言うとかなりの不安はあるのだが、それでも今は僅かにでも呪いを払える可能性に賭けるとしよう。
大丈夫だ。初心者冒険者は必ずビギナーズラックという限定的な運要素を持っているからな。
これがあれば大抵のことは何とかなると思いたい。
……だがそれが何処で何らかの形で既に使われていたら終わりだがな。
だがそれでもシスターに伝わることはなく、彼女は深月の言動を照れ隠しか何かと勘違いしてる様子であった。
つまり深月が慌てて否定の言葉を使うたびに俺達が恋仲というのを認めているようなものではあるのだが、流石にこれ以上話をややこしくする訳にはいかないとして俺は彼女に真実を告げることにする。
「本当に俺達は恋仲とかではなく、普通に冒険者仲間なんだ。そしてこいつは見て目は美少女だが、とある魔女に呪いを掛けられたせいでこんな見た目になっているんだ。元は俺と同じ男だぜ」
シスターの瞳を真っ直ぐに見ながら深月についての真実を伝えていくと、そのまま相方の隣へと歩みを進ませて肩に手を乗せた。その際に深月からは若干嫌な顔をされたが気にすることではない。これも彼女に信憑性を与える為には必要なことなのだ。
……まあ本当はつい勢いで肩に手を乗せてしまっただけなのだがな。
しかしそれらの説明と行為はシスターにとって、
「えっ!? ほ、本当にっ!?」
という具合に効果抜群のようで目を丸くさせて露骨に取り乱していた。
「あははっ……。実はそうなんです」
そして当の本人でもある深月は後頭部に手を当てながら、何処か恥ずかしそうに乾いた笑みを見せていた。
「……ということは、ここに入らした理由は呪いを解く為ですか?」
驚愕の表情を沈めてシスターは真面目な声色と共に、真剣な眼差しを深月に向けながら尋ねていた。
そして漸く事の本題へと入れるとして相方へと視線を僅かに向けると、それには自分から全ての事情を話すようにという意味を込めていたのだが、鈍感な深月は視線の意味に気が付いてないようで困惑していたが、それでも暫くすると視線の意味に気が付いたようで小さく頷いて反応していた。
「はい、そうです! 実は話すと長いんですが食糧難の魔女を助けて――」
それから相方が何故か申し訳なさそうな雰囲気を漂わせつつ事情を話し始めると、不思議なことに一瞬だけシスターの表情が強張るようにして見えたのだが、それは恐らく俺の気のせいとかではないと思われる。何故なら深月も彼女の表情を見ていたらしく首を傾げていたからだ。
「分かりました。ではさっそく呪いを解く為に準備を致しますので中へと、お入り下さい」
しかしそれでもシスターは徐に手を教会の扉前へと向けると、中へと入るように促してきて迂闊に一瞬だけ見せた表情の意味を尋ねることはできなかった。
だがそれでも呪いについての進展があることは確かであり、
「お、なんとかなりそうだな深月!」
気分が少しだけ上がると相方の背中を軽く叩いて声を掛けた。
「あ、あの……僕たち今日ここに来たばかりで持ち金が……」
けれど深月は背中を叩かれても微動だにせず歯切れの悪い感じで口を開くと、どうやら呪いを解く為には多少なりとも金が掛かることを知り得ていたようで、金銭面について不安に駆られている様子であった。確かに某ゲームでも呪いを払う為には三十ゴールドとか払わされていた記憶がある。
「あ、ああ。ご心配は要りませんよ。お金は一切受け取りませんから」
相方の不安を取り除くようにしてシスターが優しい声で、金を取らないという聖人のようなことを言い出すと深月の表情が軽くなるのが分かった。
だけど俺としては金を一切取らないとうのには妙な不安が残る。
例え教会で働いているとしても維持費とかは当然掛かる訳で、こういう呪いを払うとかの活動で人々から金を取らないと教会自体が存続できないのではないだろうか。
慈善活動をしているという訳でもないだろうに。一体このシスターは何を考えているのか、もしかしてこの教会は関わってはいけない部類のものなのかも知れない。
……そう思うと妙な緊張感と焦りが次第に湧いてくるのだが、
「ですが! 私も見習いシスターなのでしっかりと呪いを払えるかどうか……」
顔を下に俯かせると弱々しい顔と声で自分のことを話していた。
「あれ? シスターさんって見習いなんですか?」
そして純粋に疑問に思うことを確認するようにして再度彼女に尋ねる。
だがそれと同時にお金を一切受け取らないという理由が何となく分かると、それは自身が見習いという身分だからこそであろう。
「はい、そうです。先月からここで働かせて頂いてまして……あっ、そう言えば自己紹介がまだでしたね」
はっきりとした口調で自身のことを見習いだとシスターは再度公言すると、これは些か失礼に値するかも知れないが一抹の不安が俺の中で大きく込み上げた。
本当に彼女の力で深月に付与されている呪いを払う事ができるのだろうかと。
普通こういう場合は呪いを払う事に失敗すると、倍になって呪いが返ってくるのではないだろうか。もしくは呪いの力が増幅されて、より強固になるとか。
「重ね重ね申し訳ございません。それでは失礼ながら最初に私から自己紹介を。名前は【ブレンダ=ホレク】と言います。この教会で見習いシスターを務めさせて頂いております」
ここで漸くシスターの名前を知ることとなると、ブレンダは自己紹介を述べたあと頭を深々と下げていた。それから自己紹介を通されるとこちらとしても名乗らない訳にはいかないとして、
「俺の名前は鬼塚雄飛だ。改めてよろしく頼む」
何とも言えない微妙な気持ちを抱えながらも親指をぐっと立てながら挨拶を返して名を告げた。
するとそのあと直ぐに隣からは、
「僕は五十嵐深月です! よろしくお願いします!」
相方の自己紹介が聞こえてくるが気になることに何やら声が若干上ずっていた。
もしかしてだがここへ来て女性と接するということに緊張を感じているのだろうか。
だとしたなら何故今更と言う他ないのだが、俺は深月ではないので当人の気持ちは分からない。
しかし互いに自己紹介を終えるとブレンダの指示のもと教会の中へと改めて入ることとなった。
まあ正直に言うとかなりの不安はあるのだが、それでも今は僅かにでも呪いを払える可能性に賭けるとしよう。
大丈夫だ。初心者冒険者は必ずビギナーズラックという限定的な運要素を持っているからな。
これがあれば大抵のことは何とかなると思いたい。
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