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1話「ここはどこですか?」
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俺が電車に轢かれてどれだけの時間が経過したのだろうか。既に手足の感覚は何処にもないのだが、それでも意識だけは朧げな状態を維持していて思案するということは出来ていた。
「お……て……なぁ……っ!」
そして先程から耳元で誰かが叫ぶようにして大声を出しているのだが、生憎と手足の感覚が駄目な事から満足に起き上がることも出来ない。
だけど目を開けて声を出すことぐらいなら可能なのではないかと思うと、最後の力を振り絞る勢いで意識を集中させて実行すると――――
「だぁぁあっ! 俺は死なないぞ深月ぃ!」
急に金縛りが解除されたように体は自由に動かせるようになり、相方の名前を叫びながら起き上がることに成功した。
「お、おお雄飛! 本当に死んだのかと思ったぞ!」
すると目の前には今にも泣きそうな顔をして地面にしゃがみ込んでいる相方の姿があり、どうやら意識だけの状態の時に声を掛けてくれていたのは深月のようである。
「あ、ああ何か心配掛けてすまないな。説明は難しいんだが……漸く金縛りが解けて動けるようになってな?」
全身がしっかりと動くかどうか確認の意味を込めて手首を触りながら事情を話すが、それは俺自身不確定なものであり真意は分からない。
「なんで疑問形なのさ……。まあそんな事は今いいか。取り敢えず周りを見てよ!」
途端に深月は呆れ顔を浮かべていたが矢継ぎ早に忙しなく身振り手振りを使い周囲を見るように主張してくる。
「周りを? 一体全体どうしたってんだ……よっ!?」
そうして言われた通りに顔を動かして周囲へと視線を向けると――――
「な、なな、なんじゃこりゃぁぁぁ!」
視界に映り込んだ光景を見て何年かぶりに声帯を震わせる勢いで声を荒らげた。
そう、俺の視界には絶対にありえないものが見えているのだ。それは辺り一面に広がる自然が豊かそうな森や、田舎道特有の舗装されていない土道であったりと。
「……いや待てよ? 俺はさっきまで人工感あふれる駅に居た筈だ。であればこれは夢なのではないか? 現に先程まで寝ていた状態の訳だしな。うむ、そうだろう!」
そして一通り周囲の景色を見終えると静かに天を仰ぎながら呟くと、この異常事態は全て夢だとして自身を納得させて心の平穏を保とうとした。
「えっ、ちょっと雄飛?」
だがその行為は傍から見たら奇行に見えるのか深月が心配そうに声を掛けてくる。
「ってことで俺はまた寝て今度は現実世界で起きるから、その時にまた会おうぜ夢の世界の深月よっ!」
これが夢の世界であるならば再び寝ることで元の世界で目を覚ますことが出来るのではないかと考え、再び背を地面に付けて瞼を閉じるとゆっくりと深呼吸を行い寝る体勢に入る。
「ちょっ待てって! これが現実だって! ほら、僕の服をよく見てよ!」
しかしそこへ深月が寝るのを邪魔するように体を揺さぶりながら顔を覗かせてきた。
「んだよ、まったく。……で、なにそれ? なんでそんなに赤い服を着てるんだ? 赤色好きだっけ?」
直ぐにでも眠れそうな雰囲気はなく尚且つ体を揺さぶられたことで眠気が一切なくなると、面倒だが顔を相方の方へと向けて血のように真紅色に染まる服を目の当たりにした。
「別に色に関しては好きでも嫌いでもないけど、これは雄飛が電車に轢かれ際に浴びた大量の血だよ!」
「……はっ?」
いきなり何を言い出すのかと深月の言葉を聞いて思考が停止するが、そこで電車に轢かれる前に相方が着ていた服を思い出すと確かに真紅色ではなかった気がする。
「はっ? じゃないんだよ! だから雄飛は俺の目の前で確かに電車に轢かれて死んだんだよ!」
怒りを顕にしているのか深月は服の両端を掴んで俺の血とやらが大量に付着した服を主張してくると、後半の方は多少投げやり感があるが轢かれて死んだと口にしていた。
「え、えーっと……だったらなんだ? ここは死後の国とでも言うのか?」
だが仮に死んでいたとしてもこの場所が所謂天国とかと呼ばれる場所であるとは到底思えない。
何故ならどう見ても左右には森が構えていて、俺が横たわる場所は土道であり、なによりも死人には足がないとされるが、しっかりと両足が揃っているのだから。
「それは……分からないよ。だけど雄飛が死んだことに変わりはない。それにここが死後の世界なら何で僕までもがここに居るのか理由が不明だよ」
どうやら深月の方もここが死後の世界とは考えていないようであるが、何がなんでも俺を死んだことにしたいという気持ちは多いに伝わる。
何か恨まれるようなことでもしたのだろうか。一切記憶にないのだがな。
「それもそうか。うーむ、考えることは余り好きじゃないんだけどなぁ。取り敢えず互いに覚えている事を共有して間違いがないか確認でもしようぜ」
深月がこの場に居ることで死後の世界という説が消えると、そこで一つの提案が脳裏を駆け巡り、それは俺達の記憶に何かしらの綻びがないかというものである。そこでもし些細な間違いがあれば、それが原因だとして少しでも現状の解明が早くなるかと思ったのだ。
「そうだね。どうせ今更試験に間に合う訳もないし、そもそもここが日本なのかどうかも疑わしいからね」
両手を僅かに上げて肩を竦ませると深月はこの期に及んで受験の事を気にしていたようだが、ここが日本という可能性は殆どない気がする。これは直感的なもので確たる証拠がある訳ではないが。
「まだ試験のことを気にしていたのか……まあいいや。取り敢えず俺が覚えていることは――」
「えーっと僕が覚えていることは――」
俺達が最後に見た光景などを話していくと体感時間で十分ほどが経過していた気がする。
――――そして漸く一通り全てを話し終えると、
「うむ、なるほど分からん」
余計に混乱を招くだけで特に記憶に間違いはなかった。ただ俺が電車に轢かれた際の出来事を事細かに話す深月が何故か生き生きとした表情を見せていたのに疑問が残ったぐらいだ。
「……ねえ雄飛。今から凄く馬鹿なことを言うかも知れないけど聞いてくれるかい?」
それから神妙な面持ちで手を顎に当てながら深月が口を開くと、その佇まいからは真剣そのものという意思が垣間見られる。
もしかしてこの世界について何か気がついた事があるのだろうか?
だとしたらそれは例え馬鹿な発言だとしても耳を傾けるべきであろう。
「ふっ、愚問だな。既に馬鹿な状態が起きているのだ。今更一つや二つ何を言った所で変わることはない。故に許可する! 言ってみろ深月!」
腰を地面から上げて立ち上がると足腰に上手く力が入らず千鳥足となるが自慢の体幹で無理やり堪えた。
「も、もしかしてだけど僕達って異世界転生しちゃったんじゃ……」
「な、なにぃ! あのラノベの代表格とも言える異世界転生だと!?」
額に妙な汗を滲ませた深月を視界に収めながら話を聞くと、それは最早ラノベの登竜門とも呼ばれている異世界転生が現実に起こったのではないかと言うものであった。
「だ、だってさ周りを見てよ! 明らかに日本離れした森や地形。そして何よりも雄飛は死んでここに来た。線路内でぐちゃぐちゃの肉片になったのにも関わず!」
顔色を徐々に青白くさせて深月は再び身振り手振りを使用して異世界転生足りうる説明を行う。
「よせ! 肉片とかぐちゅぐちゃとか言うな! 普通に怖いだろ」
だが肉片とかの説明は本当に気分がへこむというか、相方が着ている真紅色の服が主張を強めるから辞めて頂きたい。
しかも本当に血だったらしく乾き始めいる部分が若干だが茶色に変色しつつあるのだ。
「あ、ああごめん。だけどそれしか僕の頭ではこの異常事態の答えが出ないんだ」
色々と察したのか直ぐに深月は謝ると頭を掻きながら視線を泳がせていた。
「まあラノベで白飯が食えるとか豪語していたぐらいの男だからな」
「なにそれ貶してるの?」
急に頭を掻く手を止めると泳がせていた瞳をすらも睨むよう向けてくる。
「いんや、逆だ逆。寧ろ褒めてる。仮に異世界転生しなたらば俺には知識が豊富な深月が居るからな! 何も心配が要らないと言えるだろう! はっはは!」
そうなのだ。別に貶す意味で口にしたのではなく安堵したが故に自然と出た言葉なのだ。
なんせ深月は数々のラノベに手を出しては余すことなく全てを読破し、ファンレターすらも贈るほどの猛者だからだ。
「あ、ああそう。だけど僕は死んでないのに何でここに居るんだろう? もしかして単純に雄飛の巻き添えで転生させられたのか? ……だとしたら普通にキレそう。なにこれ超理不尽」
俺の隣では深月が何やら小声で独り言を呟いているようだが、明確に苛立ちを抱えていることだけは見ていて分かる。何故なら相方は怒ると親指の爪を噛む癖があるからだ。
つまり今まさに深月は爪を噛んで何処とも言えぬ場所に視線を向けている状態ということだ。
「お……て……なぁ……っ!」
そして先程から耳元で誰かが叫ぶようにして大声を出しているのだが、生憎と手足の感覚が駄目な事から満足に起き上がることも出来ない。
だけど目を開けて声を出すことぐらいなら可能なのではないかと思うと、最後の力を振り絞る勢いで意識を集中させて実行すると――――
「だぁぁあっ! 俺は死なないぞ深月ぃ!」
急に金縛りが解除されたように体は自由に動かせるようになり、相方の名前を叫びながら起き上がることに成功した。
「お、おお雄飛! 本当に死んだのかと思ったぞ!」
すると目の前には今にも泣きそうな顔をして地面にしゃがみ込んでいる相方の姿があり、どうやら意識だけの状態の時に声を掛けてくれていたのは深月のようである。
「あ、ああ何か心配掛けてすまないな。説明は難しいんだが……漸く金縛りが解けて動けるようになってな?」
全身がしっかりと動くかどうか確認の意味を込めて手首を触りながら事情を話すが、それは俺自身不確定なものであり真意は分からない。
「なんで疑問形なのさ……。まあそんな事は今いいか。取り敢えず周りを見てよ!」
途端に深月は呆れ顔を浮かべていたが矢継ぎ早に忙しなく身振り手振りを使い周囲を見るように主張してくる。
「周りを? 一体全体どうしたってんだ……よっ!?」
そうして言われた通りに顔を動かして周囲へと視線を向けると――――
「な、なな、なんじゃこりゃぁぁぁ!」
視界に映り込んだ光景を見て何年かぶりに声帯を震わせる勢いで声を荒らげた。
そう、俺の視界には絶対にありえないものが見えているのだ。それは辺り一面に広がる自然が豊かそうな森や、田舎道特有の舗装されていない土道であったりと。
「……いや待てよ? 俺はさっきまで人工感あふれる駅に居た筈だ。であればこれは夢なのではないか? 現に先程まで寝ていた状態の訳だしな。うむ、そうだろう!」
そして一通り周囲の景色を見終えると静かに天を仰ぎながら呟くと、この異常事態は全て夢だとして自身を納得させて心の平穏を保とうとした。
「えっ、ちょっと雄飛?」
だがその行為は傍から見たら奇行に見えるのか深月が心配そうに声を掛けてくる。
「ってことで俺はまた寝て今度は現実世界で起きるから、その時にまた会おうぜ夢の世界の深月よっ!」
これが夢の世界であるならば再び寝ることで元の世界で目を覚ますことが出来るのではないかと考え、再び背を地面に付けて瞼を閉じるとゆっくりと深呼吸を行い寝る体勢に入る。
「ちょっ待てって! これが現実だって! ほら、僕の服をよく見てよ!」
しかしそこへ深月が寝るのを邪魔するように体を揺さぶりながら顔を覗かせてきた。
「んだよ、まったく。……で、なにそれ? なんでそんなに赤い服を着てるんだ? 赤色好きだっけ?」
直ぐにでも眠れそうな雰囲気はなく尚且つ体を揺さぶられたことで眠気が一切なくなると、面倒だが顔を相方の方へと向けて血のように真紅色に染まる服を目の当たりにした。
「別に色に関しては好きでも嫌いでもないけど、これは雄飛が電車に轢かれ際に浴びた大量の血だよ!」
「……はっ?」
いきなり何を言い出すのかと深月の言葉を聞いて思考が停止するが、そこで電車に轢かれる前に相方が着ていた服を思い出すと確かに真紅色ではなかった気がする。
「はっ? じゃないんだよ! だから雄飛は俺の目の前で確かに電車に轢かれて死んだんだよ!」
怒りを顕にしているのか深月は服の両端を掴んで俺の血とやらが大量に付着した服を主張してくると、後半の方は多少投げやり感があるが轢かれて死んだと口にしていた。
「え、えーっと……だったらなんだ? ここは死後の国とでも言うのか?」
だが仮に死んでいたとしてもこの場所が所謂天国とかと呼ばれる場所であるとは到底思えない。
何故ならどう見ても左右には森が構えていて、俺が横たわる場所は土道であり、なによりも死人には足がないとされるが、しっかりと両足が揃っているのだから。
「それは……分からないよ。だけど雄飛が死んだことに変わりはない。それにここが死後の世界なら何で僕までもがここに居るのか理由が不明だよ」
どうやら深月の方もここが死後の世界とは考えていないようであるが、何がなんでも俺を死んだことにしたいという気持ちは多いに伝わる。
何か恨まれるようなことでもしたのだろうか。一切記憶にないのだがな。
「それもそうか。うーむ、考えることは余り好きじゃないんだけどなぁ。取り敢えず互いに覚えている事を共有して間違いがないか確認でもしようぜ」
深月がこの場に居ることで死後の世界という説が消えると、そこで一つの提案が脳裏を駆け巡り、それは俺達の記憶に何かしらの綻びがないかというものである。そこでもし些細な間違いがあれば、それが原因だとして少しでも現状の解明が早くなるかと思ったのだ。
「そうだね。どうせ今更試験に間に合う訳もないし、そもそもここが日本なのかどうかも疑わしいからね」
両手を僅かに上げて肩を竦ませると深月はこの期に及んで受験の事を気にしていたようだが、ここが日本という可能性は殆どない気がする。これは直感的なもので確たる証拠がある訳ではないが。
「まだ試験のことを気にしていたのか……まあいいや。取り敢えず俺が覚えていることは――」
「えーっと僕が覚えていることは――」
俺達が最後に見た光景などを話していくと体感時間で十分ほどが経過していた気がする。
――――そして漸く一通り全てを話し終えると、
「うむ、なるほど分からん」
余計に混乱を招くだけで特に記憶に間違いはなかった。ただ俺が電車に轢かれた際の出来事を事細かに話す深月が何故か生き生きとした表情を見せていたのに疑問が残ったぐらいだ。
「……ねえ雄飛。今から凄く馬鹿なことを言うかも知れないけど聞いてくれるかい?」
それから神妙な面持ちで手を顎に当てながら深月が口を開くと、その佇まいからは真剣そのものという意思が垣間見られる。
もしかしてこの世界について何か気がついた事があるのだろうか?
だとしたらそれは例え馬鹿な発言だとしても耳を傾けるべきであろう。
「ふっ、愚問だな。既に馬鹿な状態が起きているのだ。今更一つや二つ何を言った所で変わることはない。故に許可する! 言ってみろ深月!」
腰を地面から上げて立ち上がると足腰に上手く力が入らず千鳥足となるが自慢の体幹で無理やり堪えた。
「も、もしかしてだけど僕達って異世界転生しちゃったんじゃ……」
「な、なにぃ! あのラノベの代表格とも言える異世界転生だと!?」
額に妙な汗を滲ませた深月を視界に収めながら話を聞くと、それは最早ラノベの登竜門とも呼ばれている異世界転生が現実に起こったのではないかと言うものであった。
「だ、だってさ周りを見てよ! 明らかに日本離れした森や地形。そして何よりも雄飛は死んでここに来た。線路内でぐちゃぐちゃの肉片になったのにも関わず!」
顔色を徐々に青白くさせて深月は再び身振り手振りを使用して異世界転生足りうる説明を行う。
「よせ! 肉片とかぐちゅぐちゃとか言うな! 普通に怖いだろ」
だが肉片とかの説明は本当に気分がへこむというか、相方が着ている真紅色の服が主張を強めるから辞めて頂きたい。
しかも本当に血だったらしく乾き始めいる部分が若干だが茶色に変色しつつあるのだ。
「あ、ああごめん。だけどそれしか僕の頭ではこの異常事態の答えが出ないんだ」
色々と察したのか直ぐに深月は謝ると頭を掻きながら視線を泳がせていた。
「まあラノベで白飯が食えるとか豪語していたぐらいの男だからな」
「なにそれ貶してるの?」
急に頭を掻く手を止めると泳がせていた瞳をすらも睨むよう向けてくる。
「いんや、逆だ逆。寧ろ褒めてる。仮に異世界転生しなたらば俺には知識が豊富な深月が居るからな! 何も心配が要らないと言えるだろう! はっはは!」
そうなのだ。別に貶す意味で口にしたのではなく安堵したが故に自然と出た言葉なのだ。
なんせ深月は数々のラノベに手を出しては余すことなく全てを読破し、ファンレターすらも贈るほどの猛者だからだ。
「あ、ああそう。だけど僕は死んでないのに何でここに居るんだろう? もしかして単純に雄飛の巻き添えで転生させられたのか? ……だとしたら普通にキレそう。なにこれ超理不尽」
俺の隣では深月が何やら小声で独り言を呟いているようだが、明確に苛立ちを抱えていることだけは見ていて分かる。何故なら相方は怒ると親指の爪を噛む癖があるからだ。
つまり今まさに深月は爪を噛んで何処とも言えぬ場所に視線を向けている状態ということだ。
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