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第一章 追放と仲間探し

2話「今後の目標と女勇者の下着」

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「あぁ~……どうっすかなぁ。まさか転生してまで無職になるとはなぁ」

 勇者一行から正式に追放宣言されたあと俺はあの場所から逃げるように飛び出すと、最早この街には長居できないものと考えて近くの村や街に一先ず避難しようと、そのまま街を飛び出すと道なりに沿って歩き始めたのだ。

 周りを見渡せば商人らしき男が馬車を引いていり、傷だらけの冒険者がクエストの報告をする為にギルドへと向かっていたりと、この辺はまだ俺が先程まで滞在していたカナリウムという街に近いこともあり人通りも多いようである。

「はぁ……。取り敢えず魔王を討伐しないと俺の願いが叶えられることはないし……やっぱり討伐は必須事項だよなぁ」

 無職になったことに対しては特に危機感も焦りもないのだが、如何せん魔王討伐の決め手でもあった勇者から直々にクビ宣告をされると俺としても今後どうするべきかと思い悩む。

 そもそも勇者一行が強くて勝手に魔王を討伐さえしてくれれば何の問題もないのだが、あの三人では精々魔王軍に占領された土地を開放するが手一杯で、肝心の魔王には運良く遭遇しても赤子の手を捻るように返り討ちに遭うのが目に見えて俺には分かる。
 
 何故なら彼女らは明確に言って弱いのだ。それはもう物凄く。
 確かに魔物とか人間が相手ならば余裕で勝てるぐらいの力は有している。だがそれでも到底魔王なんぞという相手には勝てないだろうと俺は自らの命をも賭けて断言してもいい。

 その証拠に俺が大物の相手を敢えて譲っている意味すらも彼女らは理解出来ていないのだから。
 そもそも俺が雑魚を率先して倒すのには理由があり、彼女らが余りにも実力不足だから少しでも体力や魔力を消費させない為であるのだ。

 まあ端的に言ってしまえば俺が雑魚を狩ることで、無駄に体力や魔力を消費させることなく万全な状態で彼女らを大物とよばれる魔物と対峙させていたのだ。

 つまり俺が抜けたことであの勇者一行は持って二、三ヶ月ぐらいであろうと予想できる。
 そのあとは死者が出るか……下手をすれば全員死ぬか。
 もしくはオークに捕まり、性奴隷として一生を過ごすかのどれかだろう。

「うーむ、アイツら性格はともかく顔と見た目だけは良いからな。奴隷となればまず殺されることはないだろう」

 そんな事を呟きながら勇者一行の今後を密かに気に掛けると、俺はズボンのポケットから一枚の下着を取り出して空に掲げてじっくりと眺め始めた。
 それは女性物の下着であり色は黒で持ち主は、あの女性大好き勇者様の私物である。

 実はカナリウムの街を出る前に勇者一行が寝泊まりしていた宿屋に寄って、俺は光の速さで全員分の下着を拝借していたのだ。

「セシールのやつは貴公子っぽいから清楚な白色を履いていると思ったが……。意外とムッツリなのかも知れんな」

 天に掲げて太陽の光と外の空気をたっぷりと下着に吸収させたあと、俺は周囲に顔を向けて様子を伺うと近くに人の気配が無い事を確認した。

 そして人が通らなさそうな場所へと一旦移動すると取り敢えず男として、女性の下着を手にしたならば一度はやらねばいけない行為に手を染めようと考えていた。
 そう、クンカクンカである! 生前の俺では絶対にできなかったであろう行為だ!

「よ、よし……やるぞ! 性格はクソでも美女が履いていた下着だ。ならば充分にイケるッ!」

 下着の端を掴んでいた両手を震えさせながら少し広げると、俺はいよいよそれを自身の顔へと近づけ始める。

「うぉぉぉ! 俺はやるぞぉぉお!」

 叫びながら俺はセシールの下着へと顔を一気に近づけて堪能すると、その下着からは果実のような甘い香りが最初に漂い、最後は妙に酸っぱい謎の匂いが鼻腔を突き抜けていく。

「くっ……! これは今の俺にとって宝剣や魔剣といった伝説級の武器にすら匹敵する品物だなっ!」

 妙な背徳感と童貞特有の底なしの性欲が体中に沸き起こる感覚を受けると、俺は自身の下半身が爆発寸前なことに気がついて、一旦頭の中をリセットする意味も含めて致すことにした。

 無論だがオカズは彼女らの下着である。
 身勝手な考えで俺をパーティーから追い出したのだから、これぐらいはしても許されるだろう。
 てか誰に止められようとも俺はする。絶対に確実にだ。

 ――そう決心すると俺は生前の頃から親友の右手をわきわきとさせて高鳴る鼓動を抑えつつ、人が来ても絶対に見付からないような茂みの奥へと進んでいく。
 
 そして周りに生い茂る新鮮な草木の匂いを肌で感じると一気にズボンを脱ぎ下ろして俺は自然の中で自慢のマイサンを開放するのであった。


◆◆◆◆


「……よし、ことは成した。あとはこれからどうするべきかを本気で考えないとな」

 自家発電の為に多少の時間を消費すると今は恐らく昼を過ぎての14時ぐらいであろう。
 性欲という沸き立つ衝動を抑えてから、俺は近くの岩場に座り込むと今後のことについて思案を巡らせることにした。

「そもそもの話しだ。俺が正式な勇者にさえなってしまえば万事全て解決なのではないか?」

 顎に手を当てながら俺は独り言を呟くと、もしそれが可能であれば面倒な勇者を手助けするという前提の縛りが無くなるので随分と楽になる。それに一年ぐらいこの異世界を旅していたが勇者というのは血筋で選ばれる者ではなさそうなのだ。

「んー……どっかの酒場でおっちゃんが酔っ払いながら言っていたから本当かどうかわからないが、試練の塔と呼ばれる場所が何処かにあってその塔を攻略すれば誰でも勇者になれるとかなんとか言っていた気が……」

 ならばその試練の塔さえ見つけてしまえば俺の抱えている問題は解決される訳なのだが、そもそも出処不明の情報に加えて情報提供者が酔った中年男というなんとも信憑性に欠けるものであるのだ。一番楽なのは直接勇者のセシールに聞くことなのだが、追い出された手前そうもいかない。

「まあ深く考えても仕方ないし、今は試練の塔がある前提で物を考えるとするか。……となれば今の俺に足りないのは圧倒的に仲間だな」

 これは自画自賛するつもりではないが正直に言って俺は強いのだ。だが幾ら強いと言えどそれにも限度がある訳で、実際魔王がどのぐらいの実力を有しているのかも分からない事から下手な慢心は命取りとなる。

 ……ならば必然的に仲間は必要だろう。それも俺と肩を並べられるぐらいの最強の仲間を!
 俺が一々雑魚を駆らなくとも個々の力で全てを熟せるような理想の仲間を集めないといけない。

「現状やるべき候補としては試練の塔についての情報探しと仲間集めだな。んで時間に余裕があれば俺の剣を……」
 
 やるべき事を一つ一つ口にして言う事で頭の中を整理すると、次に俺は自身の愛刀である二本の刀を取り出すと刃先から柄の部分まで舐め回すように観察する。

「これ……どうみても街の武具店に売ってるショートソードだよな……はぁ」

 俺が選んだギフトは確か最強の二刀流最強セット一式のはずなのだが、どう見てもこの剣からは最強なんて言う二つの文字は微塵も感じられないのだ。

 まるで鍛冶師が適当に金稼ぎの為に作ったのであろう、ぐらいの品質だということが素人の俺ですら何となく分かるほどに微妙な剣である。

 だがそれでも俺は何か隠された能力適的なのがいつか開花されるのではと思い、今の今まで使い続けているのだが一向にその傾向は伺えない。
 やはりこの二本の剣はただのショートソードなのだろうか。
 
 というかこんな粗悪品を送りつけてきやがったモニカには一発重めのグーパンチをお見舞いしてもいいのではないだろうか。
 軽くギフト詐欺だぞこれは。訴えたらきっと俺が勝てるレベルだ。
 
 そのうえ俺にはどうにもこの剣が魔王に通用するとは思えないのだ。
 理由としては既に刃こぼれを起こしているからである。
 俺の使い方が悪いと言われればそれまでなのだが、どうにも信用ならないのもまた事実。

 ……しかしながらギフトについては全く外れという訳でもなくちゃんと良い部分もある。
 まずこの二刀流最強セット一式には剣技の才能や戦いの知識、身体能力などのありとあらゆる面を底上げして常人を遥かに凌駕する能力も含まれているのだ。

 これについては本当に感謝していて元引きこもりの俺が初めて肉食の魔物に遭遇した時は、体中が震え上がって怖くて怖くて食い殺されるのではないかと心底思ったのだ。
 
 だがいざ魔物に剣を向けると俺の体は戦い方を熟知しているような動きを見せて、あっという間に魔物を二本の剣で捌くと綺麗な三枚下ろしを作り上げることができたのだ。

「まあ能力に関してはモニカに感謝するが、やはり剣に対しては適当に済ませた感が否めない」

 彼女のことを考えてしまい俺は右手で握り拳を作り上げると、ぷるぷると震わせて込み上げる怒りを何とか堪えようと心を落ち着かせる。

「まっ、剣に関してもそうだが今はとにかく仲間だ仲間! 全てはそこから始まるッ! よし……そうと決まればさっそく近くの村か街に行くしかねえなぁ!」

 腰を落ち着かせていた岩場から降りて意気揚々と俺は呟くと、色々と考えた末に仲間集めの方を優先的に行う事にした。そして同時進行で試練の塔についての情報を探したり、魔王に対抗できうる可能性を秘めた剣を探すことも目標に。
 
「うぉぉぉ! やる気が満ち満ちと溢れてきたぁぁぁ! 俺の冒険はこっからだぁぁあ!」

 勇者一行から突然追い出された俺だったが次の目標を無事に定める事ができると周囲には女性冒険者が数人ほど歩いていたが、そんなこと気にせずに叫び散らかして右手を天に掲げると自身の冒険を仕切り直すことを宣言した。

「な、なにあれ……?」
「しっ! 絶対に目を合わせたら駄目だよ! ああいうのが魔物よりも一番危険なんだから!」

 俺の横を通り過ぎていく女冒険者の二人がそんな会話を小声で繰り広げて暫く歩みを進めたあと立ち止まり、いきなり前傾姿勢を取ると全力疾走の如く走り出して姿を消すのであった。
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