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第二章

7話「魔王軍の情報と添い寝」

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『皆さん! おはようございます! ブラッドムーンの夜は無事に明けました! 本当にお疲れ様ででした! 尚、アンデット達による器物の損壊は可能な限り街が保証しますのでご安心ください! それでは今日も良い一日を!」
 街に設置されているスピーカーからいつもの受付のお姉さんの声が聞こてくると同時に、俺達は朝日を眺めながらやっと長くて赤い夜から解放されたのだと実感した。  

 だがそこで気を抜いたせいなのか、一気に疲労が俺を襲ってきて立っているのもやっとと言う状態になってしまった。

「そう言えば俺って横腹を思いっきり蹴られたよな……」
 俺は装甲を解除するとその場にヘタァっと座り込んでしまった。

 もうだめだ……一歩も動ける気がしない。
 何なら蹴られた横腹と噛まれた首筋がジンジンしてきて凄く痛い。

「おいおい大丈夫かユウキ?」
 俺の様子を見たのかユリアが声を掛けながら近くに寄ってきてくれた。

「あ、あぁ。体は大丈夫ではないが。精神は大丈夫だ」
「……ダメだコイツ。変な事を言い始めた。おーいヴィクトリア! パトリシア! ユウキがもう限界みたいだから宿に戻って休息を取ろう」
「「賛成です」」
 なぜか俺の返事を聞くなりユリアは苦い顔を見せながら、皆にそんな事を言っていた。

 そのまま俺はヴィクトリアとパトリシアに服を捕まれて、ズルズルと宿屋に引きづられて行きそうになると、そう言えばまだローレット達から魔王軍の情報を聞いてなかった事を思い出した。

 俺は咄嗟に。
「おーい! ローレット、ジュディー! 夜になったら俺が寝泊りしている宿に来いよ! そこで色々と情報を聞かせて貰うからな!」
 樽の中に入ってじっとしているローレット達に声を掛けると。

 ローレットが入っている樽から弱々しい声で。
「ち、血の契約に従う……のじゃ。あとで行くから今は休ませて欲しいのじゃ……」
 と、返ってきたので多分大丈夫だろう。
 てか話してくれないと心臓がぎゅっとしてドカンだからな。

「あら? ユウキはもう魔王軍の四天王を襲う気ですの? そんな遅い時間に宿に来いだなんて。まったく底なしの変・態・で・す・わ・ね!」
「ははっ。言ってやるなパトリシア。ユウキだって溜まっているのかも知れん。あの血の契約でどうのこうのして、ローレット達を玩具のように扱う気なのだろう! オレには分かるぞ!」

 このアマ達、俺が疲労で動けないからって好き放題言いやがって……!
 確かにローレット達はエロい体をしているぞ?
 でもな……流石に魔王軍に加担している女性とは出来ないだろう。

 一体ナニが出来ないのか? それはみなまで言う必要はないだろう。

「もぉー! 勝手に部屋に他の女を呼ばないで下さいよ! あの部屋は私だって使っているんですからね! それに……私の寝ている横でそんな…………」
 ヴィクトリアが急に面倒くさい彼女みたいな台詞を言ってきた。
 まぁ、俺は彼女居ない歴=年齢の者だから知らんけど。
  
「そんな事よりも早く俺を宿に運んでくれ! もう体中がボロボロなんだよ!」
 
 俺を引きずっているだけで一向に部屋に連れて行ってくれる気配がない三人に言うと、それがピキッっときたのか……三人は見事なまでのコンビネーションを発揮し始めた。

「さぁ! どうぞお二人とも!」
 ヴィクトリアが宿の入口をクールに開けると、パトリシアとユリアが持てる力の全て出したのだろう、俺を引きずりながら颯爽と宿に入るとそのまま階段までも一気に駆け上がっていったのだ。

「「おらぁぁあ!!」」
「ちょっケツ痛い。ねえ痛い! おいッ痛いって言ってんだろ!」

 そして部屋に着くなり筋肉がすこぶる高いパトリシアが俺を両手で掴んで持ち上げるとそのままベッドへと放り込む。
「ふんっ! どうぞお望みのベッドですわよ!」

 俺はベッドへとダイブさせられると、柔らかなシーツ、クッションが体を優しく包んでくれる感触を味わいゆっくりと目を閉じていく……。

 ヴィクトリア達は運び方は雑だったがやることはやってくれたので俺は満足だ。

 きっとここまでの疲労を負っていなかったら俺は今頃ブチ切れてあの三人を亀甲縛りか何かして昼間の街を散歩させていた事だろう。

 あぁ、ケツが階段に擦れたせいで超痛いぜ。
 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「あれから俺はどれぐらい寝たんだろうか?」
 体を起こすと俺は窓の方に視線を向ける。
 
 そこから見えた光景は真っ暗な闇……そう夜である。
 
「どうやら俺は一日を寝て過ごしてしまったらしい。だが……この状況は一体なんだ?」

 俺が死んだ様に爆睡して次に目を覚ますと……何故か隣のヴィクトリアのベッドが俺のベッドっとピッタリとくっついていて、シングルベッドが最早ダブルベッドへと変化を遂げていたのだ。

「えっ? 俺が寝ている間に何があったんだ?」

 しかも、にはパトリシアが寝息を立てている始末だ。
 ヴィクトリアの横ではユリアが寝ているし……なにがどうなってるんだ。

 俺は事の状況を知る為に寝ている女性三人をじっくりと観察する。
 これは観察であって、視姦とかいうものではない。

 だけど今なら胸ぐらい揉んでも気づかれなさそうだな。
 脳内にそんな欲が芽生えてくると、俺はとある事に気がついた。

 パトリシアが鎧を身に着けたまま寝ていることにだ。

「もしかしてコイツら、俺を運んだあと俺と同じように疲れ果てて眠ったのか?」

 確かにこの三人だって眷属を相手にしたり、アンデットの群れと戦ったりで俺と同等ぐらいには大変だったのだろう。
 
 だったら尚更ちょっとの物音ぐらいじゃ起きないのでは?
 これは神が下さった絶好のおっぱいを揉むチャンスなのでは?
 
 ……やべえ。自分の欲を抑えれる気がしない。
 だが待つんだ俺。一体誰のおっぱいを揉むと言うのだ?

 この中で一番大きい胸をしているのはパトリシアだ。そして次に大きいのはヴィクトリア。
 最早まな板と間違えるぐらいの絶壁はユリアだしなぁ。

 パトリシアは鎧を纏って寝ているから、まずは鎧を外す作業をしないといけない。
 これはあまりにもリスキーだ。
 鎧を外すのに時間を掛けてしまうし、最悪外している最中に気づかれる可能性がある。
 誠に残念だがパトリシアは候補から除外だな。

「ってことは残りはこの二人か……」
 
 ヴィクトリアとユリア、俺はどっちのおっぱいを揉むべきなのだろうか。

 正直、ヴィクトリアの方は揉みごたえは良さそうなんだよな。
 一歩でユリアはもはや揉むというより手を添えるに近いんだよなぁ。

 うーむ……やはり日頃の恨みを込めてヴィクトリアにしとくか。
 
「フヒッ。覚悟しろよこのギャンブル女神が!」
 俺はそのまま右手をヴィクトリアの胸の方へと近づけると……。

 窓の方からコンコンッっとノックする音が聞こえてきた。

「なんだよ? こっからお楽しみタイムだと言うのに」
 正直面倒いのだが俺は音の正体を探る為に窓へと足を運ぶ。

 するとそこに居たのは。
「やぁ。妾が遊びにきたのじゃよ」
「私も居ますよ」
 ローレットとジュディーは羽をバサバサッと振りながら浮かんでいた。

 ローレットは大人の女性体型ではなく、最初の頃の幼い少女の姿をしている事から力を失ったのだろう。
 女神の料理恐るべし!

「てか……つかぬことを聞くが今の見てたか?」
「はて? 何のことじゃ? 妾達はユウキがそこに寝ている女共の胸をネットリじっくりと視姦していた事なんて知らないのじゃ」
「ええ。ローレット様の言う通りです。ついでに胸を触ろうとしていた事も知りません」
 俺の質問にローレットは手を口元に添えてクスクスと笑っているようだった。

「ばっちり見てたんじゃねえか!? いつから見てやがったァ!!」
 
 よりにもよって魔王軍のしかも四天王なんかに俺の弱みを握られる事になろうとは。
 まったく……これも不運ステータスの影響か?

「それよりも妾達を中に入れてはくれないか? 飛びながら話すのも落ち着かんのじゃ」

 あぁそうだったな。俺が夜になったら部屋に来いよって言ってたんだっけ。
 まぁちょうど良くアイツらは眠っているし今の内にパパッと魔王軍関係の話を聞いとくか。

「その窓から入ってこいよ。ちなみにうちにはお茶なんてものはないから期待するなよ」
 俺はビシッと指をローレット達に向けながら言う。

「宿屋で寝泊りしている冒険にそこまでの期待はしておらんのじゃよ。それに今回は情報を提供しに来ただけじゃしな」
「失礼しますっ!」
 ローレットとジュディーは窓から部屋に入ると俺が用意した椅子に腰を落ち着かせて、さっそくお話タイムの開始だ。





「……という事じゃよ。大体分かったかのう?」
「なるほどな。つまり魔王の城に乗り込むには、まず四つのゲートを解放するキーが必要ってことか」

 俺がローレット達から聞いた情報を纏めるとこんな感じだった。
 まず、魔王城の前には四つゲートという門があって、それを通過するには各四天王が持っている”キー”とやらを使わないといけないらしい。
 しかもあと残っている四天王は”暴虐の化身サイクロプス、智慧の化身九尾、暴食の化身龍姫と言うらしい。

 名前からして容易に想像できるよな。この先めっちゃ俺が苦労するって事が。
 はぁ……。
 しかもローレットみたいに都合よくこっちに来てくれる訳でもないし。

「それでこれが妾の持っている第一のゲートを解放する”キー”じゃよ」
 ローレットは首からネックレスみたいなのを外すと、それを俺に差し出してきた。

「今更だけど本当に俺が受け取って良いのか? 間接的とは言えローレットを倒したのって、そこで余りの寝相の悪さにベッドから落ちて寝ているヴィクトリアなんだけど」
「良いんじゃないかのう? 妾は細かい事は気にしない主義なのじゃ。それとこの首飾りをギルドに持って行くといいのじゃよ。きっとユウキにとって面白い事が起こるはずじゃからな」

 ローレットにそう言われると、俺は首を傾げながら首飾りを受け取った。
 その首飾りはハート型の首飾で型の中には真紅の輝きを放つ宝石みたいなのが埋め込まれている。
 きっとこれを質屋か何かに売りに行けば、数百万の値段が付けられること間違いない。
 そう思うほどにこれは美しい物である。

「さて話すことも話したし、妾達はそろそろお暇するのじゃ。ほれ行くぞジュディー」
「は、はい! ローレット様!」
 ローレットは椅子から立ち上がるとパトリシアの剣を見てうずうずとしているジュディーを呼んだ。
 ジュディーは剣から名残惜しそうに視線を外すと、ローレット元へと駆け寄って翼を生やした。

「やはりそれは出し入れ自由なのか、中々に便利そうだな」
 俺も空を飛べたら移動距離が上がるのになぁっと思った。

 そしてローレットも背中から翼を生やすと窓に足を掛けて、こちらを振り返った。
「しばらくこの街に滞在すると思うが、街で会ったその時はよろしくなのじゃ」
「あぁ分かった。それと街の人達を安易に襲うなよ!」

 ローレットは牙をちらつかせて言うと、俺は一体何をよろしくすればいいのか分からなかったが、取り敢えず分かった振りをしておいた。

「ふっ……案ずるな。血の契約にはどうやっても抗えないのじゃよ。……ではそろそろ行くとする。じゃぁの魔王を討伐を掲げる現代の勇者ユウキよ」
「失礼しましたっ!」

 ローレットが最後にカッコイイ台詞を俺に言うと窓から飛び出し、ジュディーも一礼してから外へと飛び立っていった。
 
「さーてっと必要な情報は聞けたし俺ももう一眠りするかな。……でもなんか改めて思うとパトリシア間に俺が入って寝直すのも何か気が引ける……」

 俺はベッドからシーツだけ取るとそれに身を包ませて床に転がる。
 少し雑だが寝るだけならこれで大丈夫だろう。

「明日は起きたらギルドに例の首飾り持って行ってみるか。何が起きるのか分からないがあの口振りから悪意のある事ではないと想像できる」

 俺はそんな事を呟くと目を閉じ再び寝ることにした。


 あぁでも、やっぱりヴィクトリアのおっぱいは揉んどくべきだったかも知れん。
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