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第5章 ルネッサンス攻防編
第588話 剣士の戦いと違って意外と地味なもんですよ?
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「しかし、お前が王国魔術競技会の準優勝者とはな」
学生寮への道案内をされながら、ステファノの背中にアランが語りかけた。
「組み合わせに恵まれたんですよ」
肩越しに顔を向けながら、ステファノが答える。
トーナメント形式の競技会では誰と対戦するかは成績を大きく左右する要素だ。
それでも、アカデミー出場枠から決勝まで進んだ例は過去にない。これまでで最高の成績は準々決勝敗退であった。
「俺とネロは騎士団の勤務があって、競技会を見られなかった。どんな戦いだったのか教えてもらえんか?」
「構いませんが、剣士の戦いと違って意外と地味なもんですよ?」
「そうなのか? 火を飛ばしたり、雷を発したりと派手なイメージがあるが」
非魔術師が魔術戦に描くイメージは、アランが言う通り、術が飛び交う派手な戦いだった。
しかし、現実は必ずしもそうではない。戦いをいかに自分に有利なものにするか、その駆け引きが多くを占めていた。
そもそも遠距離魔術を使える者がほとんどいない。魔術戦とは間合いの攻防でもあった。
接近戦を挑むか。中距離で撃ち合うか。それとも遠距離から魔術発動体を飛ばすか。
見た目が派手になるのは、互いに中距離から魔術を撃ち合う組み合わせだった。
「俺は遠距離戦が得意なので、そもそも有利に試合を始められたんです」
◆◆◆
対戦者が立つ開始線には50メートルの間隔があった。随分遠いがこれには理由がある。
近い距離で試合を始めると、いきなり武技で相手を倒す競技者が現れた。それも戦いのリアルではあるが、それでは魔術を競い合う大会の趣旨にそぐわない。そこで開始線が50メートルまで遠ざけられたのだ。
武器、防具の使用は自由。アカデミーの試技会とは異なり、攻撃は相手の体に当てる。当然危険を伴うので、致命傷を与えた者は失格となるルールだ。
勝敗は一方が行動不能となるか、戦意喪失して負けを認めるまで。
ほとんど実戦に近い、荒々しいルールであった。
会場には国王を筆頭に、貴族諸侯、魔術師協会のお歴々が顔を並べる。魔術師にとっての登竜門となっており、出場者の中には手足を失っても負けを認めぬ者がいたらしい。
それでは貴重な国家戦力を失うことになる。現国王の発案で審判を置き、試合続行不可能と認めたら試合終了を宣告する権限を与えた。
審判は魔術師協会の重鎮が務める慣例となっている。この日の審判はステファノとも因縁のあるガル老師だった。
「両者、開始線に立て」
一回戦、ステファノの相手はアンと名乗る中年の女性だった。短杖を腰に差した相手は黒シャツに黒パンツを着用し、革製の胴鎧、同じく革製の籠手、膝あて、すね当てを身につけていた。
防御を考慮しつつも、動きやすさに重きを置いたように見える。
対するステファノは黒の道着に黒の鉢巻、皮手袋に革靴を履き、長杖「ヘルメスの杖」を携えていた。
外見を見る限り、両者とも接近戦を得意とするように見えた。
「始め!」
ガル師の合図を受け、アンが一直線に走り出した。正面からステファノに迫りつつ、口中で呪文を詠唱している。
アンは王都にある新興魔術道場の師範だった。道場と流派の名誉にかけて学生に負けるわけにはいかないと、意気込んでいた。
アンのように開始早々相手との距離を詰めるのは、よく見られるパターンだった。大半の出場者は20メートル以内に近づかないと魔術が届かない。魔術発動体を投げつけるにしても、50メートルの距離は離れすぎていた。
敵の疾走を見ながら、ステファノはピクリとも動かなかった。
「水生木、水風蛇の檻!」
術を使ったと判定できるように、ステファノはわざと術名を宣言した。水と風、2匹の蛇が女性魔術師の足元から立ち昇り、その体に巻きついた。
アンの方はこの遠距離魔法攻撃を予想していなかった。そもそも、魔力視のできない彼女には2匹の蛇が見えていなかった。
水蛇がアンの手足を封じ、彼女は丸太のように地面に転がった。風蛇は――。
風蛇はアンに巻きつきながら旋風を起こし、大気圧より低い負圧をアンの周りに作り出した。肺の空気を吸いつくされたアンは、一瞬で失神する。
「勝者、ステファノ!」
白目をむいた女性魔術師の顔を見定め、ガル老師がステファノの勝利を宣告した。老師の眼はアンの顔色ばかりでなく、ステファノの術も見極めていた。風蛇が空気を奪った時点で、アンの試合続行は不可能だった。
頭を下げたステファノは術を解いて、相手を解放する。同時に新鮮な空気が彼女の肺に流れ込んで行った。
酸素の供給を得れば、アンの意識は戻る。頭を振りながら、彼女は自力で立ち上がった。
「お、おおー!」
観衆から拍手と歓声が起こるが、どこか戸惑いがあった。
観衆の眼には水蛇と風蛇は映らない。走り出したアンが水流に巻き込まれ、突然倒れたとしか見えなかったのだ。
どうやらステファノが術を飛ばしたらしいのだが、杖を振らず、腕さえも上げなかった。
しかも、ステファノから50メートル近く離れた場所で彼女は倒れている。
ステファノの術は観衆が知る魔術とは性質が異なり過ぎていた。異質すぎて、そのすごさが理解できない。
選手両者が退場してから、観客席がざわつき始める状況だった。
(魔力視を持たない相手にはこの戦い方で良いだろう)
選手控えに戻りながら、ステファノはそう考えていた。
(派手さはないが、確実だ。相手を傷つけることもないし)
魔力やイドを見極める能力を持つ相手には、もう少し厳しい術を使わなければならない。
ステファノは術の組み合わせや威力の調節に考えをめぐらせた。
――――――――――
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
◆次回「第589話 遠距離戦だけでは飽きるよね。」
ステファノの試合以外は、至って普通の戦いだった。
中距離で魔術を撃ち合い、あるいは発動体である短剣や礫を投げつける。近距離での剣戟に魔術を織り交ぜる。そういう戦い方がほとんどだ。
たまに弓やクロスボウで遠距離から攻撃する出場者がいたが、氷や風の防壁で防がれるのが常だった。
矢の撃ち合いになってしまった組み合わせでは、会場からヤジが飛んだ。「魔術で戦え!」と。
結局、盛り上がるのは中距離以下での戦いだった。
……
◆お楽しみに。
学生寮への道案内をされながら、ステファノの背中にアランが語りかけた。
「組み合わせに恵まれたんですよ」
肩越しに顔を向けながら、ステファノが答える。
トーナメント形式の競技会では誰と対戦するかは成績を大きく左右する要素だ。
それでも、アカデミー出場枠から決勝まで進んだ例は過去にない。これまでで最高の成績は準々決勝敗退であった。
「俺とネロは騎士団の勤務があって、競技会を見られなかった。どんな戦いだったのか教えてもらえんか?」
「構いませんが、剣士の戦いと違って意外と地味なもんですよ?」
「そうなのか? 火を飛ばしたり、雷を発したりと派手なイメージがあるが」
非魔術師が魔術戦に描くイメージは、アランが言う通り、術が飛び交う派手な戦いだった。
しかし、現実は必ずしもそうではない。戦いをいかに自分に有利なものにするか、その駆け引きが多くを占めていた。
そもそも遠距離魔術を使える者がほとんどいない。魔術戦とは間合いの攻防でもあった。
接近戦を挑むか。中距離で撃ち合うか。それとも遠距離から魔術発動体を飛ばすか。
見た目が派手になるのは、互いに中距離から魔術を撃ち合う組み合わせだった。
「俺は遠距離戦が得意なので、そもそも有利に試合を始められたんです」
◆◆◆
対戦者が立つ開始線には50メートルの間隔があった。随分遠いがこれには理由がある。
近い距離で試合を始めると、いきなり武技で相手を倒す競技者が現れた。それも戦いのリアルではあるが、それでは魔術を競い合う大会の趣旨にそぐわない。そこで開始線が50メートルまで遠ざけられたのだ。
武器、防具の使用は自由。アカデミーの試技会とは異なり、攻撃は相手の体に当てる。当然危険を伴うので、致命傷を与えた者は失格となるルールだ。
勝敗は一方が行動不能となるか、戦意喪失して負けを認めるまで。
ほとんど実戦に近い、荒々しいルールであった。
会場には国王を筆頭に、貴族諸侯、魔術師協会のお歴々が顔を並べる。魔術師にとっての登竜門となっており、出場者の中には手足を失っても負けを認めぬ者がいたらしい。
それでは貴重な国家戦力を失うことになる。現国王の発案で審判を置き、試合続行不可能と認めたら試合終了を宣告する権限を与えた。
審判は魔術師協会の重鎮が務める慣例となっている。この日の審判はステファノとも因縁のあるガル老師だった。
「両者、開始線に立て」
一回戦、ステファノの相手はアンと名乗る中年の女性だった。短杖を腰に差した相手は黒シャツに黒パンツを着用し、革製の胴鎧、同じく革製の籠手、膝あて、すね当てを身につけていた。
防御を考慮しつつも、動きやすさに重きを置いたように見える。
対するステファノは黒の道着に黒の鉢巻、皮手袋に革靴を履き、長杖「ヘルメスの杖」を携えていた。
外見を見る限り、両者とも接近戦を得意とするように見えた。
「始め!」
ガル師の合図を受け、アンが一直線に走り出した。正面からステファノに迫りつつ、口中で呪文を詠唱している。
アンは王都にある新興魔術道場の師範だった。道場と流派の名誉にかけて学生に負けるわけにはいかないと、意気込んでいた。
アンのように開始早々相手との距離を詰めるのは、よく見られるパターンだった。大半の出場者は20メートル以内に近づかないと魔術が届かない。魔術発動体を投げつけるにしても、50メートルの距離は離れすぎていた。
敵の疾走を見ながら、ステファノはピクリとも動かなかった。
「水生木、水風蛇の檻!」
術を使ったと判定できるように、ステファノはわざと術名を宣言した。水と風、2匹の蛇が女性魔術師の足元から立ち昇り、その体に巻きついた。
アンの方はこの遠距離魔法攻撃を予想していなかった。そもそも、魔力視のできない彼女には2匹の蛇が見えていなかった。
水蛇がアンの手足を封じ、彼女は丸太のように地面に転がった。風蛇は――。
風蛇はアンに巻きつきながら旋風を起こし、大気圧より低い負圧をアンの周りに作り出した。肺の空気を吸いつくされたアンは、一瞬で失神する。
「勝者、ステファノ!」
白目をむいた女性魔術師の顔を見定め、ガル老師がステファノの勝利を宣告した。老師の眼はアンの顔色ばかりでなく、ステファノの術も見極めていた。風蛇が空気を奪った時点で、アンの試合続行は不可能だった。
頭を下げたステファノは術を解いて、相手を解放する。同時に新鮮な空気が彼女の肺に流れ込んで行った。
酸素の供給を得れば、アンの意識は戻る。頭を振りながら、彼女は自力で立ち上がった。
「お、おおー!」
観衆から拍手と歓声が起こるが、どこか戸惑いがあった。
観衆の眼には水蛇と風蛇は映らない。走り出したアンが水流に巻き込まれ、突然倒れたとしか見えなかったのだ。
どうやらステファノが術を飛ばしたらしいのだが、杖を振らず、腕さえも上げなかった。
しかも、ステファノから50メートル近く離れた場所で彼女は倒れている。
ステファノの術は観衆が知る魔術とは性質が異なり過ぎていた。異質すぎて、そのすごさが理解できない。
選手両者が退場してから、観客席がざわつき始める状況だった。
(魔力視を持たない相手にはこの戦い方で良いだろう)
選手控えに戻りながら、ステファノはそう考えていた。
(派手さはないが、確実だ。相手を傷つけることもないし)
魔力やイドを見極める能力を持つ相手には、もう少し厳しい術を使わなければならない。
ステファノは術の組み合わせや威力の調節に考えをめぐらせた。
――――――――――
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
◆次回「第589話 遠距離戦だけでは飽きるよね。」
ステファノの試合以外は、至って普通の戦いだった。
中距離で魔術を撃ち合い、あるいは発動体である短剣や礫を投げつける。近距離での剣戟に魔術を織り交ぜる。そういう戦い方がほとんどだ。
たまに弓やクロスボウで遠距離から攻撃する出場者がいたが、氷や風の防壁で防がれるのが常だった。
矢の撃ち合いになってしまった組み合わせでは、会場からヤジが飛んだ。「魔術で戦え!」と。
結局、盛り上がるのは中距離以下での戦いだった。
……
◆お楽しみに。
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