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二周目:こんな結末認めたくない
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クリスマスが終わり、年末年始もドタバタしている間に終わった。
私が二時間かけて公立校に転校することが決まったために、やれ定期券、やれ授業の流れと、慌ただしいことになってしまっていた。
宿題をさっさと片付けた私は、それらに乗り遅れないように精一杯やっていたら、冬休みなんてあっという間に終わってしまったんだ。
今季のクリスマスはホワイトクリスマスになったというのに、雪が積もったのはその時期だけで、残りは晴れ渡っているけど底冷えする晴天となった。
空の色は薄く、鼻の奥から冷たくなる。私は残り日数を気にしながら、ぐるぐるとマフラーを巻いて、カイロをお腹の腹巻きの中に忍ばせて学校に出かけていった。
「おはよう、亜美」
「大樹くん。おはよう」
彼がまだ隣にいる事実に、少なからずほっとする。でもあと少しで終わってしまうことを、私は気にしている。
私の気持ちは知らないまま、大樹くんはのんびりと言った。
「あと少しで廃校だな」
「……うん」
「僕たち、頑張ったのかな」
そうポツンと言われる。
私たち四人の中で唐突にやってきた亀裂は、クリスマスを境になあなあになってしまった。もうあれだけ怒っていたはずの菜々子ちゃんすら怒ってないのは、既に大樹くんが私立に転校が決まっていて、彼女の上京も決まっているせいだろう。今の菜々子ちゃんは、高卒資格を取るために通信制の勉強のほうに移行してしまい、人間関係どころではなくなっているのだから。
私は未だに大樹くんが誰を助けたくってしたことなのか、彼の未来は私の未来と違うこと以外知らないけれど、誰が死なないために頑張ったのか、私は知らない。一方の私は、大樹くんが私の好きだった人とは違う人だったために、この恋の終わらせ方をわからないでいる。
今でもなにかの拍子に彼への気持ちが浮上する。でも、彼が助けたい人は私ではないんだろうと思うと、気持ちが沈む。結局は私も周りのことは言えずになあなあのままで、大樹くんに誰を助けたかったのかを聞き出せずにいるのだから。
そこまで考えて、どうにか大樹くんに伝えないととはっとした。
「あのね、なにがあっても私たちは、ずっと一緒だからね。遠くに離れても、傍にいなくっても、ずっと一緒だから」
「うん?」
「なにかあったら連絡して。あと」
私は誰も見ていないのを確認してから、口を開いた。
「スノードームありがとう。すごく嬉しかった」
そのひと言を聞いた途端に、大樹くんは破顔した。
「あれでよかったら、いくらでもあげたのに」
「た、くさん欲しいんじゃなくって、ひとつ、思い出が欲しかったから」
「もっと欲張ってもよかったのに」
そのひと言に、勝手に傷付いた。
私は欲張れないよ。欲張ってなにかが変わって、今のいい感じの空気が壊れてしまうのは怖いよ。
好きより先に進むのは、やっぱり怖いよ。
十年後、なんの感情もないからこそ、私と海斗くんは婚約できた。感情のある人には、そんな失礼なことができないよ。だって。それが好きってことなんだから。
****
クリスマスから年末年始までとにかくスーパーが忙しかった海斗くんは、ぐったりとしていた。彼にとっては実家の手伝いよりも学校のほうがありがたかったみたいだ。
「あー、おはようー。あと一学期頑張ろうなあ」
「おはよう……スーパーの仕事お疲れ様」
「おはよ。大変だったな?」
「どうもー。そりゃもう」
いくら地元の人しか使わない店とは言っても、地元の人がほぼ全員詰めかけるんだったら、そりゃレジやら補充やらでぐるぐる回らないといけなくって、責任者の手伝いしている海斗くんだって吐き気がするほど忙しくはなるんだ。
そうぐったりしている中。
「おはよー」
元気に登校してきた菜々子ちゃんは、いよいよ髪の色が先生に怒られるギリギリのラインになってきて、思わず息を飲んだ。
前までは光の加減によっては茶色に染めているとわかるくらいのギリギリ具合だったのに、今はすっかりと色が抜けてしまっている。ほとんど金髪に近い茶髪で、どう考えても呼び出されるラインだ。
私はあわあわとする。
「菜々子ちゃん……っ、これはいくらなんでもまずくない!?」
「ええ? だって先生はもう、私を怒ったとしてもいいことないよ? 転勤先の心配すりゃいいんだしさあ」
「そんな無責任なこと言う!?」
思わず悲鳴をあげるものの、菜々子ちゃんはあははと笑う。
「大丈夫だって、だってもう。校門に風紀の先生いなかったもん。今頃急な転勤で慌ててるから心ここにあらずなんだ」
「そんな軽過ぎるよ……」
「……それに、もういいんだ。ここにはもう、私の居場所はないしさあ」
そうあっさりと言ってのける菜々子ちゃんに、私はもうかける言葉が見つからなかった。
菜々子ちゃんの生き方は激し過ぎる。彼女の苛烈さについていける女子は少ない。彼女は彼女なりに一生懸命生きているだけなのに、何故か勝手に男子に好かれる。それが原因で勝手に付き合っていることにされたり、勝手に好かれたり、そんな状態が何故か男子に媚びを売って見える女子がいるんだから、彼女はそりゃもう何度も牙を剥いた。
……大樹くんがキレられたのも、付き合い方さえ考えたら向かない牙を剥かれた行動で、あれを私は菜々子ちゃんが悪いとは言い切れなかった。
ここで彼女がのびのび生きられないんだったら、出て行くしかない。それが私の鼻の奥を、寒さ以外でツンとさせたんだ。
私が二時間かけて公立校に転校することが決まったために、やれ定期券、やれ授業の流れと、慌ただしいことになってしまっていた。
宿題をさっさと片付けた私は、それらに乗り遅れないように精一杯やっていたら、冬休みなんてあっという間に終わってしまったんだ。
今季のクリスマスはホワイトクリスマスになったというのに、雪が積もったのはその時期だけで、残りは晴れ渡っているけど底冷えする晴天となった。
空の色は薄く、鼻の奥から冷たくなる。私は残り日数を気にしながら、ぐるぐるとマフラーを巻いて、カイロをお腹の腹巻きの中に忍ばせて学校に出かけていった。
「おはよう、亜美」
「大樹くん。おはよう」
彼がまだ隣にいる事実に、少なからずほっとする。でもあと少しで終わってしまうことを、私は気にしている。
私の気持ちは知らないまま、大樹くんはのんびりと言った。
「あと少しで廃校だな」
「……うん」
「僕たち、頑張ったのかな」
そうポツンと言われる。
私たち四人の中で唐突にやってきた亀裂は、クリスマスを境になあなあになってしまった。もうあれだけ怒っていたはずの菜々子ちゃんすら怒ってないのは、既に大樹くんが私立に転校が決まっていて、彼女の上京も決まっているせいだろう。今の菜々子ちゃんは、高卒資格を取るために通信制の勉強のほうに移行してしまい、人間関係どころではなくなっているのだから。
私は未だに大樹くんが誰を助けたくってしたことなのか、彼の未来は私の未来と違うこと以外知らないけれど、誰が死なないために頑張ったのか、私は知らない。一方の私は、大樹くんが私の好きだった人とは違う人だったために、この恋の終わらせ方をわからないでいる。
今でもなにかの拍子に彼への気持ちが浮上する。でも、彼が助けたい人は私ではないんだろうと思うと、気持ちが沈む。結局は私も周りのことは言えずになあなあのままで、大樹くんに誰を助けたかったのかを聞き出せずにいるのだから。
そこまで考えて、どうにか大樹くんに伝えないととはっとした。
「あのね、なにがあっても私たちは、ずっと一緒だからね。遠くに離れても、傍にいなくっても、ずっと一緒だから」
「うん?」
「なにかあったら連絡して。あと」
私は誰も見ていないのを確認してから、口を開いた。
「スノードームありがとう。すごく嬉しかった」
そのひと言を聞いた途端に、大樹くんは破顔した。
「あれでよかったら、いくらでもあげたのに」
「た、くさん欲しいんじゃなくって、ひとつ、思い出が欲しかったから」
「もっと欲張ってもよかったのに」
そのひと言に、勝手に傷付いた。
私は欲張れないよ。欲張ってなにかが変わって、今のいい感じの空気が壊れてしまうのは怖いよ。
好きより先に進むのは、やっぱり怖いよ。
十年後、なんの感情もないからこそ、私と海斗くんは婚約できた。感情のある人には、そんな失礼なことができないよ。だって。それが好きってことなんだから。
****
クリスマスから年末年始までとにかくスーパーが忙しかった海斗くんは、ぐったりとしていた。彼にとっては実家の手伝いよりも学校のほうがありがたかったみたいだ。
「あー、おはようー。あと一学期頑張ろうなあ」
「おはよう……スーパーの仕事お疲れ様」
「おはよ。大変だったな?」
「どうもー。そりゃもう」
いくら地元の人しか使わない店とは言っても、地元の人がほぼ全員詰めかけるんだったら、そりゃレジやら補充やらでぐるぐる回らないといけなくって、責任者の手伝いしている海斗くんだって吐き気がするほど忙しくはなるんだ。
そうぐったりしている中。
「おはよー」
元気に登校してきた菜々子ちゃんは、いよいよ髪の色が先生に怒られるギリギリのラインになってきて、思わず息を飲んだ。
前までは光の加減によっては茶色に染めているとわかるくらいのギリギリ具合だったのに、今はすっかりと色が抜けてしまっている。ほとんど金髪に近い茶髪で、どう考えても呼び出されるラインだ。
私はあわあわとする。
「菜々子ちゃん……っ、これはいくらなんでもまずくない!?」
「ええ? だって先生はもう、私を怒ったとしてもいいことないよ? 転勤先の心配すりゃいいんだしさあ」
「そんな無責任なこと言う!?」
思わず悲鳴をあげるものの、菜々子ちゃんはあははと笑う。
「大丈夫だって、だってもう。校門に風紀の先生いなかったもん。今頃急な転勤で慌ててるから心ここにあらずなんだ」
「そんな軽過ぎるよ……」
「……それに、もういいんだ。ここにはもう、私の居場所はないしさあ」
そうあっさりと言ってのける菜々子ちゃんに、私はもうかける言葉が見つからなかった。
菜々子ちゃんの生き方は激し過ぎる。彼女の苛烈さについていける女子は少ない。彼女は彼女なりに一生懸命生きているだけなのに、何故か勝手に男子に好かれる。それが原因で勝手に付き合っていることにされたり、勝手に好かれたり、そんな状態が何故か男子に媚びを売って見える女子がいるんだから、彼女はそりゃもう何度も牙を剥いた。
……大樹くんがキレられたのも、付き合い方さえ考えたら向かない牙を剥かれた行動で、あれを私は菜々子ちゃんが悪いとは言い切れなかった。
ここで彼女がのびのび生きられないんだったら、出て行くしかない。それが私の鼻の奥を、寒さ以外でツンとさせたんだ。
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