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第二章 ノアは絶対死なせない!
第二十九話 殿下とノアと
しおりを挟む「マリアンヌ!?具合は良くなったのかい?」
不意に声をかけられて振り向くと、眩しい笑顔のフィリップ第一王子が立っていた。
「僕の誕生日パーティー、体調不良で欠席していただろう?その後何度もお見舞いに行きたいと申し出ていたけれど、感染してはいけないからと断られて‥‥とても心配していたんだ。」
‥‥そういうこともあったわね‥‥。完全なる仮病だったのだけど、バレないようにしなきゃ‥‥。
「はい、お陰様で良くなりました。その節は出席できず、大変申し訳ございませんでした。お見舞いのお花も送っていただき、お心遣い痛み入ります。」
精一杯の淑女の礼をした。
母と祖母も話を合わしながら上手くお礼を言ってくれている。
‥‥だけど、ルーカス!
何!?その敵を見るかのような表情は!?一体今日はどうしちゃったの!?
「おい!フィリップ第一王子だぞ!?」
ショーンがルーカスの頭を小突く。
「ああ、いいよ。ショーン。君がルーカスだね。かなりの魔法の使い手とか‥‥確かに魔力が溢れてるね。」
「殿下にお会い出来て光栄の至です。義弟のルーカスと申します。」
不貞腐れたように言うルーカス。
「殿下、申し訳ございません。ルーカスは人見知りをするのでございます。」
慌てて義弟を庇う。
「そんなに謝ってもらわなくてもいいよ。‥‥あー、それじゃあ許してあげる代わりに、今日一日僕にエスコートさせてよ?」
そう言うと私の手を取りキスされた。
!?
人前で不意打ちにキスされ、見る見る顔が赤くなる。
‥‥また!?もうやめてよ‥‥!
その時、
「殿下、何をされているんですか!?」
ノアが怒りの形相で現れた。
「殿下は僕と同じく実行委員でしょう?エスコートなんて出来ませんよ!?」
「‥‥ああ、そうだったな。だけど君がいればスムーズに回るだろう?少しだけでいいからマリアンヌと回らせてくれないか?」
「駄目です。」
「だが‥‥しかし‥‥。」
殿下の渾身の願いもあっさり却下するノア。その瞳は冷たく、殿下も諦めるしかないようだ。殿下にそんな態度とって、不敬にはならないの!?
そしてノアはこちらを向いて優しく微笑み、「お祖母様、お義母様、そして皆も来てくれてありがとう!楽しんでいって!」と言うと、ノアは殿下を連れて行ってしまった。
‥‥え!?もう行っちゃうの!?もう少し話したかったなぁ‥‥。
‥‥って、あれ何!?
ノアと殿下の後を追う令嬢の多いこと!!二人の言動一つ一つにキャーキャー言っている。そして二人の一番近い位置には、
‥‥マクゴガナル公爵令嬢様だ!
‥‥私を睨んでる!?さっきの殿下とのやりとり見られたのね!?‥‥怖‥‥。
「ノアちゃん、立派になったねぇ。」
「そうですね。あの子は学園でかなり優秀なんだそうですよ!」
母と祖母はノアの働く姿を嬉しそうに見つめられている。
!?
不意にグイッと手を引っ張られ、驚き振り向くとルーカスが私を睨んでいた。
「ねぇ、マリアンヌ。隙がありすぎなんだよ!?あんな奴にキスされて‥‥。」
ルーカスは私の手をゴシゴシ擦っている。
「いや、あれは挨拶でしょう?」
「‥‥確かに、隙だらけだな。もう少し侯爵令嬢らしく、高貴な雰囲気でいる方がいいぞ。愛想を振り撒かず、冷たい表情でいろよ?ほら、あのマクゴガナル公爵令嬢様なんて隙が全くないぞ?」
ショーンも真顔で意見する。
「‥‥そんな。私に隙なんてないし、私だって淑女教育は受けているわよ‥‥?」
「‥‥はぁ、これじゃあ、入学後が思いやられるな。もう学園なんか行かなくていいんじゃないか!?」
ショーンとルーカスに謂れのないことを言われ、傷ついたと同時に腹も立った。
「学園には行くわよ!私は医師になりたいし、それに‥‥。」
‥‥それに私にはノアを守るという大役もあるんだから‥‥!
「「それに‥‥何だよ?」」
「えっと、それに‥‥。とにかく、学園に行って見聞も広げてくるわ!」
「何だか心配だな‥‥。俺、飛び級で入学出来ないかな?」
ショーンが私と同じ年に入学出来ないか真剣に悩んでいる。ルーカスは見聞なんて広げなくていいと言い張り‥‥。
「‥‥ねぇ!さっきから何で私が学園に入学したらいけない話になっているのよ!?いい加減、怒るわよ!」
三人で言い争いをしていると、不意に声をかけられた。
「少し宜しいですか?ノア様の弟様でいらっしゃいますか?」
そこには四人の御令嬢がおられた。目をキラキラ輝かせておられる。
「そうですが‥‥。」
「「「きゃー!やっぱりそうよ!」」」
キンキン甲高い声‥‥耳が痛い!
「私はドリル伯爵令嬢、ミネア・ドリルと申します。ノア様のファンクラブに入っているのですが、弟様も美しいと聞いており、一度お会いしてみたかったのです!‥‥お会い出来て感激ですわ!」
「本当に美しいですわ‥‥ほぅ‥‥。」
御令嬢方はショーンとルーカスをうっとりと見つめておられる。
そしてその内のお一人が私に向き直り、
「貴女は妹様かしら?さすがお美しいですわ。来年ご入学されるとか。お待ちしておりますね!私はルイ伯爵令嬢、ジョージア・ルイと申します。」
にっこりと微笑まれ、胸が温かくなった。
「あっ、ありがとうございます!」
‥‥学園には、こんな優しい先輩もいるのね!
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