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第二章 ノアは絶対死なせない!

第二十四話 ノアside③

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 時は過ぎ、僕は13歳、マリアンヌは12歳となった。彼女は美容や健康に気を付けて生活していることと、母親譲りの美貌もあり、ますます美しくなっていった。ルーカスは勿論のこと、ショーンまで彼女を1人の女性として意識しているのは明白だった。

 ある日、彼女は中庭のガゼボに僕を呼び出し、おかしげなことを言い出した。

 「ねぇ、ノア。私最近おかしな夢を見るの。予知夢かもしれないわ。信じられないと思うけど、真剣に聞いてね。」

 辺りに人が来ないか気にしながら真剣に話す彼女はとても可愛い。僕は「うん、うん」と頷きながら、彼女の顔がよく見えるよう身を乗り出した。

 「本当にちゃんと聞いてね。ノアが学院に入ってから一年後、ノアが同級生の王子殿下に毒殺される夢を見たの!私が入学した日に開催される歓迎パーティーでのことよ!だからパーティーでは食べ物も飲み物も口にしないでね!?」

 彼女は僕に近付き、小声で突拍子もない話を真剣に伝えてくれる。ぷっと吹き出しそうになるのを必死で堪えた。

 「分かったよ!それは2年後の話だね!」

 顔が近づき過ぎて我慢出来なくなった僕は彼女の頬にチュッとキスをした。そして「マリアンヌは可愛いね!」と微笑む。

 彼女は驚き呆れたような表情をして、「だから、本当のことよ!?今から対策を立てないといけないのよ!?」と真剣に言うが‥‥その顔も可愛い。

 「分かったよ!それに僕は毒殺されるようなヘマはしないよ。」

 僕はまた彼女の頬にキスをした。だって、近づき過ぎるのが悪いだろ?

 「‥‥‥さっきから、私のこと揶揄っているの!?」

 彼女が僕を睨みつける。

 「揶揄ってなんてないよ。2人きりで秘密の話が出来て嬉しいだけだよ?」

 僕は可愛い彼女の顔を見つめた。すると彼女は目を逸らし、

 「とにかく、私の言葉を頭の片隅に置いておいて。それじゃあ‥‥‥」

 と、立ち去ろうとするので、急いで彼女の手を引っ張り、自分の膝の上に乗せた。

 「‥‥‥誰も来ないから、もう少し一緒にいよう?」

 彼女の耳元で囁く。

 こんな二人きりの時間、もっと楽しみたい‥‥。

 「だっ、駄目よ!ノア、離して‥‥‥!」

 彼女は焦りもがいていたが、僕が彼女を強く抱きしめているので身動き出来ずにいる。

 ‥‥何てやわらかいんだ‥‥ずっとこのままでいたい‥‥。

 彼女の首元に顔を埋めた瞬間、ルーカスの声が聞こえて来た。

 「マリアンヌー!?どこー!?」

 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥チッ!」

 ルーカスが来やがった‥‥。僕らがいないから必死で探していたんだろう‥‥。

 もっと二人きりで過ごしたかったのに‥‥。

 「あっ、こんなところにいたんだ。‥‥2人で何をしていたの?」

 ジトっと僕を睨みつけるルーカス。何か察知したのか?

 「少し話していただけよ。まだ5分も話していないわ。ルーカスも一緒にお喋りする?」

 彼女がルーカスに微笑みかける。

 「‥‥‥うん!」

 「‥‥‥ねえ、義兄さん。黙って抜け駆けはしないでよね?そんなことしたら僕、義兄さんを殺すかもしれないよ!?」

 ルーカスは殺気だった表情で僕を睨みつける。

 「それはこっちの台詞だよ。ルーカス。」

 僕もルーカスを睨みつける。

 マリアンヌは誰にも取られたくはない。

 
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