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第二章 ノアは絶対死なせない!

第十四話 婚約!?①

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 「また会いたいとずっと思っていたんだよ。今日もとても綺麗だね。」

 私の前に跪かれた殿下は、私の右手の甲にキスをされた。

 ‥‥‥うっ、恥ずかしい‥‥。

 「さあ、会場へ戻ろう。弟とカーラー嬢にも声を掛けているよ。」

 会場には困った表情をしたカーラー様と、嬉しそうに駆け寄って来られるヘンリー王子殿下がおられた。王妃殿下もこちらを見て微笑まれている。

 そして、殿下にエスコートされている私を厳しい表情で見つめる御令嬢達。

 ‥‥どっ、どうしよう!?

 ‥‥もの凄く、注目されているわ。

 「さあ、マリアンヌ、こちらに座って。」

 優しく微笑み掛ける殿下。

 「はい。ありがとうございます。」

 殿下は右隣に座って、お茶やお菓子を甲斐甲斐しく勧めて下さり、お菓子を頂く私をずっと見つめて微笑まれている。まるでこの場に私しかいないかのような態度だ。御令嬢方の冷たい視線が突き刺さる‥‥。

 ‥‥こんな所でお菓子なんて‥‥喉を通らないわ‥‥。

 ヘンリー王子殿下は私とカーラー様の間に座っておられ、「遊ぼうよー!」と手を引っ張られている。

 ‥‥こんなところにいるより、ヘンリー王子殿下と遊びに行きたい‥‥。

 目の前の席にはマクゴガナル公爵家令嬢が座られているが‥‥怒りに燃えた瞳が怖すぎる。

 ミドルス伯爵家令嬢は端の席に座られているが、やはり冷たい視線をこちらに向けられている。

 「マリアンヌは来年、学院に入学するんだよね。僕の一学年下になるね。一緒に学院生活が送れるの楽しみだな。」

 「よっ、よろしくお願い致します。あっ、マクゴガナル様とミドルス様は殿下と同級生になられますね!」

 お二人も会話に入ってもらおうと話を振ったが、殿下はお二人を見ようともせず、私に話かけられる。

 「マリアンヌは卒業後のことは決めているの?」

 ‥‥この雰囲気耐えられない‥‥。

 「ええ‥‥。学院の医学科へ進みたいと思っております。」

 「えっ!?医学科に!?‥‥それじゃあ、学院には3年間に加え医学科の3年間と、合わせて最低でも6年間は通わないといけないじゃないか!?それに、医学科に女生徒は数える程しかいないよ?」

 「はい。私の幼い頃からの夢なんです。」

 「‥‥‥‥‥‥‥幼い頃からの夢‥‥‥?」

 フィリップ王子殿下は驚かれ、私を見つめたまま固まってしまわれた。

 「侯爵家の御令嬢の夢にしては珍しいですわね。だけど、とても素晴らしいと思いますわ。貴女にはお似合いよ。」

 マクゴガナル様は扇子で口元を隠し、クスリと笑われた。

 「そうですわね。」

 「爵位を継承出来ない次男以降の方がおなりになることが多いですから、かなり珍しいですわね。でも女性医師は女性の私達からみれば相談しやすいですし、嬉しいことですわね?」

 御令嬢達は皆、クスクス笑われている。

 ‥‥‥何がおかしいの!?

 ‥‥‥何だか、嫌な感じね‥‥‥。

 「マリアンヌがお医者様になったら、僕の専属医になってほしいな。」

 ヘンリー王子殿下がにこにこと可愛らしい笑顔を向けてくれた。

 ‥‥‥癒される‥‥‥。

 「はい。私でよろしければ。」

 ヘンリー王子殿下の両手を握り、笑顔で返事をした。

 「‥‥‥マリアンヌ?その夢はもう変わらないのか?医師は体力も気力も使うし、危険な仕事だよ?マリアンヌは侯爵家の一人娘じゃないか!?もう少し将来についてご両親とも話し合って考えてみたらどうだい?そしてその選択肢の一つとして、僕との婚約も考えてみてはくれないか?」

 ‥‥‥‥!!!!

 ‥‥‥‥何てことを言うの!!

 ‥‥‥‥殿下の申し出を断ると不敬罪になるのかな!?

 ‥‥‥‥どうしたらいいの!?


 

 

 


 
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