上 下
6 / 46

6話 錬金術レベル その3

しおりを挟む
 私はレブラント宮殿内の錬金施設へと入ることになった。


「おや、これはラグナ様。本日は如何なさいましたか?」

「ああ、フォトスか。まだ話は通っていないと思うが、本日から新しい錬金術師が加わることになる」


 施設の中へ入ると、一人の初老の男性が私達を出迎えてくれた。雰囲気から察すると、この施設の管理責任者かしら? 錬金施設そのものは、私が働いていた場所よりもかなり広い。フォトスと呼ばれた人以外にも、何人かの錬金術師が作業をしているようだった。

 それにしても……ラグナ王太子殿下はもしかすると、イシューマ王国の錬金術の総責任者という立場なのかもしれないわね。


「なんと……! 新たな錬金術師でございますか?」

「そうだ、彼女がその錬金術師のウィンリー・トレートだ」

「ほう、ウィンリー殿ですか、なるほど……」


 フォトスさんに私への紹介が行われた。私はそれを見計らって、彼に挨拶をする。

「ウィンリー・トレートと申します。ジドル王国では、錬金術師をしておりました。」

「これは、ご丁寧にどうもありがとうございます。イシューマ王国錬金部門の管理者、フォトス・アルサックと申します。以後、お見知りおきを」

「は、はい。ありがとうございます……フォトス、さん?」


 私は何てお呼びすればいいのか分からず、とりあえずは無難に「さん」付けをすることにした。フォトスさんは特に不自然に感じている様子がないため、このままで大丈夫なんだと思う。


「採用試験というわけではないが、ウィンリーにはこれから錬金術を行って貰おうと思っている。フォトス、急なことで済まないが、準備をしてくれないか?」

「畏まりました、それでは準備に入ります」


 採用試験ではないらしいけど、やっぱりここまで来ると緊張してくる。周りに居た数名の錬金術師の人たちも、私のことに気付いたのか、視線をこちらに向けて来ているみたいだし……。



-----------------------



 それからすぐに私は、錬金窯の前に立つことになった。この窯でアイテム精製をしていくことになる。

「あの、ラグナ様。これから何を作ればいいんでしょうか?」

「そうだな……材料から好きな物を作ってくれても構わないが、今回はこちらで指定したアイテムを調合して貰えるかい?」

「わかりました……」

「では、フォトス。何かアイテムを数種類言ってもらえるか?」


 フォトスさんは、ラグナ王太子殿下にそう言われ、少しの間思案しているようだった。

「ふむ、そうですね。では、ポーションやエーテル、ハイポーションにハイエーテルというのは如何でしょうか? どのアイテムも需要は非常に高い物になりますので」


 ポーションやエーテル……それから、ハイポーションにハイエーテルか。大丈夫だ、そのクラスだったらジドル王国でも作っていたし。


「わかりました、やってみます」


 私はすぐに作業に取り掛かることにした。フォトスさんが既に驚いた表情になっていることを知ったのは、もう少し後の話だったけれど……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー
公爵令嬢であるオレリア・アールグレーンは魔力が多く魔法が得意な者が多い公爵家に産まれたが、魔法が一切使えなかった。 そんな中婚約者である第二王子に婚約破棄をされた衝撃で、前世で公爵家を興した伝説の魔法使いだったということを思い出す。 冤罪で国外追放になったけど、もしかしてこれだけ魔法が使えれば楽勝じゃない?

騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。 剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作? だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。 典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。 従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

第二の人生、公爵令嬢として頑張りますぅ?

as
ファンタジー
闘病生活の末、家族に見守られ息を引き取ったら、重症の公爵令嬢サウスリアナとして目覚めた。何一つわからない中、公爵令嬢が残した日記を頼りに第二の人生をしぶとく生きます!

無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物

ゆうぎり
ファンタジー
私リディアーヌの不幸は双子の姉として生まれてしまった事だろう。 妹のマリアーヌは王太子の婚約者。 我が公爵家は妹を中心に回る。 何をするにも妹優先。 勿論淑女教育も勉強も魔術もだ。 そして、面倒事は全て私に回ってくる。 勉強も魔術も課題の提出は全て代わりに私が片付けた。 両親に訴えても、将来公爵家を継ぎ妹を支える立場だと聞き入れて貰えない。 気がつけば私は勉強に関してだけは、王太子妃教育も次期公爵家教育も修了していた。 そう勉強だけは…… 魔術の実技に関しては無能扱い。 この魔術に頼っている国では私は何をしても無能扱いだった。 だから突然罪を着せられ国を追放された時には喜んで従った。 さあ、どこに行こうか。 ※ゆるゆる設定です。 ※2021.9.9 HOTランキング入りしました。ありがとうございます。

『 使えない』と勇者のパーティを追い出された錬金術師は、本当はパーティ内最強だった

紫宛
ファンタジー
私は、東の勇者パーティに所属する錬金術師イレーネ、この度、勇者パーティを追い出されました。 理由は、『 ポーションを作るしか能が無いから』だそうです。 実際は、ポーション以外にも色々作ってましたけど…… しかも、ポーションだって通常は液体を飲むタイプの物から、ポーションを魔力で包み丸薬タイプに改良したのは私。 (今の所、私しか作れない優れもの……なはず) 丸薬タイプのポーションは、魔力で包む際に圧縮もする為小粒で飲みやすく、持ち運びやすい利点つき。 なのに、使えないの一言で追い出されました。 他のパーティから『 うちに来ないか?』と誘われてる事実を彼らは知らない。 10月9日 間封じ→魔封じ 修正致しました。 ネタバレになりますが、イレーネは王女になります。前国王の娘で現国王の妹になります。王妹=王女です。よろしくお願いします。 12月6日 4話、12話、16話の誤字と誤用を訂正させて頂きました(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” 投稿日 体調不良により、不定期更新。 申し訳有りませんが、よろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” お気に入り5500突破。 この作品を手に取って頂きありがとうございます(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)まだまだ未熟ではありますが、これからも楽しい時間を提供できるよう精進していきますので、よろしくお願い致します。 ※素人の作品ですので、暇つぶし程度に読んで頂ければ幸いです。

悪女と言われ婚約破棄されたので、自由な生活を満喫します

水空 葵
ファンタジー
 貧乏な伯爵家に生まれたレイラ・アルタイスは貴族の中でも珍しく、全部の魔法属性に適性があった。  けれども、嫉妬から悪女という噂を流され、婚約者からは「利用する価値が無くなった」と婚約破棄を告げられた。  おまけに、冤罪を着せられて王都からも追放されてしまう。  婚約者をモノとしか見ていない婚約者にも、自分の利益のためだけで動く令嬢達も関わりたくないわ。  そう決めたレイラは、公爵令息と形だけの結婚を結んで、全ての魔法属性を使えないと作ることが出来ない魔道具を作りながら気ままに過ごす。  けれども、どうやら魔道具は世界を恐怖に陥れる魔物の対策にもなるらしい。  その事を知ったレイラはみんなの助けにしようと魔道具を広めていって、領民達から聖女として崇められるように!?  魔法を神聖視する貴族のことなんて知りません! 私はたくさんの人を幸せにしたいのです! ☆8/27 ファンタジーの24hランキングで2位になりました。  読者の皆様、本当にありがとうございます! ☆10/31 第16回ファンタジー小説大賞で奨励賞を頂きました。  投票や応援、ありがとうございました!

【完結】『サヨナラ』そう呟き、崖から身を投げようとする私の手を誰かに引かれました。

仰木 あん
ファンタジー
継母に苛められ、義理の妹には全てを取り上げられる。 実の父にも蔑まれ、生きる希望を失ったアメリアは、家を抜け出し、海へと向かう。 たどり着いた崖から身を投げようとするアメリアは、見知らぬ人物に手を引かれ、一命を取り留める。 そんなところから、彼女の運命は好転をし始める。 そんなお話。 フィクションです。 名前、団体、関係ありません。 設定はゆるいと思われます。 ハッピーなエンドに向かっております。 12、13、14、15話は【胸糞展開】になっておりますのでご注意下さい。 登場人物 アメリア=フュルスト;主人公…二十一歳 キース=エネロワ;公爵…二十四歳 マリア=エネロワ;キースの娘…五歳 オリビエ=フュルスト;アメリアの実父 ソフィア;アメリアの義理の妹二十歳 エリザベス;アメリアの継母 ステルベン=ギネリン;王国の王

処理中です...