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3話 隣国のラグナ・イシューマ王太子 その2
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「ウィンリー、なんで君がこんなところに居るんだ?」
「いえ……それは私のセリフなのではないでしょうか……」
どう見ても、一般人の私より、隣国の重鎮……しかも、王太子殿下が居る方がおかしいと思われる。彼はラグナ・イシューマ王太子殿下で、年齢は私よりも2つ上の20歳だ。
彼とはこの1年半で知り合ったことにはなるけど、最初は緊張以外の何物も生まれなかった。確か最初は、錬金術を行っている現場を見たいという、彼の気まぐれが私達の出会いだったっけ?
それからラグナ王太子殿下は、何度も来てくれるようになって行った。半年くらい前から、忙しくなったのかジドル王国にすら来なくなっていたみたいだけど。
両国間の橋渡し……加えて、両国の国民の生活基盤の上昇に尽力されているお方だった。理想だけを語っても意味はないと、自らの脚で動くタイプの人だ。
と、いうことは……ここに旅人の服の格好で来ているのもそういうことなのかな?
「まあ確かに……王太子である私が普通の宿屋で寝泊まりしている方が、確かに普通ではないかもしれないな」
「ええ……失礼ながら、そうだと思います」
「ははは、君はハッキリ言うな。相変わらず、その辺りは変わっていないか」
「あ、申し訳ありません……!」
「いやいや、気にしないでくれ。私としてもウィンリー、君には余計な気を使ってほしくないと思っているのでな」
「そうなんですか……?」
「ああ、平民の出の者で私の友人と呼べる者は、君くらいしか居ない。王太子足るもの、交友関係は広いに越したことはないだろう?」
確かにそうかもしれないけど、私はラグナ王太子殿下の「友人」という言葉に嬉しくなってしまった。私としても、唯一の心を許せる相手だったかもしれないので、本当に嬉しい。
「それで、どうしてそのような格好でいらしているんですか? 公式訪問……などではないようですが?」
「ああ、ジドル王国の国民たちの生活の調査をしていたわけだ」
「生活基盤の調査ですか」
「うむ、その為にお忍びで護衛も目立たぬような格好なのだが……ウィンリーにはすぐにバレてしまったようだな」
私が借りた部屋にはラグナ王太子殿下以外に、数名の護衛の人達が居る。こうして見ると、冒険者パーティのように見えてしまう。私がラグナ王太子殿下を看破できたのは、何気に凄いことなのかもしれない。
「そういう君は、なぜこんなところに居るんだ? 宮殿の豪華なベッドが飽きて来て……というわけでもないんだろう?」
しまった……当然、私の話題になるのは自然な流れだ。流れ的には答えるしか選択肢がなかった。どうせ、いずれは知られてしまうだろうし……。
「ええと、実は……錬金術師を解雇されてしまいまして……」
「ん? どういうことだ……?」
私の解雇という文言を聞いた瞬間、ラグナ王太子殿下の表情が変わる。怖いくらい真剣になっているようだった……。
「いえ……それは私のセリフなのではないでしょうか……」
どう見ても、一般人の私より、隣国の重鎮……しかも、王太子殿下が居る方がおかしいと思われる。彼はラグナ・イシューマ王太子殿下で、年齢は私よりも2つ上の20歳だ。
彼とはこの1年半で知り合ったことにはなるけど、最初は緊張以外の何物も生まれなかった。確か最初は、錬金術を行っている現場を見たいという、彼の気まぐれが私達の出会いだったっけ?
それからラグナ王太子殿下は、何度も来てくれるようになって行った。半年くらい前から、忙しくなったのかジドル王国にすら来なくなっていたみたいだけど。
両国間の橋渡し……加えて、両国の国民の生活基盤の上昇に尽力されているお方だった。理想だけを語っても意味はないと、自らの脚で動くタイプの人だ。
と、いうことは……ここに旅人の服の格好で来ているのもそういうことなのかな?
「まあ確かに……王太子である私が普通の宿屋で寝泊まりしている方が、確かに普通ではないかもしれないな」
「ええ……失礼ながら、そうだと思います」
「ははは、君はハッキリ言うな。相変わらず、その辺りは変わっていないか」
「あ、申し訳ありません……!」
「いやいや、気にしないでくれ。私としてもウィンリー、君には余計な気を使ってほしくないと思っているのでな」
「そうなんですか……?」
「ああ、平民の出の者で私の友人と呼べる者は、君くらいしか居ない。王太子足るもの、交友関係は広いに越したことはないだろう?」
確かにそうかもしれないけど、私はラグナ王太子殿下の「友人」という言葉に嬉しくなってしまった。私としても、唯一の心を許せる相手だったかもしれないので、本当に嬉しい。
「それで、どうしてそのような格好でいらしているんですか? 公式訪問……などではないようですが?」
「ああ、ジドル王国の国民たちの生活の調査をしていたわけだ」
「生活基盤の調査ですか」
「うむ、その為にお忍びで護衛も目立たぬような格好なのだが……ウィンリーにはすぐにバレてしまったようだな」
私が借りた部屋にはラグナ王太子殿下以外に、数名の護衛の人達が居る。こうして見ると、冒険者パーティのように見えてしまう。私がラグナ王太子殿下を看破できたのは、何気に凄いことなのかもしれない。
「そういう君は、なぜこんなところに居るんだ? 宮殿の豪華なベッドが飽きて来て……というわけでもないんだろう?」
しまった……当然、私の話題になるのは自然な流れだ。流れ的には答えるしか選択肢がなかった。どうせ、いずれは知られてしまうだろうし……。
「ええと、実は……錬金術師を解雇されてしまいまして……」
「ん? どういうことだ……?」
私の解雇という文言を聞いた瞬間、ラグナ王太子殿下の表情が変わる。怖いくらい真剣になっているようだった……。
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