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タウンハウスで急転直下
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◇◇ジルベルト◇◇
ノックの音がしてギュンターさまと辺境伯夫妻がやって来られた。
それに合わせてわたしとランディは席を立ち頭を下げる。
ちなみにジーンはミハエルさまを抱いたまま立ち上がった。
「何をしている?ジーン。俺はお前が伴侶を連れて来たと聞いてここへ来たんだが…。兄上もなぜそのようなことに?」
「ヴォルフ、それよりも身体を起こす許可をあげてちょうだい。彼らを無視したいわけじゃないのでしょう?」
「ああ、すまんな。顔を上げて座りなさい。俺はヴォルフラム・サウザンライト辺境伯、ジーンの父だ。」
「わたくしはサリヤ・シルファン=サウザンライト辺境伯夫人、ジーンの母親よ。二人ともよく来てくれたわね。」
わたしと同じくらいの体格で、ジーンの兄上にしか見えない御仁が父上さま。
スラリとしながらもボディスを身に着けた胸は豊かで、ズボンを穿いている女性。
こちらもジーンの姉上にしか見えないが、母上さまだという。
ヴォルフラムさまに我らの存在を無いものとされるのかと内心で焦ったが、そうではなかったようで助かった。
伴侶を連れてきたはずのジーンがミハエルさまを抱いていれば、辺境伯とて驚きそちらに注意が逸れるだろう。
夫人の言葉に感謝しながら腰を下ろし、夫妻と挨拶を交わし名乗り合った。
「親父もおふくろもジルとランのことを知ってると思うが、オレの婚姻の許可をもらいに来た。祖父さんと祖父さまは良いと言ってくれたが、二人はどうだ?認めてくれるか?」
これまでの話しを聞く限り大丈夫だとは思っているが、やはり緊張する。
ランディもわたしと同じく、表情が固くなっている。
「探索者として共に活動していたのだろう?報告は受けている。ハイデルンとの縁も切れているし、人格にも問題は無いと聞いている。ジーンにも相手は自分で選んで良いと言ってあったとおり許可しよう。
だがな、ジーン。そんなに焦って婚姻しなくても良いだろう?せっかくもうじき人目も気にせず家族として暮らせるようになるのに、もう伴侶ができてしまうとは…。」
「ほら、いい歳していじけないでちょうだい。ごめんなさいね。この人、やっとジーンと一緒に暮らせる!ってはしゃいでたのに、息子をとられるみたいで寂しいのよ。あなたたちのことを嫌っているわけじゃないの。少し大目に見てくれると嬉しいわ。」
「ご心配にはおよびません。我らは伴侶として認めていただいただけで十分です。」
ジーンとご両親の仲の良さが微笑ましい。
そこに連なることはとても幸せなことに思える。
多くを望まなくても満たされるとは…。
サウザンライトとは不思議な一族だ。
「そのとおりです。私たちに流れる血をご存知にも関わらず一族に加えていただけるなんて、本当にありがとうございます。」
ランディもわたしと同じような心境になっているのだろう。
「二人とも高貴な生まれなのに、随分謙虚なのね。」
「我らにとって重要なのはジーンであって、生まれた家ではありません。」
「そう…。ありがとう、そんなにジーンを好きになってくれて。とっても嬉しいわ。」
「ところでそんなに惚れ込んでくれてる伴侶を置いて、ジーンは兄上を膝に乗せて何をやっているのだ?」
ヴォルフラムさまの言葉でジーンを見ると、真っ赤になったミハエルさまの頭を撫でていた。
瞳にはイタズラな色が見て取れ、反応を楽しんでいることがよく分かる。
「それはわしが説明しよう。」
クラウスさまがヴォルフラムさまが到着するまでにあったことを説明してくださったが、かなりの衝撃を受けたご様子だ。
「兄上にジーンをとられた…。ジーンに兄上をとられた…。」
そう呟く隣でサリヤさまは「よく決心したわね、ジーン。おめでとうございますお義兄さま。拗らせていらっしゃった分、喜びもひとしおですわね」とおっしゃって、ミハエルさまにとどめを刺してしまわれた。
ノックの音がしてギュンターさまと辺境伯夫妻がやって来られた。
それに合わせてわたしとランディは席を立ち頭を下げる。
ちなみにジーンはミハエルさまを抱いたまま立ち上がった。
「何をしている?ジーン。俺はお前が伴侶を連れて来たと聞いてここへ来たんだが…。兄上もなぜそのようなことに?」
「ヴォルフ、それよりも身体を起こす許可をあげてちょうだい。彼らを無視したいわけじゃないのでしょう?」
「ああ、すまんな。顔を上げて座りなさい。俺はヴォルフラム・サウザンライト辺境伯、ジーンの父だ。」
「わたくしはサリヤ・シルファン=サウザンライト辺境伯夫人、ジーンの母親よ。二人ともよく来てくれたわね。」
わたしと同じくらいの体格で、ジーンの兄上にしか見えない御仁が父上さま。
スラリとしながらもボディスを身に着けた胸は豊かで、ズボンを穿いている女性。
こちらもジーンの姉上にしか見えないが、母上さまだという。
ヴォルフラムさまに我らの存在を無いものとされるのかと内心で焦ったが、そうではなかったようで助かった。
伴侶を連れてきたはずのジーンがミハエルさまを抱いていれば、辺境伯とて驚きそちらに注意が逸れるだろう。
夫人の言葉に感謝しながら腰を下ろし、夫妻と挨拶を交わし名乗り合った。
「親父もおふくろもジルとランのことを知ってると思うが、オレの婚姻の許可をもらいに来た。祖父さんと祖父さまは良いと言ってくれたが、二人はどうだ?認めてくれるか?」
これまでの話しを聞く限り大丈夫だとは思っているが、やはり緊張する。
ランディもわたしと同じく、表情が固くなっている。
「探索者として共に活動していたのだろう?報告は受けている。ハイデルンとの縁も切れているし、人格にも問題は無いと聞いている。ジーンにも相手は自分で選んで良いと言ってあったとおり許可しよう。
だがな、ジーン。そんなに焦って婚姻しなくても良いだろう?せっかくもうじき人目も気にせず家族として暮らせるようになるのに、もう伴侶ができてしまうとは…。」
「ほら、いい歳していじけないでちょうだい。ごめんなさいね。この人、やっとジーンと一緒に暮らせる!ってはしゃいでたのに、息子をとられるみたいで寂しいのよ。あなたたちのことを嫌っているわけじゃないの。少し大目に見てくれると嬉しいわ。」
「ご心配にはおよびません。我らは伴侶として認めていただいただけで十分です。」
ジーンとご両親の仲の良さが微笑ましい。
そこに連なることはとても幸せなことに思える。
多くを望まなくても満たされるとは…。
サウザンライトとは不思議な一族だ。
「そのとおりです。私たちに流れる血をご存知にも関わらず一族に加えていただけるなんて、本当にありがとうございます。」
ランディもわたしと同じような心境になっているのだろう。
「二人とも高貴な生まれなのに、随分謙虚なのね。」
「我らにとって重要なのはジーンであって、生まれた家ではありません。」
「そう…。ありがとう、そんなにジーンを好きになってくれて。とっても嬉しいわ。」
「ところでそんなに惚れ込んでくれてる伴侶を置いて、ジーンは兄上を膝に乗せて何をやっているのだ?」
ヴォルフラムさまの言葉でジーンを見ると、真っ赤になったミハエルさまの頭を撫でていた。
瞳にはイタズラな色が見て取れ、反応を楽しんでいることがよく分かる。
「それはわしが説明しよう。」
クラウスさまがヴォルフラムさまが到着するまでにあったことを説明してくださったが、かなりの衝撃を受けたご様子だ。
「兄上にジーンをとられた…。ジーンに兄上をとられた…。」
そう呟く隣でサリヤさまは「よく決心したわね、ジーン。おめでとうございますお義兄さま。拗らせていらっしゃった分、喜びもひとしおですわね」とおっしゃって、ミハエルさまにとどめを刺してしまわれた。
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